2023年に竣工した「パークタワー勝どきミッド/サウス」をはじめ、多くのタワーマンションが立ち並ぶ勝どきは、近隣の晴海や豊洲エリアと並ぶ人気の湾岸エリアの一つです。
勝どきエリアの再開発は早くから行われており街として完成したように思われますが、今も新たな再開発の計画が進行中です。
本記事では、勝どきの再開発の概要と街に与える変化、マンション市場に与える影響について解説します。
勝どき再開発の概要

最初に勝どきエリアの再開発までの経緯や対象エリア、現在の状況について見てみましょう。
勝どき再開発とは?背景と目的
勝どきエリアは明治から大正にかけて埋立地として生まれ、もともとは工場や倉庫が並ぶ下町の工業地帯でした。
勝どきが現在の「タワーマンションが立ち並ぶ人気湾岸エリア」に転換する契機となったのが、2000年の都営大江戸線「勝どき」駅の開業です。
同年に「ソフィアタワー勝どき」「コスモ東京ベイタワー」、その後も2010年代にかけて「THE TOKYO TOWERS」「勝どきビュータワー」「勝どきザ・タワー」などの建設が続きました。
それまで倉庫群であった地域にオフィスビルやタワーマンションが次々と完成していったことで、現在の「勝どき=タワマン」というイメージが形作られていきました。
街が発展するにつれて住民も増え、勝どき駅の1日の平均乗降者数は開業時の2.8万人から約8.1万人と3倍近くに増加しています。
その一方で、急激な人口増加による駅周辺の交通混雑や公共施設の不足、防災性などが新たな課題となりました。
急増した住民のニーズに応える利便性向上と、高層マンションが多い特徴に対応した防災性の向上、都市機能の再整備を主な目的として勝どきエリアの再開発は行われます。
勝どき再開発の進捗状況と今後のスケジュール
今回行われる勝どきエリアの再開発は、勝どき駅周辺の「勝どき東地区第一種市街地再開発事業」と隣接地域にあたる豊海地区の「豊海地区第一種市街地再開発事業」の2つです。

勝どき東地区第一種市街地再開発事業の対象地域は、勝どき駅前にあたる勝どき2丁目の約3.7haです。
同事業は2014年の都市計画決定後、2019年に建設工事に着工しています。
完了予定は2028年度中なものの、2023年8月に勝どき駅直結のタワーマンション「パークタワー勝どきサウス」と「パークタワー勝どきミッド」が一足先に竣工しています。

「豊海地区第一種市街地再開発事業」の対象地域は、勝どき駅前から徒歩10分程度と少し離れた勝どき6丁目の約2.0haです。
2017年の都市計画決定後、2023年に建設工事に着工しており完了は2027年度末の予定です。

現在は両地区とも進行中の状態であり、2027〜2028年度の完成に向けて建設工事が進められています。
勝どきエリアの再開発による街の変化と魅力

次に、勝どきエリアの2つの再開発事業が街に与える変化について解説します。
駅周辺の再整備と利便性の向上
2015年の中央区の意識調査では、81.3%の人が気に入っている点として「利便性の高さ」を挙げています。
もちろん勝どきも例外ではありません。
駅から徒歩4分の「晴海トリトンスクエア」にはスーパー・飲食店・クリニック・郵便局・ATM・保育所などがそろい、日常の買い物や用事にも困りません。
さらに今回の再開発エリアでできた駅徒歩2分の「パークタワー勝どきサウス/ミッド」にはカフェやスーパーマーケット、クリニックモールなどのほかにスポーツアリーナもでき、一層便利になりました。
また、交通利便性も一層高まっています。
もともと都営大江戸線で新宿・六本木・汐留に直通でアクセス可能なことに加え、2024年の東京BRTの本格運行により新橋やほかの湾岸地域とのアクセス性も向上しました。
さらに今回の再開発での駅前広場の設置や歩行者導線の整備により、安全性・快適性も高まります。
豊海地区の再開発でも、店舗・区民館・診療所・保育所などの生活利便施設のほかに広場やオープンスペース、地域交流拠点の整備が計画されており、勝どきエリア全体の利便性と快適性が大きく向上する見通しです。
子育て・ファミリー層に優しい街づくり
タワーマンションが多く比較的新しい街である勝どきエリアは、子育てファミリー層に適した街です。
駅の周辺には保育園や幼稚園が多く、土日祝対応可能な小児科もあり乳幼児期のお子さんがいるファミリーにも便利です。
また、駅周辺には複数の公園があり、「豊海運動公園」や「晴海臨海公園」など休日に遊べる大規模な公園も生活圏内にそろいます。
さらに、屋外だけでなく子ども家庭支援センターや児童館、生後6か月から小学校2年生まで利用できる「グロースリンクかちどき」なども駅周辺にあり、公的・民間ともに子育て支援施設も充実した環境です。
再開発により商業・子育て施設が増えることで、勝どきエリアの子育てファミリーに優しい街づくりがさらに進みます。
ウォーターフロントの魅力と景観の進化
豊海運河や隅田川などの水辺に囲まれた立地の勝どき・豊海エリアは、超高層マンションと水辺の自然が調和した、都心でありながら開放感を味わえる街並みが魅力です。
中央区の「勝どき・豊海地区まちづくりガイドライン」でも、オープンスペースや緑の整備による「水と緑のネットワーク」作りに重点を置いた街づくりを目指すとしています。

