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【連載 第1回 淡河氏執筆】後悔をしない家の買い方とは |「物件探し」の前に行うべき最重要事項とは?

「そろそろ、マイホームを…」

そう思い立ったとき、多くの人がまず出だしから間違えてしまいます。

多くの人は、スマートフォンを片手に、物件情報サイトを眺めることでしょう。きらびやかな新築マンションの広告、リノベーションされたおしゃれな中古戸建て、魅力的な物件が次々と目に飛び込んできます。

「このエリアは坪単価がいくらか」
「この設備は最新だ」
「住宅ローン金利は今が底値らしい」

いつしか私たちは、「どうやって安く、良い条件で家を買うか」という「戦術」ばかりを熱心に学んでいます。

しかし、少し立ち止まって考えてみてください。その家の先にある「理想の暮らし」について、ご自身で深く考えたでしょうか。いえ、もっというと家族全員でじっくり話し合ったことがあるでしょうか?

実は、多くの人が住宅購入で後悔する最大の原因は、この「理想の暮らし」という名の「戦略(ゴール)」が曖昧なまま、「戦術」にばかり気を取られてしまっていることなのです。

どんなに優れた戦術も、向かうべきゴールが定まっていなければ、羅針盤のない船で航海に出る、または、ナビケーションなしでドライブするようなものなのです。思わぬ方向へ流され、時間もお金も、そして何より大切な家族の笑顔も失いかねません。

ここでは、物件探しという「戦術」に飛びつく前に、まず固めるべき「戦略(ゴール設定)」が何にもまして重要であることをご理解いただき、その具体的な方法について解説していきたいと思います。

なぜ家を買うのか、その目的を明確にし、あなたにとって本当に最適な選択肢を見つけるための思考法を、一緒に学んでいきましょう。

この記事を読み終える頃には、溢れる情報に惑わされることなく、自信を持って「我が家だけの正解」にたどり着くための一歩を踏み出せるはずです。

目次

第1章:あなたは「戦術マニア」になっていないか?戦略なき住宅購入の落とし穴

「戦略」と「戦術」の違いとは?

そもそも「戦略」と「戦術」は何が違うのでしょうか。ビジネスの世界でよく使われる言葉ですが、住宅購入に当てはめて考えてみましょう。

戦略 (Strategy): ここでは、「何のために家を買うのか(目的)」を定め、それを達成するための「長期的な方針」と捉えていただければよいでしょう。「どんな暮らしを実現したいのか」という、いわば旅の「目的地」にあたります。

  • 子どもがのびのびと成長できる環境で、家族の時間を大切に暮らす
  • 通勤時間を短縮し、夫婦それぞれの趣味や自己投資の時間を確保する
  • 将来、資産として価値が下がりにくい家を持つことで、老後の経済的な安心を手に入れる

戦術 (Tactics): 戦略という「目的」を達成するための「具体的な手段や方法」と捉えてください。旅で言えば、目的地に行くための「乗り物やルート」にあたります。

  • 住宅ローンは変動金利を選ぶ
  • 中古マンションを購入してリノベーションする
  • 希望エリアの不動産会社を3社以上回る
  • オープンハウスに積極的に参加する

お気づきでしょうか。
多くの人が最初に手を付けるのは、後者の「戦術」です。
多くの人が、手段を目的と勘違いし、手段の検討にやっきになっているのです。
残念ながら、手段そのもののバリエーションが多く、また、魅力的であるため、手段を目的と勘違いしてしまうのです。

例えば、よい大学にいくことは、おそらく自分がよりよい人生をおくるための有効な手段となるでしょう。
しかし、よい大学にいくことが目的となってしまう人は少なくないようです。
これは就職先でも同じです。手段の目的化は、誰でもいつの間にか陥ってしまうトラップものなのです。

目的地(戦略)が決まっていないのに、どの乗り物(戦術)が最適なのか判断できるはずがありません。
例えば、「北海道に行く」という戦略があって初めて、「飛行機、新幹線、バス、自家用車、バイク、自転車、徒歩」のどれでいくかを検討する意味がでてくるのです。
また、予算、期限などもその検討には非常に重要な要素となります。「10年以内に、予算は青天井」ということであれば、世界一周の豪華客船の最終目的地で向かうという選択もありかもしれません。

