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江東区の中央部に位置する東陽町は、緑豊かな環境と下町文化が共存する独特の雰囲気を持ちながら都心へのアクセスも良い住みやすいエリアです。
その東陽町にさらなる発展をもたらすと期待されているのが、2030年代半ば開通予定の東陽町を経由する有楽町線「豊洲〜住吉」間延伸計画です。
延伸計画に伴い新駅の設置や駅周辺の再開発も予定されており、街の姿が大きく変わる期待から東陽町の周辺エリアは注目されています。
本記事では、東陽町の再開発と有楽町線延伸計画、周辺エリアにもたらす影響について詳しく解説します。
まずは、東陽町の概要と「地下鉄8号線延伸のまちづくり」として江東区の重点戦略の一つに位置づけられている再開発の背景について解説します。
東陽町は東京23区の東部にある江東区の中央あたりに位置するエリアです。
江東区、特に豊洲や東陽町などの東部では、代替路線に乏しいゆえの交通障害に対する脆弱性と臨海部の大規模開発に伴う人口増による東西線・総武線の混雑率の高さが問題でした。
地下鉄8号線(有楽町線)の延伸実現は江東区にとって問題解消のための悲願であると同時に、延伸に伴う沿線地域の再開発による拠点性の強化も目的としています。
江東区は東陽町の街づくりを通じて臨海副都心と都区部東部の観光拠点とのアクセスを向上させ、国際競争力強化のために23区東部の連携を実現しようとしています。
東陽町のある江東区は、東京湾に注ぐ河川のデルタ地帯の一部を埋め立て、江戸時代の大火災を契機とした災害に強い街づくりのために活用したことから始まりました。
貯木場を木場に移したことから区内を流れる河川を利用した木材業や米・油問屋の街として栄え、明治時代以降は工業地帯として発展したのちに現在の江東区が生まれました。
(参考:江東区 江東区のおいたち)
その江東区の行政上の中心である東陽町は、緑と水が豊かで広大な敷地がある特徴から周辺にはオフィス街と住宅街が広がっています。
「地下鉄8号線(有楽町線)延伸のまちづくり」は、東陽町のみならず豊洲〜住吉までの延伸地域にある5駅周辺の13町を一体化して行われます。
東陽町エリアでは、商業・ビジネス・文化交流機能に加え、都市防災力を強化した複合市街地としての形成を目指し駅周辺を中心に整備が行われる予定です。
ここでは、東陽町の再開発の詳細と現状について具体的に見てみましょう。
現在の東陽町付近にはオフィス・ホテル・商業施設を有する複合施設「東京イースト21」がある以外に目立った商業施設はなく、今のところ建設予定も公表されていません。
しかし、2023年には竹中工務店が旧オフィスをカフェとワークラウンジ併設オフィスから成る複合施設「Toyocho green+(東陽町ぐりんたす)」としてリニューアルオープンしています。
また、東陽町にはダイエー本社・竹中工務店東京本店・大和証券ビジネスセンター・日本デジタル研究所(JDL)本社、明治関東支社(旧本社)などがありオフィスが集積するエリアでもあります。
駅周辺に古いビルも多く開発の余地がまだまだ残されている東陽町では、今後再開発に伴いオフィスや商業施設の建て替えや新設が進む可能性は大いにあるでしょう。
江東区の行政の中心である東陽町駅周辺は区役所、郵便局、病院、図書館、手頃な価格のスーパーなどがそろっており、もともと生活利便性が高いエリアです。
それに加え、水と緑が豊かでオフィスと住宅街が広がる東陽町エリアは人通り・車通りもそれほど多くなく住環境も良好です。
そのため、今回の有楽町線延伸計画により東陽町エリアは不動産投資・居住用目的双方から注目を集めています。
2025年3月には投資用マンション「ブライズ東陽町」が竣工予定のほか、2025年2月には三井不動産レジデンシャルの分譲マンション「パークホームズ東陽町」が竣工、全戸申込が完了しています。
新線完成に向けて、今後具体的な住宅供給計画も増えてくると考えられます。
東陽町は永代通りと四つ目通りが交差する場所にあり、道幅も広く現在でも鉄道だけでなく自動車での利便性も高いエリアです。
さらに四つ目通りでは快適な歩行空間の形成と景観向上のために歩道の拡張や電線の地中化などの工事が行われており、車両交通のインフラ整備も進んでいます。
次に、東陽町の再開発の柱となる有楽町線の延伸計画の概要についても見てみましょう。
東京メトロ有楽町線の延伸計画があるのは、有楽町線・ゆりかもめ「豊洲」駅~半蔵門線・都営新宿線の「住吉」駅間の約5.2kmの区間です。この延伸計画では、東陽町駅と豊洲駅との間に新たに「(仮称)枝川」駅、住吉駅との間に「(仮称)千石」駅が新設予定です。
延伸による最も大きな効果が、今まで2回の乗り継ぎが必要だった住吉〜豊洲間の大幅な移動時間短縮(20分→9分)です。
ほかにも乗客の分散による東西線最混雑区間の約20%の混雑率緩和や、東西線に輸送障害が起きた際の代替ルートとしての役割も期待されています。
