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2024年7月の住宅ローン金利は、ネット銀行の1つが変動金利を引き下げました。
しかし、同じネット銀行でも引き上げをしているところもあります。
一方の固定金利は、全体的に引き下げられています。
この主な要因は、2024年6月のなかばに、固定金利の主な指標である10年国債の金利が低下したためです。
本記事では、2024年7月の住宅ローン金利のランキングや傾向を解説します。
まずは、固定金利の指標である10年国債の金利の推移をご紹介します。
※財務省「国債金利情報」をもとに筆者作成
2024年6月のなかばごろに、10年国債金利が一時的に下がった要因の1つは、欧州の政治不安です。
同月に開始された欧州議会選挙(EUの政策を決める欧州議会の議員を選ぶ選挙)で、フランスのマクロン大統領が率いる与党連合が大敗しました。
この大敗を受け、マクロン大統領は国民議会(フランスの国会に相当する議会)の解散と総選挙の実施を決めます。
これにより、フランスの政治の先行きが不透明となり、投資家のあいだでリスクを避ける動きが強まって、安全資産である債券が買われました。
債券の価格と利回りは、シーソーのような関係にあります。
今回、債券が買われたことで、価格が上昇し、利回りは低下しました。
このような状況のなか、各金融機関は住宅ローンの借入金利をどのように設定したのでしょうか。
金利タイプごとに、各金融機関の最優遇金利をみていきましょう。
また、金利上乗せなしで加入できる団信の保障内容とあわせてご紹介します。団信の保障内容は、以下のとおりです。
まずは、2024年7月の変動金利をみていきましょう。結果は、以下のとおりです。
適用金利 | 金利上乗せなしの団信 | |
---|---|---|
三菱UFJ銀行 | 年0.345%(±0%) | 一般のみ |
三井住友銀行 | 年0.475%(±0%) | 一般のみ |
みずほ銀行 | 年0.375%(±0%) | 一般のみ |
りそな銀行 | 年0.34%(±0%) | 一般のみ |
SBI新生銀行 | 年0.29%(±0%) | 一般または介護保障付団信 |
PayPay銀行 | 年0.27%(−0.045%) | 一般または一般+がん診断一時金+先進医療給付金または一般+がん50%保障+先進医療特約+全疾病保障(入院限定)など |
auじぶん銀行 | 年0.329%(+0.01%) | 【満50歳以下の方】一般または一般+がん50%団信 ※がん診断保障・4疾病保障・全疾病長期入院保障が無料付帯 【満51歳以上の方】一般団信のみ |
住信SBIネット銀行 | 年0.298%(±0%) | 一般または一般+全疾病保障または一般+全疾病保障+3大疾病保障 ※契約者が40歳未満である場合のみ |
ソニー銀行 | 年0.397%(±0%) | 一般または一般+がん50%保障 |
楽天銀行 | 年0.693%(+0.01%) | 一般または一般+がん50%保障+全疾病保障 ※契約者が51歳以上の場合、がん50%保障はなし |
イオン銀行 | 年0.38%(±0%) | 一般または一般+全疾病保障 |
※ソニー銀行は自己資金10%以上で借り入れをしたときの金利
※SBI新生銀行は手数料定率型を選択した場合
※イオン銀行は物件価格の80%以内で住宅ローンを組んだ場合
※PayPay銀行は自己資金10%以上の場合
※住信SBIネット銀行は借入金額が物件価格の80%以下の場合
多くの金融機関が変動金利を据え置くなか、PayPay銀行は引き下げをし、auじぶん銀行と楽天銀行は引き上げをしています。
PayPay銀行が引き下げをしたことで、最優遇金利のランキングには以下のとおりの変動がみられました。
1(↑) | PayPay銀行:年0.27%(−0.045%)※自己資金10%以上の場合 |
2(↓) | SBI新生銀行:年0.29%(±0%)※手数料定率型の金利 |
3(↓) | 住信SBIネット銀行:年0.298%(±0%)※借入金額が物件価格の80%以下の場合 |
4(→) | auじぶん銀行:年0.329%(+0.01%) |
5(→) | りそな銀行:年0.34%(±0%) |
※カッコ内の記号の意味は、以下のとおり
・(→):先月と同じ
・(↑)前月から上昇
・(↓)前月から下落
今月、もっとも金利が低いのはPayPay銀行です。
最優遇金利は年0.27%であり、前月から0.045%引き下げられました。
PayPay銀行に続いて低金利なのが、SBI新生銀行であり、最優遇金利は年0.29%です。
前回からの変動はなく、PayPay銀行とはわずかな差となっています。
また、auじぶん銀行は、変動金利を0.329%に引き上げました。
そのため、携帯電話や電気などを住宅ローンと一緒に利用するキャンペーンを適用したときの金利も年0.179%に引き上げられています。
