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京成押上線「京成立石」駅周辺では、大規模な再開発が進んでいます。「下町」というイメージが強く、”千ベロの街(千円でベロベロになるまで酔える街)”としても有名な立石ですが、昔ながらの商店街は立ち退き・解体が進み、計画区域では複数のタワーマンションや高層ビルの建築が予定されています。
この記事では、立石の再開発計画の詳細や現状とともに立石駅周辺のマンション市況について詳しく解説します。
立石駅周辺では「北口地区」「南口西地区」「南口東地区」の3つの再開発計画が進められています。また、連続立体交差事業や駅舎の改修も進んでいます。
立石の再開発の目的のひとつは、街の防災性の向上です。立石駅周辺は商業施設などが密集しており、建物の老朽化も見られることから、火災や地震が発生した際の被害拡大が危惧されています。
上記は、都心南部直下地震の被害想定の分布を示したものです。東京23区の全壊棟数および焼失棟数は、青(0〜1棟)や水色(1棟〜10棟)の地域が多いですが、下記のように立石駅周辺は、緑(10〜20棟)や黄(20〜50棟)の分布となっています。
加えて、立石駅周辺ではいまだに路面を電車が走っていることから、交通渋滞が頻発しています。
現在、再開発が進むエリアはとくに昔ながらの町並みが色濃く残り、下町情緒が感じられる一方でこうした課題があることから、平成の初期にはすでに再開発を望む声が挙がっていたといいます。
しかし、昔ながらの風景を変えることに対する反対の声や立ち退きの拒否などが見られていたこともあって、令和になった現在、ようやく再開発や立体交差事業計画が進み始めています。
立石駅再開発計画の内容は、次のとおりです。
立石駅北口地区の再開発は、立石駅北口の立石4丁目・7丁目エリアの約2.2haが対象となっている計画です。立石駅に続く商店街「立石すずらん商店街」を中心に居酒屋や商店などが建ち並んでいたエリアですが、再開発計画では交通広場を中心に西街区と東街区に分けられる予定です。
西街区には、地上36階、地下2階、住宅や店舗などが入るタワーマンション兼商業施設が、東街区には地上13階、地下3階、葛飾区役所の新庁舎も入るビルが建設される予定です。
立石駅南口西地区の再開発は、立石駅南口の約1.3haが対象となっています。現在は、駅に続く「立石駅通り商店街」や「立石仲見世商店街」があるエリアで、週末には行列ができるほど人気な飲食店も建ち並んでいます。
再開発によってこうした商店街はなくなり、地上34階のタワーマンションや駐輪場ができる予定です。
立石駅南口東地区は、西地区に隣接する約1.0haのエリアです。こちらにも、地上32階のタワーマンションの建設が予定されています。
連続立体交差事業とは、踏切による交通状態や事故の発生などを解消するため、道路と鉄道が交差している一定区間を立体化する都市計画事業です。同事業により、立石駅の両隣の四ツ木駅から青砥駅までの11箇所の踏切がなくなり高架になる予定です。高架下の有効活用も見込まれています。
現在の立石駅は古く、エスカレーターもないため、小さなお子さんを連れた方や高齢者にとっては利用しにくいと言わざるを得ません。しかし、現在は連続立体交差事業に加え、駅舎の改修も進んでいます。
新駅舎の外装コンセプトは“これまでの立石の伝統・産業をこれからの立石に繋げる、新しい立石の拠点となる駅”。「立石」という地名は、立石8丁目にある「立石様」という石に由来していることから、外装は石材を想起させるデザインとなる予定です。
立石駅周辺の再開発は、2024年9月時点で北口地区の立ち退きが終わり、既存建物の解体とインフラ撤去工事が進められています。
立石駅北口では、既存建物の立ち退きと解体、インフラ撤去工事が進み、2024年9月時点は一帯がほぼ更地になっている状態です。開発計画では地下3階の建物が建築されるということから、今後、掘削が始まるものと推測されます。建物竣工は2028年度を予定しています。
南口西地区は、2023年7月に都市計画の決定を受けました。再開発組合は、2024年9月時点で設立が認可されておらず、北口のような立ち退きや既存建物の解体は開始していません。
同エリアで建築予定のタワーマンションは、2027年度の工事着手、2031年度の竣工を予定しています。
南口東地区の再開発は、2024年4月に東京都知事から組合設立が認可されています。しかし、こちらも2024年9月現在、北口のような既存建物の取り壊しは開始していません。
南口東地区に建設予定のマンションの着工は、2027年6月を予定しています。竣工予定は、2031年3月末日。開発自体も、マンションの竣工時期前後まで続くものと推察されます。
連続立体交差事業は2024年9月時点で、仮設線路の新設などが進められています。2024年9月時点では、同事業の完了時期は明らかにされていません。
立石駅の駅舎は、改修に向けて仮設の改札口が使用されています。北口からは青砥方面、南口からは押上方面のみしか行けないため注意が必要です。駅舎改修の完了予定時期も、現時点では明らかになっていません。
立石駅周辺の再開発計画は、タワーマンション3棟の建築を含む非常に大規模なものです。再開発への期待感から、近年、上昇傾向にあるマンション価格も、もう一段上がる余地があります。
〜築1年 | 〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
〜徒歩3分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
〜徒歩5分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 11 |
〜徒歩7分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 17 |
〜徒歩10分 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 33 |
〜徒歩15分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 92 |
