3Dプリンター住宅の最前線を解説!価格やデメリットは?

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目次

3Dプリンター住宅とは?

「3Dプリンター住宅」とは、3Dプリンターで印刷して作られた住宅のこと。

まず、「3Dプリンター」とは何なのかを簡単に説明しましょう。

3Dプリンターでできること
  • 3DCADの設計図をもとに立体造形物を作成
  • 材料を積層して対象物を作り上げる
  • 試作品や部品、フィギュアなどの用途で使用

上記の3Dプリンター技術を、住宅建設に応用したものが「3Dプリンター住宅」で、海外ではすでに多くの建築事例があります。

3Dプリンター住宅の建築素材は多岐にわたり、モルタル、コンクリート、強化繊維プラスチック、ガラス繊維強化石膏などです。

これらの材料を建設する住宅にあわせて使用します。

建築工法は、主に以下の2通り。

工場に設置した3Dプリンターの建築方法
  • 住宅パーツを印刷して現場に持ち込む方法
  • 現場にプリンター本体を設置して印刷する方法

海外では、2階建て分譲住宅やクラブハウスなどの大型施設の建設にも、3Dプリンターの導入が進んでいます。

3Dプリンター住宅は、従来の住宅より建築コストが抑えられるため、貧困層への住宅供給や災害時の仮設住宅としての活用も期待されています。

日本には住宅に関する厳しい法規性があるため、間取りや敷地面積に制限があり、長らくグランピング施設やガレージ、公衆トイレなどの住居以外の用途での販売が中心でした。

しかし、2023年にセレンディクス社が初めて一般住宅仕様の「serendix50(フジツボモデル・50㎡)」を販売。

居住用の3Dプリンター住宅の実用化に向けて、大きく前進しました。

今後も低コストでマイホームをもちたい、セカンドハウスとして購入したい、という需要の高まりが予想されています。

3Dプリンター住宅のメリット

3Dプリンター住宅の5つのメリットを紹介します。

建築スピードの速さ

3Dプリンター住宅の大きなメリットは、最短24時間程度で完成する工期の短さです。

3Dプリンターは常時人が見張っている必要がなく、休まず稼働させることができます。

通常、住宅の完成には数カ月程度かかるため、そのスピードは驚異的といえるでしょう。

3Dプリンターを使えば、短期間での住宅供給ができるため、災害時の仮設住宅や緊急時の住居不足の解消にも有用です。

建築コストの抑制

従来の新築一戸建てにかかる相場は、3,000万~4,000万円です。

3Dプリンター住宅の建築費用は数百万円とされているため、大幅なコストダウンになります。

その理由は、運搬費や人件費にかかる費用を削減できるため。

3Dプリンター住宅は、現場に設置したプリンターで、住宅パーツをまとめて印刷して組み合上げます。

少ない人員と短い工期で完成させられるため、従来の工法より大幅にコストが抑えられるわけです。

また、3Dプリンター住宅の建築材料は、モルタルやコンクリートなどで、木材は使用しません。

木材価格は、世界的な需要の高まりや、為替相場の影響などで高騰しやすく、資材の価格は建築費用に反映されます。

このような外的要因を排除できるのも、メリットのひとつといえるでしょう。

人手がいらない

建築業界の人手不足は深刻な状況で、人件費の高騰や工期の長期化などの影響が懸念されています。

3Dプリンター住宅は少ない人員で建築可能で、一般住宅程度の規模なら、3Dプリンターを操作するオペレーターと数人の作業員がいれば十分です。

さらに、3Dプリンターの操作や監視には特別なスキルは求められないため、高度な専門技術をもった職人を雇う必要もありません。

これにより、スピード感をもった建築スケジュールを立てることができ、技術者の育成やトレーニングにかかる時間と費用も節約できます。

建築業界全体の課題である省力化を実現できるという点も、3Dプリンター住宅が注目されている理由のひとつです。

設計の自由度が高い

従来の工法では、曲線の建築物は難易度が高く、設計コストや工期がかかっていました。

しかし、3Dプリンターを使えば、曲線などの複雑な形状も設計図通りに正確に出力できます。

施工が難しい狭い土地でも、低コストでおしゃれな住宅を建てられるのは、3Dプリンター住宅のメリットといえるでしょう。

コストをかけずにデザイン性の高い家に住みたい、という人には最適です。

環境にやさしい

