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東京の中古マンションが“二極化”へ。選ばれる物件・選ばれにくい物件の違いは?

東京の中古マンションは「高すぎて買えない」という声が増える一方で、実はすべての物件が同じように値上がりしているわけではありません。
2024年以降、都心の中古マンション市場では “選ばれる物件”と“選ばれにくい物件”がはっきり分かれる二極化が進んでいます。

その背景には、新築価格の急上昇、金利の変化、建築費の高騰など複数の要因が重なっています。

この記事では、これからマンション売買を検討する方に向けて、いま市場で実際に起きている変化をデータをもとに解説します。

目次

1億〜2億円のマンションはなぜ売れ続けるのか

グラフ1:東京都及び都心3区:1億円以上2億円未満の中古マンションの成約件数
(出典:福嶋総研)

安定しているのが 1億〜2億円の価格帯の中古マンション です。

かつては「特別な高級物件」という印象の価格帯でしたが、現在の東京では意外にも東京の中上位層にとっての「現実的な購入ゾーン」へ変化しています。

■理由①:新築が高騰しすぎて、中古が“適正価格”になった

新築マンション価格はここ数年で大きく上がり、
都心では、新築で1億〜2億円の価格帯に収まる物件が少なくなっています。

その結果、「新築は手が届かない。でも築浅の中古なら1〜2億円で現実的に買える」という層が増え、 購入者が中古市場に流れてきています。

■理由②:購入しているのは金利に強い実需層

この価格帯を買っているのは、

  • 年収1,500万円前後以上の共働き世帯
  • 専門職層
  • 自己資金比率が高い層

といった、金利上昇の影響を受けにくい実需層が中心です。そのため購入意欲が落ちにくく、成約件数は安定して推移しています。

■理由③:都心だけでなく“周辺区の選択肢”が増えた

千代田区・中央区・港区のいわゆる“都心3区”ではやや成約が落ち着きましたが、その代わりに下記のような周辺区に質のよい1〜2億円台中古マンションが増え、人気が広がっています。

  • 目黒区
  • 文京区
  • 渋谷区
  • 品川区

なぜ「2億〜5億円帯」だけ売れ行きが落ちるのか?

グラフ2:東京都及び都心3区:2億円以上5億円未満の中古マンションの成約件数
(出典:福嶋総研)

もっとも大きな変化が出ているのが 2億〜5億円の価格帯 です。

2023年頃までは都心部の主要な取引ゾーンであり、富裕層、企業経営者層、外資系エグゼクティブ層などによって支えられていました。

しかし、2025年春以降、このゾーンでは明確な停滞(取引の鈍化)が見られます。

グラフ3:都心3区:2億円以上5億円未満の中古マンションの成約件数
(出典:福嶋総研)

■理由:価格と内容のバランスが悪くなった

近年、都心3区では地価や建築費の高騰を背景に、「内容に対して価格だけが高くなった物件」が増えました。
例えば、本来1.5億円クラスであるはずの物件が、相場上昇によって2億円以上で売り出されるといったケースが多発しています。

買い手からすると、

  • この価格ならもっと良い新築を買いたい
  • 港区でなく渋谷・目黒・世田谷を検討する
  • 海外に投資する

といった理由で、購入を避ける動きが強まっています。

5億円以上のマンションはむしろ好調

グラフ4:東京都及び都心3区:5億円以上の中古マンションの成約件数
(出典:福嶋総研)

意外に感じるかもしれませんが、実は同じ高価格帯でも5億円以上の超高額帯はむしろ強い需要があります。
「超富裕層市場」と呼べる領域であり、成約件数の多くが都心3区に集中しています。

港区の南青山・元麻布・白金台、千代田区の番町エリア、中央区の晴海・月島のタワーマンションなどでは、5億円を超える高額マンションの動きが引き続き目立っています。

この価格帯を買う人たちは、「住むため」だけでなく、資産を守ったり分散したりする目的で購入することが多いのが特徴です。インフレ対策や、円安による為替の変動リスクをおさえる手段として選ばれることもあります。

また、円安の影響で海外からの資金が日本の不動産に入りやすくなっており、国内の富裕層だけでなく、海外投資家からの需要も続いています。こうした背景があるため、金利が上がってもこの価格帯の動きはほとんど落ちていません。

さらに、5億円以上の物件はもともと数が少なく、売り物件として市場に出ること自体がめずらしいため、価格が下がりにくい特徴があります。

「希少性」がそのまま価格の強さにつながっているイメージです。

中古×リノベ-ション市場で進む二極化の実態

中古マンションを買い取ってリノベーションをして販売する会社のあいだでも、このところはっきりと差がつくようになっています。

2024年以降はマンションの仕入れ価格が大きく上がったことでビジネスが成り立ちにくくなり、特に都心や築浅の物件では利益が出せずにやめてしまう会社が増えています。

その一方で、続けている会社は“ただきれいにするだけのリフォーム”から、“より価値を高めるリノベーション”へ方向を変えています。

たとえば、耐震性を高めたり、設備を入れ替えたり、使いやすい間取りに変えたりと、将来の安心感や資産価値につながる部分に手を入れるやり方です。

買う側も見た目だけでなく「長く安心して住めるか」「将来売るときに価値が残るか」を大切にする人が増えており、これが市場の変化につながっています。

まとめ 中古マンション市場は「選別の時代」へ

まとめると、2025年の東京中古マンション市場は以下のように整理できます。

価格帯市場の特徴
1〜2億円もっとも安定。実需層が支え、周辺区へ人気が波及
2〜5億円“価格と内容のズレ”が顕著で買い手が厳しく選別
5億円以上富裕層需要で堅調。希少性が価値を押し上げる
リノベ済みマンション見た目のリフォームではなく“高付加価値”が求められる

こうした動きを整理すると、
いまの東京の中古マンション市場は「価格」ではなく“価値”で選ばれる時代に入ったと言えるでしょう。

つまり、「価格が高い=価値が高い」ではなく、「その価格に見合う価値があるかどうか」が判断基準になっているということです。

これから物件を検討する方にとって大切なのは、“いくらか”ではなく、“その価格で何が得られるのか” を丁寧に見極めること。

立地、築年数、管理状態、設備、将来の資産性など、本質的な価値を持つ物件こそが選ばれる市場へ 変わりつつあります。

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この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

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