〜築1年 | 〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
〜徒歩3分 | – | – | – | – | – | 167.0万円 |
〜徒歩5分 | – | – | – | – | 188.8万円 | 171.9万円 |
〜徒歩7分 | – | – | – | – | 182.2万円 | 152.7万円 |
〜徒歩10分 | – | – | – | 171.4万円 | 192.9万円 | 172.0万円 |
〜徒歩15分 | – | – | – | 142.3万円 | 189.8万円 | 151.7万円 |
〜築1年 | 〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
〜徒歩3分 | – | – | – | – | – | 3,032万円 |
〜徒歩5分 | – | – | – | – | 3,427万円 | 3,120万円 |
〜徒歩7分 | – | – | – | – | 3,307万円 | 2,773万円 |
〜徒歩10分 | – | – | – | 3,111万円 | 3,501万円 | 3,122万円 |
〜徒歩15分 | – | – | – | 2,582万円 | 3,446万円 | 2,754万円 |
立石駅周辺は築20年以内のマンションの売り出し件数が少ないこともあって、築年数による相場価格の差異は大きくありません。一方で、再開発の対象にもなっている駅周辺は現在、商店街や低層の商業ビルが中心であり、居住用マンションが駅前に少ないことから、駅近物件の売り出し数も多くありません。
統計的には「築浅」や「駅近」であるほど価値が高い傾向は見られないものの、そもそも好条件のマンションは流通数が少ないことから、駅徒歩10分圏内かつ2000年代以降築のマンションが売りに出されれば高い需要に期待できるでしょう。こうしたマンションは市場に出ればすぐに売れてしまう可能性も高いことから、立石エリアでマンションを探している方は物件情報をよく見ておくことが大切です。
また、立石駅周辺は大規模マンションも少ないため、一定の戸数を有するマンションも人気があります。たとえば、2005年築・総戸数142戸・駅徒歩6分の「ライオンズステージ立石」は希少性が高く、築20年を迎えようとしている現在も価値が上がり続けているマンションです。同マンションの価格上昇率は、葛飾区のマンションの平均上昇率を上回っています。
立石駅周辺の中古マンション価格はコロナ禍では一時下落したものの、ほぼ安定して上昇しています。2022年の前年比上昇率は、12.6%。2023年にはやや下がりましたが、2024年は同5%の上昇率を見せています。
2024年9月17日に公表された2024年基準地価によれば、葛飾区の住宅地の平均上昇率は前年比+4.4%でしたが、立石駅周辺の地点は同+5.9%でした。立石駅に最も近い地点の公示地価も、下記のように近年は葛飾区の住宅地平均を上回る上昇率を見せていることから、再開発への期待感が高まっているものと考えられます。
葛飾区住宅地平均 | 葛飾-24地点(立石4丁目) | |
---|---|---|
2024年 | 4.2% | 6.7% |
2023年 | 2.8% | 3.6% |
2022年 | 1.0% | 1.2% |
立石駅周辺の一連の再開発では、計3棟のタワーマンションの建設が予定されています。3棟合計の分譲戸数は1,500戸程度になる見込みです。
近年、立石駅周辺で分譲される新築マンションは多くありません。2023年8月から2024年7月までの1年間で売り出された中古マンションの数も200戸足らずです。段階的にとはいえ、数年の間に1,500戸もの新築マンションが分譲されるとなれば、立石駅周辺の人口や商業施設、駅利用者数は様変わりするでしょう。
人口の増加は、地価やマンション価格にも大きく影響します。立石駅は、羽田空港まで1本。成田空港までのアクセスも良く、スカイツリー(押上)や浅草といった観光地にも近いことから外国人にも人気があります。京成押上線は都営浅草線にも乗り入れていることから、押上駅だけでなく日本橋駅や新橋駅、品川駅などへも乗り換えなしで行くことができます。駅周辺エリアは、首都高四ツ木インターチェンジも至近です。
元来より交通利便性が高いというポテンシャルを有している一方で、葛飾区の住宅地の平均地価は東京23区の中で最も安価です。近年は都市部のマンション価格が高騰し、一般的な収入の方にはなかなか手が届かない水準にまで達していることから、再開発をきっかけに立石エリア全体の需要拡大も見込めるのではないでしょうか。
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駅北口の高層マンションの竣工予定は2028年度、南口西地区の高層マンションは2031年度、南口東地区の高層マンションは2031年3月末の竣工を予定しています。
再開発の目的は、主に防災性の向上です。立石駅周辺は商業施設などが密集しており、建物の老朽化も見られることから、火災や地震が発生した際の被害拡大が危惧されています。
2024年9月時点は、北口の既存建物解体やインフラ撤去工事が進み、ほぼ更地になっています。駅舎の改修や連続立体交差事業に向けた仮設路線や仮設駅舎の準備も進められています。南口の再開発エリアは、現在も下町情緒が感じられる商店街が残っている状態です。
立石駅周辺は、着実に変わり始めています。古き良き風景が失われることを惜しむ声はありつつも、新駅舎や線路の高架化、北口・南口の再開発による利便性の向上や安全性の向上、地価の上昇などへの期待感も大きい状況です。
立石駅周辺はマンションの流通数が少なく、とくに築浅・駅近物件はなかなか売りに出ないことから、マンションの売買を検討している方は正しく相場を理解し、物件情報に敏感になっておく必要があるでしょう。立石駅周辺のマンション価格はここ数年、上昇傾向にありますが、再開発への期待感からさらに上昇する余地があります。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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