修繕積立金とは?重要性や計算方法、効果的に管理する方法を解説!
マンションを購入したあとは、管理費とあわせて「修繕積立金」を毎月支払うのが一般的です。
修繕積立金についてよく理解しないままマンションを購入すると、「建物が適切に修繕されない」「資産価値が大きく下がってしまった」などの事態が生じるかもしれません。
本記事では、修繕積立金が集められる目的や主な使い道、マンション選びにおける主な注意点などについて詳しく解説します。
修繕積立金とは?

修繕積立金は、大規模修繕に向けた積立をするために区分所有者が毎月支払う金銭です。
マンションでは、10〜15年ほどの周期で大規模修繕が実施され、外壁や屋上防水、給排水管、エレベーターなどの修理・交換が行われます。
大規模修繕を実施する場合、文字通り足場を組むほどの大規模な工事を行うため、数千万円〜数億円の費用がかかります。
大規模修繕が始まる直前に、区分所有者から資金を集めるのは現実的ではありません。そこで、多額の工事資金を計画的に準備するために、マンションの区分所有者から毎月少しずつ修繕積立金を集め、将来に向けて積み立てます。
また、多くのマンションでは入居時に区分所有者から、数十万円程度の「修繕積立基金」を徴収しています。
修繕積立金の使い道

修繕積立金の主な使い道は以下のとおりです。
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大規模修繕工事 | 外壁や屋上、屋上の改修工事、給排水管や受水槽の取り替え工事などの際にかかる費用 |
不測の事態や災害対応 | 地震や台風などの災害による損傷を修繕するための費用 |
共用部分の変更や資産価値向上 | 共用部分のリフォーム、バリアフリー化、防犯設備の導入など、資産価値向上のための工事費用 |
調査費用 | 建て替えや敷地売却の際に必要な調査費用 |
修繕積立金は、大規模修繕だけでなく台風や地震などの自然災害で共用部分が被害に遭った際の修繕費用や、マンションの価値を向上させる費用などにも充てられます。
修繕積立金と管理費の違い
マンションの区分所有者は、修繕積立金の他にも「管理費」を毎月支払います。管理費の主な使い道は以下のとおりです。
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共用部分の維持管理 | ・エントランスや廊下、エレベーターなどの清掃、電気代、備品交換費用 ・ゴミ捨て場の管理や植栽の手入れなどをするための費用 ・共用部分の水道光熱費 |
設備の保守・点検 | ・エレベーターや消防設備、自動ドアなどの保守・点検費用 |
管理会社への委託費 | ・管理員の人件費 ・管理会社に委託する際の費用 |
マンションの防犯 | ・オートロック設備や監視カメラなどの点検・維持費用 |
修繕積立金は、将来の修繕や価値の向上を目的とした工事などに向けた積み立てをするために徴収されるのに対し、管理費は日常的な維持・管理の費用に使われます。
修繕積立金の支払いが必要な理由
マンションは多数の住戸からなる建物であり、外壁や廊下などの共用部分は区分所有者が全員で維持・管理をしていく必要があります。
マンションの区分所有者から修繕積立金が適切に支払われないと、修繕工事をするための資金が不足し、当初の計画通りに大規模修繕が実施できなくなるかもしれません。
そうなると、外壁や廊下、給排水管などの老朽化が進行しやすくなり、マンションの安全性や快適性が低下する恐れがあります。
また、適切に管理されていないとマンションの資産価値が下がり「希望する価格で売却できない」「買い手が見つからない」などが生じる場合もあります。
マンションの住環境を守り資産価値の低下を防ぐためにも、区分所有者は修繕積立金を適切に支払うことが大切です。
修繕積立金の平均額
国土交通省の調査によると、2023年(令和5年)におけるマンション1戸あたりの修繕積立金は平均13,054円でした。
1999年(平成11年)からの推移をみると、平均額は上昇傾向にあることが見て取れます。

