成年後見人にもデメリットが?「家族信託」で祖母のマンションを売却~マンション売却体験談CASE15前編

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マンションのご売却にあたっては、実際にマンション売却にいたった方の声が参考になるはずです。

そこで、すみかうる編集部はマンションナビの一括査定をご利用いただいてマンションを売却された方のインタビューを敢行!包み隠さず、売主様のリアルな声をお届けします。

今回は、石川県金沢市のマンションをご売却されたUにお話をお伺いしました。U様は、体調が悪いお母様から家族信託を受け、亡くなられたお祖母様のマンションを売却されたのだとか。成年後見制度も検討したとのことですが、U様は成年後見人の制度にデメリットを感じ、家族信託を選択されたようです。

お話を伺った方

30代女性U様 

深考全幸でご成約

  • 査定依頼日:2021年10月
  • 物件種別: マンション
  • 査定種別: 売却
  • 石川県金沢市
  • 築年: 2007年(平成19年)
  • 専有面積:90㎡
目次

家族が成年後見人になれないことも?成年後見制度のデメリット

編集部

マンションナビの一括査定からマンションご売却にいたったということ。売却されたのは、お祖母様のマンションなのですね。

U様が相続されたということなのでしょうか?

U様

いえ。祖母のマンションを相続したのは、母です。ただ、母は体調が良くなく、祖母が亡くなる前に家族信託を結びました。委託したのは、母。受託したのは、私です。

祖母のマンションを相続したのは母ですが、売却に関しては受託者である私が手続きを行いました。

家族信託とは
出典:一般社団法人家族信託普及協会

信頼できる家族などに保有する不動産などの資産を託し、その管理や処分を任せられる制度。

U様が感じた「成年後見人」のデメリット1.家族が後見人になれるとは限らない

編集部

お母様に代わって、受託者であるU様がお祖母様のマンションを売却されたということだったんですね。

家族信託と同様の制度に「成年後見制度」がありますが、こちらは選択肢には入らなかったのでしょうか?

成年後見制度とは

認知症や知的障がい、精神障がいなどにより判断能力が不十分になった人に代わり「成年後見人」が資産を管理したり、身の回りの世話・介護などのための契約を結んだりできるようにする制度。判断能力が不十分な人の保護・支援を目的とする。

U様

母が体調不良になり、祖母も高齢ということで、今後のことを考えて司法書士やFPの先生方に相談しました。

母以外の人が、母が持つ不動産や資産を管理する方法として「成年後見制度がメジャーではあるけれど、今回の場合は家族信託が良いかもしれないと勧めていただきました。

成年後見人制度は内容を聞いたり、調べてみたりすると、デメリットが多い制度だと感じたんです。

編集部

どんなところにデメリットを感じたのでしょうか?

U様

まず、必ずしも家族が成年後見人になれるわけではないということです。

確実に私が母の成年後見人になれればいいのですが、選任するのは家庭裁判所とのこと。弁護士など第三者が後見人になった場合は、毎月、数万円の報酬を支払わなければならないと聞きました。

編集部

なるほど……!それに対し、家族信託であれば確実にU様に信託できたということですね?

U様

おっしゃる通りです。
家族信託は、その名の通り「家族に託せる」制度。もちろん、報酬なども発生しないのでメリットは大きいと感じました。

U様が感じた「成年後見人」のデメリット2.不動産の処分が容易ではない

U様

また、成年後見人が自由に被後見人(お母様)の資産を処分したり、運用したりできない点にも不都合があると感じました。

成年後見制度は、被後見人の資産を「保護」する目的の制度です。資産を運用したり、売却したりすることは容易ではないと聞きました。

今回、売却したのは祖母と母が同居していたマンションです。売却時点ですでに母は居住していなかったのですが、成年後見人であっても、自由に居住用不動産を売却することはできないようですね。家庭裁判所の許可が必要のようです。

編集部

成年後見人にも、さまざまな制約があるのですね……!家族信託の場合、この点はどうだったのでしょうか?

U様

売却に関する制約は一切ありませんでしたよ!

母からの委任状なども不要で、受託者である私一人で契約できました。

編集部

家族信託を結んでいたことで、お母様が相続したマンションをスムーズに売却できたのですね!

家族信託の流れ

編集部

家族信託について、もう少し詳しくお聞かせください。
家族信託を締結するのにも、費用はかかるんですよね?

U様

はい。家族信託にも費用がかかり、手続きも簡単ではありませんでした。

1.信託契約の締結

U様

家族信託は「契約」ですので、契約書を作成し、締結しなければなりません。契約自体は当事者自体の合意で成立しますが、家族信託に法的根拠を持たせるために公正証書としました。

公証人に作成を依頼するので、このときに一定の費用がかかります。

編集部

契約書には、どんなことを記載したのですか?