ゴールが曖昧なまま家を買う「3つのリスク」

戦略(ゴール)が曖昧なまま、「なんとなく良さそう」という理由だけで家を買ってしまうと、将来的に様々な問題が生じる可能性があるのですが、これからどのような問題が起きうるのか説明します。

リスク1:ライフプランとの致命的なミスマッチ

購入時には完璧だと思えた家も、ライフステージの変化によって「住みにくい家」に変わってしまうことがあります。

事例Aさん(35歳): 「夫婦2人の時は快適だった都心のコンパクトマンション。子どもが生まれ、小学校に上がる頃には手狭に。収納も足りず、子どもの遊び声が近所に響くのも気を使う。結局、住み替えを検討しているが、ローンの残債を考えると簡単には動けない…」

事例Bさん(42歳): 「子供によい学校に通わせたいと、学校に近い土地を選んで一戸建て住宅を購入。しかし、子供が学校を卒業したあとは、勤務先から距離が遠く、不便であるデメリットが気になりだしました。時間をかけて通勤するのは体にも負担だし、何より時間もかかるので家族との時間も十分にとることができない…」

これらの悲劇は、「子どもの成長」や「子どもの卒業」といった将来の変化は考えればわかるはずのことですが、自分たちのゴール設定に具体的に落とし込めていなかったために起こりました。

目先のことだけに心をとらわれず、長期的な視点で考えることが何よりも大切です。

リスク2:終わりの見えない経済的な後悔

「少し背伸びをすれば買える」という甘い見通しが、後々の家計を圧迫します。

事例Cさん(38歳): 「営業担当者に『今ならこのくらいのローンは組めますよ』と勧められ、予算オーバーのタワーマンションを購入。しかし、固定資産税や管理費・修繕積立金といった維持費が想定以上にかさみ、毎月の支払いで貯蓄はゼロ。子どもの教育費や老後資金の準備まで手が回らない」

「いくら借りられるか(借入可能額)」ではなく、「いくらなら無理なく返せるか(返済可能額)」という視点が欠けていたのです。これは、多くの人が目先のメリットを優先し、将来のリスクを過小評価する傾向にあります。
これを避けるには、しっかりとシミュレーションすることで、備えるべき内容を確認することが重要となります。
だからこそ、「安定した家計を維持し、将来の備えもしっかり行う」という戦略をきちんとたて、リスク値策を検討していれば防げたはずです。

リスク3:「こんなはずじゃなかった」という精神的な不満

物件のスペックや条件ばかりに目を奪われ、本当に大切にしたかった「暮らしの質」を見失ってしまうケースです。

事例Dさん(33歳): 「駅近・南向き・角部屋という好条件に惹かれて購入。しかし、いざ住んでみると、前面道路の交通量が多く、騒音と排気ガスに悩まされる日々に。窓を開けることもできず、せっかくの南向きが台無し。もっと静かな環境を優先すればよかったと後悔している」

「静かで穏やかな暮らし」が本来のゴールだったにもかかわらず、分かりやすい「好条件」という戦術に目がくらんでしまった典型的な例です。どんなに良い条件であっても、ゴールに近づくのに役に立たなければ、意味がありません。土地や住宅を販売する営業マンは、言葉巧みに「買う」ようにささやきかけてきます。
しっかりした戦略(長期的な目標)がなければ、惑わされてしまうことでしょう。

このように、戦略なき住宅購入は、将来にわたってあなたと家族を苦しめる時限爆弾になりかねません。だからこそ、私たちはまず「戦術」という枝葉末節から一旦離れ、「戦略」という揺るぎない幹を打ち立てる必要があるのです。

第2章:羅針盤を手に入れよう!自分だけの「理想の暮らし」を見つける3つのステップ

では、どうすれば自分たちだけの戦略(ゴール)を設定できるのでしょうか。その答えは、不動産情報サイトの中にはありません。
戦略(ゴール)は、実はあなた自身、そして家族の心の中にしかないのです。ここでは、自分たちの価値観を掘り下げ、理想の暮らしを具体化するための3つのステップをご紹介します。

ステップ1:価値観の洗い出し(Why – なぜ家が欲しいのか?)

