
「横浜」と聞くと一般的にイメージする「海の街」「おしゃれ」「都会」といったイメージの対極にあるといってもよい横浜市泉区。
この泉区にあり、再開発により今後大きな変化が予想されるのが今回紹介する「ゆめが丘」です。
2024年7月には再開発事業の中心となる大型商業施設「ゆめが丘ソラトス」が駅前に誕生し、新たな住宅地も整備されつつあります。
本記事ではゆめが丘再開発の現状と展望、そして不動産市場への影響について詳しく解説します。

ゆめが丘再開発の概要

ゆめが丘のある横浜市泉区は、元々農村地帯であったゆえの生活インフラの充実度の低さから「横浜のチベット」とも呼ばれるほど豊かな自然環境が特徴的なエリアです。
まずはそのゆめが丘エリアの特徴と再開発プロジェクト「泉ゆめが丘地区土地区画整理事業」の概要について解説します。
再開発の目的と背景
ゆめが丘のある横浜市泉区は、横浜市の南西部に位置し市境を流れる境川・相沢川を挟んで、大和市・藤沢市と接しているエリアです。

横浜市泉区の特徴の一つが「市街化を抑制すべき地域」として指定された市街化調整区域の多さであり、その割合は2018年時点で48.7%と横浜市18区のなかで最も割合が高くなっています。
また、低層で良好な住宅地の形成を目的として定められた「第一種低層住居専用地域」の割合も高く、この2つのエリアで区全体の85.2%という大部分を占めている農地と低層住宅中心の地域です。
しかし人口動態で見ると2010年から減少傾向が続いており、人口減少への対策がまちづくりの課題となっていました。

そこで相模鉄道相鉄いずみ野線「ゆめが丘」駅と、近接した横浜市営地下鉄「下飯田」駅を中心とした新たな駅前拠点にふさわしい市街地を形成するため「泉ゆめが丘地区土地区画整理事業」の実施が決定しました。
再開発プロジェクトの主な内容
「泉ゆめが丘地区土地区画整理事業」は、東京ドーム5個分相当にあたる約24ヘクタールの敷地に約123億円の予算をかけて行う大規模なプロジェクトです。
同プロジェクトでは、実施地区を以下の9区分8エリアに分けて方針を定めています。

A-1・A-2地区 | ゆめが丘駅・下飯田駅の駅前拠点の歩行者動線、街区外周の歩行者空間、オープンスペース等の確保と商業施設・都市型住宅など多様な機能の立地 |
B地区 | 幹線道路沿道の特性を活かした沿道サービス施設の立地 |
C-1-1地区 | 都市型住宅及び沿道サービス施設等の立地と歩行者空間やオープンスペース等の確保 |
C-1-2地区 | ゆめが丘駅の駅前空間にふさわしいにぎわいのある複合市街地を形成するための都市型住宅、商業施設及び業務施設等の立地と歩行者空間やオープンスペース等の確保 |
C-2地区 | 駅周辺及び主要区画道路沿道の立地特性を活かした中層の住宅、商業施設及び業務施設等の立地 |
C-3地区 | 主要区画道路沿道の立地特性を生かし、中層の住宅、店舗及び事務所等の立地 |
D-1地区 | 利便性を備えた居住環境を形成するための中層の住宅、店舗及び事務所等の立地 |
D-2 | 駅周辺の良好な居住環境を形成するための中低層の住宅等の立地 |
同プロジェクトによりかつての農村地帯だったゆめが丘エリアは、近代的な都市機能を備えた新しい街へと生まれ変わりつつあります。
再開発スケジュールと進捗状況
横浜市と相鉄ホールディングスが共同で手掛ける再開発事業は2015年に着工し、主要施設の開業や竣工を経て現在は2026年度のプロジェクト終了に向けて最終段階に入っています。
2024年4月1日にはエリアの医療を担う27科を持つ総合病院として「ゆめが丘総合病院」が開院し、同年2024年7月25日には大型商業施設「ゆめが丘ソラトス」が開業しました。

