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住宅ローンの繰り上げ返済には、返済期間を短くするタイプと毎月の返済額を減らすタイプの2種類があり、それぞれの特徴を理解したうえで選ぶことが重要です。
また、繰り上げ返済をするタイミングも慎重に検討しなければなりません。
そこで本記事では、住宅ローンの繰り上げ返済の種類や行うべきタイミングなどを詳しく解説します。
繰り上げ返済は、毎回の返済とは別に、まとまった金額を前倒しで返済する方法です。
繰り上げ返済はすべて元金に充てられるため、その分の利息を支払わなくてよくなり、返済総額を減らすことが可能です。ローン残高が多いほど、そして実施時期が早いほど効果は大きくなりやすいです。
繰り上げ返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴をみていきましょう。
期間短縮型は、毎月の返済額を変えずに返済期間を短くする方法です。住宅ローンは金額が多いほど、また、返済期間が長いほど支払利息が大きくなるといった特徴があります。
そのため、期間短縮型を選ぶと返済期間が短くなるため、住宅ローンを早く完済できます。繰り上げ返済する金額や住宅ローンの条件が同じである場合、返済額軽減型よりも期間短縮型のほうが利息軽減効果は高くなるでしょう。
当初の予定よりも早く住宅ローンを完済してしまいたい人や、できるだけ利息負担を減らしたい人は期間短縮型がおすすめです。
返済額軽減型は、残りの返済期間はそのままに毎月の返済額を軽減する方法です。
住宅ローンを完済するまで、毎月の収入や支出の金額が一定であるとは限りません。
たとえば、子どもが成長し生活費や教育費などがかかるようになり、支出が増えることがあります。
返済開始当初は問題がなくても、生活背景の変化によって、毎月の返済が負担になる可能性があります。
毎月の返済負担が家計を圧迫している人は、返済額軽減型がおすすめです。
ここでは、期間短縮型のメリットとデメリットについて解説します。
期間短縮型の最も大きなメリットとして、利息軽減効果が大きいことがあげられます。また、定年後までローンの返済が続く場合、期間短縮型を選択することで定年前までに完済できるほか、早い段階で老後資金の準備に着手できるでしょう。
期間短縮型は繰り上げ返済の額が少ない場合、利息軽減効果がそれほど見込めない点がデメリットといえます。また、住宅ローンの返済期間が10年未満になってしまうと、住宅ローン控除の適用対象外となる点にも注意が必要です。返済期間を短縮する場合は残存期間が10年以下にならないようにしましょう。
つづいて、返済型軽減型のメリット・デメリットについても解説します。
返済額軽減型のメリットとして、毎月の返済額が減ることにより家計の負担が軽減される点があげられます。特に子どもの教育費等で支出が多い時期や、病気やその他の事情で一時的に収入が減った際には返済額軽減型を選択することで、負担を減らせるでしょう。
返済額軽減型は毎月の返済額を減らせる一方で返済総額が期間短縮型よりも多くなるほか、支払い利息分についても大幅な削減が見込めない点に注意が必要です。また、金融機関によっては繰り上げ返済をする際に手数料がかかるケースもあるため、繰り返し行えばその分コストが増加してしまうでしょう。
では、期間短縮型と返済額軽減型は、返済負担の軽減効果にどれほどの違いがあるのでしょうか。返済シミュレーションで確認をしてみましょう。
以下の条件でシミュレーションしてみます。
上記の住宅ローンの返済から①10年が経過したタイミングで、
②300万円を繰り上げ返済する場合、毎月の返済額や残りの返済期間は以下の通りとなります。
期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
毎月の返済額 | 99,378 円 | 86,630円 |
残りの返済期間 | 21年1か月 | 25年0か月 |
利息軽減額 | 1,746,139円 | 811,817 円 |
期間短縮型は、返済期間を3年11か月短縮できました。一方で、返済額軽減額は毎月の返済額を12,748円少なくできます。
利息は、期間短縮型のほうが返済額軽減型よりも約93万円節約できます。
繰り上げ返済の効果は、借入額や残りの返済期間などで異なるため、返済シミュレーションを確認したうえで種類を選ぶことが重要です。
ここでは繰り上げ返済に適したタイミングについて、みていきましょう。