U様

・委託者(委託する人)
・受託者(受託する人)
・受益者(発生した利益を得る人)
・目的
・信託するもの
・期間
・締結日
・署名・捺印

この辺りでしょうか。私は、司法書士の先生にサポートしていただきながら契約書の作成・締結・公正証書化しました。

2.信託口座の開設

U様

今回、私が母に代わってマンションの売却をしましたが、手付金や売却金を得たり、手数料を支払ったりするのは母の資産です。手続きを代理するとはいえ、母の資産と私の資産を同じにはできません。

今もそうなのですが、母の資産は私のものとは別に「信託口座」を作って管理しています。

口座を作るときに、公正証書を持っていきましたね。中には、公正証書ではない契約書では信託口座が作れない金融機関もあるようです。

編集部

公正証書にする手間や費用はかかりますが、必要な手続きということですね……!

3.登記

U様

祖母が亡くなってから、マンションを母の名義に変えて(相続登記)、その後に信託登記をしました。

編集部

信託は「登記」するものなのですね!

U様

登記によって私が母のマンションを管理していると証明できるからこそ、売買契約時に委任状も不要で、私の署名だけで契約が締結できたということですね。

登記に関しても司法書士の先生が手続きしてくれましたので、そこまで大きな手間がかかったということはありません。もちろん、報酬をお支払いしてということですが。加えて、登記にあたって登録免許税がかかりました。

編集部

つまり、不動産を家族信託するにあたってかかった費用は、

・司法書士報酬
・契約書を公正証書にする費用
・登録免許税

ということですね!

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【解説】成年後見制度と家族信託どちらが適している?

U様

私たち家族の場合、体調不良とはいえ、母が元気だからこそ家族信託を選択できました。

家族信託は「契約」ですから、委託者の判断能力が不十分だと判断される場合は締結できません。

編集部

となると……ご家族のご体調や事情、目的などによって、成年後見制度と家族信託、どちらが適しているかは異なるということですね。

2つの後見制度

成年後見制度は、次の2つに分かれます。

1.法定後見制度

判断能力が不十分になってしまった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人などが本人を支援する制度です。

本人の判断能力に応じて、さらに次の3つの制度に分かれます。

  • 補助
  • 保佐
  • 後見
出典:厚生労働省

2.任意後見制度

本人に十分な判断能力があるうちにあらかじめ任意の後見人や委任する範囲を決めておき、本人の判断能力が不十分になった後に効力が発生する制度です。

判断能力が不十分であれば家族信託・任意後見制度は選択できない

出典:国民生活センター

家族信託は、受託者や委託者の契約です。契約内容などの判断が十分にできない人は、契約を締結できません。一方、成年後見制度においても、任意後見制度は判断能力が不十分な人は選択できません。

つまり、すでに判断能力が不十分になってしまった方におかれては、第三者が本人の資産を管理・保護する方法が「法定後見制度」に限定されるということです。

家族信託で「判断能力」を審査するのは公証人

「判断能力」は曖昧な表現ですが、たとえば医師から「認知症疑いがある」と診断されていたとしても、必ずしも家族信託において「判断能力がない」と判断されるわけではありません。また、介護状態にあったとしても、判断能力がしっかりしていれば契約は可能です。

契約できる状態かどうかを判断するのは、公証人です。いずれにしても、将来的に不動産などの資産を家族に託したいと考えている場合は、本人がお元気なうちに契約を締結しておくと良いでしょう。

家族信託は比較的、新しい制度

家族信託は、2007年、信託法改正を受けて創設されました。比較的、新しい制度ですが、平均寿命の延伸や相続の増加に伴い注目されています。

成年後継制度と比較して、柔軟な財産管理ができます。家族の高齢化や相続に備える方法の1つとして、検討してみましょう。

取材後記:成年後見制度にもデメリットがある

まとめ
  • 成年後見制度にもデメリットがある
  • 「家族信託」は柔軟な財産管理が可能
  • 本人の判断能力次第で家族信託が締結できないことも

家族信託の受託者として、お母様がお祖母様から相続したマンションを売却したU様。

お母様の体調不良に伴い、成年後見制度も検討されたとのことですが次のような点にデメリットを感じ、家族信託を選択されました。

  • 家族が成年後見人になれるとは限らない
  • 弁護士などが後見人になった場合、報酬を支払続けなければならない
  • 後見人は自由に不動産などの資産を処分できない

結果として、マンションの売買契約や引き渡しもスムーズに行えたとのこと。相続や親御さんの高齢化は、誰しもが避けられないことです。将来のことを見据え、親の資産や生活を守るため早い時期から必要な対策を検討しておくことが大切です。

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この記事を書いた人

亀梨奈美のアバター 亀梨奈美 不動産ジャーナリスト/株式会社realwave代表取締役

大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。

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