近年、大規模な再開発が進められている葛飾区金町は、JR常磐線金町駅と京成電鉄金町線金町駅の2路線2駅が利用できる便利なエリアです。大規模なマンションの開発も相次いでいます。一方で、歩行者の混雑や商店会の活力低下などの課題があり、これらを解消するため現在も再開発が進められています。
この記事では、金町の再開発計画の詳細や現状とともに金町駅周辺のマンション市況について詳しく解説します。

金町再開発の歴史と背景

出典:葛飾区「金町駅周辺地区まちづくりプラン」
金町エリアでは、工場跡地の活用や人口減少、街区の老朽化といった課題を背景に、2000年代以降、本格的な再開発が進められてきました。まずは、再開発に至った経緯や地域が抱えている課題を整理して解説します。
金町駅周辺の特徴
金町駅周辺は、JR常磐線(各駅停車)・京成金町線の2駅2路線が利用できる交通結節点として、葛飾区内でも高い利便性を備えたエリアです。都心部へのアクセスが良い一方で、駅周辺には昔ながらの商店街や住宅地が広がり、生活利便施設も充実していることから、幅広い世代が暮らしやすい環境となっています。
また、東には江戸川・中川が流れ、周辺には水元公園や葛飾にいじゅくみらい公園などが点在しており、自然環境に恵まれている点も特徴です。葛飾区のなかでも「住む」「働く」「学ぶ」「憩う」がまとまった都市構造を持ち、潜在的なポテンシャルが高い地域といえます。
工場跡地の転用とまちづくりの課題
JR金町駅は明治30年(1897年)、京成金町駅は大正2年(1913年)に開設されました。金町エリアは古くから交通利便性が高いエリアで、大正期には三菱製紙中川工場が操業するなど、活力のある街として発展を続けてきました。しかし、昭和後期〜平成にかけて人口減少が進み、2003年には三菱製紙中川工場が閉鎖。広大な跡地を活用したまちづくりが検討されるようになりました。
駅周辺には1960〜70年代に建設された建物が多く、区画の細分化や老朽化が進んでいる点も課題となっています。加えて団地以外の集合住宅は少なく、戸建て住宅が多いエリアであることから、土地利用の更新が進みにくい状況にあります。
金町駅周辺地区などでは、1989年からの20年間で人口が1万人以上減少し、地域の活力低下が顕著に。こうした課題を受け、金町の再開発は「古い街の一新」というだけでなく、交通利便性・自然環境・学術拠点という金町ならではの価値を再編集し、長期的に持続可能な都市へと転換するプロジェクトとして進められています。
金町駅周辺の都市構造と交通利便性
金町は、常磐線で北千住・上野・東京方面へ、京成金町線で柴又・高砂方面へスムーズにアクセスできます。常磐線は千代田線と直通運転しているため、都心主要エリアへのアクセスも抜群です。
JR金町駅北口は、大学や葛飾にいじゅくみらい公園など大規模な施設が集まるエリアで商店街も点在しています。京成金町駅がある南口にも商店街が点在していますが、比較的小規模な建築物が集まるエリアです。地域の商店会では購買客の減少や後継者不足などが課題となっており、北口、南口とも駅周辺や大学までの道のりで混雑が発生しており、安全性や交通整理にも課題があります。

既に竣工した金町のタワーマンション・再開発プロジェクト
金町駅周辺では、2005年頃から広範囲で大規模な再開発が進められています。金町駅周辺のこれまでの再開発は、マンションの開発とセットで推進されてきました。すでに竣工しているマンション・プロジェクトも少なくありません。
金町6丁目地区「ヴィナシス金町」竣工

2009年には、JR金町駅南口の金町6丁目地区に「ヴィナシス金町」が竣工しました。同施設は地上41階、地下2階で、店舗や住宅、図書館などが入る複合施設です。
住棟部分は「ヴィナシス金町タワーレジデンス」という名称です。住戸数は476。京成金町駅から徒歩1分、JR金町駅から徒歩2分という好立地に加え、階下に複合施設を有する利便性から、竣工後も価値が上昇しているマンションです。
新宿6丁目地区「シティタワー金町」竣工