住宅ローン残高が多いうちに繰り上げ返済をおこなった方が、利息軽減効果が見込めます。ここでは以下の条件で、借入から10年目と20年目にそれぞれ繰り上げ返済をした場合の比較を載せてみました。
※繰り上げ返済をしなかった場合の総返済額:5,565万円
10年目に繰り上げ返済 | 20年目に繰り上げ返済 | |
総返済額 | 5,386万円 | 5,472万円 |
削減できる利息 | 179万円 | 93万円 |
この結果からもわかるように、繰り上げ返済をする場合には早い段階でおこなった方がより多くの利息を減らすことができます。ただし、先にも述べましたがトータルの返済期間が10年未満になると住宅ローン控除の対象外となるので、繰り上げのしすぎには注意が必要です。
前提として、繰り上げ返済は資金に余裕があるときに行いましょう。子どもの教育費がかかる時期や、家計が苦しいときに繰り上げ返済をすると家計が圧迫されてしまいかねません。生活防衛資金を手元に残したうえで、それでも余裕がある場合に繰り上げ返済をすることをおすすめします。
また、一般的にリフォームローンや教育ローンの方が、住宅ローンよりも金利が高く設定されている傾向にあります。そのため、教育資金やリフォーム費用など他のローンを組む場合、毎月の返済額や金利に注意しましょう。
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繰り上げ返済をすると、将来的に支払う利息が少なくなる反面、手元にある資金が減ってしまいます。
また、実行後に取り消しをすることはできません。タイミングは慎重に判断しましょう。
ここでは、繰り上げ返済をするタイミングを決めるときのポイントを解説します。
繰り上げ返済をするタイミングは、子どもの進学や自動車の購入、住宅のリフォームなど、まとまった資金が必要となるライフイベントを踏まえて判断しましょう。
たとえば、数年後に子どもが大学に進学するにもかかわらず、住宅ローンの繰り上げ返済をしてしまうと、入学金や授業料の支払いなどに支障が生じるかもしれません。
たとえ繰り上げ返済で住宅ローンの負担を軽減できても、教育ローンなどの借り入れが必要になってしまっては本末転倒でしょう。
資金が必要ならライフイベントが控えているのであれば、繰り上げ返済をしても必要な費用が賄えるのかを検討することが重要です。
繰り上げ返済をしたあと、収入が減ったときに生活をできるだけの資金を残せるかも考えましょう。
たとえば、病気やけがで働けなくなると、収入が減るだけでなく医療費の支払いが発生して支出が増える可能性があります。また勤務先の業績低迷により、残業時間の抑制や手当の見直し、ボーナスのカットなどが行われるかもしれません。
よく検討せずに繰り上げ返済をすると、収入が減少したときに資金が不足して返済が滞ってしまう恐れがあります。
繰り上げ返済をしたあとも、収入の減少時に備えて毎月の生活費の半年〜1年分は残しておくのが望ましいでしょう。
繰り上げ返済をする際は、以下の点に注意しましょう。
団体信用生命保険(以下、団信)は、住宅ローンを返済している人が、亡くなったり所定の高度障害状態になったりしたときのローン残高を保障する保険です。
住宅ローン金利に0.1〜0.3%程度を上乗せして特約を付けることで、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などにも備えられます。
団信の保障額は、住宅ローン残高と同額です。そのため、繰り上げ返済をして住宅ローン残高が減ると、団信の保障額も減ります。
繰り上げ返済によって団信の保障が減ったとしても、保険料が安くなることはありません。
繰り上げ返済をしたあとに住宅ローンを返済する人に万一のことがあり、団信の保障が適用されると、繰り上げ返済に充てた金額の分だけ損をするとも考えられます。
住宅ローン控除は、所定の要件を満たすと「年末時点の住宅ローン残高×0.7%」を所得税と一部の住民税から控除してくれる制度です。住宅ローン控除を受けるためには、返済期間が10年以上である住宅ローンを組まなければなりません。
期間短縮型を選び、残りの返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除を受けられなくなってしまいます。
繰り上げ返済をする場合は、借入先の金融機関に実行後の返済期間を確認しましょう。
また、繰り上げ返済後も引き続き住宅ローン控除の対象になるかどうかを、税務署に確認しておくと安心です。