また、「ゆめが丘ソラトス」の開業に合わせゆめが丘駅は「ソラトス改札口」の新設を含むリニューアル工事を実施し、駅前のイメージも一新されました。

ほかにも同プロジェクトでは相鉄不動産による約700戸の住宅供給計画も進められています。2026年1月竣工予定の全335戸の分譲マンション「グレーシアウエリス横浜ゆめが丘」を中心に、計画人口約5,200人を目指した街づくりが進められています。
ゆめが丘再開発がマンション価格に与える影響

次に、ゆめが丘の再開発がマンション価格に与える影響について解説します。
影響①地域の価値向上とマンション価格の上昇

ゆめが丘のある横浜市泉区の中古マンション価格は3年前と比較して9%弱上昇しており、直近3年間を見てもおおむね上昇傾向にあります。
今後新たな街の姿が形成され、住宅供給が進むにつれゆめが丘エリアの中古マンション価格の上昇傾向は今後も続くと予想されます。
影響②再開発前後のマンション価格の変動予測
ゆめが丘駅周辺1.2キロ 駅徒歩×築年帯別2023年11月~2024年10月の中古マンション新規売出数
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | ~築21年以上 | |
徒歩1分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩3分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩5分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩7分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩10分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩15分 | 0 | 0 | 5 | 0 | 2 | 5 |
ゆめが丘駅周辺1.2キロ 駅徒歩×築年帯別中古マンション坪単価
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | ~築21年以上 | |
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩5分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩7分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩10分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩15分 | – | – | 327万円/坪 | – | 181万円/坪 | 88万円/坪 |
ゆめが丘駅周辺1.2キロ 駅徒歩×築年帯別中古マンション単価(60㎡換算)
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | ~築21年 | |
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩5分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩7分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩10分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩15分 | – | – | 5935万円 | – | 3285万円 | 1597万円 |
元々農地と低層住宅がエリアの大半を占めるゆめが丘駅周辺エリアでは、中古マンションの供給が極めて少ないことが表からも読み取れます。また、そのなかでも駅近のマンションは市場にほぼ出回らないため、今後駅近マンションの登場により周辺にも価格上昇の余波が起きる可能性が考えられます。
影響③資産価値の向上と投資の魅力
ゆめが丘の再開発により今後資産価値が上昇すると考えられる主な要因に、以下の4つがあります。
- マンションの供給が少ない地域での再開発による供給増加への期待
- 相鉄・東急直通線開業による都心部への大幅なアクセス向上
- 総合病院や大型商業施設を中心とした生活利便性の高さと自然豊かな住環境の両立による子育てファミリー層からの需要上昇
- 都心部新築マンションの価格高騰による周辺地域への需要の分散
これらの要因からゆめが丘エリアのマンションの資産価値は今後維持・上昇が期待でき、将来の売却を見据えた購入にも適していると考えられるでしょう。
ゆめが丘再開発で注目されるマンションエリア
ここでは、ゆめが丘の再開発のなかで「住宅」に焦点をあてて解説します。
再開発エリア内の注目マンション
ゆめが丘の再開発エリア内で注目を集めているのが、相鉄グループとNTT都市開発が共同で建設した「グレーシアウエリス横浜ゆめが丘」です。

同マンションは3LDKの間取りを中心とした全335戸の大規模マンションで、ゆめが丘駅徒歩1分、ゆめが丘ソラトスまで徒歩2分という利便性抜群な立地に位置しています。横浜市営地下鉄ブルーライン下飯田駅も徒歩5分という2駅2路線利用可能な立地は、共働き世帯の通勤や休日の外出にも便利です。
同マンションはホテルライクな共用部や冷凍冷蔵宅配ロッカーだけでなく、省エネ効果の高い「ZEH-M Oriented」やEV充電器を採用しており、環境に配慮しつつ居住性の高さを実現しています。
再開発エリア周辺の住環境
堺川をはじめとした川が流れ、元々エリアの大半が農地だったゆめが丘は再開発により水と緑豊かな住環境を基盤としつつ都市機能と調和した魅力的なエリアへと生まれ変わりつつあります。
エリア内には自然を活かした公園もいくつか存在します。「神奈川県立境川遊水地公園」は遊水地を活用した公園で、広場やせせらぎ、ビオトープがあり子どもの遊び場や散歩コースとしてもぴったりです。

