不動産相続の手続きと流れ:徹底解説!
不動産の相続は、複雑で時間がかかります。手続きの内容や流れを正しく理解することで、スムーズに進めることができます。
本記事では、相続開始から遺産分割、税金申告、名義変更まで、必要なステップを詳しく解説します。
さらにトラブル防止のための対策や事前準備、専門家の活用方法も紹介。相続手続きを安心して進めるための知識を身につけましょう。
初めて不動産相続をする方から将来相続予定がある方も、是非参考にしてください。
不動産相続の基本的な流れ

相続の開始と遺言書の確認
相続は被相続人が亡くなった日から始まります。相続が開始され、最初に確認すべきは遺言書の有無です。
遺言書は相続内容を決定する重要な文書であり、家庭裁判所の検認が必要となります。
特に、自筆証書遺言で自宅保管の場合は必ず裁判所で検認を受けなければなりません。
これを怠ると遺言が無効となる場合もあるため、早期の確認が重要です。
また、遺言書がない場合は、法定相続人で遺産分割協議を行うことが必要となります。
相続人の調査
相続が開始されたら、まず相続人を確定する必要があります。
法定相続人は、民法で定められた順序に従い配偶者、子、兄弟姉妹などが含まれます。
※配偶者は常に法定相続人となるため、相続順位はついていません。
相続人の調査を怠ると、後でトラブルが生じる可能性があるため、戸籍謄本や住民票などを用いてしっかり確認しましょう。
↓誰が相続するかを、早見表で確認することをお勧めします。↓
相続順位 | 被相続人との関係 | 代襲相続 |
第一順位 | 子 | あり(再代襲もあり) |
第ニ順位 | 直系尊属(最も親等の近い者) | - |
第三順位 | 兄弟姉妹 | あり(再代襲はなし) |
相続不動産の確認
次に、相続不動産の確認も重要です。
相続の対象には預金や株式、不動産、個人の所有物、借金など様々なことが対象となります。
中でも土地や物件などの不動産は相続トラブルの原因になるケースが多く、遺産分割事件のうちの約85%は不動産を含んでいるとされています。
相続する対象の中に不動産が入っている場合
遺言書がある場合は不動産の内容が記載されているかどうか確認し、
遺言書がない場合・記載がない場合は、相続人同士で遺産分割協議書を開き、相続された不動産を今後どうするか決めなければいけません。
理由としては、現金や預貯金と違って平等に分割するのが難しいためです。
相続対象が実家であった場合は誰が相続するか、あるいは売却するかでトラブルに発展してしまうことが珍しくありません。
遺産分割協議の実施
遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分割方法を話し合い、合意を得るための重要なステップです。
感情的な対立を避けるため、公平かつ法的な観点から話し合うことが求められます。
必要に応じて、弁護士や税理士などの専門家を交えながら協議を進めていきましょう。
不動産相続の具体的な手続き
準確定申告
準確定申告は、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までに得た所得に対して行う税務手続きです。
申告期限は相続の開始を知った翌日から4か月以内で、相続人全員が連名で申告する必要があります。
主に所得税や住民税の申告が対象となります。正しい税額を計算し、早めに申告するようにしましょう。
相続税申告の流れと注意点
相続税申告の流れは、以下のステップに沿って進めましょう。
ステップ①:不動産の評価
不動産相続時には、まず相続する不動産の評価額を算出します。
評価方法には、主に「路線価方式」と「固定資産税評価額」があります。
これらの評価は、申告額に直接影響するため、慎重に進める必要があります。
ステップ②:控除の確認
基礎控除や小規模宅地等の特例を確認し、適用可能な控除を計算します。
ステップ③:申告書の作成と提出
評価額に基づいて申告書を作成し、相続開始から10か月以内に税務署へ提出します。
ステップ④:納税
申告後、納税額を確認し、期限内に納税します。
税務署だけでなく金融機関などでも納税することができます。
期限内にきちんと納税できないと延滞税がかかる場合があります。
申告期限を守り、必要書類は正確に準備しておきましょう。
不動産の名義変更手続き
必要書類
- 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印が必要)
- 被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時まで一連の全ての戸籍謄本)
- 被相続人の住民票の除票(本籍の記載のあるもの)
- 相続関係説明図
- 固定資産税評価証明書
申請方法
上記書類を正確に揃え、名義変更の申請を行います。
不動産登記の申請方法には、主に3種類あります。
- オンライン申請
法務局のオンラインシステムを使って電子的に手続きが可能です。
時間や場所を問わず、簡便に利用できる点がメリットです。 - 郵送申請
必要書類を揃え、郵送で申請する方法です。遠方の方に適していますが、書類の紛失リスクに注意が必要です。 - 窓口申請
法務局の窓口で、直接申請します。不明点を確認してから提出できる点がメリットです。
状況に応じて申請方法を決めましょう。申請後は、登記完了の通知が届きますので必ず確認しましょう。
スムーズに進めるためにも、専門家に依頼するのがおすすめです。
不動産相続にかかる費用と対策

