不動産売買の「IT重説」とは?やり方やメリット、対応物件など解説

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「IT重説(アイティージュウセツ)」という言葉をご存じですか?

「重説」とは、不動産取引における「重要事項説明」の略称。従来まで、宅建士の有資格者が「対面」で買主・借主に重要事項説明をしなければなりませんでした。

それが「対面」ではなく「IT」で。つまり、テレビ電話等の端末上でも可能にしたものが「IT重説」です。

これまでは売買契約時に不動産会社などに出向かなければなりませんでしたが、自宅でも、どこでも、重要事項説明を受けられるようになったということです。

実は、賃貸取引ではすでに2017年からIT重説が可能に。しかし不動産売買取引においては、社会実験を経て2021年4月に本格運用が開始しました。そこで今回は、不動産売買取引におけるIT重説について解説します。

目次

2021年4月!不動産売買でも「IT重説」が本格運用へ


不動産売買取引におけるIT重説は、2019年10月より社会実験が行われてきました。

社会実験後まもなく発生した新型コロナウイルスの蔓延により、2020年以降、非対面で重要事項説明が受けられるIT重説の注目度が格段に上がっています。

国土交通省はこの状況に鑑み、早急に社会実験段階を終わらせるべく検討を重ね、2021年4月、不動産売買取引でもIT重説が本格運用開始となったのです。

そもそも「重説=重要事項説明」ってなに?

重要事項説明書とは、不動産取引における重要事項が記された書面です。物件の権利関係や制限、属性などが記載されています。

高額な不動産を売買するうえでは、次のようなことに不安を感じるのではないでしょうか?

・ちゃんと所有権が移管される?
・物件や周辺の情報を聞き逃していない?
・詐欺とかに遭ってしまったらどうしよう……

簡単にいえば、重要事項説明はこのような買主の不安を払拭するため、取引内容をわかりやすく解説するためのもの。不動産会社が取引を仲介する場合には、宅建士の有資格者による重要事項説明書の読み合せが義務付けられています。

IT重説とは

従来まで、重要事項説明は宅建士と買主が対面して読み合せしなければなりませんでした。

IT重説とは、テレビ電話等のITシステムを使った重要事項説明。2013年の「世界最先端IT国家創造宣言(閣議決定)」を受けてから、度重なる検討および社会実験を経て、不動産取引で本格運用が開始しています。

(出典:国土交通省

パソコンのみならずテレビやタブレット端末等でも、IT環境さえ整っていればIT重説は可能です。対面と同様、説明中にわからないことがあれば、買主は画面越しに宅建士に質問することもできます。

・重要事項説明書とは、不動産取引に関する重要事項が記載された書面
・IT重説によって、非対面で重要事項説明書の読み合せが可能に

IT重説のやり方

それではここからは、IT重説の具体的なやり方を解説していきます。

IT重説に必要なもの


まず、IT重説では宅建士・買主ともにIT環境の整備が不可欠です。最近ではテレワークする方も増えていますので、オンライン会議ツール等に抵抗がない方も多いかもしれませんね。

不動産会社にアプリ等指定されることもありますので、事前に準備をしておきましょう。

またIT重説は、重要事項説明書を実際に見ながら受けなければなりません。そのため、事前に重要事項説明書等を不動産会社から送付されることとなります。

開始前には、IT環境が整っているか、買主の手元に重要事項説明書が準備されているかを確認し、宅建士が画面上で買主に宅建証を提示したうえで読み合せがスタートします。

読み合わせ中の注意点

音声のみ、画像のみのテレビ通話では、IT重説はおこなえなえません

また実施中に映像の視認や音声の聞き取り等に支障をきたした場合には、IT重説を中断しなければなりません。通信環境によっては「なかなか進められない……」ということにもなりかねませんので、事前の準備が大切です。

読み合せ中に不明点・疑問点が出てきたら、宅建士に質問するようにしましょう。重要事項説明には、難しい専門用語も多く出てきます。

契約後の安心・安全のためにも、対面・IT重説問わず、重要事項説明の読み合せは不安を解消すること・理解を深めることを目的として臨むようにしてください。

・IT重説実施前には①環境整備②書面の事前送付③環境・書面の準備確認④宅建士証の提示が必要
・読み合せ中に音声や画面の乱れが出ないよう、事前準備を怠らない

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IT重説のメリット・デメリット

自宅にいながらでも重要事項説明が受けられる、IT重説。メリットとデメリットをまとめてみます。

主なメリットは「売買取引がしやすくなる」こと

  1. 遠方でも病気・ケガでも重説を実施できる
  2. 重説実施の日程の幅が広がる
  3. 買主がリラックスして重説に臨める

IT重説のメリットは、やはり「取引がしやすくなる」ことにあるでしょう。

重要事項説明を受けるために不動産会社等に出向く必要がないので、遠方にいる方や病気やケガ、高齢などの理由で外出しにくい方でも、代理人を立てずに不動産を購入しやすくなります。

