マンション管理適正化法改正「管理計画認定制度」開始でどう変わる?

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「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」、通称「マンション管理適正化法」とは、マンション管理の適正性とマンションに住む人の快適な生活を確保するため2001年に施行された法律です。

この法律は2020年に改正され、改正法は2022年4月に施行となります。改正の目玉となるのは「マンション管理計画認定制度」の開始。施行に先駆けて、国土交通省から長期修繕計画作成ガイドラインや管理計画認定の事務ガイドラインがすでに公表されています。

そこですみかうる編集部は、マンション管理会社 株式会社大京アステージ取締役の渡邊清隆さんにマンション管理適正化法改正によるポイントをお伺いしました。

お話を伺った方

株式会社大京アステージ

渡邊 清隆

事業管理部管掌
ICTソリューション事業部管掌
取締役
目次

長期修繕計画作成および修繕積立金のガイドラインのポイント

編集部

改正マンション管理適正化法施行に先駆け、2021年9月、長期修繕計画作成および修繕積立金のガイドライン改訂が公表されました。このガイドラインは「マンションの長期修繕計画の作成、あるいは見直しにあたって指針を示すもの」ということ。ポイントはどのような点になりますか?

渡邊さん今回、長期修繕計画のガイドラインが13年ぶり、積立金のガイドラインが10年ぶりの改訂となります。

内容は2022年4月からスタートする「マンション管理計画認定制度」を見据えたものになっていると思います。2021年11月には「マンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」が国土交通省から公表され、基準がより明確になりました。この基準のベースになっているのが、長期修繕計画作成および修繕積立金のガイドラインになっていることを確認しております。

この2つのガイドラインは、マンションの適正な維持・管理とその前提となる資金面の観点で非常に重要な位置づけになると考えています。

そもそもマンション管理適正化法の改正の背景は、日本のマンションの築年数が全体的に上がってきているということです。配管や水周り、エレベーター、機械式駐車場などの設備の維持・修繕の費用が高騰していくことに伴い、資金不足に陥るマンションも増加傾向にあります。

今回の改訂ではとくに既存マンションに着目し、長期修繕計画の期間とその見直しの期間、および積立金の設定の考え方が変更されています。

長期修繕計画のガイドライン3つのポイント

具体的には、長期修繕計画のガイドラインのポイントは次の3つになると考えています。

1.「期間」の見直し

ここでいう「期間」には2つがあります。1つは、長期修繕計画の期間。そして2つ目は、その計画を見直す期間です。

出典:国土交通省

これまでのガイドラインでは既存マンションの長期修繕計画期間は「25年以上」でしたが、今回の改訂で「30年以上」に変更されました。この点は、管理計画認定制度の基準にも盛り込まれています。

この改訂の意図は、早い段階で資金ショートしてしまう可能性に気づいてもらうことにあると考えています。エレベーターのリニューアル工事や給排水管の更新工事など、マンションの高経年化に伴って発生する、比較的、高額な修繕工事も、30年以上とこれまでより長いスパンの計画をもって対応できれば、これまで見落とされていた26年目以降の資金不足もカバーできるようになるでしょう。

そして計画の見直し期間については、従来までは「随時」とされていましたが、改正後は「5年程度」となっています。具体的な数字が明示されることで、計画が策定されたまま未更新になる状況は、ある程度、防止できるはずです。その結果、長期修繕および資金面の双方をより適切に計画できるようになるのではないでしょうか。

2.「修繕周期」の見直し

出典:国土交通省

従来までのガイドラインでは、大規模修繕の周期は「12年」が適切だとされていました。この点が、今回の改訂ガイドラインでは「12年~15年」と一定の幅を持たせて明記されています。

計画期間は先述通り「30年」となりましたから、計画期間中に2回の大規模修繕が入ることになります。従来までは、周期によっては1度の大規模修繕しか計画に盛り込まれていないこともありましたので、今後は計画終了直後に資金ショートしてしまうといったケースもカバーできるでしょう。

3.「社会的要請」を踏まえた追記

今回の改訂では、サスティナビリティの観点も重視されています。

ガイドラインではマンションの省エネ性能を向上させる改修工事の有効性にも触れられていますが、社会的要請を鑑みますと、今後ますます マンション管理でも脱炭素社会に向けた取り組みは求められていくようになると考えられます。

また、ガイドラインではエレベーター点検の有効性にも触れられていますが、こちらもかつてエレベーターでの死亡事故がありましたから、社会的要請を踏まえた追記事項になるのかなと思います。「エレベーターも人命にかかわる設備の1つである」という管理組合への啓蒙的な意味合いも含まれているでしょう。

修繕積立金のガイドライン2つのポイント

編集部

修繕積立金のガイドラインのほうは、どのような点がポイントとなりますか?

