
西日暮里は東京都荒川区の西端に位置し、山手線や千代田線など4路線が交わる交通の要所です。
古くからの下町情緒と寺町の風情を残す西日暮里は近年、利便性の高さや幅広い層に対応できる多様な住環境から注目を集めています。
その西日暮里の駅前エリアを中心に、2025年初頭の組合設立認可を経て大規模な再開発計画がいよいよ本格的に動き始めたところです。
本記事では、西日暮里駅前地区の再開発の全体像や街並みや暮らしの変化、マンション市場への影響について解説します。
西日暮里再開発の概要

まずは西日暮里エリアの特徴に触れながら、再開発事業の背景や目的、現在の進捗状況について見ていきましょう。
西日暮里再開発の背景と目的
日暮里・西日暮里エリアは室町時代にはすでに集落が存在し、江戸時代には「日暮らし(一日遊べる)の里」と呼ばれるほど景勝地や行楽地として栄えた歴史ある地域です。
その一方で現在の西日暮里駅周辺には古くからの住宅や中小ビルが密集し、敷地の細分化や建物の老朽化による防災面でも懸念が高まる状態でした。さらに駅周辺の交通結節機能の不足による交通混雑などにより、駅前の土地が有効活用されていないという現状がありました。
こうした現状を改善し、防災性の向上や駅前の利便性の向上、および公益施設と商業施設の相乗効果による地域活性化を目的として再開発計画が立ち上がりました。
西日暮里駅周辺の再開発計画と今後の予定
今回の再開発の対象となるエリアは駅の北東側を中心とした約2.3ヘクタール(約23,000㎡)で、「西日暮里駅前地区市街地再開発事業」として再開発組合と東急不動産が中心となって事業が進められます。
4路線が結節し、成田空港へも直接アクセスが可能な高い交通利便性と観光地として人気の「谷根千エリア」や文京エリアに近い立地を生かし、再開発により観光客だけでなく地域住民を含めた地域活性化を目指します。
2025年5月時点では再開発計画は動き始めたばかりで、具体的な工事はこれから本格化する予定です。
再開発事業は2021年6月に都市計画が決定し、2025年1月には市街地再開発組合が設立認可を取得しています。
今後は既存建物の解体やインフラ整備を経て、2027年4月に本格工事に着工、2031年3月頃の完成予定です。
再開発では、地上46階建ての住宅棟や、商業・業務・文化交流施設を備えた複合棟、駅前広場やペデストリアンデッキなどが計画されており、駅前の新たなランドマークとなることが期待されています。
西日暮里再開発で変わる街の姿

ここでは再開発の内容について具体的に触れながら、西日暮里の街がどのように変わっていくかについて解説します。
駅前広場や歩行者空間の整備
西日暮里駅はJR山手線/京浜東北線、東京メトロ千代田線、日暮里・舎人ライナーと4線が利用可能な交通利便性の高い立地です。しかし最初から複数路線の乗換を前提に設計された駅ではなく、JR と日暮里・舎人ライナーの開業時期が大きく異なるため乗換動線の整備が不十分という課題がありました。
それに加え、現在の西日暮里駅前はバスやタクシー、一般車が混在し歩行者の動線も分かりづらい状況です。
今後の再開発では、外周道路の拡幅や歩道やペデストリアンデッキの整備により、安全で快適な歩行者空間の確保と回遊性の向上を図ります。併せて交通広場や自転車駐車場の整備を行うことで、駅周辺の交通混雑等の解消と交通結節機能の強化を図る計画です。
再開発により駅前の混雑や渋滞が緩和され安全で快適な移動が可能となるほか、駅と周辺施設の行き来がよりスムーズになります。
商業・生活利便施設の充実
これまで西日暮里駅前には飲食店は多いものの大型商業施設や生活利便施設が少なく、駅利用者や地域住民にとって生活利便性の向上が課題となっていました。
また、2008年の日暮里・舎人ライナーの開業により足立区西部からの駅利用者が増加し、新たな人の流れに対応するため商業・業務環境の整備が求められていました。
再開発でエリア内に建設が予定されている10階建ての商業棟には、地域の賑わいを創出する商業店舗やホール、文化交流施設、保育施設など多様な機能を持つ複合施設が整備される予定です。
今回の再開発によって西日暮里駅周辺の生活利便性が高まり、地域住民にとってより快適な街へと生まれ変わることが期待されます。
下町風情を残しながら進化する街並み
西日暮里は、昔ながらの商店街や住宅が残る下町情緒と谷中・根津・千駄木(谷根千)エリアとのつながりが色濃い地域です。
そのため街づくりにおいても全体的に都市化するのではなく、エリアごとに定めた整備方針に沿って進められています。

