リースバックとは?仕組み・メリット・デメリットをわかりやすく解説!
「まとまった資金が必要だけれど、住み慣れた家から離れたくない」
そんなときの選択肢として、近年注目されているのが「リースバック」です。
テレビCMやネット広告などでも見かける機会が増えてきましたが、「名前は知っているけれど、内容がよくわからない」「本当に安心して利用できるの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
リースバックは、自宅を売却して資金を得ながらも、そのまま賃貸として住み続けられる仕組みです。
本記事では、このリースバックの仕組みやメリット・デメリット、契約時の注意点までを初心者にもわかりやすく解説していきます。

リースバックとは?仕組みを初心者向けにやさしく解説
リースバックとは、自宅を不動産会社などに売却し、そのまま賃貸として住み続けられる仕組みです。
「家を手放したくないけれど、まとまった資金が必要…」という方にとって、引っ越しをせずに資金を確保できる選択肢として注目されています。
自宅を売却することで、売主は「売買代金」を一括で受け取ることが可能。
そして、その不動産を新たな所有者(不動産会社)から借りることで、家賃を支払いながら引き続き居住を継続できます。
所有権は移るものの、住み慣れた環境を変えずに暮らせる点が特徴です。
まとまった資金を得られるため、「住宅ローンの返済が厳しい」「老後の生活資金に不安がある」「今の家に住み続けたい」など、さまざまな事情を抱える方にとって、リースバックは有効な選択肢となり得ます。
リースバックの基本的な流れ|契約〜住み続けるまでのステップ

ここからは、リースバックを利用する際の代表的な手順について解説していきます。
「どう進むのか」「どこに注意すべきか」など、不安や疑問を抱く方に向けて、わかりやすく流れを紹介します。
①自宅を不動産会社などに売却する
まずは、自宅の売却に対応している不動産会社や専門業者に相談し、査定を受けます。
金額に納得できれば売買契約を結び、所有権は買主へと移転。売却代金は一括で受け取ることができます。
※査定価格は市場価格より低めに設定される傾向があるため、複数の業者から見積りを取り、比較検討することがおすすめです。
②売却後、賃貸契約を結んでそのまま住み続ける
売却と同時に、今度は賃借人としての契約(賃貸借契約)を結びます。これにより、所有権は手放しますが、賃貸物件として引き続き居住可能になります。
家賃はエリアや業者によって異なるものの、多くの場合は買取価格に対する利回りをもとに設定されます。
住環境を変えずに生活を続けられる点が、リースバック最大の利点といえるでしょう。
③一定期間後に再購入することも可能な場合もある
契約内容によっては、将来的に売却した自宅を買い戻すことができる特約が設けられているケースもあります。
この特約がある場合、契約時に定めた価格や期間のもとで、再び所有権を取得することが可能です。
ただし、買い戻しには一定の条件があり、必ずしもすべての契約に含まれているわけではありません。
再購入を希望する場合は、事前に「買戻し特約の有無」とその条件を確認しておくことが大切です。
リースバックはどんな人に向いている?向かない?

リースバックは非常に便利な制度ですが、誰にとっても最適というわけではありません。
ここでは、リースバックが向いている人・向かない人の具体的なケースをご紹介します。
「自分はこの制度に合っているのか?」を見極める参考にしてください。
向いているケース:老後資金を確保したい/急な資金が必要な人
■ 老後資金を確保したい人
定年退職後の収入減や、将来の生活費への不安から、まとまった老後資金を確保したいと考えている方にはリースバックが有効です。
年金だけでは不安な場合でも、住み慣れた自宅にそのまま住みながら資金を得られるため、生活の安定につながります。
■ 急な資金が必要になった人
医療費や介護費用、子どもの学費、事業資金など、今すぐ現金が必要な事情がある方にとっても、リースバックは選択肢となります。
一般的な不動産売却よりも早く現金化できる場合が多く、引っ越しをせずに対応できる点が大きなメリットです。
向かないケース:家賃の支払いが不安な人/資産継承を重視する人
■ 家賃の支払いに不安がある人
リースバックでは、売却後に賃貸契約を結んで家賃を支払う必要があります。
そのため、今後の収入や貯蓄に不安があり、家賃の支払いが継続できそうにない方には向いていません。
滞納すれば退去を求められるリスクもあるため、安定した収支が見込めるかをよく検討する必要があります。
■ 資産継承を重視する人
「自宅を将来、子どもや家族に残したい」と考えている方にとっては、リースバックの利用には注意が必要です。
というのも、リースバックでは自宅の所有権を手放すことになるため、原則として相続の対象にはなりません。
契約によっては将来的な「買戻し」が可能な場合もありますが、必ずしも確実に再取得できるわけではないため、資産継承を重視する方には慎重な検討が求められます。
このように、リースバックにはメリットがある一方、契約後の生活や将来設計に大きく関わる制度です。
自分のライフプランや経済状況に合っているかどうかを見極めたうえで、慎重に判断することが大切です。
リースバックのメリット