とはいえ、上昇幅は年0.01%とわずかです。
また、新規借入の優遇幅が引き下げられており、基準金利に変更はないため、すでに借り入れている方に影響はありません。
借り換えの最低金利は、SBI新生銀行とPayPay銀行の年0.29%です。
PayPay銀行は新規借入だけでなく借り換えの金利も引き下げたことで、SBI新生銀行と並ぶ最低値となりました。
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続いて、2024年7月の固定期間選択型(10年固定金利)をみていきましょう。
各金融機関の最優遇金利は、以下のとおりです。
適用金利 | 金利上乗せなしの団信 | |
---|---|---|
三菱UFJ銀行 | 年1.25%(+0.05%) | 一般のみ |
三井住友銀行 | 年1.75%(−0.025%) | 一般のみ |
みずほ銀行 | 年1.45%(−0.1%) | 一般のみ |
りそな銀行 | 年1.695%(−0.08%) | 一般のみ |
SBI新生銀行 | 年0.95%(±0%) | 一般または介護保障付団信 |
PayPay銀行 | 年1.165%(−0.05%) | 一般または一般+がん診断一時金+先進医療給付金または一般+がん50%保障+先進医療特約+全疾病保障(入院限定)など |
auじぶん銀行 | 年1.275%(−0.08%) | 【満50歳以下の方】一般または一般+がん50%団信 ※がん診断保障・4疾病保障・全疾病長期入院保障が無料付帯 【満51歳以上の方】一般団信のみ |
住信SBIネット銀行 | 年1.333%(−0.08%) | 一般または一般+全疾病保障または一般+全疾病保障+3大疾病保障 ※契約者が40歳未満である場合のみ |
ソニー銀行 | 年1.423%(−0.043%) | 一般または一般+がん50%保障 |
楽天銀行 | 年1.828%(+0.036%) | 一般または一般+がん50%保障+全疾病保障 ※契約者が51歳以上の場合、がん50%保障はなし |
イオン銀行 | 年1.41%(±0%) | 一般または一般+全疾病保障 |
※ソニー銀行は自己資金10%以上で借り入れをしたときの金利
※住信SBIネット銀行は借入金額が物件価格の80%以下の場合
2024年6月のなかばに、10年国債金利が一時低下し、その後も低下前と同程度で推移していたためか、多くの金融機関が10年固定金利を引き下げています。
今月の上位5行をランキング形式でみると、以下のとおり順位に変動がみられました。
1(→) | SBI新生銀行:年0.95%(±0%) |
2(↑) | PayPay銀行:年1.165%(−0.05%) |
3(↓) | 三菱UFJ銀行:年1.25%(+0.05%) |
4(→) | auじぶん銀行:年1.355%(+0.2%) |
5(↑) | 住信SBIネット銀行:年1.333%(−0.08%) |
※カッコ内の記号の意味は、以下のとおり
・(→):先月と同じ
・(↑)前月から上昇
・(↓)前月から下落
最優遇金利がもっとも低いのはSBI新生銀行であり、年0.95%での借り入れが可能です。
本記事で紹介する金融機関のなかで、借入金利は唯一年1.0%を下回っています。
2番手はPayPay銀行の年1.165%です。
SBI新生銀行よりは高いものの、他の主要銀行と比べるとまだ低めの金利設定となっています。
2024年7月のフラット35(買取型)の最低金利は年1.84%です。
先月の年1.85%から0.01%下がりました。
※融資率9割以下・借入期間21年以上35年以下・新機構団信付きの金利
2021年10月から2024年7月までの推移は、以下のとおりです。
※【フラット35】借入金利の推移をもとに筆者作成
※上記は「買取型・融資率9割以下・借入期間21年以上35年以下・新機構団信付き」の金利
2024年1月以降、固定金利の指標となる10年国債金利は上昇傾向にありますが、フラット35の借入金利はほぼ横ばいとなっています。
続いて、大手都市銀行が独自に取り扱う35年固定金利の最優遇金利をみていきましょう。
三菱UFJ銀行と三井住友銀行は前月から引き上げているのに対し、みずほ銀行とりそな銀行は引き下げをしており、金融機関によって対応が異なる結果となりました。
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2024年8月以降の住宅ローン金利は、固定金利は上昇しやすい状況が続くと考えられます。
変動金利については、今後もしばらく低水準で推移するでしょう。
今後の固定金利は、多少下落することはあるものの、基本的には上昇しやすい状況が続くと考えられます。
日銀が長期国債の購入額を減らすことで、10年国債を始めとした長期金利を押し下げる効果が弱まり、上昇圧力がかかりやすくなるためです。
