MENU

【最新】進む二極化、都心高価格帯の鈍化と23区全体の底堅さ(2026年1~3月)

この記事で分かること

  • 都心5区や高価格帯における在庫増と値下げ率上昇が示す、中古マンション市場の明確な調整局面
  • 調整局面の都心高価格帯と底堅い23区全体との間で鮮明になった、市場の明確な温度差と二極化
  • 買い手の慎重姿勢により加速する、「どの物件でも売れる時代」から「選ばれる時代」への構造変化
調査概要

調査期間:2023年1月~2026年3月
調査機関:マンションリサーチ
調査対象:東京都23区内中古マンション
サンプル事例数:234,621事例
調査方法:公開されている中古マンション売出情報を収集して統計処理を行い集計

目次

はじめに

2026年第一四半期:市場は静かに変化し始めている

2026年も4月に入り、早くも最初の四半期が終了しました。この期間の中古マンション市場を振り返ると、一見すると大きな価格下落などの劇的な変化は見られません。しかし、その内側では確実に「変化の兆し」が生まれています。

特に東京都においては、高価格帯の中古マンションの動きに変調が見られ始めました。これまで市場を牽引してきた高額物件の売れ行きに陰りが見え、「売れる市場」から「選ばれる市場」へと移行しつつある状況です。

実際に、東日本不動産流通機構のデータを見ると、2026年に入ってから新規登録物件の平米単価は上昇ペースが鈍化し、横ばい圏で推移する傾向が強まっています。成約平米単価も前年比では上昇を維持しているものの、直近では明らかに伸びが弱まっており、「価格は上がり続ける」というこれまでの前提に変化が生じています。

在庫価格の上昇が示す「売れ残り」の増加

グラフ1:首都圏中古マンション価格の推移【出典:福嶋総研】
グラフ1:首都圏中古マンション価格の推移
【出典:福嶋総研

こうした中で特に注目すべきなのが、「在庫価格」の動きです。新規価格や成約価格が伸び悩む一方で、在庫平米単価だけが上昇を続けています。

在庫とは、これから売り出される物件だけでなく、すでに売りに出ているものの売れていない物件も含まれます。つまり在庫価格の上昇は、「高額な物件が売れずに市場に滞留している」ことを意味します。

現在の市場は、一見すると価格が維持されているように見えますが、その裏側では需給のバランスが崩れ始めています。特に高価格帯では、売り手が期待する価格と、買い手が受け入れられる価格の間にギャップが生じており、これが「売れ残り」という形で表面化しているのです。

1億5000万円以上の壁:高価格帯で起きていること

グラフ2:1.5億円以上中古マンションの在庫の割合【出典:福嶋総研】
グラフ2:1.5億円以上中古マンションの在庫の割合
【出典:福嶋総研

実際に、1億5000万円以上の高価格帯では在庫数の増加が顕著です。
売主は依然として強気の価格設定を行っていますが、それを受け止めるだけの需要が追いついていないのが現状です。

グラフ3:1.5億円以上中古マンションの販売日数と値下げ回数【出典:福嶋総研】
グラフ3:1.5億円以上中古マンションの販売日数と値下げ回数
【出典:福嶋総研

これにより、売り出してから成約に至るまでの期間が長期化し、値下げ回数も増加しています。さらに深刻なのは、「値下げをしても売れない」というケースが増えている点です。

これまでであれば、一定の価格調整を行えば買い手がつく市場でした。しかし現在は、価格を下げるだけでは不十分であり、立地や築年数、広さ、マンションブランドといった総合的な魅力が厳しく見られるようになっています。

投資市場にも変化:オーナーチェンジ物件の動向

この変化は、実需だけでなく投資市場にも表れています。特に注目されるのが、オーナーチェンジ(賃貸中)物件の動きです。

これらの物件は、居住目的ではなく投資目的で購入されるため、買い手は利回りだけでなく将来の価格上昇やエリアの成長性も含めて判断します。そのため、市場の先行きに対する見方がより敏感に反映される特徴があります。

2026年第一四半期の東京都では、中間価格帯のオーナーチェンジ物件は比較的順調に回転している一方で、高価格帯は回転率が低下しています。これは投資家が高額物件に対して慎重姿勢を強めていることを示しており、市場全体の変化を裏付ける動きといえるでしょう。

