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【2025年11月最新】「東京都は買い手が活発、埼玉・千葉・神奈川はやや慎重に」金利と中古マンション市場

マンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)はホームローンドクター株式会社(東京都中央区八丁堀2-19-6)代表取締役 淡河範明(おごう のりあき)氏への聞き取り調査による住宅ローン金利の推移の予測と、マンションリサーチ株式会社保有データを用いて中古マンション市場の現況について調査しました。

グラフ1:DH住宅ローン指数の推移【出典:ホームローンドクター株式会社】
グラフ1:DH住宅ローン指数の推移
【出典:ホームローンドクター株式会社

DHローン指数:ダイヤモンド不動産研究所とホームローンドクター株式会社が共同で作成している住宅ローン金利の参考指標。主要な銀行の住宅ローン商品をもとに、変動金利・固定金利・全期間固定型などの代表的な金利水準を算出したもので、市場の金利動向を把握するための目安として用いられています。

目次

金利から見る、中古マンション市場

グラフ2:一都三県平均販売日数と平均値下げ回数【出典:福嶋総研】
グラフ2:一都三県平均販売日数と平均値下げ回数
【出典:福嶋総研】
グラフ2:東京都平均販売日数と平均値下げ回数【出典:福嶋総研】
グラフ2:東京都平均販売日数と平均値下げ回数
【出典:福嶋総研】
グラフ2:神奈川県平均販売日数と平均値下げ回数【出典:福嶋総研】
グラフ2:神奈川県平均販売日数と平均値下げ回数
【出典:福嶋総研】
グラフ2:千葉県県平均販売日数と平均値下げ回数【出典:福嶋総研】
グラフ2:千葉県平均販売日数と平均値下げ回数
【出典:福嶋総研】
グラフ2:埼玉県平均販売日数と平均値下げ回数【出典:福嶋総研】
グラフ2:埼玉県平均販売日数と平均値下げ回数
【出典:福嶋総研】

グラフ2では、東京都23区を中心とした一般向け中古マンション市場について、「販売日数」と「値下げ回数」の推移を示しています。販売日数とは、売り出してから成約するまでに要した日数のことで、一般的にこの期間が長いほど物件が売れにくい、すなわち購入需要が弱い状況を示します。

一方で、値下げ回数が少ないということは、売主が強気の価格設定を崩していないことを意味し、市場において売却姿勢が強気であることを表しています。

この2つの指標を合わせて見ることで、需要と売主側の価格姿勢の両面から中古マンション市場の実態を読み解くことができます。

首都圏における住宅ローン金利の影響

まず首都圏全体を見ると、一都三県のうち東京都の「販売日数」および「値下げ回数」はともに減少傾向にあります。販売日数が短縮しているということは、買い手が積極的に市場に参入し、物件が以前よりも早く成約していることを示します。同時に値下げ回数が減っているということは、売主側が価格を下げずとも売れる環境が続いていることを意味します。これらの動きから読み取れるのは、東京都の中古マンション市場には依然として強い需要があり、住宅ローン金利の上昇局面でありながら成約活動は活発なままであるという点です。

さらに特徴的なのは、金利上昇がむしろ購入意欲を押し上げる要因になっている可能性がある点です。多くの購入検討者は「金利がさらに上がる前に購入したい」という心理が働き、実需層の駆け込み需要が一定程度発生していると考えられます。結果として、東京都の中古マンション市場では需要が金利上昇の影響を吸収し、それどころか価格を下支えする方向に作用している状況が見て取れます。

一方で、埼玉県・千葉県・神奈川県といった周辺エリアでは様子が異なります。これらの地域では「販売日数」が緩やかに上昇しており、東京都と比較すると物件が売れるまでに時間がかかるようになってきています。一方で「値下げ回数」は大きく増えておらず、やや横ばいで推移しています。この組み合わせから読み取れるのは、需要が弱まりつつあるにもかかわらず、売主の価格姿勢は従来通りで、売却価格への期待を維持しているという状況です。

こうした背景には、周辺県での築浅マンションの成約件数が減少しているという事実があります。築浅物件は一般的に価格が高く、購入層の給与水準から見て負担が大きくなりやすいカテゴリーです。金利上昇により返済負担が増加する中で、相対的に高額な築浅マンションの購入が難しくなり、買い手がより低価格帯の物件へシフトしている可能性があります。その結果、市場全体としては売れ残りが増え、販売日数が延びる一方で、売主側が価格を下げ切れない状況が続いています。

総合的に見ると、首都圏の中でも東京都と周辺三県では、金利上昇の影響が異なる形で現れています。東京都は圧倒的な住宅需要に支えられ、金利上昇下でも市況は堅調。一方で周辺県では、金利負担増が購買力を制限しつつあり、需要の伸び悩みによる販売日数の増加が徐々に顕在化している状況です。こうした動向は今後の市場分析においても重要な指標となるでしょう。

変動金利

金利推移

グラフ3:DH住宅ローン指数の推移(変動金利)【出典:ホームローンドクター株式会社】
グラフ3:DH住宅ローン指数の推移(変動金利)
【出典:ホームローンドクター株式会社

