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国土交通省が公表した2022年の基準地価によれば、全国の平均値は前年都比較して0.3%上昇。3年ぶりのプラスとなりました。
用途別にみると、住宅地の全国平均は前年と比較して0.1%上昇しています。住宅地の地価が上昇したのは、実に1991年以来31年ぶりのことです。
2022年の基準地価は、全国平均、住宅地、商業地ともに上昇しました。全国平均と商業地は3年ぶり、住宅地は31年ぶりの上昇です。
住宅地の変動率を細かくみてみると、東京圏・大阪圏・名古屋圏の三代都市圏はすべて上昇。地方圏は下落しているものの、札幌市・仙台市・広島市・福岡市の地方四市は大きく上昇しています。
「地価」とは、地価公示法に基づき国土交通省が毎年1回公示される標準地の価格です。地価は、次の2つに大別されます。
両者に大きな違いはありませんが、公示地価は都市計画区域内を主な対象地としている一方、基準地価は都市計画区域外も対象です。今回、公示されたのは「基準地価」。全国約2万地点が基準地となっており、公示地価と相互に補完的な役割を担い、土地の取引価格や評価額の指標となります。
2022年住宅地の基準地価変動率の上位を占めているのは、すべて北海道です。
TOP10にランクインしている北広島市や江別市、恵庭市は、札幌市近郊のエリア。全ての基準値が、前年比上昇率20%を超えています。
再開発などにより札幌の地価が上がったこととともに、北海道日本ハムファイターズの新本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」が北広島市に完成したことなどを受け、地価が上がったものと考えられます。
東京圏の2022年基準地価最高価格は、平米単価504万円の港区赤坂。最大変動率は、前年比+10.8%のつくばみらい市陽光台となりました。つくばみらい市の上昇率が大きかった要因は、秋葉原駅まで約40分と都内へ好アクセスのつくばエクスプレス「みらい平」駅周辺の需要が高まったことによるものと考えられます。総体的に、つくばエクスプレス沿線の上昇率は高い傾向にあります。
一方、大阪圏の基準地価最高価格は、平米単価66.5万円の京都市上京区。最大変動率は、前年比+8.2%の大阪府松原市天美東です。名古屋圏は、最高価格および最大変動率ともに、平米単価140万円、前年比+16.7%の名古屋市中区錦となりました。
一方、住宅地の下落率が大きいエリアは、福島県郡山市、長野市豊野町、北海道久遠郡せたな町など上記の通り。ワースト10エリアは全て、前年比下落率が7%を超えています。
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2022年、31年ぶりに基準地価が上昇した理由として、次の3つのことが考えられます。
住宅ローン金利の水準は、不動産の購買意欲に直結します。米国をはじめ多くの国が利上げに踏み切るなか、日本はいまだ粘り強く金融緩和政策を続けており、住宅ローン金利は史上最低ともいえる水準を維持しています。
現在は地価だけでなく、マンションを筆頭に不動産価格が高騰しています。その大きな要因となっているのが、金融緩和政策です。
コロナ禍で不動産価格は一時的に微減しましたが、追加の金融緩和ならびに莫大な助成金・支援金などが市場に投下されたことにより、不動産価格の上昇基調は変わらないどころかますます加速しています。
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コロナ禍になって3年目。依然として感染状況は一進一退の様相を見せていますが、緊急事態宣言やまんえん防止等重点措置は、2022年3月から発令されていません。
行動制限がなくなったことにより徐々に日常を取り戻しつつあり、経済活動が再開していることも地価高騰に寄与しているものと考えられます。
コロナによって、多くの方の暮らし方・働き方が変わりました。それに伴い、住む場所や家の広さ、物件種別などを見直す世帯も多く、これもまた住宅需要向上の一因になったものと考えられます。
不動産価格や地価は、短期的には維持、あるいは局所的に高騰する可能性がありますが、長期的には二極化がますます進行し、大幅に下落するエリアが出てくるおそれもあります。
上記図解のうち、青や水色で示されたエリアは地価が下落しました。2022年に上昇した黄色やオレンジのエリアは、首都圏や北海道、宮城、大阪、愛知、福岡など限定的であることがわかります。
上昇 | 34.9% |
横ばい | 17.0% |
下落 | 48.1% |
上記表のように、基準地価が上昇したエリアの数を下落したエリアの数が上回っています。
今回、大都市圏や地方都市、その周辺エリアで基準地価の上昇がみられましたが、それ以外の大部分のエリアは横ばいや下落。住宅地の平均値は上昇したものの、国内の格差は非常に大きいのです。人口が減り始めている日本において、この二極化は今後ますます進むものと考えられます。
東京外国為替市場で10月20日、円相場が1ドル=150円まで値下がりました。ここまでの水準は、実に32年ぶりのことです。円安が進行することで、労働力が流出したり輸入品が高騰したりすることが懸念されます。
一方、ドル圏の人からすれば、日本の不動産の魅力は大幅に高まっています。一部のエリアでは、外国人投資家による“爆買い”がみられているとの報道もあるほどです。
不動産価格は、需要と供給のバランスによって決まるもの。国内外の需要が高い不動産は、今後、価格が高騰する可能性があります。
しかし、円安による不動産価格の高騰がみられる可能性があるのは、一部のエリア・物件種別でしょう。外国人は自己居住用として物件を取得するわけではないため、爆買いの矛先はまず収益が出せる物件に限定されます。さらに、その中でも投資家は今後の価値下落が少ないエリアを見極めて物件を選ぶため、エリアも三大都市圏や地方都市などに限られると推測されます。
住宅ローン金利は、いまだ低水準を維持しています。しかし、固定金利には上昇基調がみられます。
固定金利が上昇している要因は、長期金利(10年国債利回り)が上昇していることにあります。日本の長期金利は、金融大国アメリカの金利の影響を受けるもの。アメリカは深刻なインフレを抑制するため、金融を引き締め、金利が大幅に上がっています。
一方、変動金利は日本の金融政策の影響を受けるため、金融緩和政策が続く今、上昇基調はみられていません。しかし、円安は過去に例をみないほど進行しており、2022年9月の物価上昇率は3%を超えていることから、日本もいつ金融引き締めに舵を切ってもおかしくない状況です。
住宅ローン金利が本格的に上昇に転じたとき、不動産需要は減退し、価格も下落するおそれがあります。
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2022年の基準地価は、商業地、住宅地ともに上昇しています。住宅地の上昇にいたっては、バブル期以来31年ぶりのこと。その要因として考えられるのは、依然として続く低金利やコロナによる影響です。
しかし、住宅ローンの固定金利はすでに上昇基調がみられ、変動金利についても日本が金融引き締めに舵を切れば上昇が避けられないでしょう。価格が上がるエリア・下がるエリアの二局化は今後さらに進むものとみられ、金利が上がれば不動産市場全体が停滞するおそれもあります。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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