すべての始まりは「なぜ?」という問いです。ノートやスマートフォンのメモ機能を使って、以下の質問に正直に答えてみてください。そして、家族全員と、ぜひ一緒に話し合いながら進めてみましょう。

  • 質問1:なぜ「今」の住まいではダメなのですか?
    (不満を具体的に書き出す:狭い、古い、寒い、駅から遠い、子育て環境が良くない、家賃がもったいない…)
  • 質問2:家を買うことで「何から解放されたい」ですか?
    (精神的な解放を考える:毎月の家賃支払いのプレッシャー、更新料の心配、隣人への気遣い、収納不足のストレス…)
  • 質問3:家を持つことで「どんな感情」を手に入れたいですか?
    (得たい感情をキーワードで:安心感、満足感、幸福感、達成感、家族の笑顔、ゆとり…)
  • 質問4:あなたや家族にとって「絶対に譲れないもの」は何ですか?(3つだけ挙げてください)
    (優先順位を明確にする:家族団らんの時間、子どもの教育環境、夫の通勤の利便性、妻の仕事との両立、趣味のスペース…)
  • 質問5:これからあなたの収入や貯蓄をどうしたいですか?
    (これからの経済的な自由度を明確にする、自分らしい人生を送りながら、経済的社会的にも安定した人生を送るための仕事や生活のあり方を考える…)
  • 質問6:もしお金や時間の制約がなかったら、「どんな1日」を過ごしたいですか?
    (理想のライフスタイルを自由に描く:朝は広いバルコニーでコーヒーを、昼は在宅ワークに集中し、夜は家族で食卓を囲む…)

これらの質問に答えていくと、断片的に見えた欲求が繋がり、あなたたちが本当に大切にしたい「価値観の核」が見えてきます。
それは「広さ」や「駅からの距離」といったスペックではなく、「家族とのコミュニケーション」「心身の健康」「お金の健康」「将来への安心」といった、より本質的なものであるはずです。

あなたと家族にとって、本質的な価値観を明らかにし、その実現がゴールであることを共有することが、最初の一歩となります。

ステップ2:ライフステージの可視化(When – いつ、どんな変化が訪れるか?)

次に、時間軸を加えて考えてみましょう。現在の状況と、予測される未来のライフイベントを時系列で書き出します。これは「ライフプランニング」と呼ばれる作業です。

  • 現在の状況(現状把握)
    • 年齢(自分、配偶者、子ども)
    • 職業、勤務地、収入、働き方(リモートワークの頻度など)
    • 現在の貯蓄額、毎月の貯蓄可能額
  • 未来のライフイベント(予測)
    • 5年後: 子どもの進学(保育園→小学校)、第二子誕生の可能性、転職・独立の可能性、車の買い替え
    • 10年後: 子どもの進学(小学校→中学校)、親の介護が始まる可能性、自分の昇進・キャリアチェンジ
    • 20年後: 子どもの独立、夫婦2人の生活に戻る、定年退職、退職金の有無
    • 30年後~: 健康状態の変化、セカンドライフの過ごし方

このライフプラン表を眺めながら、「それぞれのステージで、住まいに求めるものはどう変わるか?」をシミュレーションします。

  • 子どもが小さいうちは、公園や小児科が近く、フラットなアプローチの家がいいかもしれない。
  • 子どもが中高生になれば、それぞれの個室や、塾通いに便利な立地が重要になる。
  • 子どもが独立し、家を出ていった後は、夫婦2人で管理しやすいコンパクトな広さで、バリアフリーの家が理想的かもしれない。
  • 将来、実家を相続するかもしれない。
  • 親の介護が現実的になれば、実家に近い場所や、二世帯住宅も選択肢に入るかもしれない。

「終の棲家」という言葉に縛られる必要はありません。ライフステージに合わせて「住み替える」という選択肢も、立派な戦略の一つです。

今の自分たちだけでなく、未来の自分たちの姿を想像することで、購入すべき家に「いつからいつまで住むのか」や「資産価値の重要性」といった、新たな視点が見えてくるはずです。

ステップ3:理想の暮らしの具体化(What – 何を実現したいのか?)