実際の修繕積立金は、マンションの規模や築年数、エリアなどで異なります。
たとえば、総戸数規模別では20戸以下が15,569円、51〜75戸が12,902円、101〜150戸が12,213円、201〜300戸が11,687円、501戸以上が13,131円です。
小規模なマンションは修繕積立金が高めであり、総戸数が増えるにしたがって平均額は安くなる傾向にありますが、一定規模を超えると再び高くなります。
また、新築マンションのほうが築古のマンションよりも修繕積立金が安い傾向にあります。これは、新築時の金額を低く設定し、定期的に増額するマンションが多いためです。
※出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)」
※駐車場使用料などからの充当費を除く場合
マンションの区分所有者には修繕積立金の支払義務がある
分譲マンションの区分所有者は、区分所有等に関する法律(区分所有法)により管理組合に加入することが義務付けられています。
管理組合は、区分所有法をもとにマンションを使用する際のルールである「管理規約」を作成します。
この管理規約には、修繕積立金と管理費の金額や、住戸の所有者に支払い義務があることが明記されるのが一般的です。
修繕積立金を滞納すると、管理会社から電話や書面、訪問などで支払いを催促されます。それでも支払わない場合、裁判所に申し立てられ法的な争いに発展する可能性があります。
マンションを購入するのであれば、修繕積立金や管理費は適切に支払いましょう。
修繕積立金の計算方法
マンションでは「長期修繕計画」が立てられており、30年程度にわたる屋上防水や外壁塗装、配管更新などの工事の内容と費用が見積もられているのが一般的です。修繕積立金の金額は、この長期修繕計画をもとに算出されます。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、長期修繕計画の計画期間における修繕積立金の目安が記されています。具体的な金額は以下のとおりです。

※出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 令和6年6月改訂」
上記の表にある「事例の3分の2が内包される幅」が修繕積立金の適正額の目安です。
たとえば、地上回数が20階未満、マンションの建築延床面積が12,000㎡の場合、適正額の目安は専有面積1㎡あたり200〜330円です。
住戸の専有面積が80㎡とすると、修繕積立金は16,000〜26,400円が目安となります。
マンションに機械式駐車場がある場合は「機械式駐車場の1台あたりの月額の修繕工事費×台数÷マンションの総専有床面積」を加算します。修繕工事費の目安は、以下のとおりです。

※出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 令和6年6月改訂」
均等積立方式と段階増額積立方式
修繕積立金の集め方には「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2種類があります。
- 均等積立方式:築年数に関係なく一定額を毎月積み立てる方式
- 段階増額積立方式:築年数が進むにつれて修繕積立金が段階的に増額する方式
均等積立方式は、築年数が浅いときの負担はやや重いですが、値上げされるリスクは比較的小さい点がメリットです。
一方、段階増額方式は、新築時の支払額が抑えられますが、段階的に値上げされるため、築年数の経過とともに負担は重くなっていきます。
検討する際は、修繕積立金が均等積立方式と段階増額積立のどちらで徴収されるのかをよく確認することが大切です。
マンション選びにおける修繕積立金に関する注意点
マンションを選ぶ際は、修繕積立金が不足するケースがあることや、途中で増額される可能性があることを注意点として理解しておきましょう。
修繕積立金が不足するマンションも多い
長期修繕計画の通りに修繕するための資金を積み立てるのが理想ですが、実際には積立金額が不足するマンションも少なくありません。
国土交通省の調査によると、長期修繕計画に対して修繕積立金の積立額が不足していると回答したマンションの割合は36.6%でした。つまり、全体の1/3を超えるマンションで積立金が不足しており、計画通りに大規模修繕が実施できないリスクがあるということです。

