【2026年版】税制改正大綱とは?発表スケジュールと注目の改正ポイント総まとめ
「不動産」と「税制」は切っても切り離せない関係にあります。不動産の取得や所有、売買には税金が課されることに加え、不動産は高額な資産であることから、流通量や価格、性能などは日本経済や国民生活に大きく影響します。
健全な市場の形成を後押しするには税制が不可欠であり、税制改正の動向を知ることで売買時期の検討や物件選びに役立ちます。
そこでこの記事では、税制改正の概要やスケジュールに加え、不動産関連を中心に2026年度税制改正のポイントについて解説します。
税制改正大綱とは?

税制改正は、国や地方の財政状況や社会的な課題、要望などに鑑みて、毎年税制の一部を改正することを指します。
税制改正大綱とは、翌年の税制改正の骨組みをまとめた文書です。
政府による税制の基本方針
税制とは、国や自治体の税金の仕組み、制度を指します。医療や福祉などの社会保障、水道や道路などのインフラ、教育、安全保障などは税金で賄われています。
不動産の売買や所有、相続、贈与に際しても、不動産取得税や登録免許税、所得税、固定資産税などさまざまな税金が課されます。場合によっては税制優遇なども受けられることから、不動産を所有している人、あるいは不動産の売買を検討している人にとっても税制は決して無縁ではありません。とくに不動産に関連する税制は税制改正で大きく変わることも多いため、例年、消費者や業界から注目されています。
税制改正大綱は年末に与党がとりまとめる政策文書
税制改正のスケジュールは後述で詳しく解説しますが、税制改正の内容は一朝一夕に決まるものではありません。
税制改正大綱は、政府税制調査会が中長期的視点から税制の在り方を検討しながら、与党税制調査会が各省庁や業界団体などから要望を募り、審議したうえで閣議に提出されます。取りまとめおよび発表は、前年の年末です。
翌年の税制改正法案のベースとなる
政府は閣議決定された税制改正大綱をもとに税制改正法案をつくり、翌1月の通常国会に提出します。国税の法制案は財務省が、地方税は総務省が作成します。国会では、改正法案が提出された議院での審議を経て、本会議に付されます。両院で可決されると改正法案は成立し、原則4月以降に順次施行という流れになります。
2026年度税制改正大綱の発表スケジュール
税制改正は例年、以下のようなスケジュールで進みます。2026年度税制改正も概ねこの流れで進んでいくものと考えられます。
- 有識者会議とりまとめ(6月頃)
- 政府税制調査会が税制の在り方を検討・税制改正要望を収集(8月末頃まで)
- 与党税制調査会で各省庁などの要望を検討(夏から秋頃)
- 2026年度税制改正大綱発表(12月中旬から末)
- 改正法案の閣議決定・通常国会へ提出(1月末から2月初旬)
- 衆議院本会議で可決(2月末から3月初旬)
- 参議院本会議で可決(3月末)
- 改正法の施行(4月1日〜)
税制改正の概要が報じられるのは、秋から年末にかけてです。例年、12月15日前後に税制改正大綱が発表されます。
2026年度 税制改正の注目ポイント
2026年度税制改正における不動産・マンションに関連する注目ポイントは、次の4つです。
1.住宅ローン控除の延長

国土交通省は、2025年末に適用期限を迎える住宅ローン減税の延長を要望しています。とくに昨今は住宅価格が著しく高騰しており、金利も上昇局面にあることから、住宅ローン減税の延長とその内容は、不動産流通に大きな影響を与えるものと考えられます。
2024年度税制改正では、子育て世帯・若者夫婦世帯の優遇が始まり、2025年度税制改正でもそれが延長しました。2026年度は、延長の可否に加え、控除率や借入限度額、省エネ性能による差分などが注目されます。
2.固定資産税減額措置の延長
現在、新築住宅は戸建てが3年間、新築マンションが5年間、固定資産税額2分の1に軽減する措置が取られています。認定長期優良住宅の場合はさらに軽減期間が長く、戸建てが5年、マンションが7年です。
適用期限は2026年3月末までで、同措置についても国土交通省が延長の要望を出しています。
3.既存住宅のリフォームに係る特例措置の延長
【所得税】
対象工事 | 対象工事限度額 | 最大控除額 |
---|---|---|
耐震 | 250万円 | 25万円 |
バリアフリー | 200万円 | 20万円 |
省エネ | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) |
三世代同居 | 250万円 | 25万円 |
長期優良住宅化|耐震+省エネ+耐久性 | 500万円(600万円) | 50万円(60万円) |
長期優良住宅化|耐震or省エネ+耐久性 | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) |
子育て | 250万円 | 25万円 |
※カッコ内の金額は、太陽光発電設備を設置する場合
【固定資産税】
対象工事 | 税額 |
---|---|
耐震 | 1/2 |
バリアフリー | 2/3 |
省エネ | 2/3 |
長期優良住宅化 | 1/3 |
近年、既存住宅流通比率が高まっており、ストック数も充足していることから、既存住宅の流通および性能向上は重要な課題となっています。現在、上記のように既存住宅のリフォームに対する減税制度がありますが、この制度も適用期限が2025年末までであることから、国土交通省は延長を要望しています。
4.老朽化マンションの再生円滑化のための特例措置の拡充
既存住宅の性能向上に加え、安全性の向上も住宅政策における重点的な課題のひとつです。近年はマンションの老朽化が進んでおり、2023年時点で137万戸だった築40年以上のマンションは、10年後に274万戸に、20年後には464万戸に増加すると推計されています。
現在、老朽化マンションの再生を後押しするため、再生事業や売却事業などに対して所得税や登録免許税、不動産取得税の控除や免税措置が受けられますが、国土交通省はこれらの特例の適用期限の延長および対象の拡大を要望しています。

2026年度税制改正 不動産関連以外の注目ポイント
税制改正要望を出しているのは国土交通省だけではありません。ここでは各省庁の要望の中で注目される改正案を紹介します。
「資産運用立国」の推進
近年は、NISAやiDeCoなど、国民の資産形成・資産運用を後押しする制度が多数見られますが、金融庁はさらに「資産運用立国」への動きを推進するため、2026年度税制改正においてNISAの対象商品の拡充や対象年齢の見直しなどを要望しています。
また、急速に投資家が増えている暗号資産について、法整備に加え分離課税の導入を含めた課税の見直しを要望しています。
「大胆な投資促進税制」の創設
経済産業省は、企業の現預金が過去最高水準に上昇したことなどに鑑みて、国内投資および賃上げを進めるべく、日本企業の「稼ぐ力」を向上させるための大胆な設備投資を促進する税制の創設を要望しています。
2025年度の民間企業設備投資額は111.1兆円(見通し)ですが、これを2027年度までに115兆円に、2040年度には200兆円に押し上げたい考えです。設備投資とは、たとえばバイオ製薬への事業転換のための投資、ファクトリーオートメーションの導入、仕分け・ピッキングの自動化などが想定されます。

まとめ
不動産流通が日本経済や国民の生活に与える影響は大きく、近年はインフレや円安などの影響で市場も大きく動いていることから、2026年税制改正でも不動産・マンションの所有や売買に関連する改正が少なからず見られるものと予想されます。住宅政策における近年の重点課題は、住宅価格が高騰する中でも流通を促進すること、そして既存住宅の性能や安全性の向上です。2025年末や年度末に期限を迎える減税制度や控除制度も少なくありませんが、その多くは延長となることが予想され、場合によっては住宅の性能向上や既存住宅の流通に関する優遇が拡大される可能性もあります。