再開発により、勝どき・豊海エリアはウォーターフロントの魅力を活かしつつ、生活機能がより充実した街へと進化を遂げつつあります。
勝どき再開発とマンション市場への影響

年々勝どきエリアの利便性や魅力が高まるなか、マンション市場でもその影響が顕著に表れています。
次に、勝どきエリアのマンション価格から再開発を通じた不動産市場の変化についても見てみましょう。
勝どきエリアのマンション価格動向

まずは、マンション価格の推移についても見てみましょう。
勝どきがある中央区のマンションの売却相場は3年前から+49.5%、9年前と比較すると2倍近い+93.5%と「高騰」といってよいほどの急激な上昇です。
勝どきエリアも例外ではなく、築8年の「勝どきザ・タワー」の推定売買価格相場は15,530万円〜15,930万円であり、わずか3年間で61.8%もの上昇率です。
東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地に誕生した大規模街区「晴海フラッグ」に続き、勝どきエリアの周辺では豊洲や築地市場跡などの再開発も控えています。
周辺エリアからの波及効果への期待も、勝どきの不動産市場を後押ししていると考えられるでしょう。
それに加えて、環状第3号線の勝どき〜芝公園間の延伸や、都心部から臨海部を経由し、羽田空港などの副都心とつなぐ「都心・臨海地下鉄新線」構想の実現による将来への期待感もマンション価格の上昇要因となっています。

新築と中古マンションの選び方
以下の表は、勝どき駅徒歩10分圏内の2024年4月~2025年3月の中古マンション新規売出し数を築年数別に示したものです。
勝どき駅周辺800m 駅徒歩×築年帯別2024年4月~2025年3月の中古マンション新規売出数(マンションリサーチ調べ)
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | 0 | 0 | 11 | 0 | 0 | 7 |
~徒歩3分 | 32 | 80 | 8 | 37 | 6 | 34 |
~徒歩5分 | 46 | 108 | 62 | 11 | 9 | 41 |
~徒歩7分 | 0 | 0 | 305 | 12 | 181 | 46 |
~徒歩10分 | 6 | 37 | 4 | 33 | 4 | 101 |
勝どきエリアでの駅近物件の中古マンションの供給が全体的に多く、豊富な選択肢のなかから自分に合った住まいが探せます。
勝どき駅周辺800m 駅徒歩×築年帯別中古マンション坪単価(マンションリサーチ調べ)
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | 499.6万円/坪 | – | – | 319.4万円/坪 |
~徒歩3分 | 938.8万円/坪 | 1037万円/坪 | 512.3万円/坪 | 735.5万円/坪 | 398.3万円/坪 | 394.8万円/坪 |
~徒歩5分 | 968.3万円/坪 | 1110万円/坪 | 718.5万円/坪 | 504.7万円/坪 | 464.3万円/坪 | 357.9万円/坪 |
~徒歩7分 | – | – | 740.6万円/坪 | 503万円/坪 | 712.3万円/坪 | 365万円/坪 |
~徒歩10分 | 663.6万円/坪 | 861.9万円/坪 | 557.7万円/坪 | 488.9万円/坪 | 520.2万円/坪 | 482.6万円/坪 |
勝どき駅周辺800m駅徒歩×築年帯別中古マンション単価(60㎡換算)(マンションリサーチ調べ)
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | 9067万円 | – | – | 5798万円 |
~徒歩3分 | 17038万円 | 18813万円 | 9299万円 | 13350万円 | 7229万円 | 7166万円 |
~徒歩5分 | 17574万円 | 20138万円 | 13041万円 | 9161万円 | 8426万円 | 6496万円 |
~徒歩7分 | – | – | 13441万円 | 9129万円 | 12928万円 | 6625万円 |
~徒歩10分 | 12044万円 | 15644万円 | 10122万円 | 8873万円 | 9441万円 | 8760万円 |
価格の相場についても見てみましょう。
東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」によると、東京都区部の中古マンションの成約坪単価は約381.72万円です。
成約平均築年数の25年で比較すると、勝どきエリアの不動産価格は意外にも23区と比較して特段高いというわけではありません。
60㎡換算のマンション単価を見てみると、築5年を超えたあたりで一度大きく下がります。
その後はばらつきがあるものの全体的に値下がり幅が小さく、築年数が経ってもあまりマンション価格が下がらない物件も多いと考えられます。
勝どきの再開発エリア内の新築マンションは高い利便性を最大限に享受できるものの、購入にあたっては価格と抽選倍率の高さが大きなネックです。
勝どきエリアのマンション価格は下がりにくい傾向が比較的みられるため、選択肢が多い中古マンションの購入も視野に入れて検討するとよいでしょう。
投資用マンションとしての勝どきの将来性
勝どきエリアは、投資用マンションとしても高い将来性を持っています。
湾岸エリアのブランド力に加え、都心部への優れたアクセスと良好な住環境が両立する立地は、単身者・ファミリー双方から高い賃貸需要があるのが強みです。
実際、勝どき駅は2024年LIFULL HOME’S「買って住みたい街ランキング 首都圏版」でも5年連続で1位となるなど、実際の住まい選びでも非常に高い支持を集めています。
今後も周辺エリアも含めた再開発による街としての価値向上や交通ネットワークの拡充が期待でき、キャピタルゲインも狙える資産性の観点からも非常に魅力的なエリアです。
ただし初期投資額が高額になる点と、今後数年で相次ぐ周辺エリアも含めた再開発に伴う大規模マンションの供給により、将来的に賃貸市場の需給バランスが崩れるリスクを念頭において検討するべきでしょう。
再開発が進む勝どきで注目のエリアと物件

