マンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)はホームローンドクター株式会社(東京都中央区八丁堀2-19-6)代表取締役 淡河範明(おごう のりあき)氏への聞き取り調査による住宅ローン金利の推移の予測と、マンションリサーチ株式会社保有データを用いて中古マンション市場の現況について調査しました。

【出典:ホームローンドクター株式会社】
DHローン指数:ダイヤモンド不動産研究所とホームローンドクター株式会社が共同で作成している住宅ローン金利の参考指標。主要な銀行の住宅ローン商品をもとに、変動金利・固定金利・全期間固定型などの代表的な金利水準を算出したもので、市場の金利動向を把握するための目安として用いられています。
2025年12月、日銀の政策金利は0.75%まで引き上げられました。市場では、今後さらに追加利上げが行われる可能性が高いと見られています。
金利が上昇すれば、住宅ローン金利も連動して上昇します。「借入コストが増えれば、当然ながら家計負担は重くなり、住宅購入需要は抑制される」これが教科書的な理解です。その結果として「マンション価格は下落するのではないか」という見方が広がります。
では、実際の市場構造はどうなっているのでしょうか。
インフレと実質賃金の乖離が示す家計の実態
まずマクロ環境を確認します。
の推移2602.jpg)
【出典:総務省「消費者物価指数」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」を基に作成】
インフレ率(消費者物価指数の対前年比)は足元で概ね2~4%のレンジで推移しており、日本は明確なインフレ局面にあります。一方で、実質賃金は長らくマイナス圏に沈んでいます。つまり、「物価の上昇 > 賃金の上昇」という状態が続いており、家計の購買力は低下しています。
この状況下で金利が上昇すれば、「物価高」+「実質所得減」+「借入コスト増」という三重苦となり、本来であれば住宅需要は冷え込むはずです。
しかし実際のマンション市場は、単純な需要減少という形では動きませんでした。
首都圏中古マンション価格の実態

【出典:福嶋総研】
首都圏の中古マンション成約坪単価の推移を見ると、
- 東京都:明確な右肩上がり
- 神奈川県・埼玉県・千葉県:横ばい基調
という構図になっています。この違いの本質は、市場参加者の構造です。
- 東京都:投資需要+実需が混在する市場
- 神奈川・埼玉・千葉:実需中心の市場
つまり、同じ「金利上昇」という外部環境の変化でも、影響の受け方が異なるのです。
東京都:1.5億円を境に起きた構造変化
東京都の販売データを価格帯別に見ると、より明確な構造変化が確認できます。

【出典:福嶋総研】
1.5億円以上の高額帯では、2024年9月前後から
- 販売日数の増加
- 値下げ回数の増加
が同時に発生しました。これは、
- 売れるまでに時間がかかる
- 値下げしても売れにくい
という状態を示しています。
この時期は、政策金利が0.25%に引き上げられ、いわゆる「金利のある世界」が現実のものとなったタイミングです。
調達コストが明確に増大し、特にレバレッジを活用する投資層にとって環境が厳しくなりました。加えて、この価格帯は投資層、高所得実需層(いわゆるパワーカップル)が混在しているゾーンです。 投資マネーによって押し上げられていた価格水準に対し、実需層がついていけなくなり、需要が減退したと考えられます。
1.5億円未満:需要の移動
一方で、1.5億円未満のゾーンでは真逆の現象が起きています。
- 販売日数は短縮
- 値下げ回数は減少
つまり、値下げをしなくても売れる状態が続いています。これは先の1.5億円以上の高額帯から準高額帯へ需要がシフトしたことを意味します。 高所得実需層が、より価格を抑えたゾーンへ移動したことで、購入母数が増加し、流動性がむしろ高まったのです。
金利上昇は「需要減少」ではなく「価格帯の再編」を引き起こしたと言えます。
三県でも起きたグレードダウン

