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不動産の2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者になることで不動産価格が大暴落するのではないかといわれている問題です。
結論からいえば、日本の高齢化は今に始まったものではないため、2025年になった途端に不動産価格が大暴落するという心配はないでしょう。とはいえ、高齢化や人口の減少は相続の増加や空き家問題の深刻化に直結することから、不動産価格に大きく影響します。
この記事では、2025年問題の詳細とそれによって引き起こされる恐れのある課題や注意点について解説します。
団塊の世代とは、1947年〜49年のいわゆる「第一次ベビーブーム」に生まれた方たちです。2025年には、団塊の世代のすべての方が75歳以上の後期高齢者になります。
ご存じのとおり日本の出生率は年々減っており、すでに人口自体も減少傾向にあります。そんな中で人口の多い団塊の世代が後期高齢者になることで、日本は2025年、国民の5人に1人が後期高齢者という“超”高齢化社会を迎えるのです。
後期高齢者が増えることで引き起こされる問題は、以下のように多岐にわたります。
これらの問題に加え、高齢者が増えることによる空き家や相続不動産の増加、人口減少による街のコンパクト化が不動産価格を暴落させるのではないかと危惧されています。これが「不動産の2025年問題」の概要です。
ここからは、2025年問題によって引き起こされる不動産価格の下落につながる課題について詳しく解説します。
空き家の数は、年々増加しています。直近の調査によれば、全国の空き家の数は846万戸。空き家率は13.6%におよび、日本にある住宅のおよそ7軒に1軒は空き家となっています。人口の減少が始まり、今後ますます高齢化が進むことを考えると、空き家が減っていくことは考えにくいといえるでしょう。
一方、2023年には空き家法が改正され、空き家の所有者への風当たりは一層強いものとなりました。同法により、空き家を放置していると固定資産税の増税や過料といったペナルティが課されることから、空き家を手放す方も増えていくものと考えられます。
不動産の価値は、需要と供給で決まります。空き家を含めた不動産の供給数が増え、買主となる人口が減っていけば、需給バランスが供給に傾き、不動産価格が下落します。
空き家の増加にも通ずるこですが、高齢化社会では相続の発生数が増加します。相続資産の中には、実家などの不動産が含まれていることが少なくありません。しかし、子などの相続人はすでに世帯を持ち、家を構えていることも多いため、相続された不動産が空き家と化してしまうケースが非常に多いのです。
すでに自宅がある、あるいは別の場所で生活している人が家を相続すればその家は不要であることから、売却する方も一定数いるでしょう。これもまた、市場に出てくる不動産の増加に直結します。
政府は現在、「立地適正化計画」を推進しています。立地適正化計画とは、住居に加え医療や福祉、商業施設をまとめて立地させることで、生活利便性の維持・向上を図るための計画です。
世帯数が減り、さまざまなエリアに世帯が点在している状況では、インフラ整備にお金がかかり、都市機能は低下していきます。しかし、街をコンパクト化していけば都市機能が集約し、行政・民間のサービスやインフラ設備の維持・管理の効率性が向上します。
空き家の増加や相続の増加、人材不足、街のコンパクト化などは、次のような問題も引き起こしかねません。
上記グラフのように、60歳を超えても就業している人の割合は年々高まっていますが、75歳以上の後期高齢者の就業率は、1割程度。2025年に団塊の世代が後期高齢者になれば、人材不足はより深刻になります。
建築業界では、2024年度から労働時間の上限規制が始まりました。人材不足と人件費の高騰、ひいては建築費の高騰が危惧されていますが、2025年問題はこれにさらに拍車をかけるものと推測されます。
また、人材不足は、建築費の高騰だけでなく工期の長期化や施工精度の低下も引き起こしかねません。
すでに見られていることですが、不動産の価格や売れやすさは二極化しています。都市部など立地が良い場所は不動産価格が上がり続ける一方、地方では無料でも売れない不動産が見られます。
2025年問題によって空き家が増加していくものと見られますが、空き家が増えて問題になる可能性が高いのはやはり地方です。都市部の不動産が空き家になったとしても、人口が多く、需要が高いため売却も活用もできるでしょう。立地適正化計画が推進されているのもまた東京や大阪ではなく、人口が減り始めている地方です。
つまり、2025年問題は、不動産市場の格差をより拡大させるきっかけになる可能性があるのです。
人材不足は、不動産仲介の現場でも見られています。不動産仲介会社の人材が減れば、扱える物件の数は減少します。物件の数を絞るとなると、得られる報酬が高い不動産を優先的に仲介するはずです。
不動産仲介会社の収入源は、仲介する物件価格のおよそ3%にあたる仲介手数料。高額な不動産ほど得られる報酬は高いため、地方の空き家や立地適正化計画外など安価な不動産を扱う不動産仲介会社は減っていく可能性があります。
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2025年問題が不動産価格下落の一因になるおそれはありますが、「2025年」というピンポイントで大暴落するとは考えにくいでしょう。また、人口減少や供給過多によって不動産価格が下がるのは一部のエリアであり、都市部など人が多く集まるエリアでは逆に不動産価格が高騰する可能性があります。
2025年に団塊の世代のすべての方が後期高齢者となりますが、冒頭のとおり団塊の世代は1947年〜49年生まれの方。2024年時点ですでに75歳を迎えられている方も大勢いらっしゃいます。
人口の減少や少子高齢化、空き家の増加についても、今に始まった問題ではありません。2025年問題は、法律や税制の改正など特定の要因や変化によってもたらされるものではなく、後期高齢者が突然、何倍にもなるという話でもありません。
