【2025年5月最新】変動金利が上昇し、10年固定及び全期間固定金利は低下。中古マンション市場に与えた影響は?

マンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)はホームローンドクター株式会社(東京都中央区八丁堀2-19-6)代表取締役 淡河範明(おごう のりあき)氏への聞き取り調査による住宅ローン金利の推移の予測と、マンションリサーチ株式会社保有データを用いて中古マンション市場の現況について調査しました。

目次

金利から見る、中古マンション市場

グラフ1:DH住宅ローン指数の推移
【出典:ホームローンドクター株式会社

以下のグラフ2では東京都23区の一般向け中古マンションの「販売日数」と「値下げの回数」の推移を示しており、販売日数が長いほど購入需要が弱いことを示し、値下げの回数が少ないほど売却姿勢が強気であることを示します。

グラフ2:東京都23区一般向け中古マンション:販売日数と値下げ回数
【出典:福嶋総研

中古マンションの販売期間(グラフ2)は横ばいだったものの、「値下げ回数」は減少しました。グラフ1を見ると変動金利は先月よりもやや増加したものの、10年固定及び全期間固定金利の減少により、相対的に需要が高まったことが、「値下げ回数」の減少につながったと考えられます。

変動金利

変動金利の現況

2025年5月の変動金利は、前月4月に利上げが行われた反動で何らかの変化があるかと思われましたが、実際には大きな動きはなく、全体として落ち着いた金利設定となりました。

グラフ3:DH住宅ローン指数の推移(変動金利)
【出典:ホームローンドクター株式会社

DH住宅ローン指数(グラフ3)によると今月の変動金利は0.855%で、先月の0.828%からわずかに上昇しました。これは1年前の0.487%と比較すると、依然として上昇局面が続いていることを示しています。

前月、金利を引き上げたのはSBI新生銀行とソニー銀行の2社で、楽天銀行のみが金利を引き下げました。SBI新生銀行は前月トップの金利水準にありましたが予想外の利上げを行ったため、ランキングで一気に5位にまで下がり、金利競争から一歩退いたと見られています。同様にソニー銀行も7位から11位に順位を落とし、競争から完全に撤退したとみられます。

変動金利の今後の動向

トランプ大統領による関税政策の影響が世界に波紋を広げており、これに加えて円安を抑制するための追加利上げの必要性も薄れてきたため、日銀による利上げは当面見送られるという見方が広がっています。もっとも、利下げに転じる兆しもなく、今後もしばらくは日銀が様子を見る姿勢を継続するとの見方が一般的です。

こうした状況を踏まえると今後の変動金利はしばらくの間、比較的狭い範囲で推移すると見られます。

10年固定金利

10年固定金利の現況

かつて主力とされていた10年固定金利の存在感は、徐々に低下しています。特に全期間固定型ローンを扱っている銀行では、10年固定型の積極的な推進にはあまり意欲が見られません。ただし、10年が最長期間である銀行については、依然として10年固定が中心となっています。

10年固定金利は、日本の10年国債の金利を参考に設定されるとされていますが、2025年4月はトランプ関税ショックの影響で金利が一転して下落しました。10年国債の利回りは、月初には1.497%でしたが、月末には1.1%台にまで下がり、最終的には1.33%で引けました。

この影響を受けて、DH住宅ローン指数における10年固定金利は、先月の1.722%から1.615%へと0.1%以上の大幅な下落となりました。とはいえ、1年前の1.259%と比較すると高い水準にあり、依然として上昇トレンドの中にあると言えます。

グラフ4:DH住宅ローン指数の推移(10年固定金利)
【出典:ホームローンドクター株式会社

今月は、調査対象の13社すべてが金利を引き下げるという異例の展開となりました。これは、先月に金利上昇を見込んで引き上げたものの、予想に反して国債金利が大幅に下がったため、各社が調整を迫られたものと考えられます。ただし、SBI新生銀行とソニー銀行は下げ幅が小さく、それぞれ順位を下げました。SBI新生銀行は2位から4位、ソニー銀行は5位から7位に下がっています。

10年固定金利の今後の動向

現在、世界の注目はトランプ関税の行方に集まっており、全体として景気後退の傾向が強まりつつあるなかで、日米は比較的経済が安定しています。そのため、単純に金利が下がるとは予測しづらい状況であり、今後は景気・物価・賃金の動向を見ながら慎重な判断が求められるでしょう。

全期間固定金利

全期間固定金利の現況

全期間固定金利は、変動金利に比べて割高感があることから、これまで敬遠される傾向にありました。しかし、変動金利が本格的に上昇し始めたことで、全期間固定を選ぶ人が少しずつ増えているようです。それでもなお、変動金利を選択する人の方が多数派である状況は変わっていません。今後は、変動と固定を組み合わせた「ミックスプラン」を選ぶ人も増えていくと見られます。

全期間固定金利は、10年国債だけでなく、20年や30年といった超長期国債の金利をもとに設定されることが多いと言われています。2025年3月の動きでは、15年物までの固定金利が下落した一方、20年物以上は上昇しており、特に日本の超長期金利は中国を上回る水準に達してきています。

今月のDH住宅ローン指数によると、全期間固定金利は2.193%となり、前月の2.316%より下がりましたが、1年前の1.940%と比べると依然として高い水準で、上昇傾向が続いているといえます。

グラフ5:DH住宅ローン指数の推移(全期間固定金利)
【出典:ホームローンドクター株式会社

対象となっている14の銀行のうち7社とフラット35が金利を下げ、1社は金利を変更しませんでした。全体的には下落傾向でしたが、0.1%以上の大幅な引き下げを実施した銀行が多く、これは先月に金利を上げすぎたことへの調整とみられます。

唯一、金利を変更しなかったSBI新生銀行は、やはり金利競争から一歩退いたと見られています。ただし、依然として金利水準は低めに設定されており、完全に競争から撤退したわけではないようです。

中でも注目されるのがフラット35で、今月は買取型の基準金利を1.82%に引き下げ、他の選択肢に比べてより魅力的な水準となっています。ただし、フラット35を除く全期間固定金利はすべて2%を超えており、金利上昇の傾向はかなり進行しています。

全期間固定金利の今後の動向

今後の全期間固定金利の見通しについては、10年固定金利と同様に、金利の方向性がはっきりしない状態が続くと予想されます。少なくとも数カ月間は、大きな変動のないレンジ内での推移が続くと考えられます。

まとめ

変動金利

トランプ大統領による関税政策の影響が世界に波紋を広げており、これに加えて円安を抑制するための追加利上げの必要性も薄れてきたため、日銀による利上げは当面見送られるという見方が広がっています。もっとも、利下げに転じる兆しもなく、今後もしばらくは日銀が様子を見る姿勢を継続するとの見方が一般的です。

10年固定金利

現在、世界の注目はトランプ関税の行方に集まっており、全体として景気後退の傾向が強まりつつあるなかで、日米は比較的経済が安定しています。そのため、単純に金利が下がるとは予測しづらい状況であり、今後は景気・物価・賃金の動向を見ながら慎重な判断が求められるでしょう。

全期間固定金利

今後の全期間固定金利の見通しについては、10年固定金利と同様に、金利の方向性がはっきりしない状態が続くと予想されます。少なくとも数カ月間は、大きな変動のないレンジ内での推移が続くと考えられます。

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この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

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