東京ベイエリアの中核として発展を続ける豊洲は、再開発によって住環境や利便性が大きく向上し、高い人気を維持しています。
近年次々と大型施設が開業し、長期間にわたる再開発が一通り完了したと思われる豊洲エリアですが、まだまだ見逃せません。
「新豊洲エリア」である豊洲6丁目を中心に新たな大規模再開発プロジェクトの計画も動いており、不動産市場への影響も注目されています。
本記事では豊洲の再開発の経緯と最新の動向、不動産市場に与える影響について詳しく解説します。
豊洲再開発の概要

まずは再開発が続く豊洲のこれまでの経緯や対象エリア、現在の状況について解説します。
豊洲再開発とは?基本情報と目的
大正時代後期からの埋立事業によってできた豊洲地区は、1930(昭和10)年代に造船所ができたことを皮切りに1970〜1980(昭和50)年代にかけて都市化が進み、街としての基盤が築かれました。
1988(昭和63)年には有楽町線「豊洲」駅が完成し、平成に入り「東京ベイエリア21」「豊洲1~3丁目地区まちづくり方針」などの都市構想が次々と策定されます。豊洲は東京湾の奥に位置する東京臨海都市の中心的存在として、ほかの都市とのネットワークの中核となり東京都の経済をけん引するエリアという位置づけで再開発が進められてきました。
再開発の進捗状況と今後の予定

これまでの豊洲の再開発は、「豊洲」駅周囲のエリアである豊洲1~3丁目を中心に行われてきています。
2006(平成18)年にはかつて造船所だった場所にキッザニア東京などが入る「アーバンドック ららぽーと豊洲」が開業しました。
また、2020(令和2)年にはオフィス・商業施設・ホテル・エネルギー供給施設が一体となったエリア最大の再開発プロジェクト「豊洲ベイサイドクロス」がグランドオープンしています。

また、商業施設だけでなく大型マンションも建設されています。
2021(令和3)年には地上48階建て・総戸数1,152戸の超高層分譲マンション「ブランズタワー豊洲」が竣工しました。
現在、同エリアの再開発は終盤を迎えています。
最後の大規模再開発として、IHIと三菱地所が共同で事業を進める「豊洲セイルパーク(TOYOSU SAIL PARK)」が2025(令和7)年6月に完成予定です。オフィス・店舗・インキュベーション(起業や事業拡大を支援する)施設・シェア企業寮などから構成される同街区は、名称通りこれからの豊洲を推進する帆(SAIL)としての役割を担うことが期待されています。
さらに、「新豊洲」駅周辺の豊洲4~6丁目の開発も続きます。
2022年には清水建設が豊洲6丁目で開発を進めてきたホテル・オフィス・都市型道の駅から成る複合開発街区「ミチノテラス豊洲」が全面開業しました。
また東京ガスも豊洲6丁目、豊洲市場に隣接した約20ヘクタールの地区に循環型未来都市を開発する計画を明らかにしています。
豊洲再開発の魅力とは?

長年にわたる開発により、「埋め立てられた工業地」から「東京ベイエリアの中核となる人気エリア」に姿を変えてきた「豊洲」。
次に、再開発によって変化したポイントとともに豊洲の魅力について解説します。
住環境の向上と利便性の強化
豊洲というとベイエリアの商業都市というイメージが強いですが、住環境としても優れています。
豊洲地区全体では、工場地帯からのイメージ脱却や埋立地という特性などから「豊洲グリーン・エコアイランド構想」を掲げ、環境に優しく災害に強い街づくりが行われてきました。
豊洲市場の排熱を豊洲地区の熱供給に有効活用する環境負荷低減への取り組み以外にも、複数の供給ルート確保による安定した電力供給や防潮堤による高潮・災害対策、災害拠点病院の強化などを推進しています。
また、豊洲地区では水辺の整備や緑とのふれあいができる環境作りも進めており、良好な住環境と充実した商業施設による利便性の両立が実現するエリアです。
交通アクセスの改善
豊洲は有楽町線を利用して銀座・有楽町・新木場・池袋などの主要駅に乗り換えなしでアクセスでき、東京へは15〜20分前後、そのほかの都内主要駅にも30分未満で移動できる立地です。
また、豊洲周辺はバス路線も豊富で、深川・東陽町・門前仲町などへの移動も便利です。

それに加えて2006(平成18)年にはゆりかもめの豊洲〜有明間の延伸に伴い豊洲市場最寄り駅にあたる「市場前」駅が新設されました。これにより豊洲全域から台場や有明など湾岸エリアの人気スポットへも直接アクセス可能です。
さらに今後注目なのが、2030年代半ばの開業を目指して現在工事が進んでいる東京メトロ有楽町線の豊洲〜住吉間の延伸です。開業すれば江東区内の南北移動がスムーズになるだけでなく、都内や千葉方面への移動の選択肢が増え利便性が上がります。