繰り上げ返済をすると、ローン残高が減ることで利息負担が減ります。
利息はローン残高に金利をかけて計算するため、低い金利で借り入れていると繰り上げ返済をしても、利息負担があまり下がらないケースがあります。
たとえば、以下の条件で住宅ローンを借り入れているとしましょう。毎月の返済額は、76,557円です。
残りの返済期間が25年の時点(返済開始から10年)で300万円を繰り上げ返済する場合、
返済額軽減型を選ぶと毎月の返済額は66,013円に減らせます。
期間短縮型を選んだ場合の残りの返済期間は、21年6か月です。
一方、利息の軽減額は返済額軽減型が約15.2万円、期間短縮型が約29.1万円であり、人によってはあまりメリットを感じられないかもしれません。
毎月の返済額を軽減したり、返済期間を短縮したりしたいときは、他の金融機関が取り扱う低金利の住宅ローンに借り換えるのも方法です。
借り換えによるメリットを得られるのは、返済中の住宅ローンが以下を満たしている場合であるといわれています。
上記はあくまで目安であるため、すべてを満たしている必要はありません。
たとえば、住宅ローンの残高が多く返済期間が長いときは、借り換え後の金利差が1%未満であってもメリットを得られるケースがあります。
住宅ローンを借り換える際は、事務手数料や登記費用などの諸費用がかかる点に注意が必要です。借り換えによって返済負担を軽減できたとしても、諸費用を考慮するとあまりメリットがないこともあります。
借り換えが有効かどうかを判断するときも、繰り上げ返済の検討時と同様に返済シミュレーションを確認することが大切です。
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繰り上げ返済のメリットは、将来的に支払う利息を節約できる点です。また、変動金利型の住宅ローンを組んでいる場合、返済の途中で金利が上昇したときに繰り上げ返済をして元金を減らすことで、毎月の返済額の増加を抑えられます。
デメリットは、手持ち資金が減ってしまう点が挙げられます。無計画に繰り上げ返済をしてしまうと、収入が減ったときやライフイベントが発生したときに資金不足に陥るかもしれません。
期間短縮型のほうが利息負担の軽減効果は高いものの、必ずしもそれを選ぶのが正解であるとは限りません。
繰り上げ返済をする目的を考えたうえで、ご自身に合った方法を選ぶことが重要です。
たとえば、毎月の返済額が家計を圧迫しているのであれば、返済額軽減型を選ぶのがおすすめです。
一方で、住宅ローンを早く完済したい人や利息負担や返済総額をできるだけ抑えたい人は、期間短縮型を選んだほうが良いでしょう。
金額は数千〜数万円が一般的です。インターネットで申し込むと、手数料が無料になる金融機関もあります。繰り上げ返済を検討するときは、借入先の金融機関の手数料をよく確認しましょう。
収入の減少や支出の増加などで住宅ローンの返済が苦しくなったときは、金融機関に相談をしましょう。毎月の返済額の減額や、返済期間の延長などに応じてくれることがあります。
もし返済を長期間にわたって滞納すると、最終的に自宅は差し押さえられ、競売によって強制的に売却されてしまいます。競売の手続きが始まったあとにできる対策は非常に限られるため、返済が苦しい場合は手遅れになる前に金融機関に相談することが大切です。
どちらを優先すべきかは、借入額や残りの返済期間、金利などさまざまな要素で変わります。
しかし住宅ローン控除は、年末時点のローン残高をもとに控除額が計算されるため、繰り上げ返済によってローン残高が少なくなると節税効果が薄れてしまう可能性があります。
住宅ローン控除の期間中に繰り上げ返済をする場合は、金融機関や税務署、ファイナンシャルプランナーなどに相談し、メリットの有無を確認することが重要です。
繰り上げ返済には、残りの返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、特徴をよく理解し、返済シミュレーションを確認したうえでご自身にとって有利な方を選びましょう。
繰り上げ返済は、余裕資金で行うのが原則です。収入が減少したときの生活資金は、必ず残しておきましょう。
また、子どもの進学や住宅のリフォームなど将来的に起こりうるライフイベントに支障がないかを考えたうえで検討しましょう。
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