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港区は強気、湾岸は慎重|再販マンションが示す東京マンション市場の変化

東京の中古マンション価格は、統計上バブル期を超える水準に達しています。
東日本不動産流通機構(レインズ)のデータによれば、首都圏の中古マンション成約㎡単価は70ヶ月連続で前年同月を上回り、1990年のバブル期の価格水準を超えました。

このデータを見ると「マンション市場は再びバブルなのではないか」と感じる人も多いかもしれません。しかし実際の市場を詳しく見ると、価格上昇は首都圏全体で均一に起きているわけではありません。

現在の東京マンション市場では、港区のように投資が活発なエリアがある一方で、湾岸エリアのように投資が慎重になりつつある地域もあります。

こうした市場の温度差を読み解くうえで注目されているのが「再販マンション」です。
この記事では、再販マンションのデータをもとに、東京マンション市場の構造と最新動向を解説します。

目次

首都圏中古マンション価格は70ヶ月連続上昇

首都圏の中古マンション市場は、長期的な価格上昇が続いています。
レインズのデータによると、首都圏中古マンションの成約㎡単価は70ヶ月連続で前年同月を上回りました。さらに現在の価格水準は、1990年の不動産バブル期の価格を超えています。

ただし、この価格上昇を単純に「バブル再来」と判断するのは早計です。
当時のバブル期は投機資金による急激な価格上昇が特徴でしたが、現在の市場はそれとは異なる構造を持っています。

現在の価格上昇の背景には以下のような複数の要因があります。

  • 都市部への人口集中
  • 低金利環境
  • 新築マンション価格の上昇
  • 建築費の高騰

特に新築マンション価格の上昇は中古市場にも影響しています。新築が高騰すると、相対的に割安な中古マンションへの需要が高まり、中古価格も上昇しやすくなるためです。

東京マンション価格は23区が牽引

首都圏の中古マンション価格を押し上げている中心は、東京23区です。
東京都心では再開発や都市機能の高度化が進み、住宅需要が集中しています。さらに海外投資家の資金流入や富裕層の資産運用需要もあり、都心マンションの資産価値は高い評価を受けています。

一方で、神奈川・千葉・埼玉といった周辺エリアでは価格上昇は比較的緩やかです。これらの地域では住宅購入の多くが実需、つまり実際に住むための購入です。

そのため現在の首都圏マンション市場は次のような二層構造になっています。

  • 東京23区:価格上昇が強い
  • 周辺エリア:比較的安定

つまり、統計上の「首都圏平均価格」は東京の上昇によって押し上げられている側面が大きいのです。

再販マンションとは?市場の先行指標

東京マンション市場の実態を読み解くうえで重要な指標が「再販マンション」です。
再販マンションとは、不動産会社が中古マンションを買い取り、リノベーションなどによって価値を高めたうえで再販売する物件のことです。
このビジネスは「買取再販」と呼ばれ、不動産会社にとっては投資事業の一種です。

不動産会社は物件を仕入れる際に、将来の市場価格・エリアの将来性・需要の強さなどを総合的に判断します。
そのため再販マンションの供給量やエリア分布には、不動産会社の投資判断が反映されます。

再販マンションが増えるエリア→ 将来の価格上昇が期待されている可能性

再販マンションが減るエリア→ 投資判断が慎重になっている可能性

つまり再販マンションは、中古マンション市場の動きを先取りする先行指標といえる存在です。

東京23区の再販マンション流通量の変化

東京23区の再販マンション新規売出数の前年比増加率。2024年は前年比22%増、2025年は前年比2%減となり、急増後に市場が安定したことを示すデータ
出典:福嶋総研

東京23区の再販マンション新規売出数を見ると、市場の変化が明確に表れています。
2024年の再販マンション売出数は前年比22%増と大きく増加しました。これは近年のマンション価格上昇を背景に、多くの不動産会社が買取再販ビジネスに参入したためと考えられます。

しかし2025年になると状況は落ち着き、売出数は前年比マイナス2%とほぼ横ばいになりました。この動きから読み取れるのは、東京マンション市場が急激な過熱状態ではなく、一定の均衡状態に入っている可能性です。

港区で再販マンション投資が拡大

東京23区の再販マンション増加率を区別に比較した表。港区は2024年11%増、2025年17%増と投資拡大が続く一方、中央区は2024年45%増から2025年2%減へと減速するなどエリア差が見られる
出典:福嶋総研

東京23区の中でも、再販マンション投資が特に活発なのが港区です。
港区では再販マンション増加率が2024年は11%、2025年は17%と拡大しており、不動産会社が強気の投資判断を続けていることがわかります。
背景には、港区で進む大規模再開発があります。

港区の再販マンション増加率をエリア別に示した表。浜松町は2024年57%増・2025年69%増、港南は19%増・30%増、麻布台は6%増・161%増、三田は2024年-6%から2025年78%増と大きく伸びている
出典:福嶋総研

特に浜松町、港南、麻布台、三田といったエリアでは都市再開発が進み、オフィスや住宅、商業施設が一体となった都市整備が行われています。

再開発が進むエリアでは交通利便性の向上・商業施設の整備・都市ブランドの強化などによって資産価値の上昇が期待されます。

さらに港区は富裕層や海外投資家の投資需要が強い地域です。
政治・経済が安定した都市の不動産は、海外投資家にとって資産保全の対象になりやすいためです。

こうした要因が重なり、港区では再販マンション投資が活発に行われています。

湾岸マンション価格は上がりすぎ?投資が減速

中央区湾岸エリアの再販マンション増加率。晴海は2024年95%増から2025年2%減、勝どきは47%増から17%減となり、再販投資が減速していることを示す
出典:福嶋総研

一方で、中央区の湾岸エリアでは異なる動きが見られます。中央区では2024年に再販マンション増加率が前年比45%と急増しましたが、2025年には前年比マイナス2%と減速しました。
特に晴海や勝どきといった湾岸エリアでは、再販投資が慎重になる傾向が見られます。

湾岸エリアはタワーマンションが多く、近年非常に人気が高まっています。しかしその一方で、マンション価格も大きく上昇しました。
価格が上昇すると、住宅ローンの借入額の上限などの影響で、実際に住むための購入者が手を出しにくくなります。

その結果、不動産会社にとって再販物件の出口価格(最終販売価格)を設定することが難しくなります。

将来の販売価格が読みにくい市場では、投資判断も慎重になります。
湾岸エリアの再販減速は、こうした市場調整の表れといえるでしょう。

東京マンション市場は「港区強気・湾岸慎重」

再販マンションの動きから見ると、東京マンション市場は一枚岩ではありません。
現在は以下のような構図が見えてきます。

港区
再開発と投資資金により価格上昇が期待される
湾岸エリア
価格高騰により投資判断が慎重

つまり東京のマンション市場は、エリアごとに異なる動きを見せ始めているのです。

今後の東京マンション市場の焦点

今後のマンション市場を考えるうえで重要なのは、投資需要と実需のバランスです。
投資資金が市場を押し上げる局面はありますが、最終的に市場を支えるのは実際に住むための購入者です。

再販マンションは、不動産会社の投資判断を映す指標です。どのエリアで供給が増え、どこで減っているのか。その動きを追うことで、東京マンション市場の次の局面が見えてくるでしょう。

現在の市場は、港区の強気な投資と湾岸エリアの慎重な動きが共存する転換期にあるのかもしれません。

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この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

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