2025年10月の変動金利は、短期金利の大きな変動はなく据え置きが中心でしたが、DH住宅ローン指数では0.865%と前月よりわずかに上昇し、前年同月からも高い水準が続いています。11月(1日時点)も多くの銀行が金利を据え置く一方、市場金利の上昇を反映して一部の銀行は金利引き上げに転じています。

変動金利全体としては緩やかな上昇トレンドが続いており、日銀の追加利上げが現実化すれば2026年に本格的な上昇局面へ移行する可能性があります。

銀行の動き

11月は多くの銀行が変動金利を据え置く中、ソニー銀行が0.897%→0.997%へ0.10%引き上げ、楽天銀行も1.002%→1.012%へ小幅上昇させるなど独自に金利を調整。大手や多くの地方銀行は様子見ですが、観測対象銀行の14行中6行は表面金利が0.7%超に達しており、上げに転じる銀行は増加すると予想されます。

攻めの姿勢を見せる銀行と慎重な銀行で二極化が進み、今後は追加利上げを見据えて引き上げ組が増えると予想されます。

経済の背景

日銀は10月会合で政策金利を0.50%で据え置きましたが、会合での意見には「利上げ時期が近い」との見方が複数示され、12月にも追加利上げがあるとの観測が強まっています。物価見通しに大きな変化はありませんが、賃金や景気が底堅いことで金利には上昇圧力がかかり続けています。

市場は「年明けの利上げ」を織り込み始めており、政策金利が0.5%超に乗れば、変動金利は徐々に上昇局面へ移行する見通しです。

10年固定金利

金利推移

グラフ4:DH住宅ローン指数の推移(変動金利)【出典:ホームローンドクター株式会社】
グラフ4:DH住宅ローン指数の推移(10年固定金利)
【出典:ホームローンドクター株式会社

10年固定金利は国債10年物の利回りに連動し、10月は国債金利が1.662%→1.67%へ小幅上昇。DH住宅ローン指数も1.812%→1.847%と前月比で上昇し、前年より大幅に高い水準です。適用金利2%未満の銀行は減少し、確実に上昇基調に入っています。

長期金利への上昇圧力は続いており、日銀の追加利上げ次第では今後さらに上がる可能性が高い状況です。

銀行の動き

13行中8行が10年固定金利を引き上げ、引き下げたのはauじぶん銀行のみです。上位行はやや低金利を維持する姿勢が見られますが、それでも2%未満の水準を維持できるのは13行中3行に縮小しました。

全期間固定を持つ銀行は10年固定を積極的に0年固定金利を販売する姿勢が弱まり、ラインナップとしての重要性がやや低下しています。また先のauじぶん銀行の低金利は目立つものの市場の話題にはなりにくい状況です。

経済の背景

日銀は利上げを見送ったものの、会合での意見は前向きで、年明けの利上げ期待は依然強いままです。景気は底堅く、物価も高止まりしているため長期金利の上昇圧力は続き、10年固定金利の上昇リスクは当面残ると考えられます。

全期間固定金利

全期間固定金利の現況

グラフ5:DH住宅ローン指数の推移(変動金利)【出典:ホームローンドクター株式会社】
グラフ5:DH住宅ローン指数の推移(全期間固定金利)
【出典:ホームローンドクター株式会社

全期間固定金利は変動金利との価格差から選択率が低い状況が続くものの、金利自体は上昇基調です。DH住宅ローン指数は2.521%→2.548%へ上昇し、1年前より大幅に高い水準。フラット35の最低金利も1.890%→1.900%と上昇し、金利の基準となっている機構債利回りも2.120%→2.150%へ上がっています。

超長期国債の動きはばらつきがありますが、住宅ローン金利は総じて上昇局面にあります。

銀行の動き

フラット35は相対的に有利な金利水準を維持し、買取型の基準金利1.89%を据え置き。民間銀行は観測対象の8社中7社が全期間固定を引き上げ、下げたのは1社のみです。金利2.5%以上が一般的で、固定金利は全体として高止まり傾向にあります。とくにフラット35は子育てプラスとの組み合わせで強力な選択肢とされ、他行の金利動向に左右されず人気を保っています。

経済の背景

国内景気は底堅く、日銀の金融政策が今後の固定金利の方向性を左右する鍵となります。賃金の上昇が明確になれば日銀が利上げに動き、長期・超長期金利に上昇圧力がかかる見込みです。

現状、固定金利全般は上昇圧力が継続しており、年明け以降の利上げタイミングが注目点となります。

金利動向のまとめ

変動金利

2025年10月は短期金利が安定し、DH住宅ローン指数は0.865%で微増銀行による金利差が拡大し、追加利上げの可能性も意識され、全体として緩やかな上昇トレンドが続いている状況です。

10年固定金利

国債10年利回りに連動し、10月はDH住宅ローン指数が1.847%に上昇。銀行の多くが金利を引き上げ、適用2%未満の銀行は減少。長期金利の上昇圧力が継続し、今後も上昇リスクが残ります。

全期間固定金利

選択率は低いものの金利は上昇傾向で、DH住宅ローン指数は2.548%に上昇。民間銀行の多くも引き上げ、フラット35は相対的に有利な水準を維持。長期・超長期金利への上昇圧力が継続しています。

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この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

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