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省エネ性能が一定の基準を満たすマンションを購入すると、補助金や税負担の軽減措置を受けられる可能性があります。マンションの購入を検討するときは、省エネ性能や対象となる補助金、税負担の軽減措置を押さえておくことが大切です。
本記事では、省エネ性能が高いマンションを購入する際に受けられる補助金や税の優遇制度を解説します。
補助金や減税制度の前に、まずは省エネマンションの定義や種類を押さえましょう。
省エネマンションとは、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)が定める以下2つの要件を満たしたマンションのことです。
一次エネルギー消費量は、空調や換気、照明、給湯設備などで消費するエネルギー量から太陽光発電等で創出するエネルギーを差し引いて算出します。
省エネ基準に適合したマンションは、断熱性能が高いため室内の熱を逃しにくく外気温の影響を受けにくいのが特徴です。また、効率の高い空調機器や給湯器などが設置されるため、1年を通じて室内を快適な温度に保ちながら、電気代やガス代などを削減する効果も期待できます。
2025年4月1日以降に着工するマンションをはじめとした住宅には、この省エネ基準の適合が義務付けられる予定です。
省エネ性能の高いマンションには、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅、ZEH(ゼッチ)といった種類があります。それぞれの主な特徴は以下のとおりです。
特徴 | |
---|---|
認定長期優良住宅 | 長期にわたって良好な住環境を保つための対策が施された住宅であり、省エネ性能や耐震性、劣化対策などが一定の基準を満たしている |
認定低炭素住宅 | 二酸化炭素の排出量を低減するための対策が施された住宅 |
ZEH(ZEH-M) | 断熱性能と省エネ性能を高め太陽光発電などの再生エネルギーも活用することで、一次エネルギー収支をゼロ以下にする住宅 |
上記の住宅は、省エネ基準適合住宅よりもさらに高い性能があるだけでなく、後述する補助金制度や減税制度がより優遇されることもあります。
省エネ基準に適合する住宅の普及を促すために、国や自治体はさまざまな補助金制度を設けています。マンションを購入するときやリフォームをする際に補助金制度を活用することで、家計への負担を軽減できるでしょう。
ここでは、2025年1月現在における代表的な補助金制度を紹介します。
子育てグリーン住宅支援事業は、GX志向型住宅、長期優良住宅、ZEH水準住宅のいずれかの新築・購入、または既存住宅のリフォームをする人に補助金を支給する事業です。
マンションがGX志向型住宅に該当するためには「断熱等性能等級6以上」「再生可能エネルギー除く一次エネルギー消費量の削減率が35%以上」といった要件を満たす必要があります。
GX志向型住宅を新築・購入する場合、すべての世帯が補助金の対象となります。
長期優良住宅とZEH水準住宅の対象世帯は、18歳未満の子どもがいる「子育て世帯」と夫婦のいずれかが39歳以下である「若者夫婦世帯」です。
補助金額は下記のとおりです。
認定長期優良住宅やZEH水準住宅の新築にともない、住宅等を除却する場合は、補助金額が高くなります。
既存住宅のリフォームについては、下記の必須工事をすべて実施する場合はSタイプ、2つを実施する場合はAタイプとなります。
給湯省エネ2025事業は、一定の性能を有する高効率の給湯器を導入すると補助金を受けられる事業です。
マンションであっても、個別に高効率の給湯設備を導入する住戸であれば、条件を満たすことで補助金の対象となります。補助の対象となるのは、ヒートポンプ給湯機(エコキュート)、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池(エネファーム)のいずれかを導入するときです。
補助金額は、下記のとおりです。
設備の種類 | 補助金額 |
---|---|
ヒートポンプ給湯機 (エコキュート) | 基本額:6万円/台 A要件:10万円/台 B要件:12万円/台 A要件とB要件の両方:13万円/台 |
ハイブリッド給湯機 | 基本額:8万円/台 A要件:13万円/台 B要件:13万円/台 A要件およびB要件を満たす:15万円/台 |
家庭用燃料電池 (エネファーム) | 基本額:16万円/台 C要件:20万円/台 |
A〜Cの要件は下記をご覧ください。
先進的窓リノベ2025事業は、既存住宅(中古住宅)の省エネ性能を高めることを目的に実施される補助金制度です。