また、2024年7月1日には1ドル161円台後半になるほどの円安となりました。
円安の主な要因は、日米の金利差が開いていることです。
米国では、強烈なインフレを抑えるために政策金利を引き上げており、低金利が続く日本とは大きな金利差があります。
そのため「日本は米国との金利差を縮めるために、利上げをするのではないか」といった予測が投資家のあいだに広まり、長期金利に上昇圧力がかかるかもしれません。
一方、6月に起こったような諸外国での政治不安により、安全資産である国債が買われ、金利は下がる(価格は上がる)可能性もあります。
10年国債を含む債券は金融商品であり、投資家の予測の影響を受けやすいため、政治情勢の他にも経済指標や企業の業績などさまざまな要素で変動します。
以上の点から、固定金利型の住宅ローンは借入金利が上昇しやすいものの、長期金利の低下によって引き下げられる可能性もあるという、先の読めない状況であるといえます。
日銀は、2024年3月の会合でマイナス金利政策を解除し、政策金利が0〜0.1%で推移するよう促す政策に変更しました。
変動金利型の住宅ローンは政策金利の影響を受けますが、マイナス金利政策が解除されたあとは、さほど大きな動きはみられませんでした。
しかし、日銀が追加の利上げを実施すると、多くの金融機関が変動金利を引き上げる可能性があります。
日銀の植田総裁は、6月の会合終了後の記者会見で「会合までに出てくる経済・物価情勢に関するデータや情報次第で、短期金利を引き上げて金融緩和度合いを調整するということはあり得る話」と発言しました。
つまり、7月以降に開催される会合で、年2%の安定的な物価上昇と継続的な賃金の上昇がみ込めるデータや情報が確認されれば、利上げが実施される可能性はあるということです。
ただし、利上げされる可能性が残されているだけであり、年内での実施が予定されているわけではありません。
日銀が追加の利上げをしないと、日米の金利差が拡大し、日本円を売って米ドルを買う人が増え、円安が加速する可能性があります。
かといって、追加の利上げをすると、住宅ローンや企業向け融資などの金利は上昇するでしょう。
これにより、需要が低下して景気が冷え込んでしまっては本末転倒です。
日銀には、経済や物価、賃金、為替市場など、さまざまな要素を踏まえた慎重な判断が求められているため、追加の利上げが実施される時期は不透明です。
追加の利上げが行われる可能性が残されている一方で、急激な利上げや年内に複数回の利上げが実施されるとはあまり考えられません。
厚生労働省の調査によると、物価の上昇も考慮した賃金である「実質賃金」は、2024年4月まで26か月連続マイナスとなっています。
※出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年4月分結果確報」
また、景気の良し悪しを判断する際の重要な要素である「GDP(国内総生産)」は、今年1〜3月の年換算率で−2.9%であり、個人消費も4期連続のマイナスでした。
※出典:内閣府「2024年1~3月期四半期別GDP速報 (2次速報(改定値))」
実質賃金やGDPのみで金融政策が決まるわけではありません。
とはいえ、上記の結果を見る限り、積極的な利上げができるほど、日本の景気が良いとはいいがたいでしょう。
また日銀は、マイナス金利政策の解除が発表された3月の会合で「当面、緩和的な金融環境が継続する」という考えを示しています。
日銀が利上げをする場合、政策金利の上昇幅は+0.25%がもっとも有力です。
よって、追加で利上げが行われるとしても、年内に1回程度かつ+0.25%程度の引き上げにとどまり、変動金利は今後も低水準で推移すると考えられます。
2024年7月の変動金利は、PayPay銀行が引き下げをした一方で、auじぶん銀行はわずかに引き上げました。
全体としては、依然として歴史的な低金利が続いている状況です。
10年固定金利については、多くの金融機関が引き下げをしたものの、最優遇金利はおおむね1.0%を超えています。
フラット35の借入金利は、前月からわずかに引き下げられており、年始以来ほぼ横ばいで推移しています。
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大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後人材会社で転職したのちに副業としてwebライターを始める。お金に関する正しい知識をたくさんの人々に知って欲しいとの思いから、2019年1月よりwebライターとして独立。これまで保険、不動産、税金、音楽など幅広いジャンルの記事を、多数のメディアで執筆・監修している。
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