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いよいよ東京オリンピックが直前に迫ってきましたね!しかし、世界的なイベントに期待が高まる反面、「閉会後の不況」に不安を抱いている方も少なくないのではないでしょうか?
「オリンピック開催国は、大会閉会後に不況になる」との印象を持っている方もいらっしゃるでしょう。2004年アテネオリンピック後のギリシャの財政危機などを見ると、日本のオリンピック後のことも心配になってしまいますよね。
ただ実は、オリンピック閉会が直接的要因となって景気が後退したという事例は、近年の夏季五輪においては少ないのです。
今回は、「不動産」と切っても切り離せない「経済」が、オリンピック後にどうなっていくのかについて、過去の五輪開催国の事例を見ながら考えていきたいと思います。
それではまず、近年(1984~)の夏季オリンピック開催国の大会前後の景気動向を見ていきましょう。
(国際通貨基金による数値から筆者が作成)
上記の表は、各国のオリンピック開催前後2年間の経済成長率の推移を表したものです。
1996年のアトランタ大会、2016年のリオ大会を除いて、各国とも、開催翌年に一度、数値が落ちていることがわかります。下降に転じた国は、開催2年後にはほぼ水準が戻っていることも見て取れます。オリンピック開催直後にマイナス成長となっているのは、近年、夏季五輪開催国の中ではスペインバルセロナのみです。
「やはりオリンピック後には一定期間、不況になるのでは?」との見方もできますが、開催後の落ち込みについては、全てがオリンピック閉会によるものとは言い切れません。それは、1992年バルセロナ大会後にはヨーロッパ通貨危機が、2000年シドニー大会後にはITバブル崩壊が、2008年北京大会後にはリーマンショックが起こり、オリンピック開催国のみならず、世界的に景気が低迷した時期とそれぞれ重なるからです。
ギリシャについては、世界的・地域的な経済危機が見られない中での景気後退ですので、オリンピック閉幕の影響はなかったということはできないでしょう。ギリシャの敗因は、オリンピック関連施設建築やインフラ整備にお金を使いすぎたことだと言われています。
ギリシャは、オリンピック開催の2年前にユーロに加盟。資金調達が容易になったことで、オリンピックの成功のみならず、大会後の観光大国化を目指し、空港整備などに必要以上に予算をつぎ込んでしまったんですね。
では、前回、東京でオリンピックが開催されたときはどうだったのでしょう?
日本で初めてオリンピックが開催されたのは、昭和39年のことです。実はこのとき、大会閉会後の昭和39年後半~昭和40年にかけて、「昭和40年不況」と呼ばれる経済危機が訪れたのです。
(内閣府による数値から筆者が作成)
不況のきっかけとなったのは、オリンピック閉幕と金融引き締め。“金融引き締め”とは、今、日本で執られている「金融緩和」の逆の政策ですね。この不況は「証券不況」とも呼ばれており、企業倒産の多発、企業収益率の低下、株価の不振とともに、大手証券会社が軒並み赤字となりました。(参考:経済企画庁)
昭和39年のオリンピック前の日本は、高度経済成長期真っただ中の時期です。とくにオリンピック前の昭和37年~大会開催までは「オリンピック景気」と言われ、新幹線や首都高などのインフラ整備、各競技施設の建築、テレビの普及などによってさらに景気が上向いていきました。そんな中起こった昭和40年不況は、オリンピック景気の“反動”という側面は否めません。
しかし、元来、成長期だった当時の日本は、景気回復も早いものでした。不況の発端となった山一證券への日銀特融(再建措置)を行ったことで株価は上昇していき、昭和40年後半からは、いわゆる「いざなぎ景気」と呼ばれる戦後最長の景気拡大を迎えます。結果として、不況は1年足らずで収束し、さらなる成長を続けたのです。
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過去のオリンピック開催地の閉会後の景気動向を見てきましたが、2020年夏、東京オリンピックが閉会した後の日本の景気はどうなっていくのでしょうか?
ことしの日本経済について、民間のエコノミストの間では、景気の回復がこれまでより減速するという見方が多くなっています。東京オリンピック・パラリンピック後には消費や投資が失速することも懸念されていて、景気を支えてきた国内需要が持ちこたえられるかが焦点となります。(2020/1/3NHKニュース)
五輪を契機として増加している建設および訪日需要は、五輪後に急激にしぼんで減退の一途を辿るといった可能性は低い。五輪大会終了をきっかけに景気後退に陥る、つまり五輪ロスに対する過度の懸念は不要だろう。しかし、2020年頃になると、五輪大会終了以外の景気下押しリスクが現実化する確率が高まるタイミングである点には留意が必要である。つまり、五輪終了ではなく他の要因によって五輪開催後に景気が大きく減速するリスクはある。(みずほ総合研究所)
東京五輪の場合は、国、大会組織委員会、東京都がそれぞれいくら負担してどうのこうのとやっているが、公費(税金)を使う時点で最初から歪んでいるのだ。したがって、東京五輪は短い宴が終わったら、残るのは不要な巨大施設や利用者の少ない交通インフラと、国民にツケが回る大赤字だけだろう。(大前研一氏)
今回の東京オリンピックは、当初、“エコ”かつ“コンパクト”に大会運営していくとの方向性を示していました。しかし、ふたを開けてみれば、当初7,000億円だった予算は3兆円までに跳ね上がるともいわれています。
過去の開催地の事例を見てみれば、なんとしても避けなければならないのはギリシャの二の舞です。カギとなるのは、東京オリンピックに向けて整備された交通インフラや集まった日本への注目から、持続的に、効果的に、経済効果を維持できるかとなるでしょう。
そして、これから不動産売買を考えている方は、オリンピック後の経済の動向のみならず、直接的に不動産取引に関わる住宅ローン金利水準の動きと、金利水準に大きく影響する金融緩和政策の動向、さらに2020年以降、不動産価格に大きく影響するとみられる「生産緑地問題」の行方などにも注目すべきです。
「オリンピック開催国が不況になる」というわけではありません。オリンピックの閉会は、景気にしても不動産市場にしても、影響を与える一つの事柄にすぎないのです。
そして率直に言えば、不動産売買を考えている方が気になるのは、これから売買を考えているエリアの相場動向ではないでしょうか?経済や市場全体の動きを見ることも、もちろん大切です。しかし、国際的なイベント以上に、地元駅の再開発の方がそのエリアの不動産価格に大きく影響することもあります。
2020年以降はとくに、自分の家の価値がどう推移していくのか、購入希望地の地価や価格相場がどうなるのかに敏感になってみましょう。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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