【東京都湾岸タワーマンション】在庫が増えているにもかかわらず、価格が下がらない理由とは

2024年から2025年にかけて、東京の湾岸タワーマンション市場が大きな転換期を迎えています。都心5区を上回る価格高騰や、在庫増加にもかかわらず続く価格上昇など、従来の不動産市場の常識を覆す現象が起きています。

この記事では、最新のデータと専門家の見解をもとに、湾岸タワーマンション市場の現状について詳しく解説します。

目次

2024年湾岸タワーマンション市場の大転換

都心5区を上回る成約坪単価の推移

2024年6月、湾岸タワーマンションの成約坪単価が都心5区を上回る事態が発生しました。これは不動産市場に大きな衝撃を与え、それ以降も湾岸エリアの価格は都心5区と同等かそれ以上の水準を維持しています。

具体的には、2024年11月の湾岸エリアの平均成約坪単価が601万円に達し、初めて坪600万円を超えました。
※参照:FJリアルティ 【成約件数一転増加!成約価格最高記録更新中!初の坪600万超え!在庫数も増加 】2024年11月迄の湾岸エリア最新市況分析レポート

この価格上昇は、特に有明や勝どき・月島エリアで顕著で、6ヶ月連続で上昇を続けています。

この現象の背景には、湾岸エリアの再開発や交通インフラの整備、新しいライフスタイルへの注目などが考えられます。しかし、このような急激な価格上昇には注意が必要です。バブル崩壊のリスクや、将来的な価値の下落の可能性も考慮に入れる必要があるでしょう。

高需要を示す販売期間の短縮化

湾岸タワーマンション市場の活況を示すもう一つの指標が、販売期間の短縮化です。2024年には、値下げの頻度が減少しているにもかかわらず、販売期間が短くなっています。

これは「出し値で(値下げしなくても)すぐ売れる」状況を意味し、非常に高い需要があることを示しています。

この傾向は都心5区や23区全体でも見られますが、湾岸タワーマンションではより顕著です。例えば、ある物件が市場に出てから成約までの期間が、以前の平均6ヶ月から3ヶ月程度に短縮されているケースもあります。

値下げ頻度減少の背景

値下げ頻度の減少は、市場の強さを示す重要な指標です。2024年の湾岸タワーマンション市場では、この傾向が顕著に見られました。

この背景には、以下のような要因が考えられます。

  • 高い需要:購入希望者が多く、出値でもすぐに売れる状況
  • 売主の強気な姿勢:価格下落を避けたい売主の意向
  • 物件の希少性:新規供給が限られる中での既存物件の価値上昇

しかし、値下げ頻度の減少は必ずしも良いことばかりではありません。市場の硬直化や、実需と乖離した価格形成につながる可能性もあります。また、将来的な価格調整のリスクも高まる可能性があるため、慎重な判断が求められます。

在庫増加と価格高騰の矛盾

供給数増加の実態

湾岸タワーマンション市場では、2024年8月頃から在庫(供給数)が増加傾向にあります。通常、在庫が増えれば価格は下落するはずですが、この市場では逆の現象が起きています。

この供給数増加の実態を詳しく見てみましょう。

  • 新規物件の増加:再開発や新築プロジェクトの完成
  • 既存物件の流通:所有者の売却意向の高まり
  • 投資用物件の増加:資産運用目的での購入と売却

ただし、この「在庫増加」には注意が必要です。実際に市場に出回っている物件だけでなく、売却意向はあるものの実際には動いていない物件も含まれている可能性があります。

継続する価格上昇の要因

在庫が増加しているにもかかわらず、湾岸タワーマンションの価格は上昇を続けています。

この一見矛盾した状況には、いくつかの要因が考えられます。

  • 高い需要:購入希望者が多く、競争が激しい
  • 低金利環境:住宅ローンの借入れやすさ
  • 湾岸エリアの将来性:再開発や交通インフラの整備への期待
  • 投資需要:資産運用としての魅力

しかし、この価格上昇には潜在的なリスクもあります。需給バランスが崩れた場合、急激な価格調整が起こる可能性があります。また、金利上昇や経済状況の変化によっては、市場全体が冷え込む可能性もあります。

