MENU

憧れの「吉祥寺」、住めるのはどこ?9年間の中古マンション価格推移で見えた“人気”と“買える”の境界線

駅名ランキングだけで判断していませんか?「住みたい街ランキング」で上位に入る街は、誰もが一度は憧れる“ブランド街”。でも実際に住もうとしたとき、予算や条件と合わず断念…なんて経験はありませんか?

本記事は、株式会社リクルート発表の「SUUMO住みたい街ランキング2025首都圏版」と2016年版をもとに、街の人気傾向と不動産相場の変化をマンションナビ独自の価格データを用いて分析しています。

「住みたい街=住める街なのか?」という視点から、2025年と2016年のランキングを比較し、吉祥寺エリアの町名単位での価格相場を徹底分析。価格は駅や区の相場だけでなく、町名ごとに細かく見ることで初めてリアルな購入可能性が見えてきます。

過去の変化や将来の予測を読み解きながら、予算や条件に合った“本当に住める街”を見極めましょう。

調査概要

調査期間: 2016年5月~2025年5月
ランキング出典:SUUMO住みたい街ランキング2025 首都圏版SUUMO住みたい街ランキング2016
調査機関: マンションナビ
調査対象:東京都武蔵野市

目次

駅名ランキングだけでは見えない、ブランド力の変化

2025年の「SUUMO住みたい街(駅)ランキング首都圏版」では、「横浜」が8年連続で1位を獲得。以下「大宮」「吉祥寺」「恵比寿」と続き、定番の強さを見せました。

しかし、9年前(2016年)のランキングを振り返ると、1位は「恵比寿」、2位が「吉祥寺」、3位が「横浜」でした。2025年に2位となった「大宮」は当時トップ10外、逆に2016年の4位「武蔵小杉」は2025年にはランク外となっています。

順位2016年2025年
1位恵比寿駅横浜駅
2位吉祥寺駅大宮駅
3位横浜駅吉祥寺駅
4位武蔵小杉駅恵比寿駅
5位自由が丘駅東京駅
6位目黒駅池袋駅
7位池袋駅新宿駅
8位新宿駅品川駅
9位東京駅目黒駅
10位二子玉川駅渋谷駅

9年の間に、人気の軸は「ブランド」から「生活利便性や将来性」へとシフトしていることが見えてきます。

「吉祥寺伝説」は続く?変化と不動の両立

吉祥寺はランキング常連の人気エリア。駅前の商業施設、井の頭公園の自然、教育環境の整備など、“暮らしの総合力”が評価されています。2025年は3位、2016年も2位と、その存在感は不動です。

一方で、この人気はマンション価格の高騰にも直結。そのため、「住みたい街=買える街」とは限らない現実が浮き彫りになっています。

東京都武蔵野市の平均売買価格推移
東京都武蔵野市の平均売買価格推移

共働き・子育て世帯が牽引する「郊外シフト」

近年は「大宮」や「池袋」「新宿」など、「通勤利便性×暮らしやすさ×資産性」のバランスを重視した駅が注目されており、再開発エリアとしての将来性や資産性も重視されています。

ブランドだけでなく、「自分たちに合うか」「将来的な資産価値はどうか」を重視する姿勢が、駅単位の“憧れ”から町名レベルの“見極め”へと変化していると言えるでしょう。

吉祥寺駅エリアを町名で読み解く「買える街」の条件

武蔵野市の吉祥寺エリアといっても、その中には20を超える町丁が存在します。

ここからは町名別の相場データ(2025年5月時点、専有面積70㎡換算)を比較しながら、どの町名が「手が届くのか」「なぜ価格に差があるのか」を解説します。

御殿山|吉祥寺でも別格のラグジュアリーゾーン

現在(平均築年数1990年)9年前(平均築年数1984年)
平均売買価格8,162万円〜8,562万円5,129万円〜5,529万円
平均売買㎡単価116.6〜122.4万円73.3〜79万円

吉祥寺最高額の町名。自然と高級住宅が共存する御殿山は、吉祥寺ブランドの象徴とも言えるエリアです。

その中でも「吉祥寺御殿山ハウス」の売買価格相場は14,370万円〜14,770万円と、圧倒的な別格ゾーンを形成しています。もはや一般ファミリーでは手が届かない別世界です。

吉祥寺本町|駅至近で利便性と資産性を両立

現在(平均築年数1990年)9年前(平均築年数1992年)
平均売買価格7,127万円〜7,527万円4,829万円〜5,229万円
平均売買㎡単価101.9〜107.6万円69.0〜74.7万円

駅徒歩5分圏が多く、商業施設や行政サービスが集まる利便性抜群の立地。御殿山に次ぐ高価格帯ながら、利便性と資産性を両立させたい層から高評価を得ています。

吉祥寺南町|バランス型の人気エリア

現在(平均築年数1990年)9年前(平均築年数1984年)
平均売買価格6,304万円〜6,704万円4,573万円〜4,873万円
平均売買㎡単価90.1〜95.8万円65.4〜69.7万円

駅近でありながら、価格は御殿山・本町より控えめ。生活環境や通学路の安全性など、実用面に優れた住宅街。ファミリー層やDINKs世帯にも人気の「ちょうどいい吉祥寺」です。

