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国土交通省は3月22日、2023年公示地価を公表しました。全用途の全国平均は、1.6%上昇。上昇は2年連続となり、コロナ前への回復傾向が顕著に見られました。
その一方で、地域差は拡大。本記事では、不動産コンサルタントの長嶋修さんの解説を交えながら、地価公示から読み取れる不動産市場の現状について解説します。
株式会社さくら事務所創業者・会長
不動産コンサルタント
長嶋 修
1967年、東京生まれ。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所を設立、現会長。業界の第一人者として不動産購入のノウハウにとどまらず、業界・政策提言にも言及するなど精力的に活動。TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動など、様々な活動を通じて『第三者性を堅持した不動産コンサルタント』第一人者としての地位を築く。
公示地価とは、地価公示法に基づき毎年1月1日時点の1㎡あたりの正常な価格を判定して公示するものです。公示価格は、鑑定評価員が全国2万6,000地点について選定および確認し、分科会などの議論を経て鑑定評価に基づき判定しています。
公示地価 | 基準地価 | |
---|---|---|
調査主体 | 国土交通省土地観点委員会 | 都道府県 |
鑑定方法 | 2人以上の鑑定士による | 1人以上の鑑定士による |
評価時期 | 1月1日時点 | 7月1日時点 |
発表時期 | 3月下旬 | 9月下旬 |
調査地点 | 都市計画区域などの標準地点 | 都市計画区域外も含む基準地点 |
「公示地価」と似ているものに「基準地価」が挙げられますが、両者の違いは上記の通り。調査主体や調査地点、評価時期などに違いがあります。
2023年の公示地価全国・全用途平均上昇率は、1.6%と2年連続の上昇となり上昇率も拡大しました。全国平均だけでなく、全用途・全エリアの地価が上昇。地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)を除く地方圏の住宅地の上昇は、実に28年ぶりのことです。
新型コロナウイルス感染症拡大により数年間、下落基調がみられていた地価ですが、行動制限の解除やそれに伴う経済活動の再開、景気の持ち直しなどを受け、コロナ前への回復傾向が顕著になりました。
住宅地の上昇率は、地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)が8.6%と最も高く、その他のエリアでも上昇率は拡大しています。
国土交通省によれば、住宅地の傾向および高騰要因は次の通りです。
商業地も、地方四市を筆頭に上昇し、上昇率も拡大しています。
全ての商業地・観光地が回復しているわけではありません。たとえば、京都や金沢、熱海、出雲などでの観光地では地価が上昇トレンドを描いていますが、日光・鬼怒川などは長らく下落トレンドで回復の兆しはありません。
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2023年公示地価上昇ランキングにおいてトップ10を占めたのは、なんと全て北海道。一方、下落ランキングでトップ10でも北海道の地域が多数ランクインしています。
上記の表は、2023年地価公示の変動率の上位トップ10の地域を表しています。ランクインしているのは、住宅地、商業地ともに、全て北海道。いずれも北広島市が1位です。
北広島市とは、札幌から電車で16分、新札幌から8分、新千歳空港にも車で30分ほどと交通利便性の良いエリア。トップ10入りしている江別市や恵庭市もまた、札幌近郊のエリアです。
商業地・住宅地の全国上昇率トップ10には、北海道北広島市周辺がズラリ。「北海道ボールパークFビレッジ」の開発による利便性向上や人流期待などが影響しています。
一方、上記は、地価公示の変動率の下位トップ10のエリア。北海道は上位トップ10を占めていたものの、下位にも多くの地域がランクインしています。住宅地の下位トップの北海道空知郡奈井江町は、札幌から電車で1時間ほど。札幌市と旭川のほぼ中間に位置する町です。
商業地・住宅地の全国下落率トップ10を占めるのも、やはり北海道。圧倒的な少子化・高齢化と人口減少といったトレンドには抗えず、衰退の道をたどる地点も多いものと見られます。
上記のマップは、変動率を色分けで表したもの。ピンクやオレンジなどの暖色は変動率がプラス、水色や青の寒色は変動率がマイナスの都道府県です。
2022(令和4)年と比較すれば2023(令和5)年に地価が上昇したエリアは増えていますが、プラスのエリアが24に対し、マイナスのエリアは22。全国平均では地価がプラスになったとはいえ、地価が上がったのはおよそ半数の都道府県であることがわかります。
秋田県や和歌山県といった地方では、1990年のバブル崩壊以降、地価はずっと下落トレンド。上昇しているのは、駅前などのごく一部に限定しています。
都道府県別で見ると、上昇・下落はほぼ半数ずつでしたが、地方圏では下落地点が上昇地点の割合を上回っています。
全国的には、地価が上昇するエリア・横ばいからなだらかに下落するエリア・大きく下落するエリアの三極化は確実に進行していると長嶋さんはいいます。
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北海道は顕著でしたが、上昇するエリア・下落するエリアの二極化、三極化は、ほとんどの都道府県で見られます。
たとえば、埼玉県で地価が上昇したのは、朝霞市や所沢市、さいたま市、川口市など東京に近いエリアが中心。小鹿野町、神川町、羽生市など、内陸であるほど下落しているエリアは多いことがわかります。
三極化の構図が「日本全国」「都道府県」といった各カテゴリでフラクタルに発生しているのが実情です。
2023年公示地価は、全国用途平均で1.6%上昇。上昇率も拡大しましたが「その内訳を見れば三極化がますます鮮明となる構図」だと長嶋さんはいいます。
バブル時点の日本の土地資産額は、およそ2,000兆円。しかし、現在は1,000兆円と半減しています。住宅においては「都心」「駅前」「大規模」「タワー」といったワードに代表されるマンションが好調で「バブル期超え」などといったことも言われていますが、そうした動きはほんの一部です。人口減少のピークを迎える2050年あたりまで「価値が落ちない・落ちにくい」「なだらかに下落」「無価値」といった三極化の構図はますます鮮明になっていくはずです。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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