日本橋の再開発最前線|注目ビルと街の未来像を徹底解説

日本橋は歴史と伝統を受け継いだ再開発により、風情と先進性が共存する魅力的な街です。そんな日本橋が、これからどのように変わっていくのか気になる方も多いのではないでしょうか。

日本橋では、オフィス、商業施設、住宅、ホテルなどの機能が充実したミクストユース型の街を目指す再開発が現在も進行中です。川を最大限に活用した憩いの空間づくりも着々と進められています。

この記事では、日本橋の再開発の全貌と街の未来像をお伝えします。

目次

日本橋再開発の概要

日本橋の再開発は、主に「日本橋再生計画」「日本橋川沿いエリアのまちづくりビジョン2021」を基に推進中です。

日本橋再開発の背景と目的

日本橋は江戸時代に五街道の起点であったことから、全国から人やモノ、コトが集まり、交通・商業・金融・文化・情報などの中心地として発展してきました。歴史と伝統に根差した地域コミュニティが育まれており、多数の老舗が立地しています。東京駅から近く、成田空港や羽田空港へのアクセスも良好です。

日本橋における再開発は、三井不動産株式会社を中心に官・民・地元が一体となって推進する「日本橋再生計画」から始まりました。

日本橋は古くから金融・商業の中心地として栄えていましたが、1990年代にバブルが崩壊すると、賑わいを失っていきました。そこでかつての賑わいを取り戻すため、官・民・地元が一体となり「日本橋再生計画」がスタートしたのです。

地域の歴史や伝統を受け継ぎながら、日本の中心であった日本橋を国際的な金融拠点、観光エリアに押し上げるべく、現在も再開発が進められています。

キーワードは「ミクストユース」。

オフィス中心であった日本橋に、商業施設や多目的ホール、住宅、ホテルなど、多様な用途のコンテンツが導入されています。

日本橋再開発の進捗状況と今後の予定

日本橋再生計画は第1ステージ、第2ステージ、第3ステージの3段階で構成されています。

第1ステージにおいて2004年3月、「COREDO日本橋」がオープンしたのをきっかけに日本橋再生計画は大きく動き出しました。「日本橋三井タワー」や「COREDO室町1」もこの時期に開発されました。

第2ステージは、2014年の「COREDO室町2・3」の開業を契機にスタートします。「界隈創生」「産業創造」「地域共生」「水都再生」の4つのキーワードでまちづくりが進められました。

「COREDO室町テラス」の開業を皮切りに、2019年から第3ステージへと突入しました。第2ステージの取り組みを踏襲しつつ、 「豊かな水辺の再生」「新たな産業の創造」「世界とつながる国際イベントの開催」の 3つに重きがおかれています。

そして、東京都中央区により策定された「日本橋川沿いエリアのまちづくりビジョン2021」では、5つの再開発が計画されています。5つの再開発とは、日本橋一丁目中地区、八重洲一丁目北地区、日本橋室町一丁目地区、日本橋一丁目東地区、日本橋一丁目1・2番地区の5地区における市街地再開発事業のことです。

出典:日本橋川沿いエリアのまちづくりビジョン2021

この5つの再開発においては、「多様な活動が生まれるまち」「歩いて楽しめるまち」「川に開かれたまち」「環境にやさしいまち」「安全・安心のまち」が地域全体の指針とされています。

最初に竣工するのは日本橋一丁目中地区の再開発で、2026年3月の予定です。三井不動産株式会社と野村不動産株式会社により進められており、「日本橋再生計画」第3ステージにおけるリーディングプロジェクトとして位置づけられています。

(2025年6月時点)

八重洲一丁目北地区の再開発は東京建物株式会社が中心となっており、2024年11月19日に着工しました。南街区は2029年度、北街区は2032年度に竣工予定です。

日本橋室町一丁目地区の再開発は三井不動産株式会社が担っており、A街区は2026年度、B・C・D街区は2028年度以降に竣工が予定されています。

日本橋一丁目東地区の再開発は、三井不動産株式会社、東急不動産株式会社、日鉄興和不動産株式会社の大手総合デベロッパー3社が手がけます。竣工予定は、A街区が2030年度、B街区が2034年度、C・D・E街区が2037年度です。