渡邊さん こちらは次の2つがポイントになると考えています。

1.修繕積立金額目安の「計算式」の見直し

出典:国土交通省

主膳積立金の目安を算出する計算式は、従来まで「世帯当たりの積立金」がベースになっていました。しかし、今回のガイドラインでは「会計ベース」に変わっています。

これまで考慮されていなかった積立金の残高や専有使用料の繰入を加味することで、工事費を支出する管理組合の“実態”により即した計算式になったのかなと見ています。

2.積立金の「単価」の目安額の見直し

出典:国土交通省

今回のガイドラインでは、修繕積立金の平米単価の目安も更新されています。従来のガイドラインでは「84」の事例から目安額を算出していましたが、今回の事例数は「366」。より実態に即した目安額になったといえるでしょう。

金額は、前回のガイドラインから1.2倍~1.6倍に増額しています。

ガイドライン改訂の影響は?

編集部

長期修繕計画作成および修繕積立金のガイドラインのポイントをわかりやすく解説したいただきありがとうございました!

今後、実際にこのガイドラインに即して計画内容を見直し、修繕周期を変えたり、修繕積立金を引き上げたりするマンションは増えていくのでしょうか?

渡邊さん 判断が難しいところではありますが「動機付け」の一因、一助にはなっていくでしょう。

ただ、2018年に国土交通省によって行われた「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、 大規模修繕工事は13年~16年の間に1回目を実施しているケースが多いという結果が出ています。今回のガイドラインでは「12年~15年」とされていますから、すでに実態とは概ね合致しているわけです。

また積立金の積み立て方法を、徐々に増額していく「段階積立方式」から修繕時期まで積立金額が一律の「均等積立方式」に移行するというのも簡単なことではありません。そのため、ガイドラインや2022年4月に始まる認定制度の浸透度合いによって個々の管理組合がどう反応するかは変わってくるものだと考えています。

必ずしも「ガイドラインが改訂された」「法改正された」からといって、即座に反応する管理組合ばかりではないでしょう。

編集部

やはり「ガイドライン」であるからには強制力はなく、“努力義務”のようなものになるということなのでしょうか?

渡邊さん そうですね。いまだ、“これから官・民・消費者が一体となってマンション管理をよくしていこう”という初期段階にあると思っています。市場全体に行き渡るのには一定の時間がかかるのではないでしょうか。

そもそも2022年4月に始まる「計画認定制度」についても、自治体にゆだねられている部分が大きい任意規定という状態です。個々のマンションが「ガイドライン通りの管理をしていきたい!」と思っても、マンションの属する自治体が計画認定制度を取り入れない可能性もあります。

また、たとえば積立金の単価の目安額をとっても、やはり複数のサンプルから抽出したモデルでしかありません。マンションは個別性が非常に高いものですから、個別事情を優先する必要があります。仮に積立金がガイドラインの目安額を下回っているからといって、ただちに値上げに直結すべきということではありません。

2021年11月に公表された「管理計画認定に関する事務ガイドライン」でも、積立金額がガイドラインを下回っている場合は、マンション管理士や建築士などの専門家による理由書を添付することになっています。認定のタイミングによっても積立金額は増減しますし、設備や劣化の状況も異なりますから、個々のマンションの事情や状況を踏まえて考えるべきでしょう。

マンション居住者への影響は?

編集部

マンション居住者への影響というのも、すぐに出るとは限らないということでしょうか?

