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住宅ローンの借入可能額は、金融機関が行う審査によって決まります。そのため、希望する金額を必ず借り入れられるとは限りません。
マイホーム購入時の予算を考えるときは、いくらの住宅ローンを組めるのかを把握することが重要です。
本記事では、住宅ローンの借入可能額に影響する要素や借入額を決めるときのポイントを解説します。
住宅ローンの借入可能額は、主に以下の要素をもとに決まります。
それぞれの項目がどのように影響するのかをみていきましょう。
住宅ローンの審査では、申し込んだ人に安定した収入があるかどうかが確認されます。申し込んだ人に安定した年収があるほど、審査に通過しやすくなるだけでなく借入可能額も高くなる傾向にあります。
収入の安定性を判断する際に用いられるのが「返済負担率」です。返済負担率とは年収に占める年間返済額の割合であり、以下の計算式で算出されます。
返済負担率=「年間の合計返済額÷額面年収×100」
たとえば、年間の合計返済額が100万円、額面年収が500万円の場合、返済負担率は「100万円÷500万円=20%」です。
住宅ローンの返済負担率には上限が設けられています。返済負担率の上限は金融機関によって異なりますが、一般的には20〜40%です。また、申し込んだ人の額面年収が低いほど返済負担率の上限も低くする金融機関もあります。
希望する借入額が同じでも、年収が高い人の方が返済負担率は低く算出されるため、借入可能額は大きくなる場合も。
住宅ローンの審査を受ける際は、年収が確認できる書類の提出が必要です。給与所得者であれば「源泉徴収票」、自営業やフリーランスであれば「確定申告書」を提出するのが一般的です。また、住民税決定通知書や課税証明書の提出を求められることもあります。
自動車ローンや教育ローンなどを返済している場合、借入可能額が制限されることがあります。返済負担率を計算するときの「年間の合計返済額」には、他の借り入れの返済額も含まれるためです。
たとえば、住宅ローンの年間返済額が100万円であったとしましょう。
すでに自動車ローンで年間40万円の返済がある場合、返済負担率を計算する際の年間返済額は140万円です。
年収が500万円であれば、返済負担率は「140万円÷500万円=28%」となります。
すでに住宅ローン以外の借り入れがある人は、金融機関に借入残高を証明する書類を提出します。
金融機関は、住宅ローンを申し込める人の年齢や完済時の年齢に制限を設けているのが一般的です。年齢条件は「借入時の年齢が18歳以上70歳未満まで、完済時の年齢が80歳未満」のように定められており、該当しない場合は住宅ローンを組めません。
借入時の年齢が高くなるほど完済までの年数が短くなるため、借入可能額は減少する傾向にあります。高額な借り入れを短期間で返済する場合、毎月の返済負担が重くなって返済が滞りやすくなるためです。
反対に、借入時の年齢が若い人は完済までの年数を長くできるため、借入可能額は多くなる傾向にあります。
住宅ローンを組んで取得する物件は担保となります。万が一住宅ローンの返済が滞ったとき、最終的に金融機関は担保となっている物件を差し押さえて「競売」にかけて強制的に売却し、融資したお金の回収を試みるのです。
物件に担保としての価値がないと、住宅ローンの返済が滞ったときに競売にかけても、金融機関は融資したお金を回収できないかもしれません。
そのため、住宅ローンの審査では不動産売買契約書や不動産の広告、工事請負契約書などの書類をもとに物件の担保価値が審査されます。
物件の担保価値が高いと金融機関から判断されると、高額な借り入れをしやすくなるでしょう。一方で、物件の担保価値が低いと判断されると、借入可能額が低くなる可能性があります。
住宅ローンの借入可能額の基本的な計算式は、以下の通りです。
借入可能額=(年収×返済負担率の上限÷12)÷(審査金利で100万円を借り入れたときの毎月の返済額)×100万円
審査金利とは、住宅ローンの審査時に申し込んだ人の返済能力を確認するときに用いられる金利です。住宅ローンの返済額を計算する際に利用される金利「適用金利」よりも、高く設定されています。
とくに変動金利の場合、適用金利は0.3〜0.5%台※が相場であるのに対し、審査金利は3〜4%程度に設定されています。これは、返済途中で金利が上昇して毎月の返済額が増えたとしても、返済できる能力があるかどうかを審査するためです。
※2023年4月現在
審査金利が4%である場合、100万円を借り入れたときの毎月の返済額は以下の通りです。
返済期間 | 100万円を借り入れたときの毎月の返済額 |
---|---|
10年 | 10,125円 |
15年 | 7,397円 |
20年 | 6,060円 |
25年 | 5,278円 |
30年 | 4,774円 |
35年 | 4,428円 |
ここで、モデルケースをもとに住宅ローンの借入限度額をシミュレーションしてみましょう。シミュレーションの条件は、以下の通りです。
以上の条件で借入可能額を試算すると、結果は以下の通りとなりました。
借入可能額=(500万円×35%÷12)÷4,428円×100万円 ≒3,290万円
※10万円未満は切り捨て
試算の結果、借入可能額の目安は約3,290万円となりました。500万円の自己資金を準備できれば、合計で約3,790万円までの物件を購入できると考えられます。
ただし、他のローンを組んでいる場合や物件の担保価値が低い場合は、借入可能額が3,290万円よりも低くなる可能性があります。
続いて、審査金利を4%としたときの借入可能額を年収と返済負担率ごとにご紹介します。
〇審査金利が4%であるときの借入可能額
年収が同じであっても、金融機関が定める返済負担率の上限が高いほど、借入可能額は高くなる傾向にあります。
年収 | 返済負担率 | ||
---|---|---|---|
