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中古マンションは、売り出し価格のまま成約にいたるとは限りません。一定率、値下げされて成約にいたるのが一般的です。
マンションリサーチ株式会社は、コロナ禍の中古マンション売り出し価格と成約価格の乖離率および値下げの頻度を調査。結果、中古マンションマーケットが売り手市場から買い手市場に転換する兆しが見られました。
コロナ禍前の2019年、売り出し価格と成約価格の乖離率は平均して「5.45%」でした。たとえば、5,000万円で売り出された中古マンションが実際に成約にいたる価格は、5.45%引きの4727.5万円が平均値だったということです。
この乖離率が、コロナ禍で大きく変動しています。
売り出し価格と成約価格の乖離は、国内で新型コロナウイルスの蔓延が始まった2020年1Q期(1月~3月)に「6.0%」、1度目の緊急事態宣言が発出された2020年2Q期(4月~6月)には「8.2%」にまで上昇しています。
つまり、2020年前半は売り出し価格と成約価格の乖離率が大きく、これまで以上に成約にいたるまでの値下げ幅が大きかったことになります。
しかし、2020年3Q(7月~9月)から徐々に乖離率は低下していき、2021年2Q期(4月~6月)には「1.8%」とかつてない水準にまで下がりました。
これは、売り出し価格からほぼ値下げされずに成約にいたる中古マンションが増えたということ。すなわち、2021年前半の中古マンションマーケットは売主優位=売り手市場となっていたのです。
2020年3Q(7月~9月)から中古マンションの売り出し価格と成約価格の乖離は狭まるばかりでしたが、2021年3Q(7月~9月)には1年ぶりに乖離率が上昇に転じています。
2021年3Qの乖離率は「3.2%」。成約価格は上昇傾向にあるものの、売り出し価格と成約価格の乖離率が上がったにより、成約価格の上昇にもやや停滞感が見られています。
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続いて、中古マンション売り出し後の「値下げ発生頻度」と「値下げ率」を見ていきます。
今回は、2020年12月末・2021年3月末・2021年6月末・2021年9月末の4つの時点から過去3ヶ月を遡り、各月に売り出された事例を調査。結果、値下げ頻度、値下げ率ともに2021年下期より上昇傾向が見られました。
売出価格からの値下げ率 | 2020年10月売出物件の12月末までの価格値下げ発生頻度 | 2020年10月売出物件の12月末までの価格値下げ発生頻度 | 2020年12月売出物件の12月末までの価格値下げ発生頻度 |
---|---|---|---|
5%以下 (0%は除く) | 13.0% | 5.7% | 3.2% |
5%~10% | 6.7% | 3.0% | 1.2% |
10%~20% | 2.6% | 0.7% | 0.3% |
売出価格からの値下げ率 | 2021年1月売出物件の3月末までの価格値下げ発生頻度 | 2021年2月売出物件の3月末までの価格値下げ発生頻度 | 2021年3月売出物件の3月末までの価格値下げ発生頻度 |
---|---|---|---|
5%以下 (0%は除く) | 14.7% | 9.7% | 2.9% |
5%~10% | 6.2% | 4.5% | 1.3% |
10%~20% | 1.9% | 1.3% | 0.3% |
売出価格からの値下げ率 | 2021年4月売出物件の6月末までの価格値下げ発生頻度 | 2021年5月売出物件の6月末までの価格値下げ発生頻度 | 2021年5月売出物件の6月末までの価格値下げ発生頻度 |
---|---|---|---|
5%以下 (0%は除く) | 8.6% | 5.0% | 3.2% |
5%~10% | 4.1% | 3.1% | 2.2% |
10%~20% | 1.4% | 1.2% | 0.8% |
売出価格からの値下げ率 | 2021年7月売出物件の9月末までの価格値下げ発生頻度 | 2021年8月売出物件の9月末までの価格値下げ発生頻度 | 2021年9月売出物件の9月末までの価格値下げ発生頻度 |
---|---|---|---|
5%以下 (0%は除く) | 17.2% | 14.2% | 4.9% |
5%~10% | 10.0% | 6.6% | 2.4% |
10%~20% | 2.8% | 1.1% | 0.3% |
2021年4月・5月・6月は、先の調査で売り出し価格と成約価格の乖離率が「1.8%」とかつてないほど低い水準だった時期。この時期に売り出された中古マンションの値下げ率および値下げ発生頻度を見ても、それまでと比較して大幅に減少していることがわかります。
その一方、乖離率が上昇傾向に転じた2021年7月・8月・9月は、値下げ発生頻度もまた大きく上昇しています。とくに、売り出し価格からの値下げ率「5%以下(0%を除く)」「5%~10%」が他の時点から観測したものと比較して明らかに高くなっています。
中古マンションマーケットがコロナ禍で売り手市場に転じた要因の1つは、供給量不足。需給バランスが崩れたことにより、価格は上昇し、これまで一定の値引きをしたうえで成約にいたっていた中古マンションの値下げ率および値下げ頻度が下がったものと考えられます。
上記記事でも解説しているように、中古マンションの供給量が回復しつつあり、売り出し価格と成約価格の乖離率が上がっている状況に鑑みれば、コロナ第6波の懸念はあるものの中古マンションの下落圧力が働くことになるのは想像に難くないといえるでしょう。
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早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて中古マンション市場調査を行い、顧客に情報の提供を行っている。
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