ここで、再開発の具体的な内容と勝どきで注目すべきエリアとマンションについて見てみましょう。
勝どき東地区の特徴と計画内容
「勝どき東地区第一種市街地再開発事業」の中心となるのが、勝どき駅徒歩2分の新月島川と朝潮運河に囲まれたエリアに建設される、超高層タワーマンションを含む4棟の複合ビルです。
A1棟(地上58階建て) | 住宅・公共公益施設(パークタワー勝どきサウス) |
A2棟(地上45階建て) | 住宅・店舗・業務・公共公益施設(パークタワー勝どきミッド) |
A3棟(地上3階建て) | 公共公益施設(消防署) |
B棟(地上29階建て) | 住宅・店舗・公共公益施設(パークタワー勝どきノース(仮称)) |
2028年のB棟の完成時には、合計3,000戸を越える大規模な住宅供給が行われる予定となっています。
ほかにも低層部にはスーパーマーケットやクリニックモール、保育所、スポーツアリーナなどの生活利便施設、4階から7階にはオフィスフロアも設けられ、職住近接の都市機能を実現します。
再開発によって向上するのは生活の利便性だけではありません。
地域の活動拠点と防災時の集合場所を兼ねる広場の設置や環境向上のための緑地、安全・快適な歩行者ネットワークを形成する通路や歩道上空き地などが配置され、防災面や機能面でも強化されます。
豊海地区の特徴と計画内容
「豊海地区第一種市街地再開発事業」の中心となるのは、隅田川と東京湾に囲まれたエリアに建設される地上54階建ての2棟の複合ビルです。
合わせて総戸数2,077戸の住宅供給が予定されているほか、低層階に店舗や区民館、診療所、保育所などマンションの入居者だけでなく地域住民の生活を支える多様な施設の設置が予定されています。
また、地域イベントや遊び場として活用できる約4,200㎡の広場の整備や一部共用施設の地域開放、東京都と連携した防潮堤の整備による防災性の強化など、地域と連動した開発が行われる点も大きな特徴です。
勝どきで注目される新築・中古マンション
勝どきエリアで人気の高いマンションについて3つ紹介します。
(※販売状況は2025年5月時点のため変更の可能性があります)
パークタワー勝どきミッド/サウス
立地 | 「勝どき」駅直結(徒歩1〜2分)の利便性・資産性・ブランド力すべてに優れた新築大規模タワーマンション。 |
間取り | 1DK~3LDK(30.05㎡~102.21㎡) |
価格帯 | 9,000万円台~35,000万円台(※販売中のもの) |
設備 | 商業・医療・子育て支援施設併設、ラウンジやジム、パーティールームなど充実した共用部が魅力。 |
ザ 豊海タワー マリン&スカイ
立地 | 「勝どき」駅徒歩10分、中央区豊海町のウォーターフロントに位置する地上53階建の新築タワーマンション。 |
間取り | 1LDK~3LDK(40.01㎡~133.46㎡) |
価格帯 | 7,600万円台〜50,900万円台(※予定販売価格) |
設備 | 海を望む眺望で、大規模共用施設や最新設備が魅力。小学校隣接、運動公園至近。 |
勝どきビュータワー
立地 | 勝どき駅徒歩1分の好立地に建つ築14年、総戸数712戸のタワーマンション。 |
間取り | 1LDK~3LDK(54.68㎡~97㎡) |
価格帯 | 11,800万円~32,800万円(※販売中のもの) |
設備 | オートロック・24時間ゴミ出し可能・ゲストルームなど快適に暮らせる設備がそろう。 |
勝どき再開発に関するよくある質問
最後に、勝どきエリアの再開発に関するポイントとなる疑問について簡単にまとめました。
まとめ
勝どきエリアでは現在も再開発が進行中で、今後2・3年で新しい街が完全に姿を現す予定です。
都営大江戸線「勝どき」駅直結の複合施設となる大規模ビルや、周辺も含めた空間整備により、マンション住民・地域住民双方の暮らしやすさや快適さがさらに高まります。
幅広い世代から注目を集める勝どきエリアは、今後も都心と湾岸エリアを結ぶ利便性とブランド力が高い街として高い人気が続くでしょう。
まだまだ進化を続ける勝どきは、住む人・投資を検討する人にとって将来性のあるエリアです。