最後に、日本橋一丁目1・2番地区の再開発も三井不動産株式会社が主導となっています。A・B街区は2032年度、C・D街区は2034年度の竣工を見込んでいます。

日本橋再開発がもたらす影響と魅力

再開発によって日本橋は、歴史ある街並みを受け継ぎつつ、商業・ビジネスの拠点として進化を遂げます。加えて歩行者空間と舟運ネットワークが整備され、周辺エリアとのつながりも強化される見込みです。

魅力① 歴史ある街並みの保全と再生

三井不動産株式会社は日本橋において、ビルが並ぶ中央通り沿いは三井本館の高さと同じ100尺(約31メートル)のラインに基壇部をそろえる街づくりを行ってきました。桜並木の通りや石畳の通り、福徳神社・福徳の森が設けられ、歩くだけで非日常を味わえる日本らしい街並みが広がっています。

一般社団法人日本橋室町エリアマネジメントによる「街並み景観ガイドライン」においても、中央通りは歴史的建造物と調和した基壇部の連続、 高層部のセットバック、江戸桜通りは桜並木の整備・ 延伸などが基準として定められています。

さらに5地区の再開発では、川沿いの景観が整備される計画です。名橋「日本橋」や川を眺める空間、歴史的な建造物を生かした広場などがつくられ、川幅含め幅約100m・長さ約1200mの広大な親水空間が誕生します。

魅力② 商業・ビジネスの融合エリア化

日本橋における5地区の再開発では、それぞれ商業施設、ホテル、オフィス、MICE拠点、住宅などの複合施設が整備されます。そして5地区が互いに連携することで賑わいを生み出す構想です。

ハード面に留まらず、ソフト面としてエリアマネジメントも計画されています。エリアマネジメントでは、地区間が連携した日常的な賑わいの創出、地元イベントへの協力、国際イベント誘致など、エリアの価値向上に向けた取り組みを推進します。

魅力③ 東京駅・八重洲・京橋との連携強化

日本橋の再開発で多くの注目を集めているのが、首都高速道路の地下化です。2040年には現在の高架橋が撤去され、日本橋川に新たな憩いの空間が誕生します。

「ウォーカブルネットワーク」と呼ばれる歩行空間も整備され、東京駅周辺や室町・本町エリア、八重洲エリアとシームレスにつながるようになります。周辺の個性溢れる路地ともつながり、歩いて楽しめる環境が形成されるのです。

周辺エリアとの連携は歩行者空間だけではありません。舟運ネットワーク拠点として、羽田、お台場、芝浦、晴海、豊洲、浅草などのウォーターフロントとつながり、新たな移動手段を提供します。

再開発で注目の日本橋エリアと大型ビル群

日本橋の再開発で注目されるビル、今後開発が進められるエリアを紹介します。

日本橋室町三井タワーなどの注目再開発ビル

「日本橋室町三井タワー」は2019年に誕生した、オフィス、商業、広場、ホールなどの施設からなるビルです。有事の際に地域に電気・熱を供給するエネルギーセンターも完備されています。

地上26階、地下3階の大規模複合ビルで、地下1階~地上2階に入っている商業施設は「COREDO室町テラス」です。「COREDO室町テラス」は日本初出店2店舗、商業施設初出店10店舗、新業態10店舗と個性ある店舗で構成されており、国内外一流の「食」やこだわりの「モノ」を提供しています。

「日本橋三井タワー」の周辺には「室町東三井ビルディング」「室町古河三井ビルディング」「室町ちばぎん三井ビルディング」が並んでおり、それぞれ低層部には商業施設「COREDO室町」「COREDO室町2」「COREDO室町3」があります。