ステップ1(価値観)とステップ2(ライフプラン)を掛け合わせ、いよいよ自分たちのゴールを具体的な言葉で定義します。ここでのポイントは、「どんな家に住みたいか(What)」から考えるのではなく、「どんな暮らしを送りたいか(How)」から発想することです。

【悪い例(Whatから発想)】

  • 「80㎡以上の3LDKで、駅徒歩10分以内の中古マンションが欲しい」

なぜその広さ?なぜその駅?という目的が不明確。より良い条件の物件が出たらすぐにブレてしまう。

【良い例(Howから発想)】

  • ゴール設定: 「夫婦共働きで忙しい毎日だからこそ、平日の夜や休日は家族がリビングに自然と集まり、コミュニケーションが生まれる暮らしを実現したい。そのために、10年後、子どもが思春期になっても孤立しないような、一体感のある空間が欲しい」

導き出される家の条件:

  • キッチンからリビング全体が見渡せるカウンターキッチンは必須。
  • リビングを通らないと子ども部屋に行けない「リビングイン階段」の間取りがいいかもしれない。
  • 個室は最低限の広さでよく、その分リビングダイニングを広く取りたい。
  • 通勤の負担を減らし、家族で過ごす時間を確保するために、夫の職場まで電車で30分圏内。

このように、「暮らし方」を主語にすると、必要な家のスペックや条件は後からおのずと決まってきます。 このゴールこそが、あなたの家探しにおける揺るぎない羅針盤となるのです。
ブレない軸ができれば、不動産会社の営業担当者の巧みなトークや、魅力的に見えるだけの物件情報に振り回されることはもうありません。

ただし、このゴールだけが正解ではありません。どのような場面で安心感や幸福感を得られるか、たくさん考えていただく必要があります。

第3章:ゴールから逆算せよ!後悔しないための具体的なアクションプラン

明確なゴール(戦略)が定まったら、いよいよそれを実現するためのアクション(戦術)を開始します。しかし、やみくもに行動してはいけません。ここでもゴールから逆算し、効率的かつ効果的なアクションプランを立てることが重要です。ここでは、ゴールを達成するために必要なアクションになっているかを、常に確認することが大切です。

アクション1:情報収集からの「ゴール設定」

今までのあなたは、目についた物件情報を手当たり次第に見ていたかもしれません。しかし、羅針盤を手に入れた今、その必要はありません。

  • エリア選定: 自分たちのゴール(例:「子育て環境重視」「通勤利便性」)に基づき、候補となるエリアを3~5つ程度に絞り込みます。自治体のウェブサイトでハザードマップや子育て支援制度を調べたり、実際に街を歩いてみたりと、「暮らし」の視点でリサーチしましょう。
  • 物件種別の決定: 「新築/中古」「マンション/戸建て」のメリット・デメリットを、自分たちのゴールと照らし合わせて比較検討します。例えば、「将来の住み替えも視野に入れる」というゴールなら資産価値が落ちにくい物件、「自分たちらしい空間を創りたい」ならリノベーション向きの中古物件、というように判断軸が明確になります。
  • 検索条件の最適化: 物件情報サイトで検索する際も、設定したゴールに基づいて優先順位をつけます。「リビングの広さ」が最優先なら、他の条件は少し緩めて検索してみる、といった工夫が可能です。これにより、今まで見えてこなかった掘り出し物に出会える可能性も高まります。また、ゴール達成に必要となるスペック等あれば、それらも検索の対象になります。最近では、耐震性能や省エネ性能などは押さえておきたいところです。
  • 情報の整理: 気になった物件は、スプレッドシートなどにまとめて「なぜ気になったのか(どのゴールに合致したか)」「懸念点は何か」を記録しておきましょう。客観的に比較検討することができ、感情的な判断を防ぎます。

