【東京都23区】中古市場の上昇率が低いエリアでも、価格が高騰しているマンションの特徴は?

近年、首都圏の中古マンション市場は大きな変化を迎えています。

東京都心部では価格が急騰する一方、郊外エリアでは比較的安定した動きを見せています。このような価格動向の背景には、富裕層や投資家による需要の変化や、エリアごとの特性が影響しています。

本記事では、最新の市場データをもとに、首都圏中古マンション市場の現状について詳しく解説していきます。

目次

首都圏中古マンション市場の現状

東京都心部での価格急騰の背景

千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区で中古マンション価格が急上昇しています。この背景には、富裕層や国内外の投資家による高級物件への高い関心が一因となっています。

特に1億円以上の高額物件が多く取引されており、このような物件が全体の平均単価を引き上げています。

埼玉・千葉・神奈川エリアの価格動向

一方で、埼玉県・千葉県・神奈川県では大きな価格変動は見られません。これらの地域では需要と供給が安定しており、ファミリー層を中心に堅実な需要が続いています。

ただし、交通利便性が高い駅周辺や再開発が進むエリアでは、一部で価格上昇が見られることもあります。

価格二極化の要因

価格の二極化は、都心部と首都圏の郊外エリアで異なる要因が複雑に絡み合って生じています。

東京都心部(上昇傾向)

都心部では、依然としてマンション価格の上昇傾向が続いています。

特に、都心5区と呼ばれる千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区においては、その傾向が顕著です。これらの地域は、交通の便が非常に良く、商業施設や文化施設なども充実しているため、富裕層や高所得者層からの需要が非常に高いです。また、海外からの投資家も都心部の高級マンションに注目しており、需要をさらに押し上げる要因となっています。

首都圏の郊外エリア(横ばいまたは下落傾向)

一方、首都圏郊外エリアでは、需要と供給がバランスよく保たれており、大幅な価格変動は起きていません。これらの地域では、都心部に比べて住宅価格が手頃であり、ファミリー層からの支持が一定あるものの都心ほどの需要には届かない傾向にあります。

しかし、首都圏郊外エリアによっては、人口減少や高齢化が進んでいる地域もあり、需要の低下により価格が下落するという影響を与えていると考えられます。

ただし、一部の再開発エリアや駅近物件では例外的に価格上昇が見られることがあります。

価格が上昇しづらいエリアとその理由

国道16号線内側2024年(対2023年)エリア別中古マンション価格高騰率【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研】
図1:国道16号線内側2024年(対2023年)エリア別中古マンション価格高騰率
【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研

図1では、東京を中心とした国道16号線内側における2024年の中古マンション価格の高騰率(2023年比較)をエリア別に可視化しています。色分けされたプロットは、エリアごとの価格上昇の度合いを表しています。

このような価格高騰率の低い(=相場が伸びにくい)エリアの中でも、特定の条件を満たすマンションが高値で取引されるケースが多く見られました。

今回の分析では、青色プロット(価格高騰率5%未満)のエリアをランダムに抽出し、その中で価格が高騰しやすいマンションの特徴を詳しく調査しました。

文京区本郷エリア

文京区本郷エリア中古マンション価格高騰率【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研】
図2:文京区本郷エリア中古マンション価格高騰率
【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研

文京区本郷は大学周辺地区として知られています。この地域では一般的な住宅需要が少なく、新たな再開発も進んでいないため、市場競争が激化していません。その結果、他エリアと比べて価格が上昇しづらい傾向があります。

品川区南大井エリア

品川区南大井エリア中古マンション価格高騰率【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研】
図3:品川区南大井エリア中古マンション価格高騰率
【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研

品川区南大井は、大井町駅や品川駅周辺への人気集中によって相対的に注目度が低い地域です。また、このエリアには工業地帯や物流施設も多く存在しており、住居需要が限定的です。

江東区大島エリア

江東区大島エリア中古マンション価格高騰率【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研】
図4:江東区大島エリア中古マンション価格高騰率
【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研

江東区大島は海抜が低く、洪水リスクがあります。また、隅田川や荒川など河川増水時の影響を受けやすいため、不動産購入時には慎重な検討が必要です。

参考
江東区洪水大潮ブックレット
江東区洪水ハザードマップ

価格高騰しやすいマンションの条件

セグメント別:価格が上がった中古マンションの割合【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研】
表1:セグメント別:価格が上がった中古マンションの割合
【出典:マンションリサーチ株式会社 福嶋総研

価格が上がりやすいマンションには、いくつかの共通点があります。特に「エリア」「築年数」「駅徒歩距離」は重要な要素です。

築年数の観点では、文京区本郷は2001年以降築で約49%の上昇率、品川区南大井は1983~2000年以降築で約45%の上昇率、江東区大島は2001年以降築で約44%・1983~2000年以降築は約45%の上昇率がみられます。※小数第二位を四捨五入

駅徒歩の観点では、文京区本郷は駅徒歩5分以内で約39%・6~10分以内で約33%の上昇率、品川区南大井は駅徒歩5分以内で約42%の上昇率、江東区大島は駅徒歩5分以内で約37%・6~10分以内で約52%の上昇率がみられます。※小数第二位を四捨五入

これらのデータから、築年数や駅距離の条件が揃うマンションほど、価格上昇の可能性が高まる傾向があることがわかります。

築年別 中古マンション価格上昇傾向

築年数によっても価格上昇率には違いがあります。

エリア築年数の条件上昇率
文京区本郷2001年以降に建築約49%
品川区南大井1983年~2000年築約45%
江東区大島1983年以降に建築約44%

例えば、新耐震基準(1981年以降)を満たすマンションは、安全性への評価から人気が高まりやすく、結果として価格も上昇する傾向があります。

新耐震基準とは?

1981年6月1日に施行された建築基準法の耐震基準で、震度6強~7程度の地震でも倒壊しないことを目的としています。旧耐震基準と比べて耐震性が大幅に強化されており、地震による人的被害を最小限に抑えるために制定されました。

駅徒歩距離別 中古マンション価格上昇傾向

駅から徒歩5分以内など交通利便性が高い物件は、その希少性から価格が上昇しやすいです。一方で徒歩10分以内でも新耐震基準を満たすマンションの場合、同様に人気を集めることがあります。

エリア駅徒歩5分以内の上昇率駅徒歩6~10分の上昇率
文京区本郷約39%約33%
品川区南大井約42%
江東区大島約37%約52%

まとめ

首都圏では、一般的に「駅から近い」や「築年数が浅い」といった特徴を持つマンションが人気ですが、データを見てもこれらの要素が物件価格に与える影響が明確に示されています。

エリアによってばらつきはあるものの、新耐震基準を満たすマンションや、駅から徒歩10分以内のマンションは、物件価格が上がりにくいとされる地域でも高騰する傾向が見られます。

築年と駅徒歩距離の要素のみならず、エリア特性による防災リスクや将来性を考慮し、判断をすることが大切です。

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この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

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