マンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)はホームローンドクター株式会社(東京都中央区八丁堀2-19-6)代表取締役 淡河範明(おごう のりあき)氏への聞き取り調査による住宅ローン金利の推移の予測と、マンションリサーチ株式会社保有データを用いて中古マンション市場の現況について調査しました。

【出典:ホームローンドクター株式会社】
DHローン指数:ダイヤモンド不動産研究所とホームローンドクター株式会社が共同で作成している住宅ローン金利の参考指標。主要な銀行の住宅ローン商品をもとに、変動金利・固定金利・全期間固定型などの代表的な金利水準を算出したもので、市場の金利動向を把握するための目安として用いられています。
金利から見る、中古マンション市場
LIFULL HOME‘Sの「住宅ローンに関する意識調査」によると、住宅購入を検討している層の意向の中で最も多かったのは「住宅ローン金利が上がる前に買いたい」という回答でした。
この結果は、住宅ローン金利の上昇が必ずしも購買意欲を抑制しているわけではなく、むしろ駆け込み需要を促していることを示しています。
実際、首都圏の不動産市場では成約件数が増加の一途をたどっており、金利の上昇局面においても、購入希望者の行動が活発化していることが確認できます。特に東京都心部や沿線利便性の高いエリアでは、短期間で成約が決まる物件も少なくなく、購入検討者の間で「金利がさらに上がる前に」という心理が強く働いていることがうかがえます。

【出典:福嶋総研】
一方で、首都圏周辺の神奈川県、千葉県、埼玉県では、市場の構造にやや変化が見られます。これまで好調だった築浅の新築マンションの成約数の割合が徐々に減少する一方、築年数の経過した中古マンションの成約割合は増加しています。この傾向は、マンション価格の高騰が原因で、一般所得層が手の届く物件の選択肢が狭まっていることを示しています。
例えば、近年の再開発や人気沿線エリアの需要増に伴い、新築物件の坪単価が大幅に上昇しているため、年収の平均的な世帯にとっては手が届かない価格帯の物件が増えている状況です。その結果、比較的価格が抑えられた築古物件やリノベーション済み物件に注目が集まる傾向が強まっています。
このような背景を踏まえると、住宅購入を検討している方にとっては、購入のタイミングが非常に重要になってきます。金利が上昇することで短期的な駆け込み需要が生まれる一方で、購入できる物件の幅が縮小しているため、検討を先延ばしにすると選択肢がさらに制限されるリスクがあります。特に、首都圏の人気エリアや駅近物件では、成約までの期間が短く、条件に合った物件が市場に出るタイミングを逃すと、希望価格や立地条件での購入は難しくなってしまいます。
さらに、金利上昇が続く局面では、ローン返済額も増加するため、早めの購入は将来的な返済負担の軽減にもつながります。例えば、仮に1000万円の住宅ローンを組んだ場合、金利が0.5%上昇するだけで月々の返済額は数千円から1万円程度増加する計算になります。長期にわたるローン返済では、こうした差額が大きな負担となるため、金利の低いうちに購入するメリットは非常に大きいといえます。
このように、金利上昇局面では駆け込み需要が生じつつも、実際に購入可能な物件の幅が狭まっている状況です。市場の動向を注視しつつ、希望条件を整理しておくことが重要です。筆者としては、住宅購入を検討している方は、物件選びを慎重に行うと同時に、なるべく早めに購入に踏み切ることがベストであると考えます。タイミングを逸すると、希望エリアや価格帯での購入が難しくなるだけでなく、将来的な金利負担も増える可能性があるため、計画的かつ迅速な行動が求められる状況といえるでしょう。
変動金利
金利推移
2025年9月も短期金利では大きな動きはなく、多くの銀行が金利を据え置きました。 10月1日時点においては、DH住宅ローン指数の変動金利は、0.862%と前月よりわずかに上昇し、かつ前年同月の0.610%よりも上昇しています。上昇傾向トレンドであることは間違いないと考えています。
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【出典:ホームローンドクター株式会社】
銀行の動き
短期の金利は金融機関を総じてみるとわずかながらに上昇しました。具体的には、SBI新生銀行(キャンペーン終了)、みずほ銀行(基準金利の更改)、楽天銀行(市場金利上昇)が金利を上げ、PayPay銀行のみ金利を下げました。PayPay銀行は、キャンペーンも始めており、変動金利の取引を増やそうと画策しているようです。
「早ければ10月にも日銀が利上げする」と見ている向きもあり、金利がやや上昇傾向にあり、変動金利も来年6月までにより一層上昇するかもしれません。
政治経済の背景
9月の日銀の金融政策決定会合にて金利の据え置きが決定したが、うち2人の委員が利上げを求める異例の採決であったことから、10月内の利上げの可能性が高まっているようです。個人的に年何には利上げする可能性は高いが、10月内の利上げは可能性がやや低いと思っています。政策金利が0.5%を超えるのは、1995年来、約30年ぶりの出来事なので、注目の局面です。
10年固定金利
金利推移
固定金利選択型の内、金融機関では10年固定を中核に据えていましたが、金利が上昇したことで、10年固定金利の取り扱いが減少しているようです。10年が最長の固定金利となる銀行はともかく、全期間固定金利を有する銀行の大半は、10年固定の金利を上昇させる姿勢を明らかにしている事から、10年固定金利を積極的に販売しようとする意欲はなくなってきているように見受けられます。
10年固定金利は、日本国債10年物の金利を参考に設定されていると言われています。
