ベトナム南部の中心都市・ホーチミンでは、経済成長とともに都市開発が加速し、街の景観やインフラは目まぐるしく変化しています。
私たちが現地を訪れるわずか数日前にも、1区と3区の合併※という都市構造に関わる大きな行政再編が行われたばかり。まさに「国の方針で街が一晩で変わる」、そんな社会主義国家ならではのダイナミズムを肌で感じる視察となりました。※出典:日本貿易振興機構(JETRO)「ホーチミン市、1区と3区を合併」2025年7月1日
今回は、すみかうる編集部が実際にホーチミンを訪れ、都市再開発やメトロ建設の現場を歩いて体感。その空気感を、写真や地図とともにリアルにお届けします。
ホーチミンの開発ラッシュが止まらない!都市再編の全貌
ベトナム・ホーチミンでは、ここ数年、目を見張るような都市開発が進んでいます。
背景にあるのは、年間6%超の経済成長率と、人口増加による都市機能のひっ迫です。もともとベトナム最大の経済都市であったホーチミンは、現在、国を挙げての再開発プロジェクトが進行中。都市インフラの刷新と再整備によって、いまや“東南アジア最後のブルーオーシャン”として世界中の投資家の注目を集めています。
都市再編のキーワードは「メトロ整備」「道路インフラ拡充」「新CBD(中央業務地区)の形成」。これらのプロジェクトに連動するかたちで、不動産価格も急上昇を続けています。現地では韓国・シンガポール・日本などの外資系ディベロッパーが多数進出し、タワーマンションや複合商業施設の建設ラッシュが続いています。
ホーチミン都市鉄道(メトロ)計画とは?【最新情報まとめ】
現在ホーチミン市で進められている都市鉄道計画(メトロ)は、全8路線。

市民も観光客も待望の都市鉄道路線として、2025年にようやく「1号線(ベンタイン駅〜スオイティエン駅)」開通しました。

私たちが乗車したのも、この1号線の区間「Tan Cang駅」~「Ben Thanh駅」間です。


Tan Cang駅の様子(2025年7月)








工事は、日本の大手ゼネコン(清水建設・前田建設工業JVなど)によって進められ、安全管理体制も国際水準。地元住民への説明掲示や仮設通路の整備なども丁寧に行われてきました。
当初は2020年の開業を予定していたものの、コロナ禍や資材調達遅れの影響を受け数度の延期を経て、ついに2025年開通。車やバイクが中心のホーチミンの都市交通において、公共交通への転換の第一歩として大きな注目を集めています。
実際に編集部が乗車した際には、ホームや車両内に点字ブロックや社内案内表示が整備されており、日本の鉄道インフラと近しい安心感がありました。改札はQRコード式で、紙のチケット(片道7,000ドン=約40円)を機械にかざして通過します。



下車したベンタイン駅ではQRコードの読み取りがうまくいかず、改札前に長蛇の列が…。日本では当たり前にスムーズに使えるのに、海外ではそうはいかないんですね。日本の技術の高さを改めて実感しました。
まだ課題はありますが、これからの改善が楽しみです!
Tan Cang駅の様子(2025年7月)












平日昼間ということもあり、自分たちを含み外国人の利用者が目立ちました。現地の方に話を伺うと、「まだまだ移動はバイクが基本」とのことでしたが、今後は学生や通勤層を中心に、徐々に利用が広がっていくとの見方もあります。
今後、通勤・通学の利便性向上だけでなく、沿線不動産の価値向上にもつながるインフラ整備として、さらなる発展が期待されています。
メトロ整備とエリア別の不動産価値への影響
メトロ建設の進展に伴い、路線沿線の地価はすでに大きく動いています。特に「ベンタイン駅〜トゥーティエムエリア」にかけては、再開発と不動産投資が同時進行しており、マンション価格は2015年比で約1.5〜3倍に上昇しているとの調査もあります。
再開発エリア | 状況や雰囲気 | 東京で例えるなら |
---|---|---|
旧1区(旧市街地) | 商業の中心でありながら再開発も盛ん。高層複合ビルが続々誕生。 | 丸の内・銀座 |
旧2区(トゥーティエムエリア) | 新CBDとして政府が重点整備中。再開発の雰囲気が強い。 | 豊洲〜晴海 |
旧7区 | 計画的に整備された街並みが特徴。幅広い道路や緑地、整った住宅地が広がっている。国際学校や大型ショッピングモールも点在。 | 二子玉川的な落ち着いた住宅地 |
といった立ち位置で、都市機能が分散配置されつつある印象を受けました。