注目されるのは高層ビルだけに限りません。「日本橋ムロホンビル」を含むムロホンプロジェクトは、2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。ムロホンプロジェクトは、日本橋の再開発エリアに隣接する日本橋室町一丁目と日本橋本町一丁目、通称ムロホンエリアで展開されています。

日本橋ムロホンビルは1~5から成り、飲食・物販店舗やベンチャー企業誘致の受け皿になっています。賑わいづくりを目的とした「景観形成」と「コミュニティ形成」を両軸とし、路地や路面店整備によりヒューマンスケールな街並みをつくっている点が特徴です。

地元商店主、住民、ワーカー、来訪者、そして将来の商売の担い手が協力し、地域の歴史を紡いできた商売繁盛の実現とコミュニティの持続的発展を目指しています。

日証館跡地開発プロジェクトの概要

渋沢栄一の邸宅跡「日証館」がある日本橋兜町では、平和不動産株式会社が街づくりを担っています。

リーディングプロジェクトは、茅場町駅直結の大規模複合ビルである「KABUTO ONE」です。地上15階、地下2階で、オフィス・店舗・カンファレンスなどで構成されています。金融関連の情報発信や人材育成、投資家と企業の対話・交流促進を図ることで「国際金融都市・東京」構想の実現に寄与することを目指しています。

「⽇証館」の⼀部はリノベーションされ、カカオの新たな可能性を探求するラボ「nib」と、フレグランスブランド「LAURASIA」を展開するフレグランスロビーが⼀つになった施設が生まれました。渋沢栄⼀の「コト始め」の精神に寄り添いながら、多彩な個性が⾏き交い、クリエイティビティが⽣まれることを⽬指して、⽇本橋兜町ならではの街づくりを推進しています。

今後の開発予定エリアと整備の方向性

今後は前述のとおり、「日本橋再生計画」および「日本橋川沿いエリアのまちづくりビジョン2021」に基づいて、名橋「日本橋」と橋の下を流れる川周辺で一体的に開発が進められます。

日本橋から東方面にある日本橋兜町・茅場町方面においても、さらに開発されることが見込まれます。2024年10月には、平和不動産株式会社、三菱地所株式会社、中央日本土地建物株式会社の3社による「(仮称)日本橋茅場町一丁目6地区開発計画」が提案されました。

茅場町駅直結のオフィス、商業、金融拠点の形成に必要な機能などからなる複合ビルが建設される予定です。併せて、敷地内の神社境内地を拡張・再整備し、地域の賑わいの中心となる緑豊かなオープンスペースが設けられます。

東京都が推進する「国際金融都市・東京」構想の実現に資する金融関連機能の集積、地域文化・歴史を活かした街並みの形成、地域防災力の向上、緑化空間による潤いのある都市空間づくりにより、東京の国際競争力と魅力の向上に貢献することを目指した計画です。

日本橋再開発と不動産市場への影響

再開発による日本橋エリアのオフィス市場やマンション市場への影響を説明します。

オフィスビル市場へのインパクト

日本経済新聞社がまとめた2025年上期のオフィスビル賃貸料調査によると、設備が整った大型ビルや交通利便性の高いエリアを中心に東京のオフィス相場が上昇しています。

日本橋室町〜本町エリアの賃貸料は前年同期比で16%上昇しました。東京駅を挟んで反対側に位置する丸の内〜大手町エリアの8%と比較し、非常に高い伸長率です。

再開発により最新設備を備えた高機能のオフィスが誕生すれば、日本橋エリアのオフィス賃料相場はますます上昇するでしょう。

日本橋エリアのマンション市場の変化

日本橋駅エリアの中古マンションの売出状況を、築年数および駅からの徒歩距離ごとに整理しました。

日本橋駅周辺800m 駅徒歩×築年帯別2024年4月~2025年3月の中古マンション新規売出数

 ~築1年~築5年~築10年~築15年~築20年築21年以上
徒歩1分000000
~徒歩3分003084
~徒歩5分003288
~徒歩7分006162024
~徒歩10分014292223148
マンションリサーチ調べ