リースバックは、まとまった資金を得ながら住み慣れた家に住み続けられるという、他にはない特徴を持つ制度です。ここでは、リースバックを利用することで得られる代表的な3つのメリットをご紹介します。
メリット①:まとまった資金を得ながら住み続けられる
リースバックの最大の魅力は、自宅を売却して一括で資金を確保できる点です。
住宅ローンの返済や老後資金、医療費や介護費用など、まとまった現金が必要な場面でも、住み慣れた家から離れずに対応できるのが大きなメリットと言えるでしょう。
特に、一般的な不動産売却とは異なり、現金化のスピードが比較的早いことも、急な資金ニーズがある方にとっては安心材料となります。
メリット②:引っ越しが不要で生活環境が変わらない
通常、自宅を売却する場合は引っ越しが必要になりますが、リースバックなら住み慣れた自宅にそのまま住み続けることが可能です。
ご近所付き合いや通院・通学、生活圏などを変える必要がなく、心身の負担を抑えながら生活を継続できます。
特にご高齢の方や、お子さまがいるご家庭にとっては、環境を維持できる安心感が大きな利点です。
メリット③:相続対策や老後資金の確保としても有効
リースバックは、相続対策や老後のライフプラン設計にも活用できます。
たとえば、将来の相続トラブルを避けるために早めに自宅を現金化し、資産の分配準備を進めるといった使い方があります。
また、売却によって固定資産税や修繕費などの維持コストを軽減することも可能です。
さらに、賃貸化することにより資産をシンプルに整理でき、身の回りをすっきりさせたいシニア世代にとっても、魅力的な選択肢となるでしょう。
リースバックは、ただの「自宅売却」でも「資金調達手段」でもない、暮らしとお金の両立を助ける制度です。
次に紹介するデメリットも含めて理解したうえで、自分に合った選択肢かどうかを見極めていきましょう。
リースバックのデメリット

リースバックは便利な制度ですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、利用前に注意しておきたいポイントを確認しておきましょう。
デメリット①:売却価格は市場価格より低くなる傾向がある
リースバックでの売却価格は、一般的な不動産売却に比べて低くなる傾向にあります。
その理由は、買主(業者側)が「再販できるかどうか」「家賃設定とのバランス」などを加味して査定するため。
通常の市場価格の7〜8割程度に抑えられることもあり、「できるだけ高く売りたい」という希望がある場合には不向きな可能性があります。
デメリット②:家賃が相場より高くなるケースがある
売却後に住み続けるためには、新たに家賃を支払う必要があります。
この家賃は、売却価格に対する利回りなどから算出されるため、周辺の賃貸相場よりも高めに設定されることも。
そのため、長期的に住む予定がある場合は、月々の支払い負担が家計に影響しないかを事前にしっかり確認しておく必要があります。
デメリット③:将来買い戻せない可能性がある
リースバックでは、「将来的に自宅を買い戻したい」と希望する方もいますが、すべての契約に買戻し特約がついているわけではありません。
また、特約があっても「○年以内に」「○○円で」など、あらかじめ条件が決められているケースが一般的です。
資金面や契約条件によっては再購入できない可能性もあるため、将来的に所有権を取り戻したい方は、必ず契約前に確認をしておくことが大切です。
デメリット④:長期で住み続けると総支払額が大きくなる
リースバックは「売却でまとまったお金が手に入り、そのまま住める」仕組みですが、家賃の支払いが継続する点には注意が必要です。
短期間であればメリットを感じやすいものの、長期にわたって住み続けると、総支払額が結果的に売却代金を上回ってしまうケースもあります。
長く住みたいと考えている場合は、家賃と将来の資金計画をしっかり見通しておくことが重要です。
このように、リースバックには一定のリスクや注意点があります。
契約内容や自身のライフプランによって向き・不向きがあるため、「資金調達の手段」として魅力を感じたら、冷静にデメリットも含めて比較検討することが大切です。
リースバックとリバースモーゲージの違いとは?