渡邊さん 今回の改訂がうまく機能すれば、居住者にとって好影響となる2つの効能が出ると考えています。

1.積立金の値上げ幅が大きくならない

修繕の計画期間が延びることで、資金ショートの可能性を早期に発見できます。管理組合は早期にカバーできることにもつながりますので、積立金を上げるとしても緩やかに引き上げていくことができるでしょう。

一時金の徴収や突然の大幅な値上げとなれば、居住者の家計へのダメージも計り知れません。今回の改訂により、家計への影響をある程度、緩和できるものと考えられます。ただ、これは段階積立方式に限ります。均等積立方式の場合、値上げすることは容易ではありませんから、そこは留意しなければなりません。

2.管理組合による合意形成が容易になる

管理組合にとっても、この点はメリットになるでしょう。

やはり、一時金の徴収や積立金の大幅な値上げ、あるいは高額な借入というのは、なかなか合意形成が難しいものです。 資金不足に早期に気づき、積立金を緩やかに引き上げていくほうが、住民の合意は圧倒的に得られやすいはずです。

法改正およびガイドライン改訂の影響が大きくなりそうなマンションは?

編集部

マンションは、個別要素が非常に大きいというお話がでましたが、どのようなマンションがガイドライン改訂および法改正の影響が大きくなりそうだと見ていらっしゃいますか?

たとえば、ガイドラインでも触れられているエレベーターの基数が多いマンションや省エネ性能が劣っているマンションは、今後、積立金が引き上げられる可能性が高いのでしょうか?

渡邊さん一概にはいえませんが、まずエレベーターに関して言えば、すでに長期修繕計画に盛り込まれているものですので、基数が多いからといって今後、増額することはないはずです。もちろん、すでにしっかり計画に盛り込まれている前提ではありますが。

省エネ性能の向上工事については、今後、新たに計画に盛り込むとすれば積立金を引き上げる必要性は出てくるでしょう。ただその前に、省エネ性能を向上させることによる償却効果をもって検討しなければなりません。

省エネに限ったことではありません。性能向上工事というのは、長期修繕計画に含まれないことが多いものです。工事を追加すれば、その分、支出は増加しますが、それに見合うだけの効果が得られるかどうかシミュレーションしなければならないということです。工事費が増額する反面、省エネ効果が高まって光熱費は下がるのか?何年で償却できるのか?結果として工事をすべきなのか?これらをしっかり検討しなければならないでしょう。

住民にとっても、積立金は増額になっても管理費が下がるという効果が得られるとすれば合意形成はしやすいと考えられます。

編集部

従来までのガイドラインでは事例が少なかった「タワーマンション」への影響はいかがでしょうか?

渡邊さんおっしゃる通り、2011年にガイドラインが策定された当時は、タワーマンションの事例が非常に少なかったものです。 いまだ大規模修繕工事の実例は決して多くありませんが、階数が高い分、足場の設置がまず高額になる傾向にあります。ゴンドラ等の設備費も高額です。

これらを踏まえ、今回のガイドラインでは20階以上のマンションの積立金の平米単価の目安が大幅に引き上げられました。そういう意味でいえば、今回の改訂がタワーマンションの積立金値上げの議論が活発化するきっかけにはなっていくかもしれません。

ただガイドラインでも触れられていますが、工事費は地域格差が大きいものですので、エリアによっても改訂の影響というのは変わってくるものと考えられます。

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マンションの管理が可視化される?これからマンションを売買する人への影響

編集部

続いて、これから中古マンションを売買する方への影響について伺わせてください。マンションの管理状況というのは、今回の改正により把握しやすくなるものなのでしょうか?また今後は、管理状況がより資産価値に影響していくようになっていくのでしょうか?

渡邊さん 従来まで、マンションの管理状態が見える公的な仕組みはありませんでした。そもそも管理の優劣の基準が明確ではなく、管理状態の情報を入手できたとしても、客観的に判断することは非常に難しいものでした。

2022年4月に「管理計画認定制度」が始まり、マンション所有者や購入希望者、デベロッパー、仲介業者など市場関係者から認知され、受け入れられるようになれば、管理の質が資産価値に影響していくことにはなっていくと考えられます。ただ、まずは認知と受け入れが先です。売り手は維持・修繕にコストと手間をかけて質を高め、買い手は手間をかけてでもその質を確認する……この行動が、管理の質の向上と流通の活性化につながるのだと思います。

しかし、現実的にはまだまだ大きな課題があると言わざるを得ません。先述しましたように、管理計画認定制度は任意規定です。そもそも自治体が策定してくれないことには、マンション側がいくら申請したくても土俵にも上がれません。