またIT重説は場所を選ばないため、お仕事等で忙しい方でも時間を確保しやすくなるでしょう。自宅等、買主が落ち着ける環境で読み合わせに臨むことで、理解が深まることにも期待できます。

デメリットは買主の「環境整備」か

  1. IT環境整備が必要
  2. 視聴環境の整備も必要
  3. 書類の郵送のやり取りが必要

メリットが多いIT重説ですが、やはり環境を整えなければならない点はデメリットに感じる方もいるでしょう。

ネット環境や端末のスペックによっては、音声が途切れ途切れになってしまったり、不動産会社が提示する宅建証や資料等が見えにくかったりすることにもなりかねません。

またIT重説は場所を選ばないとはいえ、個人情報漏洩等のリスクを考えれば、やはり自宅が無難な選択にもなります。

加えて、IT重説をする前には重要事項説明書等の事前送付が必要です。当日、単にネット上でつながればいいというわけではありませんので、IT重説するためのやり取りが負担になる可能性もあります。

(出典:国土交通省

国土交通省によれば、社会実験中のトラブル発生率は10%以上と決して少なくありません。このうちの約4割が「一時的なケースも含めて音声が聞こえなくなった」とのこと。次いで約3割が「一時的なケースを含めて画像が見えなくなったり、乱れたりした」ということです。

すぐに接続状況が改善すれば問題ありませんが、中断することのないよう、事前に電波等を確認しておくなど十分気を付ける必要があります。

・IT重説のメリットは不動産売買取引がしやすくなること
・IT重説のデメリットは環境整備が負担になる可能性があること
・社会実験中のトラブル発生率は10%以上

IT重説の対応物件は?

IT重説は、どんな不動産の購入でも可能なわけではありません。

対応物件は、以下の条件を満たしたものです。

・不動産会社側がIT重説に対応している
・売主からIT重説の同意が得られている

IT重説の社会実験業者は限定的でしたが、本格運用が開始してからはすべての不動産会社で実施可能ではあります。登録や特別なライセンスは不要です。

ただし、不動産会社側にIT重説を行う用意があるとは限りません。

また売主から同意が得られない物件に関しても、IT重説は実施できません。この2つの要件を満たさない場合は、従来通り、対面での重要事項説明書の読み合せとなりますのでご注意ください。

・IT重説対応物件は次の2つの要件を満たしたもの
①不動産会社がIT重説可能②売主の同意が得られている

【コロナ禍でも遠方でも】IT重説で不動産売買取引がしやすく

まとめ
  • 2021年4月より不動産売買取引でもIT重説の本格運用が開始
  • IT重説とは、テレビ電話等の端末上で行う非対面の重要事項説明読み合せ
  • IT重説の前には「IT環境の整備」「重要事項説明書の事前送付」「IT環境および重要事項説明の準備確認」「不動産会社による宅建士証の提示」が必要
  • 実施中に音声や画面が乱れて中断することが内容、事前に電波等を確認しておくことが大事
  • IT重説のメリットは「不動産売買取引がしやすくなること」・デメリットは「環境整備が負担になりえること」
  • 買主・不動産会社の環境が整っていて、なおかつ売主の同意を得ている物件しかIT重説は実施できない

不動産売買取引におけるIT重説は、新型コロナウイルス蔓延によって急速に需要を高めています。

とはいえ、誰でもすぐにIT重説が可能なわけではありません。まずは、買主側のIT環境を整えること。そしてIT重説を実施できる不動産会社で、なおかつ売主の同意がある物件以外はIT重説ができませんのでご注意ください。

実は昨今では、不動産売買の契約時交付書面の電子化も進んでいます。不動産取引のほぼすべての工程のオンライン化が近い今、不動産会社選びでも「IT」や「テック」というキーワードが重視されている傾向にあります。

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この記事を書いた人

亀梨奈美のアバター 亀梨奈美 不動産ジャーナリスト/株式会社realwave代表取締役

大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。

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