9月の国内の債券金利は、前半はFRBの利下げ観測もあり、下げから入りましたが、後半には利上げ観測が広まり、金利が上昇に転じて高いまま引けました。10年国債は、先月末1.614%だった利回りが1.662%に上昇しています。
今月は、DH住宅ローン指数の10年固定は1.812%と前月の1.776%と比べてわずかではありますが上昇しました。1年前の1.299%よりも上昇しているので、いまだ金利は上昇局面にあると考えています。
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【出典:ホームローンドクター株式会社】
銀行の動き
10年国債はわずかながら上昇を続け、金融機関もこの動きを受けてか、観測対象の13行中12行が金利を上げました。唯一金利を下げたのがauじぶん銀行です。この状況下で金利を下げるという非常に目立った動きをしましたが、ほとんど話題にはなっていません。
また適用金利が2%を切っているのは13社中4社と減少し、金利上昇傾向は着実になっています。
政治・経済の背景
今月は、前述の通り10月に日銀の利上げ観測が急浮上してきたこと、また景気も底堅いことから引き続き金利は上昇傾向にあると見ています。欧米の利下げ観測もありますが、国内の政治情勢を鑑みると財政が積極化する懸念の方が高いことから、金利上昇圧力は続くと見ています。
全期間固定金利
全期間固定金利の現況
全期間固定金利は、変動金利との相対的な割高感から敬遠されてきました。変動金利の上昇が始まりましたが、5年ルール、125%ルールなどで、金利上昇の実感をする人が少ないからか、いまだ変動金利を選択する人が多数派のようです。ただ、統計上はまだまだ変動金利が選択する方が圧倒的多数であることは変わりません。
全期間固定金利は、日本国債10年物だけでなく超長期国債などの動向も参考に設定されているといわれています。9月は、超長期債の発行額が減少するという見方がでて、金利がやや下がる傾向になりました。
今月は、DH住宅ローン指数の全期間固定金利は2.521%と前月の2.487%よりも下落していて、国内金利の下落をそのまま反映しているようです。1年前の1.946%からずっと上昇が続いていているため、現時点においても金利上昇局面にいることは変わらないと考えています。観測対象の金融機関は、フラット35以外すべて2%を超え、中には3%を超える金利をつけているところがあります。
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【出典:ホームローンドクター株式会社】
銀行の動き
今月の住宅ローンは、フラット35が金利を据え置きましたが、観測対象の8行(フラット35を除く)は金利を上げました。
ここ何カ月も全期間固定の最有力候補であるフラット35ではありますが、5社金利を下げたとしても、フラット35の金利の低さには遠く及びません。金利を下げた銀行の金利は、すべて2.5%以上となっているからです。今月のフラット35の買取型の基準金利を1.89%で据え置きました。引き続き相対的には魅力的な水準のままであり、子育てプラスと組み合わせると非常に優良な商品なので、積極的に検討することをおすすめします。
政治・経済の背景
今後について、全期間固定金利は、基本的には10年固定金利と同じポイントが注目されます。今後は、国内景気動向と日銀の金融政策が今後の動向を占うポイントになるかと思いますが、特に財政政策の動向も金利に影響を与える要因として重要なものとなってきました。
LIFULL HOME‘S「住宅ローンに関する意識調査」によると、(購入検討者)住宅購入に対する意向については「住宅ローン金利が上がる前に買いたい」がトップで、金利上昇がむしろ駆け込み需要を生んでいるように思えます。実際に首都圏では成約件数は増加の一途を辿っています。
一方で前回も振れましたが、神奈川県、千葉県、埼玉県では、築浅の新しいマンションの成約数の割合が減少し、一方で築年の古い成約数の割合が増加しています。これは、マンション価格が高騰し過ぎたが故に、一般所得層の購入できる物件の幅がどんどん短くなっている事を示しています。
すなわち金利高騰が駆け込みの需要を生み出すにもかかわらず、購入できる物件の幅が縮小している状況です。従って、購入を検討している方は、極力早く購入するのがベストだと筆者は考えます。
金利動向のまとめ
変動金利
2025年9月も短期金利には大きな動きがなく、多くの銀行が据え置きを継続しました。DH住宅ローン指数は0.862%と前年同月より上昇し、上昇トレンドが続いています。SBI新生銀行やみずほ銀行が金利を引き上げる一方、PayPay銀行はキャンペーンを実施し引き下げました。日銀内では利上げを求める意見もあり、10月以降の政策転換への注目が高まっています。今後は変動金利も上昇圧力が強まる可能性があります。
10年固定金利
10年固定金利は1.812%と前月比で上昇し、前年よりも高い水準となりました。国債利回りの上昇を受け、13行中12行が金利を引き上げており、2%を下回る商品は減少しています。多くの金融機関で販売意欲がやや低下している様子もうかがえます。背景には日銀の利上げ観測や景気の底堅さがあり、財政拡大への懸念も金利上昇の要因となっています。なお、auじぶん銀行のみ例外的に金利を引き下げました。
全期間固定金利
全期間固定金利は2.521%と前月よりわずかに低下しましたが、前年からの上昇傾向は続いています。超長期債の発行減少により一時的に金利が下がりましたが、依然として高水準です。フラット35は1.89%で据え置かれ、引き続き魅力的な水準を維持しています。変動金利との金利差から敬遠される傾向もありますが、安定を重視する層には根強い人気があります。今後は日銀の政策や財政動向が重要な要因となりそうです。
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