アクション2:ライフプランに基づいた「身の丈に合った」資金計画

住宅購入における最大の戦術は、無理のない資金計画です。これも、設定したゴールから逆算して考えます。

  • 総予算の算出: 「いくら借りられるか」ではなく、「理想の暮らし(家族旅行、子供の教育、趣味など)を維持しながら、いくらまでなら毎月返済できるか」を基準に、ゆとりある家計を実現するために許容できる毎月返済額を決めます。

    ここで重要なことは、繰り返しになりますが、資金的な余裕を必ず一定以上にキープすることです。
    現在の家計を詳細に見直し、「将来のための貯蓄」や「不測の事態への備え」並びに、FCF(フリーキャッシュフロー:余裕資金)を少なくとも収入の5%以上を確保した上で、住宅ローンに回せる金額を算定しなければなりません。

    住宅ローンの毎月返済額を計算したら、逆算して借入金額を出しましょう。あわせて、自己資金額を足すことで住宅購入のための総予算を算出することができます。

  • 諸費用と維持費を忘れない: 計算した総予算を全額物件にあててはいけません。

    価格以外にも、物件の取得には仲介手数料、登記費用、不動産取得税などの諸費用(物件価格の5~10%が目安)がかかります。
    また、購入後も固定資産税、管理費・修繕積立金(マンションの場合)、火災保険料、将来のリフォーム費用といった維持費が継続的に発生します。
    もちろん、次に説明する住宅ローンを選ぶことで、利息や住宅ローン控除も決まってきます。これらを含めたトータルコスト」で考える癖をつけましょう。

  • 住宅ローンの戦略的選択: 金利タイプ(変動、固定、ミックス)は、金利動向により正解が決まるものではありません。

    多くの人が将来の金利予測に基づいて変動金利を選択していますが、中には、固定金利をすすめる人もいます。
    しかし、正解を予め知ることができないので、それらの言葉に耳を傾ける必要は一切ありません。あなたがやるべきことは、まず、それぞれの商品が持つリスクを把握することです。
    最悪のケースを想定して、その場合に家計が耐えられるのかを確認することが必要です。


    次に、自分の家計のリスク許容度を図ることです。
    商品選択は、必ず自分のリスク許容度の範囲内に収まるリスクしかとるべきではありません。
    リスク許容度が高ければ、選択の幅は広いでしょうし、リスク許容度が低ければ選択肢は絞られてしまうのです。その検討において、予測は参考程度にしかなりません。

    「子どもの教育費がかかる今後10年間は返済額を固定したい」なら固定金利
    「当面は低金利のメリットを享受し、借入期間を実質的に繰上返済により短くしてリスク負担を小さくできる」なら変動金利

    といったように、自分たちの戦略に合ったローンを選びましょう。
    残念ながら住宅ローンの戦術的な利用方法を正確に理解しているファイナンシャルプランナーは少ないので、専門家が言っているからと盲信してはいけません。
    また、金利ランキングなども盲信してはいけません。

    以下の理由により、調査対象を探す材料としてだけ参考にすべきです。

    1 金利しか記載がないため、諸費用水準によってランキングが変わることがある
    2 借入金額、借入期間が異なることで、ランキングが変わることがあるから
    3 借入条件によっては、優遇金利が異なるため、ランキングが変わることがあるか
    4 掲示されている情報が、単純に金利が低い順になっていなかったり、母集団が少数であったりするから

アクション3:ゴールを共有できる「パートナー(不動産会社)」を見つける

不動産会社の担当者は、単なる物件紹介係ではありません。あなたの戦略を理解し、ゴール達成のために伴走してくれる「パートナー」です。

  • 「何を」ではなく「なぜ」を話す: 不動産会社を訪ねる際は、「80㎡の3LDKを探しています」と伝えるだけでなく、「私たちは、家族のコミュニケーションが生まれるこんな暮らしがしたくて、そのためにこういう家を考えています」と、背景にあるゴール(戦略)を共有しましょう。