木造建築は端材などの材料ロスが発生しやすく、リサイクル手段などが課題となっています。

一方の3Dプリンター住宅は、設計図通りに無駄なく印刷できます。

効率よく材料を使用できるため、環境負荷の低減にも効果的です。

建築工程もシンプルなため、運搬時などに発生するCO2排出削減効果も期待できます。

さらに、3Dプリンターで使用される材料には再生可能な素材が多く、サステナブルな住宅建設を実現できる次世代の建築手法としても注目されています。

3Dプリンター住宅のデメリット

3Dプリンター住宅には魅力的な面も多くありますが、知っておきたいデメリットも存在します。

住宅強度に課題

地震大国といわれる日本において、住宅の耐震性は、建築基準法でも定められている重要な要素です。

従来のコンクリート造の住宅では、壁の内部に鉄骨や鉄筋を入れて強度を高めています。

一方、3Dプリンター住宅の場合は、鉄骨や鉄筋を組み込んで印刷することは難しく、住宅強度の確保は大きな課題になっていました。

しかし、2023年に大林組が、国内で初めて建築基準法に基づいた3Dプリンター住宅を完成させ、同年セレンディクス社もそれに続きました。

これにより、安心して住める住宅強度を持った家の実現に、一歩近づきました。

しかし、長期的な住宅強度をはかるには経過観察が必要であるなど、依然として課題も多く、3Dプリンター住宅の普及には時間を要することが予想されています。

プリンターのスペースが必要

現場に3Dプリンターを持ち込んで施工する場合には、プリンター本体を設置するためのスペースが必要です。

住宅建設には、産業用のロボットアームがついたものや、巨大な門形のマシンなどの大型の3Dプリンターを使用します。

そのため、狭小地や密集した住宅地では、現場での施工が難しく、工法が限られることがあります。

設備・内装工事にコストがかかる

3Dプリンターでは、電気やガス、水道などの住宅設備までは印刷できません。

3Dプリンターで印刷できるのは、住宅の骨格部分のみです。

水回り等の設備を入れるには、職人や専門業者に依頼して設備工事を別に行う必要があります。

3Dプリンター住宅の設備工事を専門にしている業者は多くないため、業者探しから始めなければならず、追加の工事費用も発生します。

3Dプリンター住宅は、車1台分程度といわれる安価さが魅力です。

しかし、設備・内装工事の費用を加えると、立地によっては建売住宅と変わらない価格になることも考えられます。

法整備が整っていない

3Dプリンター住宅は新しい技術のため、関連する法整備が進んでいないのが現状です。

現在の法律に照らし合わせると、3Dプリンター住宅は耐震性に難があり、建築基準法を満たすことができません。

大林組のように、建築基準法を満たす3Dプリンター住宅のノウハウを確立する企業や、構造体だけで十分な強度をもった3Dプリンター住宅の開発を進めている企業もあるなど、各社の対応も様々です。

さらに、3Dプリンターで一般住宅を建てるには、個別に安全性の審査や評価をクリアする必要があります。

従来の住宅よりも手間や時間、コストがかかることもあり、法律に関する問題は3Dプリンター住宅の今後を左右する大きな課題ともいえます。

3Dプリンター住宅は、まだまだ情報が少なく、発展途上の分野です。

3Dプリンター住宅業界の最新事情や動向などを知りたい方は、スーモカウンターに相談してみましょう。

3Dプリンター住宅の事例

3Dプリンター住宅の実例には、どのようなものがあるのでしょうか。

海外や日本での事例を紹介します。

ICON「SUNDAY HOMES」

ICOM社は、アメリカのテキサス州に拠点を置く建設用3Dプリンターの販売会社です。

これまでに、自社の3Dプリンターを用いた様々な住宅を発表しています。

「SUNDAY HOMES」もそのひとつで、月面基地をイメージしたユニークな形状をしています。

大小の円形をつなぎ合わせた間取りと、3Dプリンターが得意とする湾曲した壁が印象的なデザインです。

ICON社は、一般住宅だけでなく、ホームレス支援のための施設や、兵舎などの大規模防衛施設なども手掛けるなど、3Dプリンター技術を活用した建築手法は国内外で注目を集めています。

PERI 3D Construction「公営集合住宅」

「PERI 3D Construction」は、70カ国以上で型枠や足場システムを製造するグローバルメーカー「PERI」社の一員であり、ドイツとアメリカにオフィスを構えています。

