【2022年】不動産価格は今後どうなる?長嶋修氏が考察!

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コロナ禍においても、価格高騰が続く不動産市場。新築マンションはバブル期越え……それに引っ張られる形で中古マンション価格も高騰……このような状況は、いつまで続くのでしょうか?

インフレや金融政策の行方も気になる今、すみかうる編集部は株式会社さくら事務所」会長で不動産コンサルタントの長嶋修さんによるセミナーを取材。長嶋修さんが考える「不動産市場の現状と展望」についてレポートします。

目次

不動産市場は「3極化」がますます進む

2021年10月には新築マンション価格がバブル期を超えるなど歴史的な高騰を見せている不動産市場ですが、高騰しているのは一部の不動産です。

人口および世帯数が減少し始めている日本において、今後、価格が維持あるいは上昇するのは10~15%の地域。それ以外の地域はなだらかに下落を続け、限りなく無価値、あるいは逆にマイナスになっていくものと推察されます。

長嶋修さん

高価格帯の物件ばかり分譲されていることが平均価格を押し上げている節があります。

首都圏においても格差が

地域新築マンションの平均価格(2022年3月)
東京都23区7,947万円
東京都下5,450万円
神奈川県5,564万円
埼玉県5,961万円
千葉県4,651万円
引用:不動産経済研究所

2022年3月、首都圏の新築分譲マンションの平均価格は6,518万円でした。しかし上記表の通り、東京都23区は平均価格を大きく上回る8,000万円弱。その一方、千葉県では5,000万円を下回っています

長嶋修さん

首都圏の中でも格差は非常に大きいのです。

不動産価格の高騰要因

新型コロナウイルス蔓延が始まった当時は「不動産価格が暴落する」「不動産バブルが弾ける」といったことも取り沙汰されたものです。しかし、ふたを開けてみれば逆に著しい高騰に。その要因として考えられるのは次のようなことだと、長嶋氏はいいます。

最も大きな要因は「圧倒的な低金利」

不動産価格高騰の背景にあるのは、圧倒的な低金利です。

2021年12月にauじぶん銀行が変動金利を0.289%に引き下げ過去最低値を更新するなど、かつてないほどの“住宅ローン低金利時代”が続いています。固定金利についてはここ数ヶ月で若干の引き上げが見られましたが、それでも1%台前半です。

住宅ローン控除

低金利に加え、住宅ローン控除の存在も購買意欲を掻き立てるものです。

2022年度税制改正により住宅ローン控除による控除率は「1%」から「0.7%」に引き下げられたものの、期間は13年に延長。低金利の今は引き続き金利負担以上の控除を受けることも可能です。

長嶋修さん

「改悪」なんてこともいわれる住宅ローン控除ですが、2022年以降も引き続き、マイホームを取得される方にとって非常に魅力が大きい制度だといえるでしょう。

新型コロナウイルスによる住まいの見直しと売り物件の供給数減少

新型コロナウイルス蔓延により暮らし方、働き方は大きく変わりました。それに伴い「住まい」を見直す人も多かったものと推測されます。

しかし、コロナ禍で動きが大きかったのは「一次取得者」。つまり初めてマイホームを購入される方であり、買い替え層の動きは限定的です。

すでにマイホームを取得している方の状況は、次の2つに大別されます。

1.都市郊外に住まいを持っている
→家を売ろうと思ってもローン残債のほうが上回っているケースも多く、住み替えたくても住み替えられない

2.都心や駅近など良質な立地に住まいを持っている
→取得時より売値が高くなるケースが多いものの、新居の価格も高騰しているので住み替えにくい

このような状況により、コロナ禍では住み替え層の動きが極端に鈍く、中古物件の売り出し数が非常に少なかったのです。

長嶋修さん

そんな中、一次取得の需要は旺盛。ここで需給のひっ迫が起きたわけですね。

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全国の不動産市場の動き

そもそも不動産市場はどのように動き、全国に波及していくかということですが、動きの起点となるのはやはり首都東京です。その中でも、とりわけ都心3区や5区がスタート地点となります。価格が上がるときも、下がるときもこの動きは基本的に変わりません。

