2023年マンションの買い時はいつ?長嶋修氏に聞くこれからの価格と金利

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2023年、年が明けて早々、各金融機関は住宅ローンの固定金利を引き上げました。これは、2022年末に日本銀行が長期金利操作の許容変動幅を引き上げたためです。一方、マンション価格は高騰傾向を維持しています。

上昇が懸念されながらも、依然として低金利の住宅ローン。上がり続けるマンション価格。「いつマンションを買えばいいのだろう……」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?そこで本記事では、不動産コンサルタント長嶋修さんの解説を交えながら2023年のマンションの買い時を考察していきます。

お話を伺った方

株式会社さくら事務所創業者・会長
不動産コンサルタント

長嶋 修

1967年、東京生まれ。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所を設立、現会長。業界の第一人者として不動産購入のノウハウにとどまらず、業界・政策提言にも言及するなど精力的に活動。TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動など、様々な活動を通じて『第三者性を堅持した不動産コンサルタント』第一人者としての地位を築く。

目次

マンション価格は2023年まで10年間高騰し続けている

出典:国土交通省

2012年の民主党から自民党の変更以降、マンション価格は一貫して高騰を続けてきました。

「東京オリンピックが終われば不動産価格は暴落する」「コロナの影響で不動産が売れなくなる」

このようなことも言われてきたものの、蓋を開けてみれば10年間、マンション価格は上がり続けています。

「晴海フラッグ」は倍率100倍の部屋も

東京オリンピックの選手村として使用された建物を分譲マンションに転用した「晴海フラッグ」。当初は「駅から遠い」「維持費が高い」などの理由で売れ行きは伸びないとの見方もありましたが、抽選倍率100倍の部屋も出るほど売れ行きは好調です。

長嶋修さん

晴海フラッグがここまで売れ行き好調なのは、価格の安さにあります。都心のタワーマンションを検討している方からすれば、非常に魅力的に映るでしょう。

晴海フラッグに限らず、都区部や地方都市の中心部などでは、一般的なビジネスパーソンにはなかなか手の届かない“億ション”も多数販売されています。「2021年の首都圏新築マンション価格がバブル期を超えた」とのニュースも、メディアを騒がせました。全国の平均価格も、2022年には6年連続で過去最高値を更新しています。

すべてのマンションが高騰しているわけではない

マンション価格は、たしかに高騰しています。しかし、多くの人が見ているのはあくまで「平均価格」であり、すべてのマンションが一律に価格を上げているわけではありません。

長嶋修さん

新築マンションが供給されるのは、ほぼ都市部の利便性の高い立地です。だからこそ昨今の平均価格は高いのです。

中古マンションも平均価格が上がっていますが、上記グラフのように地域差はあります。2022年の価格高騰がとくに顕著だったのは、千代田区や港区、渋谷区などです。

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2023年1月に「実質的利上げ」金利上昇でマンションの買い時はどうなる?

マンションの購入と切っても切り離せないのが、住宅ローン金利です。10年もの間続くマンション価格の高騰は、低金利によってもたらされたといっても過言ではありません。2023年、住宅ローン金利はどう推移していくのでしょうか?

日本銀行の政策の行方

2013年から一貫して金融緩和政策を続けていた日本銀行ですが、長期金利操作の許容変動幅を従来までの±0.25%から±0.5%にまで引き上げました。これを受け、2023年1月には大手銀行が住宅ローンの固定金利を0.2%前後引き上げています。

長嶋修さん

固定金利はやや上がりましたが、今は7割を超える人が変動金利を選択しています。2023年が明けても、変動金利に上昇は見られていません。むしろ金融機関同士の競争により、やや下降傾向にあります。

バブルと2023年の明確な違い

新築マンション価格がバブル期を超えましたが、比較されているのはあくまで「平均価格」です。1990年の新築マンション供給数は、全国で約14.4万戸でした。一方、2022年は7.2万戸。現在は、立地が良いマンションばかりが供給されているからこそ価格がここまで高騰しているのです。また、長嶋さんは「そのほかの点もバブルとは明確な違いがある」といいます。

長嶋修さん

ほとんどの方が、住宅ローンを組んで不動産を購入します。時代で比較するのなら、販売価格だけでなく、毎月の返済額も加味しなければなりません。昨今、7割以上の方が選択している変動型の住宅ローン金利は、0.3%、0.4%ほど。一方、バブル期の金利は7%を超えることもありました。

たとえば1億円を借り入れた場合、金利0.4%なら毎月の返済額は25万円ほどですが、金利7%であれば60万円を超えます。価格は同等、あるいはバブル期以上であっても、今の返済額は非常に低いのです。

日本は大幅利上げが難しい?