日本橋駅周辺800m 駅徒歩×築年帯別中古マンション坪単価

 ~築1年~築5年~築10年~築15年~築20年築21年以上
徒歩1分
~徒歩3分627万円/坪430万円/坪407万円/坪
~徒歩5分636万円/坪575万円/坪834万円/坪373万円/坪
~徒歩7分598万円/坪592万円/坪481万円/坪392万円/坪
~徒歩10分598万円/坪659万円/坪541万円/坪467万円/坪361万円/坪
マンションリサーチ調べ

日本橋駅周辺800m駅徒歩×築年帯別中古マンション単価(60㎡換算)

 ~築1年~築5年~築10年~築15年~築20年築21年以上
徒歩1分
~徒歩3分11376万円7805万円7394万円
~徒歩5分11544万円10431万円15130万円6766万円
~徒歩7分10845万円10752万円8722万円7112万円
~徒歩10分10861万円11952万円9810万円8469万円6547万円
マンションリサーチ調べ

上記の表から読み取れるのは、日本橋エリアでは築年数の古いマンションが多いことです。徒歩10分圏内に築21年以上の物件が非常に多く、徒歩7分圏内にも築15年以上の物件が多数あります。

一方で、築5年以内の築浅物件は非常に少なく、供給が限られていることが伺えます。これは日本橋エリアが、もともと商業地として発展してきたことに起因しているでしょう。

現在進行中の再開発では、高層階を中心にマンションが設けられる予定です。新築マンションの供給増加が見込まれるため、市場構造が変化していくと推測されます。

投資先としての日本橋エリアの注目度

日本橋エリアは東京駅に近く、都心各所や羽田空港・成田空港へのアクセスが良好です。都心の一等地であり、マンションの供給が限られていることから、マンション投資においては希少性の高いエリアといえます。築古のマンションが多いため、リノベーション需要や建替えニーズも見込めます。

再開発によってオフィスや商業施設、ホテルが充実する国際拠点に生まれ変われば、国内外からさらなる注目を集めるでしょう。

日本橋再開発に関するよくある質問

日本橋再開発に関する気になる点にお答えします。

日本橋の再開発はいつ完了予定?

日本橋では再開発による施設が順次開業しますが、最も遅いのは日本橋一丁目東地区のC・D・E街区で2037年度の予定です。首都高速道路の地下化は2040年に完了する見込みです。

再開発ビルに入る予定の企業や店舗はもう決まっているか?

2026年に野村グループが、日本橋一丁目中地区のメインタワーの10階〜20階にオフィスを移転することを明らかにしています。それ以外のオフィスや商業施設のテナントは、開業日が近づいたらニュースリリースなどで公表されると考えられます。

日本橋エリアの不動産は今後値上がりする?

東京都心で不動産が値上がり傾向にあり、日本橋エリアは東京駅に近く都心や空港へのアクセスに優れていることを考えると、今後も値上がりが続くでしょう。

まとめ

日本橋の再開発では、かつて五街道の中心として全国から人・モノ・コトを集めた求心力を取り戻し、さらに国際都市としての進化を目指す壮大なプロジェクトです。オフィスのほか、商業施設や多目的ホール、住宅、ホテルなどが共存するミクストユースな街づくりが活発化しています。

首都高速道路の地下化によって川に光が差し込むようになり、広大な親水空間も誕生します。歴史や文化を継承しながらも、多様な人々が行き交う持続可能な都市へと変貌中です。

再開発を経て、日本橋エリアの価値はますます向上していくでしょう。

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この記事を書いた人

ライター/ショッピングセンター偏愛家

商業デベロッパー2社での勤務を経て、ライターとして独立。宅地建物取引士試験合格、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。「人生が明るい方向に進むきっかけをつくる」ことを目指して活動している。趣味はショッピングセンター巡りと街歩き。数多くの街を歩いて培った知見と実務経験を生かし、不動産や街に関する記事を執筆している。

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