近年、大阪市の中古マンション価格は大きく上がっています。
全国的に中古マンションは値上がりしていますが、その中でも「東京23区に次ぐ上昇エリア」と言われているのが大阪市です。
大阪は、人口規模も経済の大きさも東京ほどではありません。それでもここまで価格が伸びているのはなぜなのか。
この記事では、調査データをもとに大阪市の中古マンション市場の特徴を、東京23区や首都圏近郊エリアとの比較を交えながらわかりやすく整理していきます。
大阪市の中古マンション価格の上昇傾向|東京23区並みに上がる理由

【出典:福嶋総研】
大阪市の中古マンション価格はもともと緩やかに上がっていましたが、2020年中盤ごろから上昇のスピードが一気に加速しました。この動きを全国で見ると同じレベルで上がっているのは東京23区くらいで、大阪市はかなり「特別なエリア」と言えます。
背景には、以下のような要因が重なっています。
- インフレや建築費の高騰
- 都心部への居住ニーズの再燃
- 梅田・なんばなどで進む再開発
- 新築価格が高くなりすぎたことによる「中古の相対的な割安感」
つまり、それだけ大阪市に投資マネーや需要が集中しているとも言えます。
大阪市の中古マンションが選ばれる理由(実需×投資の二重需要)
大阪市の価格がここまで上がっている大きな理由は、「生活の利便性を求める実需」と「値上がりや利回りを狙う投資マネー」が、同じ方向に働いていることです。
東京23区と比べると、大阪市の価格はまだ低く、投資家からは「割安」に見えやすい水準です。
一方で、梅田・なんば・天王寺といったターミナルを中心に、商業施設・オフィス・観光需要が集まり、全国的にも魅力の高い都心として機能しています。
その結果、
- 仕事と暮らしのバランスを重視する「住みたい人」
- 将来の値上がりや賃貸需要を見込む「投資したい人」
の両方から選ばれやすく、価格を押し上げる力が強くなっているのです。
大阪市で中古マンション需要が高まる3つの背景(都心回帰・再開発・新築高騰)
都心回帰の再加速
コロナ禍の初期には「郊外や地方へ」という動きも話題になりましたが、その後は通勤・買い物・医療・教育などの利便性を求めて、再び都心に戻る人が増えました。
梅田・なんば・天王寺などは、もともと人気のエリアでしたが、「仕事と生活をコンパクトにまとめたい」というニーズの高まりで、いっそう注目度が上がっています。
再開発が街の魅力と価格を押し上げる
大阪は、梅田エリアの大型再開発や「うめきた2期」、なんば周辺のリノベーションなど、都市の価値を高めるプロジェクトが途切れずに続いています。
新しい商業施設やオフィス、公共空間の整備によって、「この街で暮らしたい」「将来も価値が続きそう」と感じる人が増え、それが購入意欲と価格上昇につながっています。
新築価格の高騰と「中古へのシフト」
インフレや資材価格・人件費の上昇により、新築マンションの価格は大きく上がりました。
その結果、「同じエリア・同じ広さなら、新築より中古のほうが安い」と感じるケースが増え、「新築は厳しいから築浅中古でもいい」という選択が広がっています。
この流れを「価格代替効果」と呼び、新築から中古へ需要が移ることで、中古の相場自体も押し上げられているのが現状です。
築浅中古マンションが高い理由|希少性と人気の高まり

【出典:福嶋総研】
2006年以降築のマンション価格が特に上昇している理由
築年数ごとの価格を見ると、大阪市では2006年以降に建てられた築浅マンションの上昇がとくに目立ちます。
最新の耐震基準への対応や、オートロック・宅配ボックスなど設備の充実、外観や共用部のデザイン性など、「今の暮らし方に合う物件」が多い築年帯だからです。
新築の供給が減っているなかで、「新築に近い築浅中古」はますます貴重になり、価格にプレミアムがつきやすい状態になっています。
築古マンションも値上がりするエリアとは?
一方で、2005年以前の築古物件も、大阪市全体の需要の高まりを受けて、緩やかに値上がりしています。
同じエリアの中で築浅が高すぎる場合、「築年数は古いけれど、駅が近いし生活が便利だから納得できる」と判断して購入する人も少なくありません。
ただし築年数が進んだ物件では、将来の大規模修繕や建て替えなどの課題も出てきます。
価格だけでなく、「長く安心して住めるか」という視点もあわせて確認しておくことが大切です。
成約件数の内訳から見える「大阪の異質さ」