利用しやすい路線が増えることで、東西線1路線のみの東陽町駅や鉄道路線がなかった新駅周辺の交通利便性は大幅に向上します。
特筆すべきは、半蔵門線との接続による渋谷・大手町方面へのアクセス向上です。通勤・通学圏が大幅に拡大し沿線の住みやすさが一層高まるだけでなく臨海地域や東京スカイツリーなどの観光拠点へのアクセスも容易になり、休日の外出も便利になります。
特に新駅が設置される千石・枝川エリアを中心に、都市開発が活発化し地価が上昇するのではないでしょうか。
東京メトロによると、総建設費約2,690億円の規模で行われる「有楽町線延伸新線プロジェクト」は2030年代半ばの開業を目指し2024年11月より工事がスタートしています。
詳細なスケジュールは公表されておらず、すでに一部では新駅建設の工事が始まっているものの工事の全容はまだつかめない状況です。
写真からも分かるとおり工事の兆候がない部分も多く、今後どのように変わるのかが期待されます。
ここでは、新線開通に向けて今後周辺エリアも含めて予想される変化について解説します。
現在の東陽町は飲食店の多さや生活利便性の高さから、ベッドタウンとして人気が高いエリアです。
さらに有楽町線の延伸により大型商業施設や観光施設がある豊洲、大型家具店やホームセンターもある住吉へのアクセスが向上することで、生活利便性が飛躍的に高まります。
もちろん再開発により東陽町駅周辺の飲食店や商業施設の出店・リニューアルも増えると予想され、周辺エリアからの来訪者も増加する賑わいのある街へと変貌する可能性も十分にあるでしょう。
有楽町線延伸に伴う豊洲〜住吉の鉄道空白地帯の解消に伴う交通利便性の向上は、人口増加に大きな効果があると考えられます。
周辺の新駅「清澄白河(きよすみしらかわ)」駅では、駅から半径800m以内の鉄道空白地帯の解消により人口・世帯数の顕著な増加が見られており有楽町線の延伸開業後も同様の効果が期待されています。
東京・千葉の両方面にアクセスしやすく住環境も良い東陽町エリアは、共働き夫婦や子育てファミリーだけでなく、単身者の職住近接需要も高まるでしょう。
江東区では地域の創業促進を目的とした「江東区創業支援等事業」を行っており、指定の創業について学ぶ事業を受けると以下の優遇措置が受けられます。
支援制度に加え、延伸によるアクセスの向上と再開発に伴うオフィスビルの新設による新たな企業の誘致が地域活性化につながる可能性もあるでしょう。
次に、東陽町エリアのマンション価格と不動産投資に与える影響について解説します。
以下の表は、東陽町エリアにあるマンションの流通件数と単価についてまとめたものです。
東陽町駅周辺1.2キロ 駅徒歩×築年帯別2023年11月~2024年10月の中古マンション新規売出数
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
徒歩1分 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
~徒歩3分 | 0 | 0 | 6 | 0 | 2 | 54 |
~徒歩5分 | 0 | 0 | 15 | 0 | 3 | 42 |
~徒歩7分 | 1 | 0 | 13 | 10 | 8 | 50 |
~徒歩10分 | 0 | 2 | 10 | 6 | 11 | 55 |
~徒歩15分 | 3 | 0 | 22 | 9 | 31 | 144 |
東陽町駅周辺1.2キロ 駅徒歩×築年帯別中古マンション坪単価
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | – | 433万円/坪 | – | 392万円/坪 | 258万円/坪 |
~徒歩5分 | – | – | 471万円/坪 | – | 372万円/坪 | 243万円/坪 |
~徒歩7分 | 575万円/坪 | – | 360万円/坪 | 366万円/坪 | 330万円/坪 | 291万円/坪 |
~徒歩10分 | – | 380万円/坪 | 380万円/坪 | 325万円/坪 | 360万円/坪 | 226万円/坪 |
~徒歩15分 | 399万円/坪 | – | 425万円/坪 | 391万円/坪 | 314万円/坪 | 244万円/坪 |
東陽町駅周辺1.2キロ 駅徒歩×築年帯別中古マンション単価(60㎡換算)
~築1年 | ~築5年 | ~築10年 | ~築15年 | ~築20年 | 築21年以上 | |
徒歩1分 | – | – | – | – | – | – |
~徒歩3分 | – | – | 7859万円 | – | 7115万円 | 4683万円 |
~徒歩5分 | – | – | 8549万円 | – | 6752万円 | 4410万円 |
~徒歩7分 | 10436万円 | – | 6534万円 | 6643万円 | 5990万円 | 5282万円 |