桜堤|コスパに優れた“穴場”のファミリー向けエリア

現在(平均築年数1990年)9年前(平均築年数2006年)
平均売買価格5,541万円〜5,941万円3,905万円〜4,205万円
平均売買㎡単価79.2〜84.9万円55.8〜60.1万円

吉祥寺駅からはやや離れるものの、住宅地としての落ち着きと、学校・公園など子育て環境の良さが魅力。「吉祥寺に住みたいけど価格が…」という人にとって、現実的な選択肢となる町名です。

緑町・八幡町|吉祥寺エリアの“実力派サブエリア”

緑町現在(平均築年数1990年)9年前(平均築年数1990年)
平均売買価格5,541万円〜5,941万円4,818万円〜5,118
平均売買㎡単価79.2〜84.9万円68.9〜73.2万円
八幡町現在(平均築年数1990年)9年前(平均築年数1998年)
平均売買価格5,541万円〜5,941万円4,695万円〜4,995万円
平均売買㎡単価79.2〜84.9万円67.1〜71.4万円

どちらも駅からやや距離がありますが、閑静な住宅街として定評があります。駅徒歩圏にこだわらなければ、専有面積70㎡で5,000万円以内で検討可能です。吉祥寺エリアの中では手が届く“穴場ゾーン”です。

9年前との比較で見える「吉祥寺エリア」内の変化

過去9年の価格推移を町名単位で振り返ると、吉祥寺エリア全体で平均+約40〜60%の価格上昇が見られます。特に上昇率の大きいエリアとそうでないエリアの“差”が明確になりつつあります。

【上昇幅が大きかったエリア】
吉祥寺本町:+2,300万円超(+約48%)
御殿山:+3,000万円超(+約57%)
吉祥寺南町:+1,700万円超(+約37%)

【相対的に価格が抑えられたエリア】
緑町・八幡町:+1,200〜1,400万円台(+約25〜30%)
桜堤:+1,600万円台(+約40%)

上昇幅が大きかったエリアは元々ブランド性が高く、商業・交通利便性が整ったエリアで、今もなお資産性が評価されています。では、どういったブランド性があるのでしょうか。

ブランド3町に見る「価格が上がる理由」

吉祥寺本町:駅至近で生活インフラが集中

駅から徒歩5分圏内に大型商業施設や行政サービスが集まり、利便性と資産性の両方を兼ね備えています。分譲・賃貸いずれにも強いニーズがあり、ブランドマンションも多く流通しています。

こうした特徴は、吉祥寺に限らず他エリアの価格上昇エリアにも共通しています。

たとえば、中央区の月島や港区の高輪なども、駅近で生活利便性が高い地域を中心に価格が上昇しており、「駅徒歩圏×生活機能集積」は、資産価値維持・上昇の要となる傾向が見られます。大型商業施設や行政サービスが集まり、利便性と資産性の両方を兼ね備えています。

分譲・賃貸いずれにも強いニーズがあり、ブランドマンションも多く流通しています。

御殿山:自然と高級住宅が共存する静かな高台

井の頭恩賜公園のそばにあり、低層・高品質な物件が多く、富裕層や経営者層に人気。吉祥寺の“別格エリア”。

吉祥寺南町:交通と生活バランスの取れたエリア

三鷹駅も徒歩圏で、通勤・教育・自然の全てが整うバランス型の住宅地。地元住民からも長く支持されている“正統派吉祥寺”。

このように、「吉祥寺」全体がブランド街である中でも、これら3町はそれぞれ明確な”選ばれる理由”と“立地的優位性があり、結果的に価格上昇も大きくなっています。

町名まで見ることで“本当に住める街”が見えてくる

「吉祥寺に住みたい」と一口に言っても、御殿山のような高級住宅地から、八幡町や緑町のような実用的な価格帯まで、その幅は非常に広く、同じ駅名でも“住めるリアリティ”は大きく異なります。

こうしたギャップを理解せずに駅名ランキングだけを参考にしてしまうと、「目指したい街」ばかりに目が行き、「実際に住める街」を見落としてしまいがちです。

だからこそ今、不動産選びでは「駅名」ではなく、「町名」単位の相場感を把握すること、が何より重要です。

リアルに住める選択を

  • 駅名では錯覚しがちな“街の価格帯”も、町名で見れば大きな違いがある
  • 目指したい街と“住める街”のギャップに気づくことで、理想に近づける
  • 住みたい街が“本当に住めるか”は、“見る目”次第

「吉祥寺」は確かに人気ですが、御殿山のような超高額地もあれば、八幡町のような手が届く場所もあるのです。だからこそ、駅名・区名ではなく、町名や大字まで細かく見ることで、価格の分岐点が明らかになります。過去9年のデータをもとに変化を可視化し、未来の相場を見極める材料とすることで、「理想に近づく選択」が可能になります。

データ提供/マンションナビ

マンションナビでは、都道府県から分譲マンションごとまでの売却・購入価格相場を確認できます。

すみかうるの記事をシェアする

この記事を書いた人

すみかうるの企画・編集・運営を行う編集部です。マンション売却や購入にまつわる情報に加え、不動産市況調査や街の再開発に関する記事も執筆。独自の不動産データを掛け合わせ、不動産初心者から上級者まで関心を持っていただける記事を目指しています。不動産会社への取材や売却体験者へのインタビューなど、生の声を届けることを大切にしています。

目次