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近年、日本全国で多発している自然災害。2021年はとくに、7月の熱海の伊豆山土砂災害や8月に日本全域を襲った豪雨など、各地に大きな被害をもたらしています。
すみかうる編集部は、さくら事務所主催の「自然災害リスクの傾向と対策」セミナーを取材。さくら事務所会長の長嶋修さん・だいち災害リスク研究所所長の横山芳春さん・さくら事務所ホームインスペクターの田村啓さんが考えるこれからの不動産の災害リスクについてレポートします。
2019年の台風15号、19号。そして2021年の熱海の土砂災害や8月の全国的な豪雨……感覚的にも「豪雨やそれに伴う被害が増えた」と感じている方は少なくないのではないでしょうか。
災害リスクは、今後、不動産の資産価値にも影響を与えるようになっていく可能性も否めません。
(出典:気象庁)
上記のグラフは、各年の降雨量と1991年~2020年の平均値を比較したときの推移を表しています。ここ20年は、ほとんどの年が大幅にプラス。降雨量が世界的に増えていることがわかります。
集中豪雨などで洪水による被害のリスクが高まっていることを受け、火災保険の水災補償で地域別の料率が設定される見通しとなった。早ければ2023年度にも危険度に応じて地域ごとに差をつける。
(2021/6/8日経新聞)
日本では今後、火災保険の水災補償の料率が、災害リスクによって変わる見通しです。
損保は今、大赤字ですから、災害リスクによる料率の差は大きくなっていくかもしれません。
人口減少および高齢化が進む日本では、財政面・経済面で持続可能な都市経営を可能とすることが大きな課題となっています。
医療・福祉・商業・住居がまとまって立地する「コンパクトシティ」化に取り組むため、2020年に都市計画特別措置法が改正されました。
(出典:国土交通省)
街をコンパクト化していくとすれば、当然ながら災害リスクが高いエリアは除いていきますよね。さらに、不動産の資産価値にも災害リスクが影響するようになっていくでしょう。
現在、不動産担保価値に災害リスクは影響していません。しかし、たとえば今後「災害区域に指定されているエリアは担保評価が7割になりますよ」など、災害リスクの度合いによって担保評価が変わるようになることも十分、考えられます。
お住まいになるエリアが安全であるかどうかも重要なことですが、資産価値の観点からしても、不動産の災害リスクを知る重要性は増してきているといえます。
多発する水害やそれに伴う土砂災害。近年の傾向として「同時多発的」かつ「広域」という特徴があります。
2021年5月には、災害対策基本法改正により「避難勧告」を廃止し「避難指示」に一本化するなど対策が講じられています。
2021年7月に土石流が起きた、熱海の伊豆山。関東圏にお住まいの方々にとっては身近な観光地ということで、驚きも大きかったのではないでしょうか。
しかし、今回の災害は「起こるはずもないことが起きた」というわけではないようです。
伊豆山付近は、土石流が繰り返すことでできた土地です。ハザードマップでは土砂災害特別区域に指定されているエリアであり、まったくノーマークというわけではなかったのです。
2018年7月の豪雨では、約760箇所で土石流が発生しました。土砂災害発生件数の報告は、1道2府28件で2,512件にものぼります。
(出典:国土交通省)
人的被害も多く、西日本に甚大な被害をもたらしました。
近年、水害・土砂災害は増加傾向にありますが、「崖は崩れ、水は低きに集まり、川は溢れる」という自然の原理原則に基づいて災害は起きています。
近年においても、水害・土砂災害が「起きて不思議だ」という場所で自然災害は起きていません。
なぜ自然災害が起こるのかといえば、人が自然災害となる「自然現象」の発生する場所に住む・利用するからです。
立地によって、災害リスクは大きく異なります。自然現象を「被災」しないようにするためには、その土地の災害リスクを知ることが重要です。
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自然災害というと「土地・戸建ての問題」と考えている方も少なくないのではないでしょうか?
しかし、マンションも決して例外ではありません。
(出典:国土交通省)
豪雨が起きた場合、マンションは1階の住居のみならずエレベーターや給水ポンプの停止、機械式駐車場や地下などへの浸水が起こる可能性があります。
マンションはたしかに命に係わるリスクは戸建てより低いといえますが、生活を続けるうえで大きな影響を被る可能性があります。
マンションによっては「水防ライン」といって、物理的に水の侵入を遮断できるような止水板を設置している物件も。既定の降水量を超えたら誰が止水板を上げるのかなど、災害時のマニュアルを策定している場合もあります。
基本的には「ハザードマップ」を見ることで災害リスクを知ることができます。
「ハザードマップ」とは、一般的に「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」とされています。防災マップ、被害予測図、被害想定図、アボイド(回避)マップ、リスクマップなどと呼ばれているものもあります。ハザードマップを作成するためには、その地域の土地の成り立ちや災害の素因となる地形・地盤の特徴、過去の災害履歴、避難場所・避難経路などの防災地理情報が必要となります。
ハザードマップは、国土交通省のホームページから確認することができます。
すべてのエリアで、すべての災害のハザードマップが整備されているわけではありません。
中には、ハザードマップが無かったとしても災害リスクが高いエリアも。またエリアのみならず「建物」にも災害リスクが潜んでいる可能性があります。
さくら事務所およびだいち災害リスク研究所では、独自に「災害リスクカルテ」という災害リスクを可視化できる資料を1軒当たり9,800円で作成するサービスを提供しています。
上記は、2021年7月に土砂災害が起きた熱海市伊豆山付近の災害リスクカルテ。ハザードマップがある「土砂災害」については「高」になっていますが、ハザードマップが整備されていない「水害」「地震時の揺れやすさ」のリスクも「中」となっていることがわかります。
災害リスクカルテを提供してきた中で、なんらかの災害リスクが中程度以上だったマンションは86%。やはり、自然災害リスクはマンションも例外とはならないのです。
水害・土砂災害リスクは、近年、格段に高まっています。
近い将来には、災害リスクによって火災保険料が変わる見込みであり、不動産の資産価値にも今後、影響するようになっていく可能性は高いといえます。
マンションも決して例外ではありません。今、マンションを所有している方も、マンションの購入を検討されている方も、災害リスクについてはぜひ考えを及ばせてみてください。
マンションの今の価値を知りたい方は、どうぞマンションナビをご活用ください。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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