都心5区で進む価格調整:値下げ率は過去最高水準へ

グラフ4:都心5区および23区の中古マンション値下げ率【出典:福嶋総研】
グラフ4:都心5区および23区の中古マンション値下げ率
【出典:福嶋総研

特に変化が顕著なのが、都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)です。

2025年10月〜12月における値下げ率は5.77%でしたが、2026年1月〜3月には6.24%へと上昇し、これは2023年以降で最も高い水準となりました。

さらに重要なのは、この値下げ率が一時的なものではなく、2024年後半から継続的に上昇している点です。これは市場が単なる短期調整ではなく、構造的な価格修正局面に入っている可能性を示しています。

これまで価格上昇を牽引してきた都心5区で変化が起きていることは、市場全体にとって非常に重要なシグナルです。

一方で23区全体は安定:広がる「温度差」

興味深いのは、こうした変化が東京23区全体に広がっているわけではないという点です。

2026年第一四半期における23区全体の値下げ率は5.53%と、前期比でわずかな上昇にとどまり、全体としては安定した推移を維持しています。販売期間や値下げ回数についても大きな変化はなく、流動性は保たれています。

グラフ5:都心5区および23区の中古マンション値下げ率【出典:福嶋総研】
グラフ5:都心5区および23区の中古マンション値下げ率
【出典:福嶋総研

つまり現在の市場は、「都心の高価格帯は調整局面」「それ以外は堅調」という二つの顔を持っているのです。
この“温度差”こそが、いまの市場を理解する上で最も重要なポイントといえるでしょう。

買い手の変化:より慎重で現実的な判断へ

2026年に入り、高価格帯では、買い手の姿勢が大きく変わりました。

これまでのように「今買わないともっと高くなる」という焦りは薄れ、金利動向や将来の不確実性を踏まえた冷静な判断が重視されています。結果として、売主との価格認識のギャップが広がり、成約に至りにくくなっています。

この変化は、値下げ率の上昇や販売期間の長期化、値下げ回数の増加といった形でデータにも明確に表れています。

マクロ環境も影響:家計への圧迫が購買力を低下

さらに見逃せないのが、マクロ経済の影響です。円安の進行やエネルギー価格、食品価格の高止まりは、家計の負担を増加させています。仮に名目賃金が上昇しても、物価上昇に追いつかなければ実質的な購買力は低下します。

住宅は人生で最も大きな買い物の一つです。そのため、家計に余裕がなければ購入意欲は当然ながら抑制されます。特に高価格帯の物件は影響を受けやすく、現在の在庫増加や流動性低下の一因となっている可能性があります。

「下落局面」ではなく「選別の時代」へ

ここまでの動きを整理すると、現在の中古マンション市場は全面的な下落局面にあるわけではありません。

むしろ、「どの物件でも売れる時代」から「選ばれる物件だけが売れる時代」へと移行していると考えるべきでしょう。

都心5区の高価格帯は調整局面に入りつつありますが、23区全体では依然として底堅さが維持されています。つまり、市場全体が弱いのではなく、「良いものとそうでないものの差」が拡大しているのです。

今後の注目ポイント:どこに需要が残るのか

今後の市場を見る上で重要なのは、「どのエリア・どの価格帯に需要が残るのか」という視点です。

交通利便性が高く、生活環境が整ったエリアや、適正価格に収まっている物件は、引き続き安定した需要が見込まれます。一方で、価格だけが先行して上昇した物件は、調整圧力が強まる可能性があります。

市場は現在、次の成長局面に向けた調整フェーズにあります。この局面をどう捉え、どのように行動するかが、購入・売却の成否を大きく左右することになるでしょう。

メディアの皆様へ

本記事の転載・引用は出典明記(必須:メディア名・対象記事URL)の上、ご利用をお願いいたします。

記事の執筆依頼、その他お問い合わせはこちらまで→media@mansionresearch.co.jp

すみかうるの記事をシェアする

この記事を書いた人

福嶋 真司のアバター 福嶋 真司 マンションリサーチ株式会社 不動産データ分析責任者

【保有資格】宅地建物取引士
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。

目次