心理的瑕疵物件とは?告知義務・住むリスク・安く賃貸する方法を徹底解説!
賃貸や購入を検討していると「告知事項あり」という表記を目にすることがあります。
告知事項がある物件では心理的瑕疵が該当するケースが多く、よく分からないまま契約を進めるとトラブルになる恐れがあります。
とはいえ、心理的瑕疵がどのようなものか、何に気をつければいいのか分からない方もいるでしょう。
この記事では、心理的瑕疵物件の基本や知っておきたいこと、メリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。


そもそも心理的瑕疵物件とは?
まずは、心理的瑕疵物件の定義や他の瑕疵との違いについてみていきましょう。
心理的瑕疵の定義

心理的瑕疵とは、構造的には問題ないものの住む人が心理的な抵抗や嫌悪を感じる不動産の欠陥のことです。
具体的には、自殺や他殺、事故、火災などで人の死があった物件が該当します。
一般的に「事故物件」と呼ばれる物件も基本的には心理的瑕疵があった物件を指すケースがほとんどです。
「心理的瑕疵あり」は法律で定められているか
心理的瑕疵は契約判断に大きな影響をもたらすため告知義務があります。
とはいえ、人の死のあった物件をどのように捉えるかは人によって異なるものです。
同じ死因でも気にしない人がいれば、気になって住めないという人もいるでしょう。
従来、その告知の要否や内容については明確な判断基準がなかったことから、心理的瑕疵物件では告知を巡ってトラブルになるケースも珍しくありませんでした。
そこで、国土交通省では心理的瑕疵物件の告知トラブルを防ぐため、2021年「人の死の告知に関するガイドライン」において心理的瑕疵の告知義務についてを明確に定義しています。
これにより、人の死についての告知義務の範囲が明確になり、不動産取引ではガイドラインに沿って告知することが求められているのです。
心理的瑕疵と物理的瑕疵の違いとは?
そもそも「不動産の瑕疵」とは、不動産が本来の品質や性能を欠いている状態を指し、瑕疵の内容によって以下の4種類に分かれます。
- 物理的瑕疵
- 心理的瑕疵
- 環境的瑕疵
- 法律的瑕疵
なかでも、代表的な瑕疵が物理的瑕疵です。
物理的瑕疵とは建物や土地自体の欠陥を指します。
具体的には、建物なら雨漏りやシロアリ被害、傾き、ひび割れなど、土地であれば土壌汚染や地中埋設物、軟弱地盤といった物理的な欠陥が物理的瑕疵です。
一方、心理的瑕疵は、住むことに対して不安や嫌悪感などを抱く欠陥です。
この場合、不動産自体の構造などには問題なく、あくまで心理的なものになります。
物理的瑕疵と心理的瑕疵は同じ不動産の瑕疵であり混同しやすいですが、瑕疵の内容が異なる点を覚えておきましょう。
ちなみに、環境的瑕疵とは周囲に嫌悪施設があるなど周辺環境の欠陥、法律的瑕疵とは建築基準法を満たしていないといった法律に対しての欠陥を指します。
なお、心理的瑕疵に限らずいずれの種類の瑕疵であっても告知義務の対象です。
告知せずに不動産取引を行うと、契約不適合責任を問われるリスクがあるので注意しましょう。
心理的瑕疵物件を借りる・買う前に知っておきたいこと
ここでは、心理的瑕疵物件を借りる・買う前にしておきたいことについて以下の項目に沿って解説します。
- 告知義務があるケース・ないケースの違い
- 契約書で確認すべきポイント
- トラブルに遭わないための対策と質問例
それぞれ見ていきましょう。
告知義務があるケース・ないケースの違い

人の死のあった物件はすべての死因で告知義務があるわけではありません。
国土交通省のガイドラインにおいて、以下のケースでは告知義務の対象外とされています。
- 老衰や持病などでの自然死
- 階段からの転落や入浴中の溺死などの日常生活の中での不慮の事故死
- 隣家や日常的に使用しない共用部分における事案
反対に、自殺や他殺、不慮の事故死を除く事故による死亡、火災による死亡などは告知義務の対象です。
また、自然死や不慮の事故死であっても長期間放置され特殊清掃が必要になった場合は、告知義務の対象となります。
なお、賃貸契約では事案が発生してからおおむね3年間が告知義務の対象です。
事案発生から年数が経っている、事案後に賃借人が変わっているなどで告知義務があいまいになりやすいですが、3年以内の物は賃借人が変わっていても告知義務の対象となります。
ただし、事案の内容によっては3年経過しても告知義務があるとされ、されに売買取引については告知期間の定めはありません。
契約書で確認すべきポイント
心理的瑕疵物件を契約する際にはトラブルやリスクを避けるためにも、契約書や物件情報の内容をしっかりチェックすることが大切です。
心理的瑕疵物件がある場合は、チラシなどの物件情報には「告知事項あり」などと表記される場合があるので内容を不動産会社に確認しましょう。
また、契約書や重要事項説明では、特記事項や告知書などでその旨の記載が必要です。