メトロを使えば、わずか20〜30分の移動で“まるで別の都市”のような雰囲気のエリアにアクセスできます。距離以上に空気感や街並みの変化を感じられるのが、ホーチミンの面白さですね。実際に現地を訪れて、その変化と都市のダイナミズムを体感していただきたいです!
街の今とこれから:注目エリアの“将来価値”比較
ホーチミン市では、メトロ1号線の開業と再開発を契機に、不動産市場が大きな転換点を迎えています。なかでも、実際に編集部が訪れた3つのエリアは、生活利便性だけでなく、将来的な資産価値の観点からも注目されています。以下では、それぞれのエリアの特徴や将来性を、交通インフラや不動産市場の視点からご紹介します。


エリア①:旧1区(ビジネス・観光の中心)
成熟度と再開発の“二面性”が混在する中心地
ホーチミンの政治・経済・観光の中心地である旧1区は、今もなお新しいビルの建設や老朽建物のリプレイスが進み、成熟した都市でありながら再開発余地を残すエリアです。
交通面では、メトロ1号線「ベンタイン駅」が既に開業しており、今後は2号線・3A号線・4号線など複数路線の乗り入れも予定されています。駅周辺では地下商業施設の整備も進行しており、交通と商業の複合的な価値が高まっていくと期待されています。
すでに地価は高水準にありますが、再開発によるリプレイス案件や狭小土地の統合による新築物件の供給も継続しており、今後も安定した資産性が見込まれます。
商業施設や街の様子(2025年7月)









町歩きには最高のエリアでした!歴史ある建築と最新の商業施設が混在していて、歩くだけでも都市の“今と昔”を体感できます。建物ひとつひとつが大きくスケール感があり、観光だけでなく、再開発のダイナミズムも肌で感じられる場所です。
エリア②:旧2区(タオディエン)
教育・住環境・ブランド住宅が融合する外国人居住地
タオディエンは、価格帯は旧1区よりもやや控えめながら外国人居住者に人気の高い高級住宅エリアです。サイゴン川沿いの落ち着いた住環境に加え、欧米系のカフェやレストラン、オーガニックスーパーなどが充実しており、国際色豊かな生活環境が整っています。
交通面では、2025年にメトロ1号線「タオディエン駅」が開業し、中心地の旧1区まで約15分程度でアクセス可能となりました。これにより、タオディエンの居住価値はさらに高まり、外国人向けの賃貸需要も安定しています。
高層マンションの様子(2025年7月)






カフェやオーガニックスーパーの様子(2025年7月)




教育面でも有名インターナショナルスクールが集積しており、教育環境を重視する家族層の支持を集めています。
インターナショナルスクールの様子(2025年7月)







とにかくインターナショナルスクールの多さが印象的でした。教育環境を重視する外国人ファミリーにとっては理想的なエリアだと感じます。
カフェやレストランも、旧1区とはまた違う、欧米テイストで洗練された雰囲気があり、落ち着いた暮らしを求める外国人向けとなっているように感じました。
エリア③:旧1区ベンタイン駅周辺
“都市の玄関口”として再定義される駅周辺エリア
ベンタイン市場に隣接するベンタイン駅は、ホーチミン都市鉄道の中心となる交通ハブです。現在はメトロ1号線が運行中ですが、将来的には2号線・3A号線・4号線も乗り入れ予定で、4路線が交差する最大規模のターミナル駅となる見込みです。
周辺では地下商業施設や駅前再開発プロジェクトも進行しており、「交通×商業×観光」が融合する都市の玄関口としての価値が高まりつつあります。
地価はすでにホーチミン市内でもトップクラスですが、メトロ各路線の本格開業によってさらなる集客力が期待され、不動産の資産性も一層強化されると考えられます。
ベンタイン市場や夜の街の様子(2025年7月)