自宅を活用して資金を得る方法として、リースバックとよく比較されるのが「リバースモーゲージ」です。
どちらも「住み続けながら資金を調達する」という共通点がありますが、仕組みや契約内容には大きな違いがあります。
それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った制度を選ぶことが大切です。
どちらが自分に向いているかの判断軸
以下に、リースバックとリバースモーゲージの主な違いをまとめました。
比較項目 | リースバック | リバースモーゲージ |
所有権 | 売却と同時に移転する | 利用者が持ち続ける |
契約相手 | 不動産会社や投資会社 | 主に金融機関 |
資金の受取方法 | 売却代金として一括で受け取る | 融資として分割または一括で受け取る |
支払い義務 | 毎月家賃を支払う | 毎月利息のみ支払う(元本は死亡後などに精算) |
対象年齢 | 制限なしのケースが多い | 60歳以上など年齢制限あり |
資金用途 | 自由(生活費、借金返済など) | 用途に制限あり(生活費、住宅関連中心) |
相続への影響 | 所有権が移るため、原則相続対象外 | 自宅は相続対象だが、債務返済が必要な場合あり |
選び方のポイント
・まとまった資金がすぐに必要で、所有権にこだわらず住み続けたい → リースバック
・所有権を残したまま資金を得たいが、利用条件に合致している → リバースモーゲージ
リースバックは柔軟性が高く、スピード感のある資金調達手段である一方、所有権を手放すことが前提です。
一方リバースモーゲージは、金融機関との契約であり審査がある分、安定性を重視する方には向いています。
どちらもメリット・デメリットがあり、家族構成や収入状況、今後の住まい方によって向き不向きが変わってくるでしょう。
利用を検討する際は、複数の制度を比較しながら、自分にとって最適な選択肢を見つけることが大切です。
リースバック契約の注意点と確認すべきチェックポイント

リースバックは便利な制度ですが、契約内容によっては「想定と違った」「こんなはずではなかった」と後悔してしまうケースもあります。
ここでは、契約前に必ず確認しておきたいチェックポイントを、整理してご紹介します。
POINT①家賃の設定は適正か?
リースバックでは、売却後に家賃を支払って住み続けることになりますが、この家賃が高すぎると長期的な負担になる可能性があります。
家賃は、物件の買取価格や利回りをもとに業者側が設定するため、周辺の相場より高めに設定されるケースも少なくありません。
契約前には、必ず提示された家賃が以下の点で妥当かを確認しましょう。
- 周辺の同等物件と比べて極端に高くないか
- 将来的に支払いが継続できる金額か
- 家賃改定(値上げ)の条件が明記されているか
POINT②再購入の可否・価格条件
「将来的にもう一度この家を買い戻したい」と考えている方は、買戻し(再購入)特約の有無と、その条件の詳細を必ず確認しましょう。
たとえば以下の点は要チェックです。
- 買戻しの可否(そもそも可能な契約か)
- 買戻しできる期間(例:売却から2年以内など)
- 買戻し価格の設定方法(固定価格か、再査定か)
この特約が曖昧だったり明記されていない場合、将来買い戻すことができなくなるリスクがあります。
POINT③契約期間と途中解約の可否
リースバックの賃貸契約には、普通借家契約と定期借家契約の2種類があります。
特に定期借家契約は、期間満了時に更新されない可能性があるため注意が必要です。
また、借主側から途中で解約できるかどうかも、契約内容によって異なります。
下記の点をあらかじめ確認しておきましょう。
- 契約期間(何年契約か)
- 契約更新の可否と条件
- 途中解約が可能か、その際の解約手数料の有無
POINT④管理費・修繕費など追加費用の扱い
売却後の自宅に住み続ける場合でも、管理費や修繕費、火災保険料などの負担が発生するケースがあります。
とくにマンションの場合は、管理費・修繕積立金などが家賃とは別で請求される可能性があるため、以下を明確にしておきましょう。
- 家賃に含まれる費用と、別途かかる費用
- 原状回復の範囲や修繕責任の所在
- 火災保険の加入義務があるかどうか
POINT⑤業者の信頼性・実績
リースバックは長期間にわたる関係になるため、契約相手である業者の信頼性も非常に重要です。
下記のような観点から業者選びを行いましょう。
- 過去の取引実績や運営会社の規模
- 契約内容や費用の説明が明確か
- 不明点への対応や説明に誠実さがあるか
可能であれば、複数の業者に相談・査定依頼をし、比較検討するのが理想的と言えるでしょう。
このように、リースバックは非常に便利な制度である一方、契約条件によって大きな違いが生じることがあります。
制度の仕組みだけでなく、個別の契約内容や業者のスタンスまで丁寧に確認したうえで、納得できるかたちで契約を進めることが大切です。
リースバックの事例紹介|こんな使い方・選び方がある