荒川区では、西日暮里の「歴史ある街」としての魅力を残したまま、再開発での新しい都市機能の創出により街の課題を解消し、区内最大の広域拠点として発展させることを目指しています。
新旧の魅力と利点が融合した街づくりにより、地域住民の利便性を高めると同時に街としての魅力を高め、区外からの集客による街の賑わいを創出する狙いです。
再開発で高まる住みやすさと多様な住環境
西日暮里はもともと4路線が交わる交通利便性の高い街で、東側には飲食店や商店が集まる賑やかなエリア、西側には閑静な住宅街が広がり、一人暮らし向けからファミリー向けまで多様な住まいが揃っています。
再開発で商業施設や住宅が供給されることで、西日暮里駅周辺は今よりも多様なライフスタイルや家族構成に対応できる住環境になると見込まれます。
また再開発によって駅周辺の回遊性や生活利便性が高まるだけでなく、緑地の確保により防災性も向上します。
昔ながらの下町情緒と新しい街並みが共存し、若者からファミリー、高齢者まで多世代が暮らしやすい、より住みやすい街へと進化するでしょう。
西日暮里再開発と不動産・マンション市場への影響

次に、西日暮里エリアのマンション価格と再開発が不動産市場に与える影響についてデータを基に解説します。
マンション価格の推移と今後の見通し

まずは、マンション価格の推移についても見てみましょう。
西日暮里がある荒川区のマンションの売却相場は、3年前と比較して15.6%、9年前と比較すると+53.9%の上昇率です。
西日暮里のマンション価格は上昇傾向が続いていますが、再開発の都市計画が決定した2021年6月あたりから上昇率が高くなっていることがわかります。
西日暮里の近年のマンション価格上昇には再開発も影響しており、今後計画が進むにつれマンション価格はさらに上昇する余地があると考えられます。
新築・中古マンションの選び方
次に、2024年4月~2025年3月に発売された西日暮里駅徒歩10分圏内の中古マンションの販売数と坪/㎡単価を築年数別に示したデータについて見てみましょう。
西日暮里駅周辺800m 駅徒歩×築年帯別2024年4月~2025年3月の中古マンション新規売出数
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩3分 | 0 | 2 | 0 | 1 | 1 | 11 |
~徒歩5分 | 1 | 0 | 17 | 9 | 11 | 39 |
~徒歩7分 | 0 | 4 | 6 | 18 | 23 | 37 |
~徒歩10分 | 0 | 3 | 41 | 30 | 42 | 176 |
比較的築年数問わず発売されているものの、西日暮里エリアの中古マンションの流通量は少ないことから人気の高さゆえに早い時期に成約していると考えられます。
西日暮里駅周辺800m 駅徒歩×築年帯別中古マンション坪単価
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | 435万円/坪 | – | 355.4万円/坪 | 325.2万円/坪 | 203.2万円/坪 |
~徒歩5分 | 624.8万円/坪 | – | 449.5万円/坪 | 421.5万円/坪 | 405.3万円/坪 | 288.8万円/坪 |
~徒歩7分 | – | 462.2万円/坪 | 440万円/坪 | 454.4万円/坪 | 481.1万円/坪 | 316.3万円/坪 |
~徒歩10分 | – | 493.7万円/坪 | 368.9万円/坪 | 335万円/坪 | 344万円/坪 | 294.1万円/坪 |
西日暮里駅周辺800m駅徒歩×築年帯別中古マンション単価(60㎡換算)
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | 7895万円 | – | 6451万円 | 5902万円 | 3687万円 |
~徒歩5分 | 11340万円 | – | 8158万円 | 7651万円 | 7356万円 | 5241万円 |
~徒歩7分 | – | 8389万円 | 7986万円 | 8247万円 | 8732万円 | 5741万円 |
~徒歩10分 | – | 8961万円 | 6695万円 | 6080万円 | 6244万円 | 5337万円 |
また、東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」によると、東京都区部の中古マンションの成約坪単価は約381.72万円です。成約平均築年数の25年で比較すると、西日暮里エリアの不動産価格は23区のなかでは割安であるといえるでしょう。
一般的に中古マンションは築20年程度を過ぎると価格が大きく下がります。そのため中古マンションを購入したほうがお得とも考えられますが、一概にそうとはいえません。
もしマンション価格の上昇傾向が今後も続くとしたら、新築マンションのほうが20年程度住んでからの売却でも高く売却でき、トータルでお得になるという可能性も考えられます。
そのため、ライフプランや売却の予定も含めて新築・中古どちらを購入するか検討するとよいでしょう。
西日暮里の再開発は比較的限られたエリアのため、再開発エリア内にこだわらずとも周辺のマンションでも十分に再開発のメリットを享受できるのではないでしょうか。
西日暮里エリアの賃貸・投資需要
再開発による利便性や街のブランド力の向上を背景に、西日暮里エリアは居住用だけでなく投資用不動産としても注目を集めています。
西日暮里駅周辺は山手線をはじめ4路線が利用でき都内へのアクセスが良いため、学生・社会人・ファミリー層まで幅広い層から安定した賃貸需要が見込まれる地域です。
また周辺には圏内に複数大学があり、企業も多い立地から単身者や転勤族、学生の入居ニーズが底堅いことも特徴です。
さらに今後は再開発による商業施設や住宅供給などにより街の魅力や生活利便性がさらに高まることで、賃貸市場の安定性や賃料の底堅さが続くと考えられます。
新築・中古ともにマンション価格も上昇傾向にあるため、将来的な資産価値や利回りの向上も期待できます。
市場や物件ごとの状況を見極める慎重さは欠かせませんが、西日暮里エリアは住まい選びや資産形成の観点からも十分に検討する価値があるエリアといえるでしょう。
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注目される西日暮里の再開発エリアとマンション情報
次に、西日暮里の再開発で注目すべきエリアと人気のマンションについて見てみましょう。
駅前再開発エリアの詳細
西日暮里駅前の再開発エリアは、JRの各線路と日暮里・舎人ライナーの線路に挟まれたJR西日暮里駅の北東側、旧西日暮里駅前ビル周辺の約2.3ヘクタール(約23,000㎡)です。
この区域は西日暮里五丁目にあたり、尾久橋通り・道灌山通りなどの幹線道路に囲まれた交通利便性の高い立地です。

