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依然として感染が収まらない新型コロナウイルス。コロナによる経済悪化は“コロナショック”ともいわれていますが、中古マンション市場においても決して無縁ではありません。
緊急事態宣言が発令された4月、中古マンションの成約数は、首都圏で前年比-52.6%、近畿圏で-42.3%と大きな影響を受けました。成約平米単価についても、首都圏で-4.5%、近畿圏で-4.2%と一定の下落がみられています。
ただ緊急事態宣言が解除された6月は、中古マンションの成約数、成約価格ともに回復しつつあります。
本記事では、令和2年(2020年)4月~6月期の中古マンションの成約状況から、令和2年(2020年)後半以降のマンションの売り時を考察していきます。
まずは、令和2年(2020年)4月~6月期、首都圏・近畿圏中古マンションの平米単価と成約件数の推移をみていきましょう。
(東日本レインズ発表の数値を元に筆者が作成)
上記グラフは、首都圏における中古マンション成約数(左軸:青色棒グラフ)と成約平米単価(右軸:オレンジ色折れ線グラフ)の前年同月比の推移を表したものです。
緊急事態宣言が出た2020年4月には、成約数が前年同月比-52.6%、成約平米単価が前年同月比-4.5%と大きく落ちました。しかし、5月には平米単価が前年同月比プラスに転じ、成約数も6月の-11.0%まで一気にV字回復していることがわかります。
(近畿レインズ発表の数値を元に筆者が作成)
一方、こちらは近畿圏の中古マンションの成約数の推移です。首都圏の推移と同様に、2020年4月に急降下し、6月に急上昇していることがわかります。
成約価格については首都圏とやや異なり、5月に前年同月比-6.8%まで下落。ただ、6月時点で成約数は+2.7%、成約平米単価は-1.9%にまで回復しています。
・首都圏中古マンション価格:4月の「前年同月比-4.5%」から6月には「+1.4%」に回復
・近畿圏中古マンション価格:5月の「前年同月比-6.8%」から6月には「-1.9%」に回復
コロナ禍では、各エリアで中古マンションの成約数、成約価格が大幅に落ち込みましたが、6月には一転して回復傾向にあります。
では、新築マンションの販売状況はどうだったのでしょうか?
(不動産経済研究所発表の数値を元に筆者が作成)
上記グラフは、青色の棒グラフが新築マンションの「販売戸数(左軸)」を、オレンジ色の折れ線グラフが「価格(右軸)」を表しています。
5月の販売戸数は、首都圏、近畿圏ともに前年同月比-80%以上となり、調査開始以来の最小値でした。首都圏においては、緊急事態宣言が明けた6月も同年前月比-31.6%と大きく落ち込んでいます。
日経新聞によれば、2020年全体の首都圏マンション発売戸数は、バブル崩壊直後1992年以来、28年ぶりの3万戸割れが確実視されています。
「全国的な外出自粛要請」というかつてない措置により、緊急事態宣言下では物理的に人と人が接触しにくい状況になりました。不動産会社の営業自粛やモデルルームの休止も相次いだため、新築、中古含め、不動産が動きにくかったのは半ば当然ともいえるでしょう。
しかし、宣言解除後に、復調傾向にある中古マンションと長期的な苦戦が強いられる見込みの新築マンション。明暗が分かれた要因はどこにあるのでしょうか?
要因の1つは、新築マンションの価格が短期的に落ちにくいことが挙げられるでしょう。
先ほどの表をご覧いただくとお分かりいただけますが、緊急事態宣言まっただ中の4月、5月でさえ、首都圏、近畿圏ともに新築マンションの価格は落ちるどころか前年同時期より高く、6月にはさらに上昇しています。
新築マンションは、中古マンションと異なり、売主の一存で価格を決めることはできません。土地や建材、人件費など、あらかじめ予算を立てて建築しているため、「売れ行きが悪いから」「不況だから」といって、簡単に値下げできないものなのです。
近年は、2013年の東京オリンピックの開催決定や異次元な金融緩和政策などが後押しし、新築マンション価格は高騰し続けています。
(出典:日経新聞)
首都圏の価格水準は、7,000万円に迫る勢いで推移しており、バブル最盛期を上回るほどです。コロナ以前から、新築マンション価格はもはや一般的なサラリーマンには手が届かない水準に達しいます。値下げもなかなかできない状況では、コロナによる「不安」や「不況」の波による供給数低下は、一定期間、避けられないものとみられます。
コロナは、住まいのニーズをも変えたといえます。
リクルート住まいカンパニーの「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」によれば、住まい探しのきっかけに「在宅勤務になった」を挙げる人が8%存在したといいます。
緊急事態宣言下では、多くの人が経験したであろう在宅勤務。宣言解除後もテレワークを原則とし続ける企業も多く、大学などでもいまだオンライン授業が主流になっています。
通勤や通学がなければ、住まいを見直す人が増えるのも当然です。