資産整理の方法(生前売却、生前贈与)
資産整理の方法には主に2つの方法があります。
1. 生前売却
不動産を相続する前に売却し、現金化する方法です。
- メリット
現金は相続時に分割しやすく、トラブルを回避しやすい。
- デメリット
売却によって所得税や住民税が発生する点に注意が必要。
2. 生前贈与
生前に不動産を相続人に贈与する方法です。
- メリット
相続税対策として有効で、年間110万円までの贈与が非課税となり、複数年にわたって資産を少しずつ贈与することで、相続税の負担を軽減できる。
- デメリット
短期間で大きな贈与をすると税負担が重くなる点や、相続税の課税対象になる「相続開始前3年以内の贈与」のルールに注意が必要です。
相続における分割方法と注意点
不動産相続における資産の分け方には主に4つの種類があります。
現物分割
相続財産の形状や性質を変えないで、そのまま各個人に分配する方法。
- メリット
不動産の現物を保持できるため、相続人が物理的な資産を受け取ることが可能。権利の帰属先がハッキリし、その後の処分や対応がしやすい。
- デメリット
不動産は分割が難しいため、不公平になりやすい。価値が偏る場合、代償金が必要になることがある。
換価分割
不動産を売却して得た現金を相続人で分割する方法。
- メリット
不動産を売却し、公平に現金で分割できる。共有トラブルが発生しにくく、相続手続きが簡単になる。
- デメリット
市場の状況によって、売却価格が予想より低くなるリスクがある。売却活動の手間がかかり、誰が行うかトラブルになる可能性もある。
代償分割
特定の相続人に法定相続分を超える財産を与えた上で、ほかの相続人に一定の代償財産を交付する方法。
- メリット
不動産を売却せずに相続できる。公平な分割がしやすく、他の相続人にも現金で補償ができる。
- デメリット
代償金を支払うための現金が必要で、資金不足の相続人には負担となる。相続人同士で支払い能力の確認が必要になる。
共有分割
不動産を複数の相続人で共有する形で相続する方法。
上記の3つが成立しない場合の最終手段として用いられることがあります。
- メリット
不動産を売却せずに、相続人全員が所有権を持つことができる。相続人同士で話し合う必要がない。
- デメリット
共有者間で意見の不一致が生じやすく、管理や売却の際にトラブルになる可能性が高い。相続問題の長期化。
相続税対策の基本
相続税対策の基本は、早めに計画を立てることが重要です。
- 基礎控除の活用
相続税には一定の基礎控除があり、相続財産が控除額を下回れば税金が発生しません。 - 小規模宅地等の特例
住宅や事業用の土地に適用される特例で、評価額が最大80%減額されることがあります。 - 生前贈与の活用
年間110万円までの贈与は非課税であり、長期的な贈与計画が効果的です。
専門家のサポートを受けながら計画することが推奨されます。
相続前に検討すべき事前対策
資産整理をする
生前売却・生前贈与の二つは、相続時のトラブルを減らすことができます。
遺言書の活用でトラブルを避ける
生前から遺言書を作成しておくことで、財産分割の明確な指示が示されるため、遺産分割協議の必要がなくなり、相続争いを防ぐことができます。
また、法的に有効な遺言書を作成することで、相続税の負担軽減や特定の相続人への配慮が可能となります。
遺言書の種類や形式に注意し、専門家に確認しておくことが重要です。
専門家のサポートを活用する重要性
専門家のサポートは、不動産相続時のトラブルを未然に防ぐために非常に重要です。
- 税理士
相続税の申告や節税対策のサポート、適切な控除や特例の提案をします。 - 弁護士
遺産分割協議や相続人間の争いを防ぐためのアドバイスや代理をします。 - 不動産鑑定士
相続不動産の正確な評価を行い、相続財産の適正な価値を算出します。 - 司法書士
不動産の名義変更や登記手続きを代行し、手続きをスムーズに進めます。
専門家のサポートにより、複雑な手続きでもミスや申告漏れが無いよう防ぎながら、確実に進めることができます。
不動産相続手続きまとめ

不動産相続は、事前の計画と流れを把握しておくことが重要です。
今から準備ができる生前贈与や遺言書の作成は、相続時のトラブルを防ぐためにも有効ですので、ぜひ活用してみてください。
相続税申告や不動産名義変更の手続きは複雑で、ミスが発生しやすいため、弁護士や税理士などの専門家にサポートしてもらい、円滑に手続きを進めていきましょう。