要件を満たすと、断熱性能の高い窓に改修したときの費用の1/2相当額が支給されます。支給金額の上限は200万円です。
補助の対象となる工事は以下のとおりです。
補助金額は以下のとおりです。
工事内容 | 補助金額(1箇所あたり) |
---|---|
ガラス交換 | 5,000~55,000円 |
内窓設置 | 12,000円~106,000円 |
外窓交換 (カバー工法) | 58,000円~266,000円 |
外窓交換 (はつり工法) | 83,000円~370,000円 |
補助金の申請手続きはリフォーム事業者が代行するため、住宅の所有者は事業者と契約するだけで手続きが進みます。
申請期限は2025年3月〜12月31日までですが、予算が上限に達すると早期に終了する可能性があるため、できるだけ早めに申請をすることが大切です。
既存住宅の断熱リフォーム支援事業(通称:断熱リノベ)は、断熱性能の高い建材を使用した所定のリフォームをすると支給される補助金制度です。
この事業では、所定の要件を満たす断熱リフォームをすると、補助対象経費の1/3が補助金として支給されます。補助対象経費とは、改修に必要な高性能建材の購入経費や工事費用などです。
補助の対象となる工事は「トータル断熱」と「居間だけ断熱」の2種類です。
補助金額の上限は以下のとおりです。
補助金額の上限 | |
---|---|
集合住宅 | ・高性能建材を用いた改修(玄関ドア改修含む場合):最大15万円/住戸 ※玄関ドア改修を含む場合は20万円/住戸 ・熱交換型換気設備(同時導入時):5万円 |
戸建住宅 | ・高性能建材を用いた改修:最大120万円/住戸 ・家庭用蓄電システム(同時導入時):20万円 ・家庭用蓄熱設備(同時導入時):20万円 ・熱交換型換気設備(同時導入時):5万円 |
補助金の申請をするのは住宅の所有者です。また、断熱リフォーム工事の着工前に申請をしなければなりません。
申請後、補助金の交付決定通知書を受け取ったあとに工事請負契約を結び、リフォーム工事を進めていきます。交付決定通知書を受け取る前に工事請負契約を結んでしまうと、補助金の対象外となるため注意が必要です。
2025年(令和7年)の公募期間は、1回目が2月14日(金)~3月7日(金)です。2024年(令和6年)は計4回の公募期間が設けられていたため、2025年も複数回あると予想されます。
ただし、予算が上限に達すると受付が締め切られるため、利用するのであれば早めに申し込むとよいでしょう。
各自治体は、独自に省エネ基準適合住宅の取得を支援する補助金制度を実施している場合もあります。
たとえば、大阪府では2024年度(令和6年度)に大阪市住宅省エネ改修促進事業を行っており、対象の省エネ改修工事をすると費用の一部を補助してもらうことが可能でした。自治体ごとに、支援内容や補助上限額、申請方法などが異なります。
マンションを購入する予定の自治体がどのような制度を用意しているかを事前に確認し、条件や申し込み期限に合った手続きを早めに行うことが大切です。
省エネ性能が高いマンションを購入すると、下記のような税制優遇を受けられる可能性があります。
上記の制度内容を1つずつ解説します。
住宅ローン控除は、マンションをはじめとした住まいを購入する際に住宅ローンを利用した人が受けられる税額控除です。
所定の要件を満たすと、年末時点のローン残高の0.7%分の金額が所得税と一部の住民税から差し引かれます。
たとえば、年末時点のローン残高が3,000万円の場合、控除される金額は最大21万円です。控除が受けられる期間は、新築住宅や買取再販住宅※は最大13年間、既存住宅(中古住宅)は最大10年間です。※不動産会社やリフォーム業者などが中古住宅を買い取り、リフォームやリノベーションを施して再販する住宅
控除額を計算する際に対象となるローン残高の上限(借入限度額)は下記のとおりです。
省エネ基準に適合するマンションよりも、長期優良住宅や低炭素住宅、ZEH水準適合住宅に該当するマンションのほうが、借入限度額は高く設定されています。
また、2024年以降に新築住宅や買取再販住宅を取得する場合、住宅ローン控除を受けるためには一定の省エネ基準に適合していなければなりません。
2025年に新築住宅や買取再販住宅に入居する場合、19歳未満の子を有する世帯または夫婦のいずれかが40歳未満の世帯は、借入限度額がさらに上乗せされ、より税負担の軽減効果を受けやすくなります。
2025年1月以降にマンションを購入するのであれば、物件を選ぶタイミングで省エネ性能を確認しておくことが重要です。
認定住宅等新築等特別税額控除(通称、投資型減税)は、2025年(令和7年)12月31日までに下記のいずれかを購入すると、所得税が減税される制度です。
