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不動産市場には、通常の取引とは異なる特殊な物件が存在します。その代表格が“競売物件”です。住宅ローンの返済困難や税金滞納などにより、強制的に売却される物件のことを指します。一般的な不動産よりも安価で購入できる可能性があることから注目を集めている競売物件ですが、その特殊性ゆえに、通常の不動産取引とは異なるリスクや注意点も存在します。
この記事では、競売物件とは何か、購入にあたってはどのようなメリットとデメリットがあるのか、そして購入する際の注意点について詳しく解説します。
競売物件とは、住宅ローンの返済が困難になった場合に債権者(主に金融機関)によって強制的に売却される不動産のことを指します。
通常の不動産取引とは異なり、競売物件を購入するまでの流れは次の通りです。
一見複雑そうに思えるかもしれませんが、不動産会社を介さずに裁判所と直接やり取りを行うことから、通常の不動産取引よりも手続きの透明性が高いといえるでしょう
競売物件とよく似た物件には、“公売物件”というものがあります。公売物件は、税金の滞納により差し押さえられた不動産のことであり、売却を行うのが滞納税庁であることが特徴です。一方、競売物件は前述したとおり、住宅ローンの返済困難により差し押さえられた不動産で、裁判所が売却を行います。
両者の最も大きな違いは、提供される情報量にあります。公売物件は物件に関する詳細情報が比較的少ないのに対し、競売物件では物件明細書、現況調査報告書、評価書などの詳細な情報が提供されるため、競売物件の方が物件の状態を把握しやすいといえるでしょう。
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競売物件の購入には、通常の不動産取引にはない独自のメリットがあります。これらのメリットを十分に理解することで、競売物件が自分にとって適切な選択肢かどうかを判断する手がかりになるでしょう。
ここでは、主に以下3つのメリットについて詳しく解説していきます。
・市場価格よりも安く購入できる
・様々な物件が選べる
・購入手続きがシンプルでスムーズ
競売物件の最大の魅力は、何と言っても市場価格よりも大幅に安く購入できる可能性が高い点です。一般的に、通常の不動産価格と比較して30%程度安く取得できるといわれており、市場価格が3,000万円の物件の場合、競売であれば2,100万円程度で購入可能なことになります。
このような価格差が生まれる理由として、競売物件特有のリスクを反映した価格設定がなされている点が挙げられます。後述するデメリットを考慮しても、この価格差は購入者にとって大きな経済的メリットとなるでしょう。特に、予算に制約がある方や、将来的なリフォーム費用を見込んで物件を探している方にとっては、非常に魅力的な選択肢になるはずです。
競売物件市場の特徴として、通常の不動産市場では見つけにくいさまざまな物件が出品されていることが挙げられます。特殊な形状の土地や狭小地、地方の農地、一棟マンションなど、一般的な不動産市場ではあまり目にすることのない物件も少なくありません。
こうした特徴により、競売物件市場は通常の不動産市場では満たされないニーズに応える可能性を秘めているといえるでしょう。日頃なかなか目にすることのない独創的な形状の土地を探している場合、競売物件市場で希望に合う物件を見つけられる可能性が高くなります。また、投資目的で物件を探している方にとっても、一棟マンションなどの大型物件を比較的安価で取得できる機会があるかもしれません。
自分だけの特別な物件を探している方にとっては、非常に魅力的な選択肢のひとつといえます。
競売物件を購入するまでの流れは、一見複雑に思えるかもしれませんが、実際は通常の不動産取引と比較してシンプルな面があります。通常の不動産取引では、不動産会社との交渉や売主との契約手続きなど、多くのステップを踏まなければなりません。一方、競売物件であれば、入札用紙の提出や保証金の納付、落札後の残金支払いという比較的シンプルな手続きだけで所有権が移転します。
また、所有権の移転登記などの手続きについても裁判所が代行してくれるため、購入者の手間が大幅に軽減されます。不動産取引の経験が少ない初心者にとっても、競売は取り組みやすいといえるでしょう。
競売物件の購入には魅力的なメリットがある一方で、見逃せないデメリットも存在します。ここでは、主要な4つのデメリットについて詳しく解説していきます。
・住民が不法占拠している可能性がある
・内見ができないため、物件の状態を把握しにくい
・入札後のキャンセルは不可
・契約不適合責任がないため、トラブルに対処しにくい
競売物件を購入する際に最も懸念されるリスクの一つが、不法占拠の問題です。競売物件では、前所有者や第三者が不法に居住し続けているケースも見受けられます。