【出典:福嶋総研】
築年帯ごとの成約件数の割合を見ると、大阪市の特徴がよりはっきりします。
- 2006年以降築の成約割合は年々増加
- 2005年以前築の成約割合は減少
上記のような構図が続いており、「高くなりやすい築浅のほうがより多く選ばれている」のがポイントです。
一般的には価格が上がりすぎると、予算の関係から築古にシフトする動きが出やすくなります。
ところが大阪市では、高価格帯の築浅が積極的に選ばれ続けており「給与所得だけでは説明しづらい」面が見えてきます。
この点は、後述する短期転売や投資ニーズの増加ともつながっており「実需だけではないお金の動き」が市場を押し上げている可能性を示しています。
大阪市と首都圏3県の中古マンション市場の違い

【出典:福嶋総研】
大阪市の構造をより理解するには、首都圏近郊3県(埼玉・千葉・神奈川)との比較が参考になります。
これらのエリアでは、
- 2006年以降築の成約件数が減少
- 2005年以前築の成約割合が増加
という、大阪市とは真逆の傾向が続いています。
築浅の価格が上がりすぎた結果「今の収入では築浅は厳しいので、築古で価格を抑える」という、現実的な選択にシフトしているのです。
それに対して大阪市では「高くても築浅を選ぶ」動きが続いています。大阪市が全国的なトレンドとは違う、かなり特異な市場になっていることがわかります。
新築マンションの短期転売が示す“投機化”の兆し

【出典:福嶋総研】
投資目的の購入が増えているサインとは?
新築マンションを購入して1年以内に売却する「短期転売率」に注目すると、市場の温度感がさらに見えてきます。
東京23区と大阪市では、この短期転売率が2024年〜2025年にかけて急増しており、
- 東京23区:20%超
- 大阪市:14%近く
という高い水準に達しています。
短期間で売買を繰り返すということは、「住むための購入」ではなく、「値上がり益を狙った購入」が増えているサインです。
物件が「住まい」より「商品」として扱われる比重が高まると、価格も短期間で上下しやすくなります。
大阪市は、東京より価格水準が低く、利回りが出やすいことから「割安でチャレンジしやすい市場」と見られ、国内外の投資家が入りやすい環境にあります。
その結果として、新築の短期転売が増え、中古市場の価格にも影響が及んでいると考えられます。
投資主導の市場が抱えるリスク
ここまでのポイントを整理すると、大阪市の中古マンション市場は以下のような特徴を持つ「投資・投機の存在感が大きい市場」に変わりつつあります。
- 東京23区に次ぐ強い価格上昇
- 築浅物件への偏った需要
- 成約件数でも築浅が主役
- 短期転売率の上昇
- 東京との価格差を背景にした投資マネーの流入
成長マーケットであることは間違いありませんが、投資マネーは金利・景気・政策など外部環境の変化にとても敏感です。
いったん資金が引き始めると、価格の振れ幅も大きくなりやすく、「今は強いけれど、ずっとこのペースで上がるとは限らない」という前提で見る必要があります。
これから大阪市で中古マンションを検討する人へ
最後に、大阪市で中古マンションの購入や投資を考えるときに意識したいポイントをまとめます。
- 「高いか安いか」だけでなく、「なぜその価格なのか」を考える
- その物件が、実需(自分たちが住む需要)に支えられているのか、投資マネーの影響が強いのかを意識する
- 再開発や人気エリアの「期待」だけでなく、将来の価格変動リスクもあわせて見る
- 築年数だけで判断せず、立地・管理状況・修繕計画なども総合的に確認する
大阪市は、魅力も大きい反面「全国平均とは違う動きをしている市場」です。
その特徴を知ったうえで、自分の予算・ライフプラン・リスク許容度に合った選択をしていくことが大切になってきます。

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