欧米諸国では、大幅利上げが相次いでいます。2022年には、米国で住宅ローン金利が20年ぶりに7%を超えました。依然として金融緩和政策を続けている日本ですが、4月には日本銀行の黒田総裁が任期満了を迎えます。マンションの購入を検討している方は、今後、金利水準がどうなるのかが気になるところでしょう。

長嶋修さん

日本では、欧米諸国のように大幅な利上げは見られないと思います。というのも、そこまで金利を引き上げてしまうと日銀が抱える膨大な国債の価値が下がり、実質的に債務超過に陥ってしまうからです。ざっくりとした試算ですが、日本では2%ほどの金利引き上げが限度だと予測しています。

2023年もよほど大きな政策変更がなければ、不動産市場に大きな影響を与えることはないのではないでしょうか。

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マンション価格高騰も成約件数(取引件数)は減少

原則的には、不動産の需要が上がれば成約件数(取引件数)が増え、価格も上がります。しかし、実際には、不動産価格は高騰しているものの成約件数(取引件数)は減少傾向にあります。

新築マンション

出典:不動産経済研究所

上記グラフは、首都圏(青)と近畿圏(ピンク)の新築マンション契約率の推移を表したものです。売れ行き好調の目安は、契約率「70%」。首都圏は2022年後半から70%を下回っている月が多いことがわかります。

出典:不動産経済研究所

契約率が下落傾向にある首都圏ですが、価格はほぼ横ばい。近畿圏についても、下がっている様子はありません。

中古マンション

首都圏

出典:東日本不動産流通機構

一方、上記の赤い棒グラフは首都圏中古マンションの成約件数を、赤い折れ線グラフは成約件数の前年同月比を表しています。成約件数は2022年頃から減少傾向にあることがわかります。また、紫のグラデーションで示されている在庫件数(=市場に出ている物件の数)は増加しています。

出典:東日本不動産流通機構

上記は、首都圏中古マンションの価格推移を表したものです。成約価格は、2023年1月現在33ヶ月連続で上昇しています。ただし、価格の上昇率はやや鈍化しているようにも見えます。

近畿圏

出典:近畿圏不動産流通機構

上記は、近畿圏中古マンションの成約件数の推移を表したものです。増減はあるものの、首都圏と同様に2022年以降、減少傾向にあります。

出典:近畿圏不動産流通機構

近畿圏の中古マンションも長らく高騰を続けていましたが、2023年1月には24ヶ月ぶりに価格を落としました。1月の平均成約平米単価は前年同月比-9.7%と大幅減です。

長嶋修さん

需給バランスを考えれば、成約件数が減れば在庫が増え、価格が下がります。しかし、長らく成約件数が減っているにもかかわらず、価格の高騰が続いています。

この現象は、弱いところから弱くなってきていることを示しているのだと思います。つまり、立地が悪く、価格が低い物件の成約件数が減っていることから全体の成約件数は減っているということ。一方で、都市部や駅近など価格が高い物件は変わらず売れているため平均価格は上がっているのでしょう。

2023年も不動産市場の二極化、三極化はますます広がるものと考えています。

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2023年マンションの買い時まとめ

買い時かを判断する指標となる、「価格」と「金利」。2023年に入り、中古マンションはやや価格高騰の動きが鈍化してきているようです。一方、住宅ローン金利については、固定金利は上昇したものの変動金利は据え置き。4月には日本銀行総裁の交代が控えていますが、総裁が変わったとしても米国のような利上げは見られないのではないかと長嶋さんはいいます。

とはいえ、国際情勢や株価なども、マンション価格や金利水準と決して無縁ではありません。コロナ禍に始まり、自然災害やロシア・ウクライナ情勢、歴史的な円高、宗教問題など、さまざまなことが相次ぐ昨今。マクロな視点とミクロな視点を持ってマンションの買い時を検討すべきでしょう。

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この記事を書いた人

亀梨奈美のアバター 亀梨奈美 不動産ジャーナリスト/株式会社realwave代表取締役

大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。

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