また、2022(令和4)年には有明から豊洲・新橋などを経由して神田佐久間町までつながる環状2号線が全面開通しており、自動車での交通アクセスも向上しています。
豊洲エリアの商業・娯楽施設の充実
豊洲エリアは、日々の暮らしをより豊かにする多彩な商業・娯楽施設が集積しているのも大きな魅力です。
ファッションや雑貨、グルメ、映画館に加え「キッザニア東京」など215店舗が揃う「アーバンドック ららぽーと豊洲」では、単身者からファミリー層まで楽しめるスポットとして高い人気を誇ります。
また2018年に築地から移転した豊洲市場も地元民のみならず観光客が集まり、賑わいの創出に一役買っています。
さらに2024(令和6)年に豊洲市場に隣接してオープンしたのが「豊洲千客万来」です。
江戸の町並みを再現したグルメモールや天然温泉を楽しめる「東京豊洲 万葉倶楽部」など、食と癒しを一度に味わえる新たな観光・レジャー拠点となっています。
大規模商業施設以外にも周辺にスーパーや飲食店が多数揃った豊洲は、日常の買い物から休日の娯楽まで選択肢に困らない生活利便性の高いエリアです。
豊洲再開発と不動産市場の関係

次に、豊洲エリアのマンション価格から再開発を通じた不動産市場の変化について解説します。
再開発によるマンション価格への影響
以下の表は、豊洲駅徒歩10分圏内のマンション坪単価を築年数別に示したものです。
豊洲駅周辺800M駅徒歩×築年帯別中古マンション坪単価
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | – | – | – | 849万円/坪 | 286万円/坪 |
~徒歩5分 | – | 900万円/坪 | 651万円/坪 | – | 440万円/坪 | 463万円/坪 |
~徒歩7分 | – | – | 485万円/坪 | 675万円/坪 | 591万円/坪 | 411万円/坪 |
~徒歩10分 | – | 477万円/坪 | 634万円/坪 | 638万円/坪 | 787万円/坪 | 332万円/坪 |
東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」によると、東京都区部の中古マンションの成約坪単価は約381.72万円です。成約平均築年数の25年で比較すると、豊洲エリアの不動産価格は23区のなかでは駅近物件を中心に割高になっているといえるでしょう。

マンション価格の推移についても見てみましょう。豊洲がある江東区のマンションの売却相場は、3年前から29.8%、9年前と比較すると+66.8%と急激に上昇しています。
3年前はちょうど有楽町線延伸の発表があった頃であり、再開発と有楽町線延伸への期待感が売却相場上昇の要因となっていると考えられます。
賃貸需要と投資用不動産の変化
豊洲地区の再開発に伴い、「豊洲フロント」や「豊洲ベイサイドクロスタワー」、「豊洲フォレシア」など豊洲駅至近に大規模オフィスビルが建てられてきました。
さらに「メブクス豊洲」、「豊洲セイルパーク」の建設が続くことで、オフィスを豊洲に移転する動きが出てきています。
オフィスが増加すれば、周辺の店舗も含め従業員の賃貸需要も増加します。
豊洲の賃貸需要は子育てファミリー層が中心なイメージですが、単身者にとっても交通アクセスが良く商業施設が充実しており、都市として人気がある豊洲は居住エリアとして魅力的です。
再開発が地価の上昇を大きく後押しし、高い賃貸需要が見込まれる豊洲エリアは投資対象エリアとしても注目されます。
新築マンションと中古マンションの選び方
2025年4月現在、豊洲エリアで販売中の新築マンションはありません。そのため、今後の再開発に伴い新築マンションが発表された際には、希少価値から価格がかなり高くなることが予想されます。
長期にわたり再開発が続いている豊洲地区では、築10年未満の物件も含めてバランス良く中古マンションの流通があることが分かります。
豊洲駅周辺800M 駅徒歩×築年帯別2024年1月~2024年12月の中古マンション新規売出数
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩3分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 2 |
~徒歩5分 | 0 | 92 | 29 | 0 | 29 | 5 |
~徒歩7分 | 0 | 0 | 11 | 146 | 55 | 20 |
~徒歩10分 | 0 | 19 | 57 | 103 | 78 | 57 |
豊洲駅周辺800M駅徒歩×築年帯別中古マンション単価(60㎡換算)
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | – | – | – | 15409万円 | 5191万円 |
~徒歩5分 | – | 16335万円 | 11816万円 | – | 7986万円 | 8403万円 |
~徒歩7分 | – | – | 8803万円 | 12251万円 | 10727万円 | 7460万円 |
~徒歩10分 | – | 8658万円 | 11507万円 | 11580万円 | 14284万円 | 6026万円 |
60㎡換算のマンション単価を見てみると、ばらつきはあるものの築21年以上のマンションだと価格が大きく下がります。予算を抑えて豊洲エリアへのマンション購入を考えるなら、築21年以上のマンションも視野に入れるとよいでしょう。
再開発エリア内、特に新築マンションは最新設備や高い耐震性、街全体の将来性といった要素から資産価値の上昇が期待できる点が大きな魅力です。駅近や大規模開発の物件は、今後も高い需要が見込まれます。
一方、再開発エリア外や中古マンションでも立地や管理状況が良好な物件は安定した資産価値を維持しやすく、流通数が多いため価格帯や間取りの選択肢も広がります。築年数だけでなく修繕積立金や管理体制、周辺環境の変化も資産価値を見極めるポイントです。
豊洲再開発で注目のエリアとおすすめ物件