駅北西部の新宿(にいじゅく)6丁目地区にはかつて「三菱製紙中川工場」がありましたが、2003年に操業停止。敷地面積は18ha、従業員は約500人と大規模なものだったため、撤退後の金町地区への影響が懸念されていました。
2005年から同地区の活用と方針を定めた「まちづくり方針」が策定され、2008年には「大学誘致基本方針」を策定。以降、葛飾区初の大学誘致を開始しました。2009年には東京理科大学との基本協定を経て、2013年に同校葛飾キャンパスに加え「葛飾にいじゅくみらい公園」「葛飾区科学教育センター(未来わくわく館)」が開設されています。
同地区には、2015年に「シティタワー金町」のレジデンス棟が、2016年にはタワー棟が竣工しています。両棟の総戸数は840と、葛飾区最大規模です。2021年には、19階建て、総戸数610の「シティテラス金町」が竣工しています。
金町6丁目地区「プラウドタワー金町(ベルトーレ金町)」竣工

2009年に竣工したヴィナシス金町の北側の金町六丁目駅前地区第一種市街地再開発事業により、2021年に「ベルトーレ金町」が竣工しました。同施設は地上21階、地下1階で、住宅・店舗・事務所などが入る複合施設です。
マンション名は「プラウドタワー金町」。同マンションも、立地や利便性の高さなどから竣工後も価値を上げています。
東金町1丁目「クロス金町Ⅰ期」竣工
2025年7月14日には、東金町一丁目西地区市街地再開発事業のうちⅠ期部分が竣工。8月には金町自動車教習所と東金町地下自転車駐車場がオープンし、9月にアパレルや生活必需品、生鮮食品、スイーツなどのグルメ店舗が出店する「MARK IS 葛飾かなまち」がオープンしました。
「クロス」という街区は、駅周辺エリアと東京理科大学、葛飾にいじゅくみらい公園の結節点として複数の拠点がクロスする立地にあることから命名されました。
これから進む金町再開発の計画とスケジュール

これまで大規模な再開発事業やマンション開発が推進されてきた金町ですが、現在もJR金町駅北口の東金町一丁目西地区で再開発が進んでいます。
東金町一丁目西地区市街地再開発事業Ⅰ期→Ⅱ期の整備スケジュール

東金町一丁目西地区市街地再開発事業は2021年に組合設立が認可され、2022年にはⅠ期の工事が着手。先のとおり2025年に竣工済みです。
Ⅱ期工事では、住宅棟や商業施設、公共施設など高層部が建設される予定です。Ⅱ期工事の着手は2026年度、竣工は2030年10月、全体オープンは2030年11月を予定しています。
再開発区域の範囲・区域面積

同地区の範囲は、東金町一丁目9番、10番の約3.0haです。再開発計画は低層部と高層部で構成されており、低層部がⅠ期、高層部がⅡ期となります。2025年8月、Ⅱ期は既存建物の解体工事に着工しました。
住宅棟にも店舗や公共施設、駐車場などが入り、住宅としての総戸数は900と予定されています。住宅棟の高さは約150m、地上40階、地下1階とヴィナシス金町と同等で、シティタワー金町より総戸数が多いマンションになる予定です。開発事業者は、2022年に三菱地所・三菱地所レジデンス・三井不動産レジデンシャルに決定しています。

公共施設・歩行者ネットワーク整備など街づくり要素

同地区は、金町駅と東京理科大学を結ぶ交通動線に沿ったエリアです。周辺で大規模な再開発が進められてきたこともあり、歩行者と自転車の交錯が見られ、道幅の狭さなども相まって交通の安全性・快適性の低下が懸念されています。
同地区のまちづくりのコンセプトは、ひと・もの・つなぐ・まちづくり。区画道路や歩道上空き地なども整備し、居住環境の向上と利便性を活かしたまちづくり、そして金町駅北口の魅力向上を目指しています。
金町駅周辺のマンション価格相場は? 再開発が与える影響とは
金町駅周辺では、この十数年で複数のタワー・大規模マンションが分譲されており、再開発も各所で進んだことから、街が大きく変化しています。現在、開発中のタワーマンションは、葛飾区最大規模のシティタワー金町を上回る規模です。再開発への期待感から、近年、上昇傾向にあるマンション価格も、もう一段上がる余地があります。