特記事項や告知書では以下のような内容が記載されるので、許容できるのかをしっかり確認するようにしましょう。
告知内容
心理的瑕疵について以下の内容を相手に告知するのが一般的です。
- 発生時期
- 発生場所
- 死因
- 特殊清掃実施の有無
心理的瑕疵についての詳細な記載があるので、どのような物件でどんなリスクが潜んでいるかをしっかり把握するようにしましょう。
ただし、亡くなった方の年齢や氏名、遺族の情報などはプライバシー保護の観点から告知不要とされています。
告知範囲
告知書などでは、「掲載された情報は調査の範囲で判明したことでそれ以外の事由も存在する可能性がある」旨が記載されている場合があります。
これにより契約後に告知書に記載のない事実が判明しても、調査方法に重大な過失がない限り責任が問えなくなる可能性があります。
買主・借主の権利
心理的瑕疵の内容を告知すると当時に、心理的瑕疵を理由として契約解除の放棄などが特約で設けられているケースもあります。
契約後に契約解除で制限や違約金が発生しないかは、しっかり確認するようにしましょう。
なお、告知の方法や記載内容は不動産会社によって異なるので、不明点はしっかり確認し慎重に契約を進めることが大切です。
トラブルに遭わないための対策と質問例
心理的瑕疵物件でトラブルにならないためには、心理的瑕疵がある物件かを見極めることが重要です。
以下のような物件は心理的瑕疵の可能性があるので、慎重に物件情報を入手するようにしましょう。
- 広告などの「告知事項あり」の記載がある
- 家賃や売却価格が相場よりも極端に低い
- 部屋の一部など不自然なリフォーム履歴がある
- 物件名などが変更されている
このような物件の場合は、不動産会社に以下のような質問をしてみるとより詳細な情報を得ることが可能です。
- 過去に事故や事件がなかったか?
- 一部のみリフォームされている理由は?
- 売主の売却理由は?
- 前の入居者の退去理由は?
事故物件かどうか気になる場合は、間接出来ではなく直接確認した方があいまいにされにくくなります。
物件の状況や質問の回答などを踏まえて、慎重に物件を選ぶようにしましょう。
【賃貸】心理的瑕疵物件を借りるメリット・デメリット
ここでは、賃貸で心理的瑕疵物件を借りるメリット・デメリットについてみていきましょう。

メリット
メリットとしては以下が挙げられます。
- 賃料が安い
- 入居しやすい
心理的瑕疵物件は借り手が付きにくい傾向にあります。
入居者を見つけるために相場の賃料よりも安くしている物件も多いため、同条件の物件であれば心理的瑕疵物件の方が安い賃料で住める可能性があります。
また、条件の良い賃貸物件はすぐに入居者が決まってしまいますが、心理的瑕疵物件は入居者がつきにくくなります。
好条件の物件でも入居できる可能性がある点もメリットと言えるでしょう。
心理的瑕疵の内容に気にしない人であれば、好条件の物件にお得に住める点が心理的瑕疵物件の魅力です。
デメリット
デメリットとしては以下が挙げられます。
- 精神的な負担になる
- 告知されていると契約解除などができない
心理的瑕疵の内容を気にする人は、住むことで精神的な大きな負担を感じるでしょう。
仮に住むまでは気にしないと思っていても、日常的なちょっとしたことを心理的瑕疵と結び付けて考えてしまい徐々にストレスになるケースもあります。
自分は気にしなくても周囲が「心理的瑕疵物件に住んでいる人」という目で見て、噂されることで日常生活に影響が出る恐れもあるので注意が必要です。
また、契約時に告知義務を満たしている場合、契約後に心理的瑕疵を理由として契約の取消や損害賠償請求はできません。
契約後に「やっぱり住めない」と言って引っ越しが必要になると、引っ越し代など経済的な損失も発生するので注意しましょう。
【購入】心理的瑕疵物件の不動産投資・売却の知っておきたいこと
ここでは、心理的瑕疵物件を購入する際に知っておきたいこととして以下の項目に沿って解説していきます。
- 売買でも告知義務はある?
- 売却時に価格はどれくらい下がる?
- 投資用として心理的瑕疵物件を狙う人もいる?
それぞれ見ていきましょう。
売買でも告知義務はある?
心理的瑕疵は売買でも告知義務があります。
告知義務を果たさずに売却すると売主は契約不適合責任を問われ、契約解除や損害賠償請求を受けるといったリスクがあるので注意が必要です。
なお、賃貸では告知義務はおおむね3年ですが、売買は期間の定めはありません。
裁判所の判例では50年前の事案で心理的瑕疵が認められたケースもあるため、以前の事案だからといって告知しないのはおすすめできません。
また、建物を解体や建て替えした場合でも告知義務はあります。
さらにガイドラインでは搬送先での死はガイドラインの対象外というように明確になっていない部分もあります。
告知義務は自分で判断するとトラブルになる恐れもあるので、不動産会社や弁護士などの専門家に相談して告知すべきかのアドバイスをもらうことが大切です。
売却時に価格はどれくらい下がる?
