日銀総裁が交代!住宅ローン金利や金融政策は今後どうなる?

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日本銀行(日銀)の総裁である黒田東彦(くろだ はるひこ)氏は、2023年4月に任期が満了します。次期総裁は、経済学者の植田和男(うえだ かずお)氏が就任する予定です。

日銀総裁が交代すると、現在実施されている金融政策が変更されるという意見もありましたが、現時点でその可能性は低いようです。

本記事では、次期日銀総裁の植田氏の経歴や交代後の運営方針、今後の住宅ローン金利などをわかりやすく解説します。

目次

日銀の次期総裁は「植田和男氏」が就任予定

2023年2月14日に政府は、次期日銀総裁を経済学者の植田和男氏とする人事案を提出しました。また、次期副総裁候補には、内田氏と氷見野氏が指名されています。

植田氏は、マクロ経済学や金融論を専門とする経済学者です。東京大学理学部・経済学部を卒業しており、同大学で長きにわたって教鞭を執った経験もあります。

また、1998〜2005年には、日銀の審査委員(日本銀行政策委員会審議委員)を務め、ゼロ金利政策や量的金融緩和政策などの導入に携わりました。

2000年の金融政策決定会合にて、ゼロ金利政策の解除に反対票を投じたこともあることから、利上げに慎重であるハト派寄りといわれることもあります。

ハト派とは、各国の金融政策にかかわる人物の中で、金融緩和政策に前向きで利上げに慎重な人のことを指します。鳩は平和の象徴であることからこう呼ばれ、これに対して金融引き締めに積極的な人はタカ派と呼ばれます。

2023年3月現在も続く大規模な金融緩和政策の内容

黒田総裁が率いる日銀は、2016年に「2%の物価安定目標」を達成するために、大規模な金融緩和政策を開始しました。2%の物価安定目標とは、前年と比較して物価が2%ずつ上昇していく状況を指します。

金融緩和政策の柱となっているのは「イールド・カーブ・コントロール(YCC)」と「マイナス金利政策」です。 

イールド・カーブ・コントロール(YCC)は、日銀が10年国債の金利を操作する政策のことです。10年国債の金利が上昇しそうなとき、日銀が10年国債を指定した利回りで買い付けることで、金利上昇が抑えられます。

マイナス金利政策は、民間の金融機関が中央銀行(日銀)に預ける当座預金の金利の一部をマイナスにする政策です。当座預金金利の一部をマイナスにすることで、金融機関は余った資金を投資や融資などに回しやすくなるため、景気を刺激する効果が期待できます。

大規模な金融緩和政策の影響により、住宅ローン金利は歴史的な低水準で推移しています。

日銀総裁の次期候補が植田氏であると発表される前は、日銀総裁の交代によって金融緩和政策の方針が転換されると予測していた人は少なくありませんでした

植田氏は所信聴取で「現在の金融緩和政策は適切」と発言

2023年2月4日、衆議院にて植田氏による所信聴取と質疑がありました。所信聴取とは、簡単にいえば「日銀総裁になったら私はこのようなことをします」と説明する場のことです。

所信聴取で植田氏は、「現在行っている金融緩和は適切。金融緩和を継続してしっかりと経済を支え、企業が賃上げできる経済環境を整える」と発言しました。

また、現在実施されている金融緩和政策の効果については「2%物価安定目標に向け必要かつ適切な手法である」とも述べています。

日銀総裁の交代によって金融緩和政策が変更されるとの声もありましたが、交代直後に政策が急転換する可能性は低いといえるでしょう。

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日銀総裁の交代で住宅ローン金利はどうなる?

日銀総裁が交代したあとも、大規模な金融緩和政策はしばらく継続される見込みです。では、住宅ローン金利には、どのような影響があるのでしょうか?

YCCの修正により固定金利が上昇する可能性はある

植田氏は、衆議院の所信聴取で「(金融緩和政策では)さまざまな副作用が生じている」と発言しました。

金融緩和政策の副作用の1つに、イールド・カーブ・コントロールによる「国債市場の機能低下」があります。機能低下とは、国債を取引したいと考える人が減るということです。

国債市場の機能低下を背景に、2022年12月に日銀は長期金利の変動幅を±0.25%から±0.5%へと拡大しました。

10年国債をはじめとした長期金利は、住宅ローンの固定金利を決める指標です。そのため、長期金利の変動幅が拡大したことで、多くの金融機関が住宅ローンの固定金利を引き上げています。

日銀総裁の交代後も、イールド・カーブ・コントロールによって国債市場の機能低下が起こっていると判断されたときは、長期金利の変動幅がさらに拡大される可能性があります。

変動幅の拡大により長期金利が上昇すれば、各金融機関は住宅ローンの固定金利をいっそう引き上げるかもしれません。

変動金利はしばらく上昇しない

変動金利が低水準で推移している主な要因は、マイナス金利政策です。日銀がマイナス金利政策を止めない限り、変動金利は上昇しないでしょう。

マイナス金利には、金融機関貨物金融仲介機能に悪影響を及ぼすという副作用があると考えられています。金融仲介機能とは、銀行をはじめとした金融機関が貸し手と借り手の資金の流れを仲介する機能のことです。

植田氏は、所信聴取での質疑で「マイナス金利政策が適用される当座預金の残高をごく一部にするという副作用の緩和策が採用されている。また、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑である」と肯定的な発言をしています。

また、景気が上向いていないにもかかわらずマイナス金利政策をやめてしまうと、変動金利を含む世の中の金利が上昇し、かえって景気の悪化を招いてしまいかねません。

そのため、植田氏が日銀総裁に就任して間もなくマイナス金利政策が終了するとは考えにくく、変動金利は今後も引き続き低水準で推移すると考えられます。

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日銀総裁の交代前後のスケジュールと3つの注目ポイント

植田氏が日銀総裁に就任する前後のスケジュールは、以下の通りです。

  • 2023年3月9日・10日:黒田総裁のもとで開催される最後の金融政策決定会合
  • 2023年4月9日:植田総裁の就任予定
  • 2023年4月27日・28日:植田新体制で初めて開催される金融政策決定会合

2023年3月9日・10日には、黒田氏が日銀総裁として参加する最後の金融緩和政策決定会合が開催されます。このタイミングで金融緩和政策の方針が見直されるかどうかが、注目されているポイントの1つです。

何事もなく進めば、2023年4月8日に黒田総裁は任期満了となり、翌日の4月9日には正式に植田氏が日銀総裁に就任します。候補ではなく正式に日銀総裁となった植田氏が、就任記者会見で発言する内容が、注目すべき2つ目のポイントといえます。

植田氏が日銀総裁に就任して間もなく、金融政策決定会合が開催される予定です。新体制に移行したあと初めて開催される会合で、金融緩和政策が修正されるかどうかが、3つ目の注目ポイントです。

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まとめ

2023年4月に日銀総裁は植田氏に交代する予定です。植田氏の所信聴取での発言を聞く限りは、新体制となったあとも現在の金融緩和政策を継続するとみられます。

そのため、日銀総裁が交代した直後に、住宅ローンの固定金利や変動金利が上昇するとは考えにくいでしょう。

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この記事を書いた人

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後人材会社で転職したのちに副業としてwebライターを始める。お金に関する正しい知識をたくさんの人々に知って欲しいとの思いから、2019年1月よりwebライターとして独立。これまで保険、不動産、税金、音楽など幅広いジャンルの記事を、多数のメディアで執筆・監修している。

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