アメリカで初めて3Dプリンターで建てられたマルチファミリールームや、ヨーロッパ最大規模の3Dプリンタービルの建造など、国内外での建築実績があります。

デンマークの3Dプリンターメーカー「COBOD」社の3Dプリンターを使用した、公営集合住宅の建設もそのひとつです。

このプロジェクトでは、2、3階建ての複数フロアをもつ住宅も建設されました。

3Dプリンター技術と従来の建築技法を組み合わせることで実現し、3Dプリンター住宅の可能性を広げました。

ナント大学プロジェクトチーム「Yhnova」

フランスでは、2018年に初の3Dプリンター住宅「Yhnova」が建てられました。

ナント大学の教授が主要メンバーとして立ち上げたプロジェクトで、大学が独自に開発した3Dプリンター技術「BatiPrint3D」を使用。

延べ床面積95㎡の住宅で、施工時間は約54時間でした。

施工費は約2,620万円で、従来の住宅を建てるより約20%のコストカットが実現しました。

コンセプトモデルとして建てられた集合住宅には、抽選によって選ばれた市民が入居し、実際に暮らしています。

セレンディクス「フジツボ」

兵庫県西宮市に拠点を置くセレンディクス社。

日本国内では有名な、3Dプリンター住宅メーカーです。

2022年に愛知県小牧市に、日本初の3Dプリンター住宅を建設したことで話題を集めました。

2023年には慶応義塾大学と共同で、50㎡の鉄骨造の平屋建て住宅「フジツボスタイル」を完成させ、限定的に6棟が一般販売されました。

耐用年数やメンテナンスにかかる費用のデータが揃うまでは、今後もしばらく販売数の制限が続くことが予想されます。

大林組「3dpod」

大手建設会社の大林組は、2022年に国内で初めて建設基準法をクリアした3Dプリンター住宅を完成させました。

「3dpod」の名前の通り、蚕の繭や豆のさやを連想させる円形の外観が特徴です。

大林組のプロジェクトでは、建築基準を満たす新素材の研究開発が行われ、鉄筋や鉄骨に代わる「特殊モルタル」や、超高強度の繊維補強コンクリート「スリムクリート」を独自に開発。

その結果、建築基準法で定められた強度を確保することに成功しました。

「3dpod」には、水回り等の住宅設備や断熱性も備えており、居住性も考えられています。

一般発売はされていませんが、今後の展開が期待されています。

Lib Work「Lib Earth House “modelA”」

「Lib Work 」は、熊本県山鹿市の住宅メーカーです。

2024年1月に「土を」主原料とした3Dプリンター住宅「Lib Earth House “modelA”」を発表しました。

自然由来の材料を中心に使用した3Dプリンター住宅は国内初。

土が7割、残りはもみがら、石灰、ワラ、セメントなどを配合し、使用しています。

プロジェクトは、ロンドンに本社を置く「Arup」社との共同で行われ、環境への配慮と、持続可能性を追求した3Dプリンター住宅の実現を目標に協調しています。

しかし、土を主原料とした構造体の耐震性や耐久性については、調査が進められている最中です。

そのため、モデルハウス第1号には価格設定が行われていません。

2025年には100㎡の平屋建て住宅の一般販売も予定されているので、続報に期待したいところです。

3Dプリンター住宅のQ&A

3Dプリンター住宅のQ&Aを紹介します。

購入価格は?

日本で一般販売されている主な3Dプリンター住宅の価格は、以下の通りです。

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商品名床面積参考価格
セレンディクス社「serendix10(スフィアモデル)」10㎡約330万円
セレンディクス社「serendix50(フジツボモデル)」50㎡約550万円

一般住宅仕様のフジツボモデルの価格は、約550万円。

新車1台分ほどの値段で購入できる価格設定になっています。

現在、ローコスト住宅として人気の「規格住宅」の平均購入価格は、1,500万~3,000万円です。

その3分の1から6分の1程度の価格で購入できるのは、購入者にとって嬉しいポイントといえるでしょう。

低価格で住宅を購入できれば、高額な長期ローンを組む必要がなくなるというメリットもあります。

耐用年数は?

3D住宅プリンターの耐用年数は、木造住宅よりも短いといわれています。

しかし、はっきりとしたことは分かっておらず、あくまでも予測値です。

木造住宅の耐用年数はは20~30年程度といわれています。

3Dプリンター住宅の耐用年数がそれより短いのは、住宅強度の問題が理由です。

鉄筋や鉄骨を内部に入れられない現状の3Dプリンター住宅は、地震などの災害による倒壊リスクが高く、耐用年数も短くなります。

今後、建築基準法を満たす3Dプリンター住宅の普及が進めば、耐用年数も延びていくと考えられています。

工期は?

規模にもよりますが、3Dプリンター住宅は、24時間~72時間程度で完成します。

主な理由は、以下の2つです。

  • 24時間稼働できる機械作業であること
  • 硬化速度が速く効率的に作業できる素材を使用していること

例えば、水回り設備を備えた鉄骨造の「フジツボスタイル」の施工時間は、44時間30分という驚異的なスピードです。

「3Dプリンター住宅」はまだまだ情報が少ないので、興味を持った方はスーモカウンターに相談してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

すみかうるの注文住宅カテゴリのコンテンツ作成を担当しています。
これまで不動産に関するWebメディアを複数運営しており、宅建士の資格も取得しました。
目まぐるしく変化する「家づくり」の情報をわかりやすくお伝えしていきます。

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