また自治体が策定をしたとしても、一部の意欲的な管理組合だけが利用して、大多数が関心を示さないとすれば、管理の質と資産価値の上昇は連動しないでしょう。

中古マンションが認定を受ける動機付けが必要か

分譲時点で適切な管理計画を作成した新築マンションについては、(公財)マンション管理センターが認定する「予備認定」制度が2002年4月から開始予定で、それに伴い、予備認定マンションにはフラット35の金利が当初5年間引き下げられます。しかし2022年3月以前に竣工検査等を申請した既存の中古マンションにいたっては認定証が発行される以外、現時点では認定されることによるメリットが不透明なところが多いです。

もちろん、認定を受けることで名誉や安心感というのは付加されるわけですが、やはり税制優遇や保険料の割引など、金銭的なインセンティブがなければ、認定を受けようという管理組合は増えていかないのではないかなと思っています。申請には、労力もコストもかかりますからね。

任意制度だけが始まっても、やはり市場は大きく変わりません。中古マンション側にも購入した人にも認知され、管理の質が資産価値に直結するようになるには、まだ一定の時間がかかるのではないでしょうか。

マンションの管理が可視化できる仕組みはある

編集部

そうなりますと、まだまだマンションの管理状況を把握するのは難しい状況が続くということでしょうか?

渡邊さん 今回の国の認定制度は約16項目ほどですが、弊社も属している「一般社団法人マンション管理業協会」にも、約30項目の「管理適正評価制度」というものがあります。

出典:一般社団法人マンション管理業協会

たとえば、このような制度を利用していただくことで管理の状況というのは把握していただけると思います。

購入される方のみならず、管理組合が管理の状況の客観視するのにも活用いただけますので、適正に維持・管理し、住みやすさと管理の質を向上させていくきっかけにしていただけるのではないでしょうか。

マンション管理適正化法改正に伴う管理会社の対応は?

編集部

管理会社として、今回の改正およびガイドライン改訂でなにか変わることはあるのでしょうか?

渡邊さん 今回の改正は「マンション管理を変えよう」という気概が感じられる内容にはなっていると思います。改正の背景にもあるように、今後、老朽化していくマンションは確実に増えていきます。

ただ、すでに今回の改正ガイドラインに準拠しているマンションも多くあります。弊社が管理させていただいているマンションでは、かねてより30年以上の計画、約5年での見直しをご提案させていただいております。とはいえ、マンションの管理を決めるのは管理組合様です。ですから、個々の管理組合がどう受け入れるか次第で大きく効能は変わってくるものと考えています。

今回の改正およびガイドラインの改訂は、どちらかというと管理不全に陥っている、あるいは将来的にその可能性があるマンションの救済に重きを置いている印象があります。そのため、日本のマンション管理の質を“底上げ”していくには、一定の効果があるのではないでしょうか。

市場全体が変わっていくか否かは、実際に改正法が施行され、マンション管理計画認定制度がスタートしてから市場がどのような反応するか次第でしょう。今後、詳細が明らかになっていくはずですので、私たちも引き続き注視していきたいと思います。

マンション管理適正化法改正はマンション管理が変わる「きっかけ」に

長期修繕計画および修繕積立金のガイドライン、そして管理計画認定の事務ガイドラインが公表され、2022年4月にはマンション管理計画認定制度が開始します。

しかし、自治体によるマンション管理適正化推進計画の作成は任意であり、認定を得るかどうかは管理組合次第です。今回の改正がマンション管理の質が向上するきっかけにはなっても、マンション市場全体に変化が見られるようになるには、まずは市場に認知され、受け入れられる必要があるということ。渡邊さんは、マンションを所有している人、マンションを購入しようとしている人、双方が、「管理」に対する意識を高めることも重要だとおっしゃっていました。

とはいえ、将来的にはマンションの「管理」がマンションの維持や住みやすさ、資産価値により影響していくようになっていく動きは加速していくはずです。マンションを購入される方のみならず、今、マンションを所有している方は、今一度、マンションの「管理」に目を向ける必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

亀梨奈美のアバター 亀梨奈美 不動産ジャーナリスト/株式会社realwave代表取締役

大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。

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