中古マンション価格トレンドに転換の兆し!過去との比較で推察する価格の行方

コロナ禍以降、中古マンション価格は高騰傾向を維持してきましたが、2022年頃からほぼ横ばいで推移しています。さらに7月、8月には一都三県で成約価格が新規登録価格を上回るという価格トレンドの転換を予兆する動きも見られました。9月には成約価格が下がり、成約価格・新規登録価格・在庫価格がほぼ同額に。これも非常に珍しい現象です。

マンションリサーチは、直近の価格推移とともに過去のデータや在庫件数から、2023年末から2024年初頭にかけての中古マンション価格の行方を推察しました。

目次

成約価格・新規登録価格・在庫価格がほぼ同額に

一都三県「レインズ成約単価・新規登録単価・在庫単価の比較」と日経平均
出典:東日本レインズのデータよりマンションリサーチ独自に作成

上記グラフの棒線は青が成約物件の平米単価オレンジが新規登録物件の平米単価灰色が在庫物件の平米単価を表しています。

一般的には、徐々に価格を落としていきながら成約に至るため、成約価格は新規登録価格や在庫価格より低くなるものです。しかし、2023年7月、8月には、成約価格が新規登録価格を上回るという稀有な状況が見られました。

同様の現象は2014年末にも

スクロールできます
2023年6月7月8月9月
成約平米単価(万円)72.2771.9274.0872.44
新規登録平米単価(万円)72.6971.6171.7772.78
在庫平米単価(万円)73.4473.3073.0772.91
2023年6月〜9月の成約平米単価・新規登録平米単価・在庫平米単価

9月には新規登録価格が成約価格を上回る状態に戻りましたが、成約価格・新規登録価格・在庫価格がほぼ同額に。この現象も非常に珍しいものですが、実は2014年末にも同様の現象が見られています。

上記グラフは、2015年前後の成約平米単価・新規登録単価・在庫平米単価を抽出したものです。2014年初頭から成約価格が徐々に高騰するにつれ、2014年末には3つの価格がほぼ同額となり、2015年初頭以降は新規登録価格が在庫価格や成約価格を大きく上回る期間が続き、成約価格も引っ張られるように徐々に高騰していきました。

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2015年前後と現在の大きな違いは「在庫件数」

一都三県 在庫権数と新規売出件数と成約件数
出典:東日本レインズのデータよりマンションリサーチ独自に作成

2014年末のように成約価格・新規登録価格・在庫価格がほぼ同額になっている現在ですが、当時と大きく違う点があります。それは、在庫件数です。

上記のグラフの肌色の部分は、一都三県の中古マンションの在庫物件数を表しています。2013年から2015年にかけて在庫数は減少しましたが、2015年度に入った頃から急激に数を伸ばし、コロナ禍前に在庫数は近年の中で最多となりました。コロナ禍では新規登録数が減ったことで在庫数が急減したものの、2022年頃を起点に数を伸ばしていき、現在はほぼコロナ禍前の水準に戻っています。

グラフの通り、2015年前後と現在は「成約価格・新規登録価格・在庫価格がほぼ同額」という点は同じでも、在庫件数は大きく異なるのです。

同様の現象も、そこに至るまでの経緯は異なる

中古マンションの値付けをするにあたって、在庫価格、つまり売出し中の物件の価格は1つの大きな指標となります。当然ながら「期待感」があれば新規登録価格は在庫価格を上回ります。

先のとおり、2015年初頭から新規登録価格は在庫価格を大きく上回るようになり、それに引っ張られる形で成約価格も高騰していきました。その背景にあったものこそ「期待感」です。一方、現在はコロナ禍前と同水準にまで在庫数が膨れ上がり、成約価格も横ばいの状態が継続しています。

2014年末6ヶ月の成約平米単価・新規登録単価・在庫平米単価
成約価格高騰に伴い3つの価格がほぼ同額に
直近6ヶ月の成約平米単価・新規登録単価・在庫平米単価
新規登録価格や在庫価格の下落により3つの価格がほぼ同額に

上記2つのグラフは、2014年末および直近6ヶ月間の成約平米単価・新規登録平米単価・在庫平米単価の推移を表したものです。

2014年末は成約価格が上がっていったことで新規登録価格や在庫価格に追いついた形でしたが、現在はどちらかといえば新規登録価格や在庫価格の下落圧力が強まったことで成約価格・新規登録価格・在庫価格の3つがほぼ同額になった形です。

同様の現象でも、そこまでに至った経緯および在庫の数が大きく異なることから、現在は中長期的に価格が高騰するとは考えづらく、むしろ下落方向へトレンドが変わっていくものと考えられます。

まとめ

成約価格・新規登録価格・在庫価格の一致は「転換期」になるものの、必ずしも価格高騰の兆しではなく「現場の迷い」を表すものだと考えられます。

2015年前後当時のように「期待感」があれば、その後、成約価格は上昇に転じるはずですが、現在の在庫数やこれまでの価格の推移を踏まえると、むしろ下落に転じる兆しであると考えたほうが自然です。現に、一都三県の在庫平米単価は2023年2月から下落局面に入っており、トレンド的にも価格が上がる要素は乏しいといえます。

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この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

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