  • 提案力を見極める: 残念ながら買い手の味方となる不動産の担当者は、とても少ないと私は感じています。日本では、どちらかと言えば、売り手の味方となる人が多いと感じています。
    従って、可能であれば買い手の味方をする担当者を探しましょう。例えば、売り手と買い手のどちらの担当にもなるケースは、買い手の味方だとは言い切れないでしょう。

    また、あなたのゴールを深く理解し、あなた自身も気づかなかったような選択肢を提案してくれるような、買い手の利益を極大化しようとする担当者を見つけたいものです。
    ただ希望条件に合う物件を右から左へ流すだけでなく、「このエリアなら、こういう暮らしも実現できますよ」「ご予算を考えると、こちらの選択肢はいかがですか」と、プロの視点から多角的な提案をしてくれるかどうかが重要な見極めポイントです。

  • 相性も大切に: 高圧的な態度をとったり、こちらの話を真剣に聞いてくれなかったりする担当者とは、長期的な関係を築くのは困難です。相手は、情報強者であり、百戦錬磨の営業マンであることが多く、心理的な駆け引きなどでうまく誘導される可能性が高いことを予め知っておくべきです。

    適切な選択肢をタイムリーに提供してくれること、決定を強制してこないこと、何でも正直に話せる、と感じられるかどうか、などの観点からがポイントとなるでしょう。あなたの人生の大きな決断を任せるに値する人物か、しっかりと見極めましょう。

自分たちの戦略を明確に伝えれば、不動産会社も単なる「物件探し」から「理想の暮らしの実現」へと、仕事のステージを上げてくれます。結果として、得られる情報の質も提案のレベルも格段に向上することが期待されます。

結論:家を買うことは、理想の暮らしの「スタート」である

ここまで、住宅購入における「戦略(ゴール設定)」の重要性についてお話ししてきました。多くの人が陥りがちな「戦術」先行の家探しから脱却し、自分たちだけの羅針盤を手に入れるための具体的なステップをご理解いただけたでしょうか。

改めてお伝えしたいのは、家を買うことはゴールではないということです。
それは、あなたが、そしてあなたのご家族が、これから何十年にもわたって紡いでいく「理想の暮らし」を実現するための、ひとつの「手段」であり、「スタート」に過ぎません。

スタートラインに立つ前に、自分たちがどこへ向かいたいのかを明確にする。その作業は、一見すると遠回りに思えるかもしれません。
しかし、この最初に費やした時間こそが、将来の「こんなはずじゃなかった」という後悔からあなたを守り、「この家を選んで本当に良かった」という心からの満足感へと繋がる、最も確実な道筋なのです。

溢れる情報に惑わされたり、他人の価値観に振り回されたりする必要はもうありません。あなたの中に眠る「本当の望み」を掘り起こし、未来の家族からの「ありがとう」につながる戦略を、今こそ立ててみませんか。

この内容が、あなたの戦略的な住まい選びのお役にたてば、筆者としてはこの上なく幸いです。物件情報、建築情報、金融情報を集めるだけを集めても、おそらく後悔をなくすことは 難しいでしょう。

後悔しないために最も重要なことは、繰り返しになりますが、家族全員が目指すべきゴールを定めることであり、そこから逆算して選択をすることなのです。

これらの知識や考え方を通して、あなたの理想の暮らしの実現に貢献できれば幸いです。あなたの住まい探しが、実りある素晴らしい旅になることを心から願っています。



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この記事を書いた人

保有資格:証券外務員/内部管理責任者/損害保険(一般)/住宅ローンアドバイザー
銀行、外資証券会社を経て、2006年にホームローンドクター株式会社を設立。
住宅ローンの本格的なコンサルティング会社として、これまでに6000件を超える相談実績を持つ。

全国で住宅ローンの専門家を養成する活動も行っている。住宅ローンだけでなく、ライフプラン全体を俯瞰し、資産サイドと負債サイドの両方の視点からリスクとコストのバランスを考慮した適正な提案を提供している。
複数の著書を出版しており、ダイヤモンド不動産研究所や住宅ローンアドバイザー通信で執筆連載中。

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