夜も煌々と明かりが灯る旧1区ベンタイン駅周辺は、まさにホーチミンの“顔”といえるエリア。ナイトマーケットや屋台の活気もあり、熱気が冷めぬまま朝を迎えるような、眠らない街の雰囲気を体感できます!
注目エリアの比較表
エリア | メトロ接続状況 | 投資視点 | 将来価値の軸 |
---|---|---|---|
旧1区 | 複数路線交差(既存+計画) | 安定型。中古・小規模投資にも対応 | 商業・行政機能、再開発余地あり |
旧2区タオディエン | メトロ1号線 | 実需・賃貸向け。外国人需要が堅調 | 教育・生活環境、希少性 |
旧1区ベンタイン駅周辺 | 将来4路線交差予定。駅前再開発も進行中 | 商業施設との連動性が高い立地 | 交通×観光×再開発の複合的価値 |
※ 路線整備や再開発情報は、2025年7月時点の公式発表およびメディア報道をもとに構成しています。
編集部が見た!現地のリアルな開発風景と生活の足
街を歩いてみて感じたのは、“発展と混沌が同居する都市”という点です。メトロの高架工事が進む一方で、路地裏ではバイクや屋台がひしめき合い、どこか懐かしいアジアの熱気が残っています。
交通手段としては、
・バイク(圧倒的に多い)
・バス(都市部では路線網が整備)
・徒歩(歩道の整備はまだ途上)
といった状況。
鉄道インフラが整えば、こうした生活スタイルも徐々に変わっていくことが予想されます。
街の様子(2025年7月)













歩行者用信号がある交差点もありますが、ない場所も多く、最初はスリル満点でした。でも不思議と慣れてくると、バイクの流れを見てスッと渡れるようになります!これもホーチミンならではの“歩行者スキル”かもしれませんね。
メトロが不動産価値をどう変える?投資家視点で読む今後
メトロ1号線の開業により、沿線エリアではアクセス改善に伴う不動産価値の上昇がすでに見られます。特に旧1区や旧2区のトゥーティエム周辺では、再開発と重なり、マンション価格が2015年比で1.5〜3倍に高騰した例も報告されています。
こうした動きに呼応するように、売却益(キャピタルゲイン)を重視した投資スタイルが主流となっており、購入後の値上がり益を狙う動きが活発です。
一方で、外国人投資家には制度上の制限がある点も要注意です。
ベトナムでは、外国人の購入は1棟あたり最大30%までに制限されており、物件によってはすでに枠が埋まっている場合もあります。また、購入できるのは最大50年の借地権付き物件で、所有権ではない点も事前に理解が必要です。
とはいえ、駅近・中心部エリアでは今後も需要が見込まれ、インフラ整備の進展が資産価値を押し上げる好循環が続くと考えられます。


まとめ|ホーチミンの都市進化は“今”が転換点
ホーチミン市は、都市としての変貌のまっただ中にあります。メトロの開業と再開発、そして外資の流入が絡み合い、不動産市場はまさに“成長期の日本”を思わせる活況です。
これから現地投資を検討する方は、「どの路線沿線に」「どのタイミングで」「どの用途で」投資するかが大きなポイントになります。
次回の記事では、実際に内覧したサービスアパートメントの詳細やリアルな現地事情などを紹介していますので、ぜひご覧ください。


不動産会社様のご紹介
エヌアセットベトナム様/Saigon Sky Garden様
今回の視察では、日系不動産会社「エヌアセットベトナム」様と、サービスアパートメント「Saigon Sky Garden(サイゴン・スカイガーデン)」様のご協力をいただきました。
エヌアセットベトナム様について
ホーチミンを拠点にベトナム全域の不動産を取り扱う日系企業です。日本語対応の現地スタッフが、物件案内から契約・法務面まで一貫してサポートします。初めての現地視察でも安心して参加できる体制が整っています。
Saigon Sky Garden様について
ホーチミン市1区、日本人街の中心に位置する歴史あるサービスアパートメントです。1998年竣工の伊藤忠商事が現地パートナーと合弁で運営しています。家具付き・充実した共用施設が魅力。ジムやプール、日本食レストランもあり、海外生活初心者の方でも安心して快適に暮らせる環境が整っています。
今回ご紹介したSaigon Sky Gardenに関して、Nアセット様が公開している動画を見たい方はこちら!
※この記事はすみかうる編集部現地視察の情報をもとに構成しています
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