上記のいずれかを新築または購入すると「標準的な性能強化費用相当額×10%」を所得税から控除できます。
標準的な性能強化費用相当額とは、住宅の性能を向上させるために必要である基準的な費用のことです。「45,300円×家屋の床面積」で計算され、上限は650万円となります。控除される金額は最大65万円(650万円×10%)です。控除しきれなかった分は、翌年の所得税から差し引くことができます。
住宅ローン控除とは併用できないものの、大きな節税効果が期待できる制度といえます。
不動産取得税は、マンションや戸建て住宅などの不動産を取得した人に課される税金です。
税額は、土地と建物それぞれの課税標準額に税率をかけて求められます。税率は原則4%ですが、2027年(令和9年)3月31日までにマンションを購入した場合は3%となります。
課税標準額とは、市町村の固定資産税台帳に登録される価格(固定資産税評価額)のことです。ただし土地の課税標準額は、2027年(令和9年)3月31日までに取得した場合は、固定資産税評価額の1/2となります。
新築後に使用されておらず、床面積が50〜240㎡以下のマンションを購入する場合、不動産取得税を計算するときに建物部分の課税標準額から最大1,200万円が控除されます。
2026年(令和8年)3月31日までに長期優良住宅である新築マンションを購入すると、控除額が最大1,300万円に増えるため、税負担がさらに軽減されます。
登録免許税は、法務局で登記手続きをする際に支払う税金です。
マンションや戸建て住宅などを取得したときは、法務局で所有権移転登記や所有権保存登記を行います。その際、登録免許税を納めます。
登録免許税の税額は「不動産の価額×税率」です。不動産の価額は、基本的に市町村の固定資産税台帳に登録される価格(固定資産税評価額)です。
2027年(令和9年)3月31日までに、認定長期優良住宅または認定低炭素住宅に該当する住宅に入居すると、建物部分の登録免許税に下記の軽減税率が適用されます。
標準税率 | 一般住宅特例 | 軽減税率 | |
---|---|---|---|
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 0.1※1 |
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% | 0.1 |
※1.戸建ての特定認定長期優良住宅の移転登記は0.2%
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅に該当するマンションを購入すると、軽減税率により所有権移転登記の登録免許税の負担が軽減されます。
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している人に課税される税金です。
税額は「固定資産税評価額×税率(原則1.4%)」で算出されます。
固定資産税には、2026年(令和8年)3月31日までに新築された住宅を対象に、一定期間の税額が1/2になるという減額措置が設けられています。マンションのような3階以上の耐火住宅・準耐火住宅の場合、減額が受けられる期間は固定資産税が課税される年から5年間です。認定長期優良住宅に該当するマンションを購入すると、減額を受けられる期間が7年に延長されます。
省エネ性能を満たすマンションを購入する場合、要件を満たすことで「子育てグリーン住宅支援事業」や「給湯省エネ2025事業」などによる補助金を受けられる可能性があります。
また、住宅ローン控除や投資型減税で所得税や住民税の負担を軽減することも可能です。不動産取得税や登録免許税、固定資産税の優遇制度もあるため、省エネ性能が高いマンションを購入するとさまざまな税金の負担を軽減できます。
省エネマンションを購入する際は、受けられる可能性のある補助金や減税制度を不動産会社に確認すると良いでしょう。
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大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後人材会社で転職したのちに副業としてwebライターを始める。お金に関する正しい知識をたくさんの人々に知って欲しいとの思いから、2019年1月よりwebライターとして独立。これまで保険、不動産、税金、音楽など幅広いジャンルの記事を、多数のメディアで執筆・監修している。
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