このように考える人は一定数いるものと見られ、都市部を中心に新築マンションの売れ行きが鈍っている要因の1つになっていると考えられます。
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それでは、4月~6月期の中古マンション・新築マンションの販売状況とともに、過去の経済危機の事例や住宅ローン金利、株価の推移を元に、令和2年(2020年)後半の中古マンション価格や売り時を考察していきます。
2020年度の新築マンションの供給数は、“壊滅的”という見通しです。不況の折には、新築マンションの供給が減り、中古マンションの供給が増えるというのが1つのセオリーでもあります。
いまだ記憶に新しい2008年のリーマンショックでは、このセオリーが顕著に現れました。
(不動産経済研究所発表の数値を元に筆者が作成)
リーマンショックが起きたのは、2008年後半の9月。2009年の新築マンション価格は、各エリアで前年比10%ほど落ち、供給戸数はリーマンショック前の2007年と比較すると各エリア30~40%ほど落ち込みました。
その後も、供給戸数については大きく回復することはなく、2011年の東日本大震災を迎えます。そして2013年からは、オリンピック特需や金融緩和政策によって右肩上がり……というのは、先述の通りです。
その一方で、中古マンションの成約状況はというと、成約数が落ちたのはリーマンショック直後の2008年末まで。価格については、リーマンショック前と比較しても「微減」程度に抑えられたのです。
2020年6月の首都圏中古マンションの平均成約価格が「3,541万円」であるのにに対し、新築マンションは「6,389万円」。やはり価格にこれだけの違いがあると、先行き不安なwithコロナ時代も「新築マンション<中古マンション」の需要となり、中古マンション価格の下落率も最小限に留められる可能性があります。
新築、中古ともに、不動産の価格は、金利水準にも大きな影響を受けます。
近年は、異次元ともいわれる金融緩和政策により、住宅ローン金利はかつてないほどの低水準で推移しています。これもまた、中古マンションの売り時・買い時を後押ししているといえるでしょう。
となると気になるのが、住宅ローン金利は今後どうなるのか?ということ。予測の範疇はでないものの、大方の見方は「急激に水準があがることはない」というものです。
住宅ローン金利は、景気に大きく影響を受けます。「金利水準の行方=日銀による金融緩和政策の行方」といっても過言ではありません。金融緩和の目的は、景気回復。今の日本の状況に鑑みれば、金融を引締める要素はないといえるでしょう。
現に、日銀の黒田総裁は、6月16日の金融政策決定会合で「21年度であれ、22年度であれ、金利を引き上げる状況には遠い」(引用:日経新聞)との発言をしています。
つまり、住宅ローン金利から見れば、一定期間は売り時が継続すると考えられるのです。
(出典:日経新聞)
中古マンション価格は、株価との連動性が高いものです。とはいえ、即決で売買ができない不動産は、株価の動きからやや遅れて追従するのが原則だといえるでしょう。
上記は、2020年8月5日現在の過去6ヶ月の日経平均の推移です。
3月19日に16,552円まで値を落としたものの、緊急事態宣言解除の見通しが立った5月後半から20,000円代に、現在は22,000円前後まで回復しています。
株価の動きから推察する2020年後半の中古マンション価格は、次の3つのシナリオが考えられます。
中古マンションの価格は、先述した金利水準などにも大きな影響を受けるため、株価の動きだけで予測できるものではありません。
また、今回は予測が立てにくい「ウイルス」の蔓延による不況であるため、リーマンショックと同じ経過を辿らない可能性も大いにいあるでしょう。
さらには、2021年に延期となった東京オリンピックの開催可否の決定によっても、中古マンションを含めた不動産価格は大きな影響を受けることが予想されます。
・リーマンショック当時は中古マンションの価格は「微減」に抑えられた
・ローン金利から見れば「売り時」
・3月の株価暴落が遅れて中古マンション価格に現れる可能性も
・コロナの第二波や株価の二番底も懸念されるのが事実
緊急事態宣言解除後の6月より、中古マンションは成約数、成約価格ともに回復傾向にあります。また金利水準やこれまでの傾向を見れば、中古マンションは「売り時」とも判断できます。
ただ、依然として収束が見えないコロナウイルスの猛威。株価や不動産価格の見通しが立てづらいのみならず、「外出自粛」という前代未聞の措置による影響も計り知れません。
こんな時期だからこそ、マンション売却をお考えの方は資産価値やその推移を把握しながら売り時を見極めるべきだといえるでしょう。
自分で新築マンションと中古マンションの成約数や価格推移、金利動向や日経平均の動向を調べつつも、最終的には不動産会社へ査定依頼することで自身のマンションの価格を調べる必要があります。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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