25% | 30% | 35% | |
300万円 | 1,410万円 | 1,690万円 | 1,970万円 |
400万円 | 1,880万円 | 2,250万円 | 2,630万円 |
500万円 | 2,350万円 | 2,820万円 | 3,290万円 |
600万円 | 2,820万円 | 3,380万円 | 3,950万円 |
700万円 | 3,290万円 | 3,950万円 | 4,610万円 |
800万円 | 3,760万円 | 4,510万円 | 5,260万円 |
金融機関は、住宅ローンの審査金利や返済負担率の上限を公表していません。そこで、借入可能額を試算するときは、金融機関の公式サイトにあるシミュレーションツールを利用すると良いでしょう。
シミュレーションツールでは、現在の年収や毎月の希望返済額などの情報を入力すると簡単に借入可能額を試算できます。借入可能額を知りたい人は、借り入れを検討している金融機関のシミュレーションツールを利用してはいかがでしょうか。
また、ファイナンシャルプランナーに借入可能額を試算してもらう方法もあります。ファイナンシャルプランナーであれば、結婚や出産、子どもの進学、老後生活などのライフイベントも踏まえて、より現実的な借入可能額を試算してもらえるでしょう。
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住宅ローンの借入可能額は、基本的に金融機関が融資をしてくれる金額の上限にすぎません。借入額を決めるときは、以下の点も踏まえて慎重に返済計画を立てましょう。
1つずつ解説します。
マイホームを取得するときは、建築や購入にかかる費用だけでなく、税金や手数料などの諸費用も支払わなければなりません。物件の価格によっては、諸費用のみで数百万円が必要になることもあります。
また、入居したあとは維持費用の支払いも発生します。
たとえばマンションの場合は、管理費や修繕積立金を毎月支払わなければなりません。駐車場や駐輪場を契約すればその利用料もかかります。
戸建て住宅の場合、外壁や屋根などの修繕・メンテナンスに備えて計画的に資金を積み立てておくのが望ましいです。
住宅ローンの借入額を決める際は、購入時の諸費用や住み始めたあとの維持費用なども踏まえて資金計画を立てることが大切です。
住宅ローンの金利タイプには「変動金利」「固定期間選択型」「全期間固定金利」の3種類があります。各金利タイプの主な特徴は、以下の通りです。
金利タイプによって審査金利が異なることがあります。たとえば、変動金利の審査金利は3〜4%ほどに設定されていますが、全期間固定金利は基本的に適用金利と同じです。
そのため、住宅ローンを借り入れる人の年収や他の借入状況などが同じであっても、どの金利タイプを選ぶかで借入可能額が変わる可能性があります。
また、金利タイプの選択によって毎月の返済額や返済総額も変わります。不動産会社や金融機関とも相談のうえ、ご自身に合った金利タイプを考えることが大切です。
各金利タイプの特徴やメリット、デメリットについては以下の記事をご覧ください。
住宅ローンの借入額を検討するときは、現在の家計だけでなく今後のライフプランも踏まえることが大切です。借り入れた当初は問題なく返済できていたとしても、将来的に家計の収支が変化したことで、返済が苦しくなることがあるためです。
たとえば、子どもが成長して教育費がかかるようになって支出が増えると、住宅ローンの返済が家計を圧迫して生活が苦しくなるかもしれません。
また「転職した」「定年退職を迎えた」などの理由で世帯収入が低下したときも、毎月の返済が家計に大きな負担になることがあります。
そのため、将来的に支出の増加や収入の減少が起きたとしても無理なく返済を継続できる借入額を検討しましょう。
借り入れる人の年収や他の借入状況、申し込んだときの年齢などをもとに決められています。また、住宅ローンを組んで取得する物件の担保価値も、借入可能額に影響します。
金融機関のホームページ内にあるシミュレーションツールを利用すると良いでしょう。また、ファイナンシャルプランナーに試算してもらう方法もあります。
夫婦や親子がそれぞれ住宅ローンの契約を結ぶ「ペアローン」や、収入を合算して1本の契約を結ぶ「収入合算」をすると、借入額を増やせる可能性があります。
ただし借入可能額は、年収だけでなく他の借入状況や物件の担保価値なども考慮して決まるため、 夫婦や親子で住宅ローンを組んだとしても増えるとは限りません。
転勤した直後の人は勤続年数が短いため、収入の安定性が低いと判断されて住宅ローンの借入可能額が下がる可能性はあります。ただし、転職によって年収が増加したのであれば、金融機関からの評価が高まり借入可能額が増えるケースもあります。
住宅ローンの借入可能額は、主に現在の年収や他の借入状況、申し込む人の年齢、物件の担保価値をもとに決まります。借入可能額を把握したいときは、金融機関のホームページ内にあるシミュレーションツールを利用する方法があります。
ただし、住宅ローンの借入額を決めるときは、無理なく返済していけるかどうかを考えることが重要です。購入時の諸費用や維持費用、今後のライフプランなどをもとに、借入可能額の範囲内で無理なく返済できる金額を慎重に検討しましょう。
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保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後人材会社で転職したのちに副業としてwebライターを始める。お金に関する正しい知識をたくさんの人々に知って欲しいとの思いから、2019年1月よりwebライターとして独立。これまで保険、不動産、税金、音楽など幅広いジャンルの記事を、多数のメディアで執筆・監修している。
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