続いて、豊洲で注目すべきエリアと人気のマンションについて見てみましょう。
再開発の中心地で注目のエリア
豊洲エリアは再開発の進展によって住環境・利便性・資産価値の三拍子が揃った、マンション購入希望者から高い注目を集めるエリアです。
そのなかでも注目したいのは、豊洲6丁目の「新豊洲エリア」です。すでに「豊洲千客万来」や「ミチノテラス豊洲」がオープンしていますが、東京ガスが計画する「循環型未来都市」プロジェクトではオフィス・商業施設・住宅の供給が予定されており今後も見逃せません。

新築・中古マンションのおすすめ物件
豊洲地区で人気の高いマンションについて3つ紹介します。
(※販売状況は2025年4月時点のため変更の可能性があります)
ブランズタワー豊洲
ゆりかもめ「豊洲」駅徒歩4分、2021年築の豊洲エリアを代表する大規模タワーマンションです。高級ブランドマンションとして有名な「BRANZ」シリーズの一つであり、劇場のようなエントランスホールをはじめ高級感のある洗練されたデザインが特徴です。現在約1億円〜約3億7,000万円程度で中古物件として販売されています。
アーバンドックパークシティ豊洲
有楽町線「豊洲」駅徒歩6分、ららぽーと豊洲隣接の好立地に2008年に建てられた52階建ての大規模タワーマンションです。ペットと一緒に暮らせる点と、全体的にシックで上品なデザインが特徴です。現在約1億3,000万円〜約2億4,000万円程度で中古物件として販売されています。
シティタワーズ豊洲 ザ・ツイン/ザ・シンボル
有楽町線「豊洲」駅徒歩5分前後の立地に建つ、2009年築の大規模タワーマンションです。壁一面が窓という開放感が魅力の「ダイレクトスカイビュー」やガラス貼りのグランドエントランスなど、贅沢な空間と眺望を味わえる設計が特徴です。現在約9,000万円〜約3億8,000万円程度で中古物件として販売されています。
豊洲再開発に対する住民の声
次に、豊洲再開発に対する住民のスタンスや意見についても紹介します。
豊洲の再開発が成功した理由
豊洲の再開発の大きな特徴が、地権者が参加する形で街づくりが行われた点です。なかでも豊洲2・3丁目では全地権者により「まちづくり協議会」が立ちあげられ、協議・調整を重ねられて意見がまとめられてきました。
協議会が地権者間での意見のとりまとめに加え、推進役としての役割を果たすことで一体となった豊洲の体系的な街づくりが進められてきています。
さらに豊洲の再開発を成功させるために同協議会が作成したのが、協議会の意向をとりまとめた「まちづくりガイドライン」です。コンセプトに基づき詳細に取り決められたガイドラインと、ガイドラインを遵守するための仕組み作り(新地権者への契約時の周知)がコンセプトに沿った街づくりを可能にしてきました。
豊洲の再開発に対する意見
豊洲単体での再開発に対する意見は公開されていないものの、豊洲のある「江東区長期計画(後期)」ではパブリックコメントを実施しています。
そのなかでは、「医療体制を強化してほしい」といった意見がいくつか見られました。
再開発により住民が急激に増加したことに伴う、医師や医療機関の不足が課題となっているとみられます。
また、交通網の強化も意見として挙げられていますが、要望が非常に多い有楽町線延伸の実現や再開発の完了により今後の改善が期待されます。
参考:江東区 江東区長期計画(後期)分野別計画<素案>パブリックコメントに寄せられたご意見と区の考え方
豊洲再開発に関するよくある質問
最後に、豊洲エリアの再開発に関するポイントとなる疑問について簡単にまとめました。
まとめ
再開発がひと段落つこうとしている豊洲エリアですが、今後も新たな施設の開業や街づくりが進む予定です。
新豊洲エリアの大規模再開発や将来の有楽町線延伸も控え、住みやすさと利便性がますます高まる豊洲エリアは都心と湾岸エリアを結ぶ拠点としてファミリー層を中心に高い人気が続くと考えられます。
進化を続ける豊洲は、暮らしやすさだけでなく将来性や資産価値の面でも大きな期待が寄せられるエリアです。