心理的瑕疵物件は売却価格も下がる傾向にあります。
心理的瑕疵の内容によっても異なりますが、20~30%ほど安くなるのが一般的です。
たとえば、通常なら3,000万円で売れる物件であれば2,100~2,400万円ほどに下がります。
さらに、修繕などでは心理的瑕疵の解消が困難であるため、下がったまま価格が戻らないケースが多いでしょう。
また、価格を下げても売れにくく、空き家状態で保有しなければならないケースも珍しくありません。
ただし、心理的瑕疵物件だからと言って必ず大きく価格が下がるわけではありません。
心理的瑕疵の原因はさまざまあり、また、瑕疵の捉え方は人によって異なるので、それほど価格が下がらない可能性もあります。
とはいえ、売りにくい傾向はあるので、売却を検討する際は不動産会社に戦略などを相談しながら売却することをおすすめします。
投資用として心理的瑕疵物件を狙う人もいる?
不動産投資では、購入額を抑えることで利回りを高くすることが可能です。
心理的瑕疵物件は相場よりも価格が下がることから、安く購入して利回りを高くしたい投資家からの需要もあります。
この場合、心理的瑕疵物件を購入しリフォームなどして再販して利益を得る、もしくは賃貸として貸し出し賃料収入を得るケースが一般的です。
ただし、心理的瑕疵物件は購入後の再販や賃貸でマイナスになりやすい点には注意が必要です。
心理的瑕疵の内容が軽微で立地条件がよい物件であれば、購入後の運用が期待でき投資の成功につながる可能性があります。
心理的瑕疵物件を狙った投資は、知識やノウハウが必要です。
検討する場合は、心理的瑕疵物件の取り扱い豊富な専門家に相談することをおすすめします。
心理的瑕疵物件を探すには?一括検索・専門サービスの活用
心理的瑕疵を気にしない人なら安く購入や賃貸できるという魅力のある物件です。
とはいえ、心理的瑕疵物件はどのように探せばいいのでしょうか。
ここでは、心理的瑕疵物件の探し方を解説します。
一般的な不動産サイトでは探せない?
不動産ポータルサイトで心理的瑕疵物件を探すには、検索キーワードで「心理的瑕疵」や「告知事項あり」などで検索するとヒットする可能性があります。
しかし、瑕疵の内容については非掲載なケースがほとんどです。
瑕疵といっても内容は物件によって大きく異なるため、自分にとって許容できる範囲かを調べるには、不動産会社に問い合わせる必要があります。
「告知事項あり」専門サイトの活用法
告知事項ありなどの訳あり物件を専門的取り扱っているサイトを活用するのも一つの方法です。
事故物件を検索できるサイトとして代表的なのが「大島てる」です。
大島てるを利用する場合は、サイトにアクセスし希望するエリアや条件を入力すれば候補となる物件情報を検索できます。
ただし、大島てるの信ぴょう性を問題視する指摘もあるので、物件の詳細情報は必ず不動産会社などに確認するようにしましょう。
他にも、JKK東京や成仏不動産、UR賃貸住宅などでも事故物件を調べることが可能です。
自社の一括査定・相談サービスの案内
事故物件かを見極めるポイントに、賃料が相場よりも極端に低いことが挙げられます。
周辺の賃料相場を調べ、明らかに安い場合は心理的瑕疵を含めて何かした原因が隠れている可能性があるでしょう。
賃料の相場をチェックするなら、「マンションナビ」を活用してみてください。
マンションやエリアだけで簡単に賃料相場がチェックできるだけでなく、売却相場の確認できるので購入か悩む場合の比較材料としてもおすすめです。
また、プロの専門家が不動産に関するお悩みに無料で応えるサービスも提供しているので、瑕疵の可能性を含めて相談でき、安心して物件を探すことができます。
心理的瑕疵物件に関するよくある質問
最後に心理的瑕疵物件に関するよくある質問をみていきましょう。
まとめ
心理的瑕疵物件とは、自殺や他殺など人の死のあった物件です。
ただし、自然死や病死、日常的な事故死などの死は心理的瑕疵には該当しません。
心理的瑕疵物件は相場よりも価格が低い、スムーズに入居できるなどのメリットもあるので人の死を気にしない人なら魅力のある物件です。
とはいえ、心理的瑕疵は契約後にトラブルになるリスクもあるので、事前に情報をしっかり収集しておき本当に契約してもよいかは慎重に判断する必要があります。
信頼できる不動産会社に相談しながらトラブルのない契約を目指すとよいでしょう。