中央区・千代田区・港区・渋谷区などがまず動き、城南、城西、城北、城東と小さい「の」の字を描くように波及していきます。続いて、神奈川、埼玉、千葉と少し大きな「の」の字を描いて波及。そこから東京以外の大都市である大阪や名古屋、福岡に波及していくわけです。

かつては、東京以外の大都市に波及するまでに1~2年かかっていたものの、近年は不動産市場が金融商品化したこともあり今では3~6ヶ月ほどで波及します。

長嶋修さん

しかし、波及の「波」というのは波及していくにつれて小さくなります。たとえば東京では「100」あった波が大阪では「50」、名古屋では「40」になってしまうようなイメージですね。

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新築マンションの動向

新築マンション価格は、上下はあるものの高騰傾向にあります。

首都圏のマンション契約率は「好調」の一つの目安である70%以上をほぼキープ。売れ行きは、概ね好調だといえるでしょう。

しかし、新築マンションというのは典型的なデフレ産業です。2000年代前半までは、首都圏だけでも9万戸前後の新築マンションが販売されていましたが、2021年は3万戸前半。2020年にいたっては、3万戸を切っています。

加えて「発売総額」という点でも、2000年代前半は首都圏だけで3.6兆円でしたが、2021年は1.6兆円。明らかに縮小している産業なのです。

なぜこんなにも販売数が減ったのかというと「都心から遠い」「駅から遠い」など比較的、価格が安い物件の販売数が減ったからです。

長嶋修さん

逆にいえば、高価格帯の物件の割合が増えたということ。これは、平均価格を押し上げている要因にもなっています。

新築マンションは狭くなっている

出典:長谷工総合研究所

新築マンションは、2014年頃から徐々に価格が高騰しています。ほぼ、一本調子といっても良いでしょう。

上記グラフは、東京都23区の新築マンションの平均価格とともに平均面積の推移を表したものです。2010年頃から青い線が上に上に伸びており価格が高騰していることがわかります。

一方で、上にも伸びている青い線は2014年頃から左にも伸びていることがわかります。横軸は面積ですので、これはすなわち価格が上がる中、面積は狭くなっているということを表しているのです。

2014年の平均面積は70㎡弱ありましたが、2020年は62㎡以下。2021年も65㎡ほどでしょうか。お菓子の大きさがどんどん小さくなるように、販売されるマンションはどんどん狭くなってきています。マンションのグレードに関しても、近年、販売されているのものは下がっている傾向にあります。

長嶋修さん

この傾向もまた、買い替え層が動かない要因の1つになっているものと考えられます。

一方で、一次取得者にとっては、賃貸住宅よりは広い、グレードも高い。そして金利が低く、住宅ローン控除も使えるということで、引き続き新築マンションは魅力的に映るでしょう。

中古マンションの動向

中古マンションも、著しい高騰が続いています。

先ほど、不動産価格がまず動き始めるのは「都心3区」とお伝えしましたが、上記グラフはその都心3区の中古マンション㎡単価および日経平均株価の推移を表しています。

ご覧のように、中古マンション価格と日経平均株価の動きはほぼ同じです。2022年に入ってからは、株価と比較すると若干、中古マンションの成約価格がオーバーシュートしている感はあるものの、今後も概ね連動していくものと推察されます。

在庫減少からやや増加傾向に

出典:東日本不動産流通機構東京証券取引所

こちらのグラフは、青の折れ線が都心3区の中古マンション成約平米単価、赤の棒が在庫数を表しています。

コロナ禍が始まった2020年から在庫数は減り続けていますが、2021年夏~秋を境に増加傾向に転じていることがわかります。少しずつではありますが、新規売り出しが増え始めているのです。