売主の強気な姿勢と市場への影響

湾岸タワーマンション市場における売主の強気な姿勢が、価格高騰の一因となっています。

多くの売主が売却を急いでおらず、希望価格で売れない場合は市場から引き上げる傾向があります。

ただし、この強気な姿勢がいつまで続くかは不透明です。経済状況の変化や、個人の事情により、急激に売却意向が高まる可能性もあります。そのため、市場の動向を注視し続けることが重要です。

経済学的需給関係との乖離

在庫増加と価格上昇の共存

湾岸タワーマンション市場では、経済学の基本原則である需要と供給の法則から逸脱した現象が起きています。通常、在庫(供給)が増加すれば価格は下落するはずですが、この市場では在庫増加と価格上昇が同時に起こっています。

この現象の背景には以下のような要因が考えられます。

  • 見かけ上の在庫:実際には流通していない物件も含まれている
  • 強い需要:購入希望者が多く、競争が激しい
  • 売主の強気な姿勢:希望価格で売れない場合は市場から引き上げる

2024年8月以降、湾岸タワーマンションの在庫数が増加しているにもかかわらず、価格は高騰を続けており、2024年7月には成約坪単価が都心5区を上回りました。この状況は、実際には「購入したいのに購入できない消費者が多い」という現実を反映しています。

しかし、この状況が長期的に続くとは限りません。市場の調整機能が働き、いずれは需給バランスが取れる方向に向かう可能性があります。

従来の市場理論との相違点

湾岸タワーマンション市場の現状は、従来の不動産市場理論とは異なる動きを示しています。主な相違点は以下の通りです。

  1. 価格の非弾力性:供給増加に対して価格が下がらない
  2. 売主主導の市場:買主よりも売主の意向が強く反映される
  3. 投機的要素の強さ:実需以外の要因が価格形成に大きく影響

これらの相違点は、湾岸タワーマンション市場の特殊性を示しています。

しかし、この特殊性は市場の不安定さにもつながる可能性があります。急激な環境変化や経済ショックに対して、市場が脆弱である可能性を示唆しています。

投資家や購入検討者は、この市場の特殊性を十分に理解した上で、慎重に判断を行う必要があります。また、政策立案者や市場関係者も、この特殊な状況に対応した施策や対策を検討する必要があるでしょう。

湾岸タワーマンション市場の特殊性

売主の姿勢と在庫データの解釈

湾岸タワーマンション市場における売主の姿勢は、他の不動産市場とは大きく異なります。多くの売主が売却を急いでおらず、強気な価格設定を維持しています。

売主の特徴的な姿勢

  • 高値志向:市場の上昇傾向を背景に、高い価格設定を維持
  • 待機的態度:希望価格で売れない場合、売却を見送る傾向
  • 投資的視点:値上がり益の最大化を重視

この姿勢が市場に与える影響

  • 価格の下方硬直性:値下げが行われにくい状況
  • 見かけ上の在庫増加:実際には流通していない物件も含まれる
  • 市場の流動性低下:成約に至らない物件の増加

上記に加え、湾岸タワーマンション市場の在庫データは慎重に解釈する必要があります。表面上の在庫増加が、必ずしも市場の冷え込みを意味するわけではありません。

実態を正確に把握するためには、市場に出回っている実際の流通量に注意が必要です。

まとめ

湾岸タワーマンション市場は2024年から2025年にかけて大きな変化を見せています。都心5区を上回る価格高騰や、在庫増加にもかかわらず続く価格上昇など、従来の不動産市場の常識を覆す現象が起きています。

特に注目すべき点は、成約坪単価の上昇、販売期間の短縮化、値下げ頻度の減少です。これらは市場の活況を示す一方で、潜在的なリスクも含んでいる可能性があります。

また、募集価格と成約価格の差が拡大し、高値売却を狙う強気の売主が増加しています。この現象は市場の不透明性を高める要因となっています。

この特異な市場状況は、経済状況の変化や金利動向によって急激に変化する可能性があります。今後も市場の動向を注視し、慎重かつ柔軟な対応が求められるでしょう。

元動画

より専門的な内容が知りたい方は、下記Youtubeへ!

メディアの皆様へ

本記事の転載・引用は出典明記(必須:メディア名・対象記事URL)の上、ご利用をお願いいたします。

記事の執筆依頼、その他お問い合わせはこちらまで→media@mansionresearch.co.jp

すみかうるの記事をシェアする

この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

目次