通常の不動産取引であれば、売主が責任を持って建物を引き渡すのが一般的ですが、競売物件の場合は売主が存在しないため、引き渡しという作業が行われません。そのため、前所有者が立ち退かない場合は、購入者自身が退去要求を行う必要があり、状況によっては裁判所に引き渡し命令の申し立てを行わなければならないこともあります。
不法占拠のトラブルは、単に経済的な負担だけでなく、精神的なストレスも伴います。そのため、物件を購入する際に可能な限り現況を調査するほか、引き渡し命令申し立ての手続きと費用を事前に把握しておくことが重要です。
競売物件は原則として内見ができないため、物件の状態を把握しにくいのが難点です。通常の不動産取引では、購入前に物件を実際に見学し、細部まで確認することができる傍ら、競売物件ではそれができません。そのため、土地そのものに価値を見出している投資目的でなければ、内見ができないことは大きなデメリットでしょう。
内見以外で物件の状態を把握する方法として、以下の書類を確認することが挙げられます。
物件の詳細やリスクを理解し、より良い判断をするためにも、これらの資料にしっかり目を通すことを心がけましょう
通常の不動産取引と異なり、競売物件の入札は一度行うと取り消すことができません。一般的な不動産取引では、契約締結後でも一定期間内であればキャンセルが可能な場合がありますが、競売物件ではそうはいきません。競売で入札した後に何らかの理由でキャンセルした場合、入札時に納付した保証金は裁判所に没収されてしまいます。
このリスクを回避するためには、十分な資金計画を立てることが不可欠です。また、物件の詳細を慎重に検討するほか、法律や不動産取引に詳しい専門家のアドバイスを受けることで、リスクを軽減することができるでしょう。
競売物件には売主が存在しないため、通常の不動産取引で適用される“契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)”が適用されない点に注意が必要です。
通常の不動産取引では、物件に隠れた瑕疵(契約の内容に適合しない点)が見つかった場合、売主に対して修補や損害賠償を請求することができます。しかし、競売物件の場合は購入後に不具合や問題が発覚しても、すべて自己負担で対処しなければなりません。
たとえば、購入後に建物の構造上の問題が見つかった場合や、想定外の土壌汚染が判明した場合、大きな費用が生じることが予想されます。こういったリスクに備えるためには、予備費を十分に確保するほか、物件の状態を可能な限り詳細に調査し、修繕やリフォームの可能性を前提に購入を検討する必要があるでしょう。
こうしたデメリットは、競売物件が比較的安価で取引される理由の1つにもなっています。競売によって物件を購入しようと考えている場合、これらのリスクを十分に理解し、それでも購入するメリットがあるかどうかを慎重に判断することが大切です。
今回の記事では不動産を購入したい方に向けて、競売物件のメリット・デメリットを中心に解説しました。競売物件は、リーズナブルな価格で購入でき、なおかつさまざまなニーズに応えてくれることは確かなメリットです。ただ、簡単に購入を決断すると、競売物件特有の不便さや面倒さを感じる恐れがあるため、最初から競売物件だけに的を絞ることはおすすめできません。
競売物件の購入を検討する際は、以上で述べたメリットとデメリットを十分に理解した上で、慎重に判断する事が大切です。特に注意すべき点として、以下の点が挙げられます。
競売物件は予算に制約がある方や、独特な物件を探している方にとっては、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。一方で、内見ができないことや契約不適合責任が適用されないことなど、通常の不動産取引にはないリスクも存在します。これらのリスクを軽視すると、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。
競売物件の購入を成功させるためには、自身の置かれている状況やニーズを冷静に分析し、リスクを十分に理解した上で判断を下すことが欠かせません。また、不動産取引や法律の専門家に相談することも、リスクを軽減する有効な手段となるでしょう。
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元信託銀行員。宅建士・ 2級FP技能士をはじめ、複数の金融・不動産資格を所持。それらの知識をもとに、「初心者にもわかりやすい執筆」を心がけている。2児の子育て中でもあり、子育て世帯向けの資産形成、女性向けのライフプラン記事を得意とする。
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