長嶋修さん

ただ先述通り、不動産市場の動きはまず東京都心3区から。2022年4月現在、神奈川や埼玉、千葉などではいまだ在庫数が上昇傾向にあるといえないのが現状です。「波」が波及していくのはこれからというところでしょう。

「売り出し価格」と「成約価格」の差は小さくなり始めている

出典:東日本不動産流通機構

一方で、中古マンションの「売り出し価格」と「実際に成約にいたる価格」の差は狭まりつつあります。

2020年、両者には1~2割ほどの差がありましたが、2021年末から2022年にかけて売り出し価格に近い金額で成約にいたる物件が増えています。

長嶋修さん

これまでマンションを売りに出す人は「ちょっとくらい高くても売れるのでは?」と考える人が多かったものの、最近は「売れるような金額で出したほうがいいのでは?」と考える人が増えてきたものと推察されます。

コロナ禍では東京都心部以外でも価格高騰が加速

出典:東日本不動産流通機構

こちらのグラフのスタート地点は、政権交代によってアベノミクスが始まるとともに不動産価格の高騰が始まった時期です。

全ての地域で上昇してはいるものの、神奈川・埼玉・千葉についてはコロナ禍前までせいぜい1.2~1.3倍ほどの価格高騰でした。ところが、2020年、1回目の緊急事態宣言でガクンと価格が落ちたあとには高騰率が上がり、2022年現在は起点時期と比較して1.4~1.6倍の価格になっています。

長嶋修さん

この動きは「コロナ」が影響しているというよりは、東京23区の不動産価格が高騰しすぎていることが要因だと考えられます。

新築マンションは、2021年頃から郊外物件が増えた印象があります。それに呼応するように、中古マンションを購入される方についても郊外を検討される方が増えているのです。

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2022年下期以降、不動産価格はどうなる?

長嶋修さん

結論からいえば、2022年下期も相変わらず好調に推移するものと考えています。

今後の不動産価格は、結局のところ金利動向がどうなるかに依存します。日銀の黒田総裁は、今後の金融政策について次のように発言しています。

  • 長期金利の上限0.25%は固持する
  • 緩和を粘り強く続ける
  • 必要であれば躊躇なく追加緩和をする

米国や諸外国の金融引き締めの動向やインフレ、ウクライナ情勢なども気になるところではあるでしょうが、このまま金利水準が低い状態が続くのであれば、2022年も引き続き不動産市場は調子が良いものと推察されます。

一方で、在庫が増え始めていることを考えれば価格の上昇は頭打ちになる可能性はあるでしょう。ただし、日経平均価格がもう一段盛り上がりを見せるようなことになれば、この限りではありません。

取材後記:2022年下期も不動産市場は好調を維持か

まとめ
  • 不動産価格が著しく高騰しているのは一部。「3極化」はますます進む
  • 不動産価格が高騰している最も大きな要因は「圧倒的な低金利」
  • 不動産市場の動きは都心3区や5区から「の」の字を描くように全国に波及
  • 新築マンションは高騰傾向にあるものの市場自体は縮小
  • 近年、新築マンションは狭く、グレードも低くなっている傾向にある
  • 中古マンションも価格高騰は継続
  • 中古マンション価格は日経平均株価の推移とほぼ連動
  • 中古マンションの在庫数はやや増加基調に転じており、価格上昇はそろそろ頭打ちになるか
  • 2022年の不動産市場は金利水準が維持される限り好調を維持か

いまだ継続している低金利、そして住宅ローン控除や需給のひっ迫などにより、2022年も不動産価格は高騰基調を維持しています。

長嶋さんによれば、今の金利水準が維持されるのであれば2022年いっぱいは好調が続く見込みとのこと。しかしながら、新型コロナウイルス蔓延を皮切りに世界情勢、国内情勢は大きく変化しており、2023年、2024年の動向については推測が難しいと言わざるを得ません。

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この記事を書いた人

亀梨奈美のアバター 亀梨奈美 不動産ジャーナリスト/株式会社realwave代表取締役

大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。

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