金町駅周辺のマンション価格相場
| 〜築1年 | 〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 築21年以上 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 徒歩1分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 〜徒歩3分 | 0 | 8 | 0 | 13 | 9 | 7 |
| 〜徒歩5分 | 0 | 0 | 1 | 0 | 5 | 22 |
| 〜徒歩7分 | 0 | 5 | 5 | 18 | 1 | 13 |
| 〜徒歩10分 | 2 | 9 | 1 | 0 | 3 | 42 |
| 〜築1年 | 〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 築21年以上 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
| 〜徒歩3分 | – | 470万円 | – | 329万円 | 359万円 | 171万円 |
| 〜徒歩5分 | – | – | 278万円 | – | 298万円 | 273万円 |
| 〜徒歩7分 | – | 335万円 | 413万円 | 300万円 | 244万円 | 177万円 |
| 〜徒歩10分 | 429万円 | 360万円 | 285万円 | – | 219万円 | 164万円 |
| 〜築1年 | 〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 築21年以上 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
| 〜徒歩3分 | – | 8,531万円 | – | 5,971万円 | 6,516万円 | 3,104万円 |
| 〜徒歩5分 | – | – | 5,046万円 | – | 5,409万円 | 4,955万円 |
| 〜徒歩7分 | – | 6,080万円 | 7,496万円 | 5,445万円 | 4,429万円 | 3,213万円 |
| 〜徒歩10分 | 7,786万円 | 6,534万円 | 5,173万円 | – | 3,975万円 | 2,977万円 |
売り出し件数が少ないこともあって、築10年以内の築浅マンションは概ね坪単価300万円以上の価格で取引されているようです。
駅徒歩3分以内の駅近物件も、売り出される数が少ないことに加え、近年の再開発によって利便性や魅力が高まっていることから、金町の中古マンションの平均坪単価を大きく上回っています。築浅・駅近物件は希少性が高いため、購入したい方は物件情報をよくチェックしておくようにしましょう。
金町駅周辺の価格高騰率の推移

金町の中古マンション価格は、ほぼ一貫して上昇しています。2022年から2025年までの3年間の上昇率は「11%」程度。とくにコロナ禍後の上昇幅の拡大が目立ちます。
金町駅に最も近い地点の公示地価も、下記のように近年は葛飾区の住宅地平均を上回る上昇率を見せていることから、再開発への期待感の高まりがうかがえます。とくに近年は都心マンションの価格上昇が著しく、コロナ禍を経て働き方・暮らし方も大きく変容したことから、都心部へのアクセスが良く、緑も豊かな金町エリアのブランド価値が高まっているものと推測されます。
| 葛飾区住宅地平均 | 葛飾-42地点(旧46地点) | |
|---|---|---|
| 2025年 | 5.4% | 6.9% |
| 2024年 | 4.2% | 6.3% |
| 2023年 | 2.8% | 4.4% |
| 2022年 | 1.0% | 4.9% |
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再開発はマンション価格にどう影響する?
金町駅周辺の一連の再開発は、マンション開発とともに進められています。金町地域は、2009年から2019年までの10年間で人口は約1.3倍に、JR金町駅の利用者数は約1.2倍に増えました。2030年には総戸数900戸のタワーマンションも竣工予定のため、さらなる増加が期待されます。
人口の増加は、地価やマンション価格にも大きく影響します。金町は東京の端に位置し、江戸川を越えれば千葉県です。とはいえ2路線2駅利用できるため北千住や浅草などの繁華街、成田空港や羽田空港までの空の玄関口、大手町や表参道などの都心部へのアクセスも良好です。水元公園など大型の公園にもほど近く、下町情緒も感じられることから、学生からお子さんがいるご家庭、高齢者まで老若男女が住みやすいエリアといえるでしょう。
一方で、葛飾区の住宅地の平均地価は東京23区の中で最も安価。都市部のマンションが一般的な収入の世帯には手が届かない水準にまで達している中、金町のマンションは比較的購入しやすく、人口も増加傾向にあるため、再開発を機にさらなる需要拡大も見込めるのではないでしょうか。
金町再開発に関連するよくある質問
イイタン相談室には、こんな相談も寄せられています。
- 金町の再開発で人が増え、駅の混雑が気になるように… (30代女性) →専門家の回答はこちら
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「金町 再開発」まとめ
金町駅周辺の再開発は2000年代前半にスタートし、2009年に南口に「ヴィナシス金町」が竣工しました。2013年には駅北口の北西部に東京理科大が誘致され、以降、同地区には「シティタワー金町」や「シティテラス金町」など大規模なマンションが竣工しています。2021年には、ヴィナシス金町の北側に「プラウドタワー金町」も竣工しました。
大規模かつ複数のマンション開発と街の整備が進んだことで、金町の人口は増え、魅力も向上しています。現在も金町駅北口の東金町一丁目西地区で大規模な再開発が進んでいることから、引き続きマンション価格上昇の余地がある注目のエリアといえるでしょう。