すでに進行しているものがより顕著になるきっかけとなるのが2025年なのであり、2026年以降もこれらは進行していきます。不動産価格も2025年に一気に大暴落するのではなく、高齢化や人口減少の影響はグラデーションのように徐々に色濃くなっていくものと予想されます。
昨今は『新築マンション価格、バブル期超え』『公示地価3年連続上昇』など景気の良い話題ばかりを目にしますが、新築マンションが分譲されるのは駅前・駅近・都市部などの好立地のみで、地価が上昇しているのも一部のエリアに限られます。不動産価格高騰の恩恵を受けていないどころか、価格が下がり続けているエリアもすでに存在しています。
人材不足やそれに伴う人件費の高騰などにより新築物件価格は下がる余地がなく、コンパクトシティ化が推進されれば利便性の高いエリアの不動産の価値はますます上昇していきます。2025年問題はたしかに不動産価格の下落に結びつく問題ではありますが、全国の不動産価格を一律に下げるのではなく二極化を拡大させるものになると考えられます。
エリアによっては、不動産価格の下落はすでに始まっています。人口減少や高齢化によってさらに価値が下がると考えられる不動産は早期売却が「吉」といえるでしょう。
売却するタイミングをはかるうえで考慮すべきポイントは、次のとおりです。
2024年3月、日本銀行はマイナス金利を解除しました。これにより、住宅ローン金利の上昇が懸念されます。
しかし、大手4行は4月の変動金利を据え置きを発表し、むしろもう一段、金利を下げた金融機関も見られました。日銀の植田総裁が「当面、緩和的な環境が継続すると考えている」と発言していることからも、急激かつ大幅に金利が上がることはないものと考えられます。
とはいえ、長期的には住宅ローン金利は上がっていくはずです。金利が上がれば住宅を購入する人の予算が下がるため、金利の上昇は不動産価格の下落に直結します。不動産の売り時を検討している方は、今後の住宅ローン金利の動きを注視しましょう。
空き家や相続した不動産は、取得から3年以内を目安に売却することで節税できる可能性があります。相続した空き家や不動産の売却時に節税につながる可能性のある特例の効果や適用期限は、以下のとおりです。
控除特例 | 効果 | 適用期限 |
---|---|---|
相続空き家の3,000万円特別控除 | 譲渡所得を最大3,000万円控除 | 相続開始から3年後の年末 |
取得費加算の特例 | 取得費に納税した相続税を加算することで譲渡所得を引き下げる | 相続開始の翌日から3年10ヶ月後 |
2025年問題により、不動産市場の二極化はより顕著なものになっていくことが予想されます。今後も「選ばれる不動産」であり続けるかどうかは、エリアや性能などによります。資産価値が維持される不動産を選びたいと考える方は、次のような点に注意して物件選びをしましょう。
街をコンパクトにするにあたり、まず最初に住居や商業地域の建設などを抑制されるのは災害リスクが高いエリアでしょう。災害リスクが高いエリアに建物が多く建っていると、人命救助や災害後の復興に多額の費用を要するためです。
2024年10月からは、火災保険料が値上げとなり、水災補償にの保険料ついては水災リスクに応じた5段階に細分化されます。つまり、水災リスクが高いエリアの家屋に水災補償をつける場合の保険料がさらに高くなるということです。
災害リスクは、ハザードマップなどで確認できます。内閣府の防災情報のページも参考になりますので、購入を検討しているエリアの災害リスクを調べてみましょう。
2025年度からは、すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられます。2030年にはさらに条件が厳しくなり、現行制度より高い省エネ性能への適合が求められます。
住宅ローン控除でも、省エネ性能が高い住宅は優遇されています。2024年4月からは、不動産ポータルサイトなどで省エネ性能が表示される制度もスタート。省エネ性能は、耐震性能などと同様に、住宅選びの基準の1つになっていくはずです。将来、売却や活用をするうえでは、省エネ性能が売値や賃料に関わってくることもあるでしょう。
省エネ性能が高い住宅は、冬暖かく、夏涼しいということに加え、健康な暮らしができるというメリットもあるため、住まいを選ぶ際には省エネ性能にも着目してみましょう。リノベーションによって性能を高めることも可能です。
日本の人口は、すでに減少が始まっています。今後は、東京都23区であっても人口が維持されるとは限りません。
上記のグラフは、2025年の人口推計を「1」とした場合の2045年までの予測です。2045年まで人口が増え続ける見込みなのは、千代田区・中央区・港区・文京区・品川区・渋谷区の6区のみ。豊島区、荒川区、葛飾区などでは、2030年から減少が見込まれています。
人口は、不動産価格と密接に関わってきます。人口が維持・上昇するエリアは引き続き高い需要が見込めるため売値や賃料も維持・上昇に期待されますが、逆に人口が減っていけば不動産の価値は低減していきます。
不動産の2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者になることで空き家が増えたり、相続発生件数が増加したりすることが危惧される問題です。2025年にすべての不動産が大暴落するとは考えにくいものの、人口減少や高齢化が顕著になることで一部の不動産の価格が下落する要因の1つになることは十分考えられます。
人口減少や高齢化は、今に始まったわけではなく、2025年に終わるものでもありません。今後の人口推計などに鑑みれば不動産市場の二極化が拡大することは必至であることから、これから不動産を売る人・買う人におかれては、このような状況を踏まえて売り時・買い時を検討する必要があるでしょう。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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