再開発の計画では、東京メトロ西日暮里駅の正面に交通広場ができ、JR西日暮里駅と東京メトロ西日暮里駅の間からペデストリアンデッキで交通広場とその奥にある複合施設エリアにつながります。

複合施設エリア内は駅や交通広場に近い側に商業棟(※上図右側が東京メトロ西日暮里駅)、その奥に住宅棟が建てられる予定です。また、交通広場と商業棟の間、商業棟と住宅棟の間、住宅棟と区画道路の間にはそれぞれオープンスペースが設けられ、防災性と快適な住環境の確保に役立ちます。
今後このエリアが駅前の顔として、交通・商業・文化など多様な都市機能が集積する拠点となることが想定されています。
人気のマンション・開発予定物件
ここでは、現在販売中または発売開始が近い分譲マンションについていくつかピックアップして紹介します。
(※物件情報は2025年5月時点で掲載)
ピアース西日暮里
JR山手線「西日暮里」駅徒歩11分・京成本線「新三河島」駅徒歩1分、地上14階建て・全48戸の中規模新築分譲マンション。次世代基準を採用した高い断熱性と、四方角地の立地に加えて全戸南向き×ハイサッシを採用した開放感が魅力です。
間取り:2LDK~3LDK(44.33㎡~70.90㎡)
価格帯:未定(2025年6月下旬販売開始予定)
入居予定:2026年12月下旬
イノバス西日暮里
JR山手線「西日暮里」駅徒歩11分、京成本線「新三河島」駅徒歩4分の地上15階建て・全28戸のコンパクトな新築分譲マンションです。モダンなデザインが特徴で、第三者方式(管理者方式)採用により管理組合役員の負担から解放される点も魅力です。
間取り:1LDK・2LDK(38.46㎡・55.77㎡)
価格帯:5,788万円・6,988万円
入居予定:2026年11月下旬
西日暮里エリアにはほかにも「プレシス西日暮里」や「シティテラス西日暮里ステーションコート」など駅近の中古マンションがいくつかありますが、人気が高く現在販売中のものは少ない現状です。
中古マンションの購入を検討している場合にはこまめにチェックするか不動産会社に希望を伝えておくとよいでしょう。
西日暮里再開発に関するよくある質問
最後に、西日暮里エリアの再開発に関する疑問について簡単にまとめました。
まとめ
かつて老朽化した中層ビルや住宅が密集していた西日暮里エリアは、2025年1月の再開発組合設立認可を経て、いよいよ大規模な再開発が本格的に動き出しました。
今後はタワーマンションや商業施設の建設や広場や歩行者空間の整備などにより、多様な都市機能を備えた新たな拠点として段階的に変化を遂げていくことが期待されています。
交通利便性の高さや下町情緒といった従来の魅力に加え、生活利便性や防災性、文化的な発信力も強化されることで、地域住民にとっても訪れる人にとっても一層快適で活気ある街へと進化していくでしょう。
再開発の進捗とともに、今後の西日暮里エリアの変化と新たな価値創出に注目が集まります。