ほかにも河川と一体化した広場として「和泉川親水広場」もあり、憩いの場所として住民に親しまれています。
ゆめが丘再開発に伴う新たな住宅開発計画
再開発エリア内では前述の「グレーシアウエリス横浜ゆめが丘」を手がけた相鉄グループだけでも分譲マンション約600戸、賃貸マンション約74戸、今後計画予定の戸建て住宅を合わせ、約700戸の住宅供給に取り組むとしています。
そのなかで注目を集めるのが、2024年5月に竣工した木造賃貸マンション「ノックスゆめが丘」です。珍しい木造の賃貸マンションは、環境負荷の軽減と高い断熱性による快適性を実現しています。
これらの開発により、計画人口約5,200人を目指した街づくりが進行中です。ゆめが丘エリアの開発が進むにつれ、今後ほかの住宅建設も続くことが期待されます。
ゆめが丘再開発による地域の変化と利便性向上
ゆめが丘エリアの再開発により、周辺住民の生活利便性が大幅に向上すると同時に幅広い年齢層にとって魅力的な居住エリアとしての価値も高まりました。
①商業施設の充実

ゆめが丘再開発の中心となる大規模商業施設が、相鉄グループが手がけた「ゆめが丘ソラトス」です。
映画館を含む129もの店舗が入る「ソラトス1」とヤマダ電機が入る「ソラトス2」、ペットショップと広場がある「ソラトス3」からなる同施設には、スーパーや人気チェーンなど生活を彩る店舗がそろっています。
またそれだけでなく、電車が眺められる「station view terrace」や室内アミューズメント施設など子育てファミリーにも魅力的な施設も備えています。
②交通インフラの改善
ゆめが丘再開発を後押しするのが、2023年3月の相鉄・東急直通線の開業です。

この開業により相鉄線のゆめが丘駅から渋谷駅や新幹線停車駅である新横浜駅への直接アクセスが可能になり、従来の都心部へのアクセスの弱さだけでなく他地域への移動の利便性も大きく改善しました。
また、電車だけでなく環状4号線の一部拡幅や、地区内を循環する最大幅員19メートルの道路整備も進められ車でのアクセスも向上しています。
③地域コミュニティの活性化
ゆめが丘再開発では地域コミュニティの活性化も重視しており、ソラトス内だけでも地域住民の交流を図る以下の施設が用意されています。

- Live Kitchen SORATOS:地元生産者によるレシピ紹介イベントなどが開催されるシェアキッチン
- SORATOS Room:催事、展示場、セミナーなど幅広い用途で利用可能
- そうにゃんぱーく:子育て世代の交流を促進する無料の遊び場
これらの施設やイベントを通じて、新旧住民の交流促進による活気あるコミュニティの形成が期待されています。
ゆめが丘再開発に関連するよくある質問
まとめ
ゆめが丘再開発は、横浜市泉区の豊かな自然環境を活かしつつ都市機能を融合させた新たなにぎわいのある街づくりを目指しています。
<ゆめが丘再開発の注目ポイント>
- 約24ヘクタールの大規模開発
- 大型商業施設「ゆめが丘ソラトス」の開業
- 相鉄・東急直通線開通による都心への大幅なアクセス向上
- 住宅供給が少なかった住環境良好なエリアでの再開発
- 分譲・賃貸・戸建て約700戸の新規住宅供給計画
この再開発により、ゆめが丘エリアの不動産価値は上昇傾向にあり、自然と利便性が調和した新しい街として今後も資産価値の向上が期待されます。