※出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)」
また、修繕積立金の積立金が不足するマンションの11.7%が、計画に対する不足額が20%を超える結果となりました。
修繕積立金の積立額が不足する主な要因
修繕積立金が不足する要因としては「修繕費用の増加」が挙げられます。とくに近年は、建築資材や人件費の高騰が続いており、当初の計画で見積もられた費用では大規模修繕を実施できないケースが増えています。
また、新築販売時に売りやすくするために、段階増額積立方式が採用され、当初の金額が低く設定されることも要因でしょう。
段階増額積立方式で修繕積立金を集める場合、毎月の徴収額を上げるためには、区分所有者で構成される管理組合の決議が必要です。
しかし、区分所有者から値上げの同意が得られず、修繕積立金を計画通りに増額できなかったために積立金が不足することがあります。
修繕積立金の支払いを滞納する区分所有者がいることも積立金が不足する主な要因です。
国土交通省の2023年(令和5年)の調査結果によると、管理費または修繕積立金を3か月以上滞納する区分所有者がいるマンションの割合は29.2%でした。
※出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)」
修繕積立金の積立金が不足すると、将来の大規模修繕に必要な額がまかなえず、大幅な値上げや一時金の徴収が実施される可能性があります。とくに中古マンションを選ぶときは、積立金に不足が生じていないかよく確認することが大切です。
修繕積立金が途中で増額されることがある
多くのマンションでは、修繕積立金の積立方式を段階増額積立方式としています。国土交通省の調査によると、均等積立方式とするマンションが40.5%であるのに対し、段階増額積立方式の割合は47.1%でした。
※出典:国土交通省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ」
別の調査によると、段階増額積立方式で修繕積立金を集めるマンションでは、最終計画年の金額が計画当初の平均3.58倍に増えているとされています。加えて、上位1/6のマンションは平均増額幅が約5.3倍に達します。
たとえば、新築時の修繕積立金が月額6,000円の場合、その3.58倍になると最終的には21,480円、5.3倍の場合は31,800円に増額されるということです。
また「建物部分に想定外の大規模な修繕工事が必要になった」「修繕費用が高騰した」などの理由で増額されるケースもあります。
マンションの購入当初は問題なく支払えたとしても、修繕積立金が増額されると家計が圧迫されて生活が苦しくなるかもしれません。また、先述のとおり新築時の金額が低すぎるマンションは、値上げが困難となり積立金不足に陥るリスクも高まります。
国土交通省は増額幅を最大1.8倍とする案を提示
国土交通省は、2024年(令和6年)6月に長期修繕計画作成ガイドラインを改訂しました。
改定後のガイドラインでは、新築時の修繕積立金が著しく低く設定されるのを防ぐため、段階増額積立方式の金額設定に関する案を示されています。
その案とは、均等積立方式で修繕積立金を集めた場合の金額を「基準額」とし、計画の初期と最終の金額をそれぞれ以下のようにするというものです。
- 計画の初期額:基準額の0.6倍以上
- 計画の最終額:基準額の1.1倍以内
たとえば、基準額が15,000円である場合、この案にしたがうと計画当初の金額は「15,000円×0.6=9,000円」、計画の最終額は「15,000円×1.1=16,500円」となります。
国土交通省の案にしたがって段階増額方式の金額が決められると、最終的な金額は初期の約1.8倍に抑えられる計算です。
マンションを検討する際は修繕積立金をよく確認しよう
マンションを選ぶ際は、修繕積立金の金額や増額のタイミングの確認が不可欠です。中古マンションの場合は、積立金の残高についてもよくチェックしましょう。
確認を怠ると、大規模修繕をするための積立金が不足して計画通りの実施が難しくなり、一時金の徴収や修繕積立金の大幅な値上げが生じる可能性があります。
新築マンションの場合、物件資料を見たり不動産会社の担当者に質問をしたりして、修繕積立金に関する情報をよく調べましょう。
中古マンションの場合は、不動産会社に「重要事項に関わる調査報告書」を取り寄せてもらうのがおすすめです。
この調査報告書には、現在の積立金総額、滞納状況、将来の値上げ予定、過去の修繕履歴などが詳しく記載されています。
マンションナビでは各物件の「管理費・修繕積立金」を確認できる
不動産ポータルサイトやチラシなどには、マンションの修繕積立金の金額が記載されているのが一般的です。
マンションナビでは、金額だけでなく以下のように修繕積立金や管理費の推移も確認できます。

実際の表示内容はこちらよりご確認ください。
また、現在住んでいるマンションからの住み替えを検討する際は、以下にマンション名を入力するだけで売却価格の相場が簡単に調べられます。
部屋番号や専有面積なども入力すると、より詳細な価格相場が最短45秒で分かります。
マンションの住み替えを検討している方は、ぜひマンションナビをご活用ください。
修繕積立金に関するよくある質問
最後に、修繕積立金に関するよくある質問とそれに対する回答をご紹介します。
まとめ
マンションの修繕積立金は、大規模修繕や自然災害で生じた損害の修繕などに備えるために集められる金銭です。
修繕積立金の金額は、築年数や規模、積立方式などで変わります。また、途中で増額されることもあります。
マンションの購入を検討する際は、修繕積立金の金額や積立の計画などをよく確認することが大切です。
とくに中古マンションの場合は、積立金の残高を調べ不足が生じていないかも確認することをおすすめします。