リースバックは、それぞれのライフステージや状況に応じて、さまざまな活用方法があります。
ここでは2つの事例を通して、リースバックの具体的な使い方と選ばれた背景をご紹介します。
事例①住宅ローン返済が厳しくなったAさんのケース
40代のAさんは、勤務先の業績悪化により収入が減少。住宅ローンの返済が重くのしかかり、日々の生活にも支障をきたすようになっていました
「家を手放すしかないか…」と悩んでいたところでリースバックを知り、相談することに。
Aさんは自宅をリースバックで売却し、まとまった資金で住宅ローンを完済。
同時に、同じ家に賃貸として住み続ける契約を結びました。
その結果、ローン返済の負担から解放され、生活の再建を図ることができたそうです。
「売る=出ていくと思っていたけれど、住み続けられる選択肢があるなんて知らなかった。
今は気持ちにもゆとりができて、前向きに働けるようになりました。」(Aさん)
事例②老後資金確保のため利用したBさんのケース
70代のBさんは、一人暮らしの自宅を所有していましたが、年金収入だけでは将来が不安になり、老後の生活資金を確保する方法を探していました。
売却は検討していたものの、「住み慣れた家を離れるのは不安…」という思いが強く、なかなか踏み切れずにいたといいます。
そんな中でリースバックを知り、家を売却して資金を確保しながら、同じ家に住み続けられることに魅力を感じて契約。
手にした資金は、生活費のほか、介護サービスの準備や趣味のためにも活用でき、安心して老後を過ごせるようになりました。
「家を売る決断は勇気がいったけど、リースバックのおかげで安心感を得られました。
今は自由に使えるお金もあり、暮らしにゆとりができました。」(Bさん)
このように、リースバックは「家を売りたくないけれど、資金が必要」というニーズに対して柔軟な選択肢を提供してくれます。
それぞれの背景や目的に合った活用法があるからこそ、検討する価値のある制度と言えるでしょう。
リースバックに関するよくある質問
ここでは、リースバックを検討する際に多く寄せられる質問と、その回答をご紹介します。
実際に契約する前に気になるポイントを、事前にしっかり確認しておきましょう。
まとめ
リースバックは、自宅を売却して資金を得ながら、引っ越しせずにそのまま住み続けられるという、従来の不動産売却とは異なる仕組みです。
住宅ローンの返済や老後資金の確保、相続対策など、さまざまな目的に柔軟に対応できる手段として注目されています。
一方で、売却価格が市場価格より低くなりやすいことや、家賃の支払いが長期的な負担になりうる点には注意が必要です。契約内容によっては、将来的な選択肢が制限されてしまう可能性もあるため、慎重な判断が求められるでしょう。
「今の暮らしを変えずに資金を得たい」「住宅ローンの負担から解放されたい」といったお悩みをお持ちの方にとって、リースバックは有力な選択肢のひとつです。
自分や家族のライフプランに合うかどうかを見極めながら、必要に応じて専門家に相談することも検討してみてください。