~徒歩10分 | – | 6897万円 | 6897万円 | 5899万円 | 6534万円 | 4102万円 |
~徒歩15分 | 7242万円 | – | 7714万円 | 7097万円 | 5699万円 | 4429万円 |
東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」によると、東京都区部の中古マンションの成約坪単価は約381.72万円です。成約平均築年数の25年で比較すると、東陽町エリアの不動産価格は23区のなかでは割安といえます。
また、現在流通しているマンションは築21年以上のものが大半であり、駅に近く築年数が比較的新しい物件はほとんどないことがわかります。
相場の推移についても見てみましょう。東陽町がある江東区のマンションの売却相場は、3年前から26.8%と大きく上昇しています。
3年前はちょうど有楽町線延伸の発表があった頃であり、再開発と有楽町線延伸への期待感が売却相場上昇の要因となっていると考えられるでしょう。
23区のなかでは比較的不動産価格が低い江東区ですが、駅周辺にオフィスが集まり住環境も良い東陽町は職住近接が実現しやすい街としての魅力があります。また、都心へのアクセスの良さに対する割安感から今後さらに人気の上昇が期待できます。
実際ここ15年間において江東区の人口は増加傾向であり、都内でもトップクラスの増加数です。
また、少子高齢化により人口が減少傾向にあるなかで江東区の人口は今後20年維持傾向が予測されている点も不動産投資において大きな魅力でしょう。
特に今後5年においても15歳~64歳の生産人口が7割近いと予測されていることから、賃貸需要も高い状態が続くと予想されます。
一方で、新線開通に伴う供給過多や市場飽和の可能性については考慮する必要があるでしょう。
再開発エリアの不動産購入には投資用・居住用いずれの目的でも大きなメリットがありますが、以下の3つの点には注意すべきでしょう。
ここでは、現在の東陽町における住民の要望と課題について簡単にまとめています。
アンケートで東陽町の魅力として住民が上位に挙げているのが、「緑地・公園の整備状況」「診療所・病院・福祉施設などの立地」「総合的な暮らしやすさ」です。
その反面、課題として上位に挙げられているのが「南北方向へのバスや鉄道等の利便性」や「自転車駐車場の整備状況」、「自転車の通行環境」です。
有楽町線の延伸により最も大きな課題である南北方向への利便性が改善する目途が立ち、残る自転車移動の環境の改善が待たれます。
アンケートでは、今後地域にあったら良いと思うものについて「水上バスや次世代モビリティ」「スポーツを楽しめる広場や屋内施設」「飲食店・カフェなどの休息休憩施設」が挙げられています。
また、水辺に位置する東陽町エリアは浸水などの水害に強い街づくりも課題です。
豊洲〜住吉間の延伸エリアは現在の品川〜東京〜日暮里間と並ぶ新たな東京23区の南北都市軸の一部として位置づけられており、ほぼ中間にあたる東陽町は新たな南北軸の結節点としての役割が求められています。
今後押上エリアとともに重点的に進められる街づくりにより、緑と水にあふれた下町から都会的な臨海部までバラエティに富んだ都市同士の相互連携による国際競争力の強化が図られます。
有楽町線延伸は2030年代半ばの開業を目指しています。
臨海副都心と都心部を結ぶ交通結節点としての機能強化と、東西線混雑緩和、地域活性化のためです。
商業施設の充実、都心や臨海部へのアクセス向上により住みやすさがさらに高まり、新たな住宅供給などにより人口の増加が推測されています。
かつての海岸線沿いの一地域が埋め立てと水陸の優れた交通利便性により下町文化の風情を残しつつ現代まで発展を遂げた「東陽町」。
住環境の良さと住みやすさから人気の東陽町ですが、有楽町線の延伸によりベッドタウンにとどまらないさらなる進化が起こるかもしれません。
住宅地としての人気の高さに交通利便性が加わることで、将来の売却を見据えた住宅購入や不動産投資の対象エリアとしても十分検討する余地があるでしょう。
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不動産会社での賃貸管理業務・一般事務経験と親族保有のマンションの管理業務経験を持つ不動産メインのライターで、2024年1月に個人事業主として開業。宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・ファイナンシャル・プランニング技能士2級をはじめ不動産・金融を中心に多くの資格を保有し、資格や学習系の執筆もあわせ500記事超を執筆。
パソコンインストラクター経験も活かした「分からない状態で読んでも理解できる記事作り」に日々取り組む。
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