【出典:福嶋総研】
神奈川・埼玉・千葉でも同様の現象が確認できます。
2024年7月前後を境に、
- 2006年以降築の比較的高価格帯物件の成約比率が低下
- 築年数の古い物件の成約比率が上昇
という変化が起きました。価格水準自体は大きく崩れていません。
しかし、購入対象は「築浅・高価格」から「築古・価格抑制型」へとシフトしました。
ここでも共通しているのは、需要は消えていない。選ばれる物件が変わっただけという点です。
金利上昇が価格を下げなかった理由
以上を整理すると、金利上昇により、高額帯・投資寄り市場が減速、しかし需要は価格を下げる方向ではなく、別の価格帯へ移動という構図になります。
結果として、政策金利の上昇は、マンション価格全体の下落には直結しなかったというのが実証的な結論です。
2026年の鍵:実質賃金の転換
今後の焦点は実質賃金です。
2026年は、賃上げの継続により実質賃金がプラスに転じる可能性が高いと見られています。もし、「実質所得の改善」と「金利上昇の吸収」が同時に進めば、住宅購入余力は回復します。
その場合、金利上昇があっても、「価格下落」ではなく「選別強化」へと進む可能性の方が高いでしょう。
結論:調整は「市場全体」ではなく「価格が先行した部分」から起きる
以上の分析から見えてくるのは、金利上昇が直ちにマンション市場全体の価格下落を引き起こすわけではない、という事実です。実際に起きているのは、
- 高額帯から準高額帯への需要移動
- 築浅から築古へのグレード調整
- 投資主導ゾーンの減速
といった価格帯・商品特性ごとの再編です。
つまり、需要は消滅していません。可処分所得と金利環境に適合するゾーンへ移動しているだけです。
その中で、今後最も注意すべきなのは、「価格だけが先行したエリアから調整が始まる」という構造です。
具体的には、
- 実需の裏付けを超えて投資資金が流入したエリア
- 所得水準の上昇を上回るスピードで価格が高騰したゾーン
- 「築浅×高面積帯」など価格プレミアムが過度に乗った物件群
こうした「価格主導型」の市場から、流動性の鈍化や価格調整が顕在化する可能性が高いと考えられます。
変動金利について
金利推移
2602.png)
【出典:ホームローンドクター株式会社】
2026年1月の変動金利は、全体としてはほぼ横ばいでした。DH住宅ローン指数は0.908%と、前月の0.902%からわずかに上昇し、前年同月の0.611%と比較すると明確な上昇水準にあります。
月次では小動きに見えますが、年単位で見ると金利は緩やかな上昇トレンドに入っているといえます。2月も個別の銀行ごとに上げ下げはあったものの、全体としては横ばいで、静かな推移となりました。
銀行の動き
今月は金利を引き上げた銀行が観測対象13行中1行、引き下げた銀行が1行と拮抗しました。先月金利を引き上げたSBI新生銀行はキャンペーンを再開し、小幅ながら引き下げに転じました。一方、楽天銀行は着実に金利を引き上げています。
今後の焦点は、政策金利上昇をどの程度転嫁するかにあり、三菱UFJ銀行など大手行が0.25%の政策金利上昇分をそのまま反映させるかが注目されます。
政治経済の背景
2025年12月に日本銀行が利上げを実施し、1月は据え置きとなりましたが、追加利上げへの意欲は維持されています。
好調な国内経済や賃金動向、円安の進行状況次第では、早期の追加利上げの可能性もあります。
変動金利は政策金利や短期プライムレートに直接連動するため、今後も上昇圧力が続くと考えられます。
10年固定金利
金利推移
2602.png)
【出典:ホームローンドクター株式会社】
2026年1月の10年固定金利は明確な上昇となりました。DH住宅ローン指数は2.254%と前月の2.086%から上昇し、前年同月の1.443%と比べても大幅な上昇です。日本国債10年物利回りも2.066%から2.247%へと上昇しており、長期金利の上昇ペースは加速している印象です。
金利は明確に上昇局面に入っています。
銀行の動き
10年国債の上昇を受け、観測対象13行すべてが金利を引き上げました。多くの銀行が2%を超え、5社は3%台に到達しています。
10年固定を積極的に積み上げようとする姿勢は弱まり、特に全期間固定を扱う銀行では10年固定金利を戦略的に引き上げる動きが見られます。その中でもauじぶん銀行は比較的低水準を維持していますが、上昇トレンド自体は否定できません。
政治経済の背景
10年固定金利は主に日本国債10年物に連動します。日銀のイールド・カーブ・コントロール終了により市場金利がより直接的に反映される環境となりました。
さらに、財政拡張政策や国債増発への懸念から長期金利には上昇圧力がかかっています。政策金利の最終到達点が2%台後半との見方もあり、長期ゾーンの金利は今後も上昇基調が続く可能性があります。
全期間固定金利
金利推移
2602.png)
【出典:ホームローンドクター株式会社】
2026年1月の全期間固定金利も上昇しました。DH住宅ローン指数は3.063%と前月の2.868%から上昇し、前年同月の2.171%と比較しても大きく上昇しています。全期間固定は3か月連続で全金融機関が引き上げる状況となっており、金利上昇の勢いが最も強く表れている分野です。
銀行の動き
今月はフラット35を含め、全金融機関が金利を引き上げました。住宅金融支援機構が提供するフラット35も2.08%から2.26%へと上昇しています。多くの銀行で3%を超え、一部では4%に到達しました。
変動金利との割高感から利用者は依然として少数派ですが、超長期金利上昇の影響を最も受けやすいのがこの商品です。
政治経済の背景
全期間固定金利は10年国債だけでなく、超長期国債の利回りも反映されます。超長期ゾーンの金利上昇が続いており、国債増発懸念も相まって上昇圧力が強い状況です。ただし、すでに水準はかなり高く、上昇余地は徐々に限定的になる可能性があります。
今後は一段高を試す展開が想定されるものの、どこかで上昇ペースが鈍化する局面も視野に入ります。
金利動向のまとめ
変動金利
2026年1月の変動金利はほぼ横ばいながら、前年同月比では明確に上昇しています。政策金利引き上げを受け、緩やかな上昇トレンドが継続中です。
2025年12月に日本銀行が利上げを実施し、今後も追加利上げ観測があるため、短期プライムレート連動の変動金利には引き続き上昇圧力がかかる局面といえます。
10年固定金利
10年固定金利は国債利回りの上昇を受けて明確に上昇しています。10年国債利回りの上昇スピードが速まり、各行が一斉に金利を引き上げ、多くが2%超、3%台も増加しました。
長期金利が市場環境をより反映するようになり、固定金利は上昇局面のただ中にあります。今後も財政拡張や利上げ観測がおもしとなりやすい状況です。
全期間固定金利
全期間固定金利も3か月連続で上昇し、指数は3%台に到達しました。超長期国債利回りの上昇を背景に、フラット35を含む全金融機関が金利を引き上げています。
変動金利との金利差は拡大していますが、長期ゾーンの上昇圧力が強く、固定型は最も市場金利の影響を受けやすい局面です。今後は高水準での推移が見込まれます。
メディアの皆様へ
本記事の転載・引用は出典明記(必須:メディア名・対象記事URL)の上、ご利用をお願いいたします。
記事の執筆依頼、その他お問い合わせはこちらまで→media@mansionresearch.co.jp


