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日本の中古住宅流通は、新築住宅と比較して市場規模が非常に小さいです。他国と比較しても、それは一目瞭然です。
(出典:国土交通省)
日本の不動産流通は、よくアメリカと比較されます。上記グラフで日本とアメリカの住宅流通シェアを見てみると、「新築:中古」の流通シェアはまるで逆なことがわかります。
さらに流通シェアのみならず、日本とアメリカは中古住宅流通の“仕組み”にも大きなが違いが。昨今、空き家問題の深刻化やリフォーム市場の拡大、さらには新築マンション価格の著しい高騰などにより、中古住宅シェアの拡大がみられる日本は、“アメリカ式”の不動産流通に学ぶことが多くあります。
日本もアメリカも、「プロに不動産仲介を依頼する」のが一般的である点は同様です。しかしその「プロ」が、“会社”ではなく“個人”である点に大きな違いがあります。
アメリカの“不動産業者”は、「不動産ブローカー」と「不動産エージェント」にわかれます。
「不動産ブローカー」とは、日本でいうところの「不動産会社」。「不動産エージェント」は、「営業担当者」です。
一見すると「会社に営業担当者が属している」ことに違いはないようですが、アメリカの不動産エージェントは“独立した個人事業主”である点が大きく異なります。
日本では、不動産会社に雇われた担当者が仲介を行い、会社から給与をもらうのが一般的です。アメリカの不動産ブローカーは「スポンサー」のような役割で、エージェントから取り分をもらうという仕組みです。
不動産エージェントは独立して営業しているので、ブローカー内で顧客情報を共有したり、細かいマニュアルがあったりするわけではありません。
不動産売買を考えるとき、日本では不動産会社に相談する方が多いと思いますが、アメリカではブローカーではなく、個人の不動産エージェントに依頼するのが一般的です。
アメリカの不動産エージェントは、「バイヤーズエージェント」と「セラーズエージェント」に分かれます。つまり、“買主専門のエージェント”と“売主専門のエージェント”の2人がそれぞれついて不動産取引を行うということです。1人のエージェントが売主、買主、双方の代理になることはほとんどありません。
さらに、アメリカの不動産流通は分業が徹底しており、査定専門の「アプレイザー」、登記専門の「エスクロー」、住宅診断専門の「インスペクター」、融資専門の「住宅ローンオフィサー」などの専門業者が不動産取引に関わります。日本でも不動産鑑定士や司法書士、金融機関が存在しますが、不動産取引全体を仕切り、各専門家を手配するのは不動産会社であることが多いです。
アメリカの不動産取引は、それぞれの専門家が各々の役割をまっとうするスタイル。専門家同士が連携することはあっても、利害関係はありません。多くの専門家が1つの取引に携わることで、取引自体の客観性や公平性が保たれるのです。
日本では、売主、買主、双方に仲介手数料が請求されます。仲介手数料は、「売買金額×3%+6万円(税別)」が上限。アメリカはというと、実は、買主に対して仲介手数料は請求されないのが一般的です。
では、買主担当のバイヤーズエージェントはどうやって報酬を得ているのかというと、売主からの仲介手数料をセラーズエージェントと分けているんですね。アメリカでは、売主の仲介手数料は6%ほどが相場となっているので、2人のエージェントで折半するとすれば、仲介業者が受領する仲介手数料額は、日本と大きな差はありません。
日本には、「レインズ」という物件情報共有システムがあります。レインズは、売主、買主など一般消費者が閲覧することはできない、不動産業者専門のサイトです。
一方、アメリカには、「MLS」という不動産データベースが存在します。レインズのように物件情報の共有が目的のシステムですが、レインズとは大きな違いがあります。
まず、アメリカの「MLS」は、一般消費者も閲覧が可能です。また日本の「レインズ」は、不動産会社との契約によって必ずしも物件情報の掲載が義務にはなっていませんが、「MLS」には全ての売り出し物件に対して掲載が義務付けられています。
さらに、物件の基本情報しか掲載されない「レインズ」とは異なり、「MLS」には登記や税金の履歴、自然災害リスク、学区などまで掲載されています。
相対的に、日本の「レインズ」と比較して、情報量が多く、消費者目線の媒体となっているのが「MLS」なのです。
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アメリカ | 日本 |
---|---|
個人の「不動産エージェント」に依頼 | 不動産会社に依頼 |
売り・買いのエージェントは別 | 売・買を同じ担当者・会社が担当することも |
売主のみに仲介手数料が発生 | 売・買に仲介手数料が発生 |
網羅性と透明性が高い「MLS」 | 全ての物件が登録されていない「レインズ」 |
アメリカと日本の不動産流通の仕組みを簡単にまとめると、以上の通りです。
では、“アメリカ式“の不動産仲介にはどのようなメリットがあると考えられるのでしょうか?
まず、個人で営業している「不動産エージェント」に依頼するという点のメリットは、“仲介業者の能力が判断しやすい”ことにあるでしょう。
アメリカでは、不動産エージェントは医師や弁護士に匹敵する上級資格者だと認識されています。エージェントの多くはブローカーに所属しているものの、選ばれる基準は、個人の実績や口コミ。日本では、不動産会社の規模や実績を気にする方が多くいますが、個人の営業担当者を事前にリサーチしたり、見極めたりすることは多くありません。
しかし、日本においても、仲介業務を担うのは個人の担当者。むしろ、様々な業務が明確に分担されているアメリカ以上に、日本の仲介の現場では、個人の担当者の重要性は高いといえます。それにも関わらず、個人の担当者の力量の差を見ようとしない今の日本の慣習では、“質の高い仲介”が受けにくいといえるのです。
アメリカでは、基本的に買主に仲介手数料が請求されることはありません。買主は無料でプロのアドバイスを聞けるので、個人間で売買しようと思う人は少なく、必ず不動産エージェントを通します。
しかしその反面、アメリカでは、中古物件の売主に対する責任は軽く、購入は買主の“自己責任”。そのため、買主は購入前の住宅診断を徹底します。日本でも近年見られるようになった「ホームインスペクション」は、アメリカでは買主が行うものです。仲介手数料が不要なので、買主は「仲介以外」のことにお金を掛けられるんですね。購入後のリフォームもまた、仲介にお金がかからないので買主はおこないやすく、リフォームによって中古住宅全体の質が上がるというメリットもあります。
「囲い込み」とは、日本の不動産業界でみられる悪しき習慣です。不動産業者の“仲介手数料が2倍欲しい!”という勝手な都合により物件情報を他社や消費者に開示せず、自社の顧客だけで不動産取引をさせようとする営業手法です。
売主、買主、いずれかが自社顧客である取引を「片手取引」というのに対し、売主、買主、ともに自社顧客である取引を「両手取引」といいます。つまり囲い込みは、意図的に、不動産会社の独断で、「両手取引」を狙うということです。もちろん、全ての不動産業者が囲い込みをするわけではありませんが、売主は囲い込みのリスクを認識し、不動産業者のおこないには常に目を光らせていなければなりません。
アメリカでは、そもそも多くの州で「両手成約」そのものが禁止されています。不動産流通の仕組み的にも、売主、買主、それぞれに別の不動産エージェントがつくのが一般的であるため、囲い込みのリスクはほぼないといえます。
アメリカと日本の不動産流通の仕組みの違いは、法律や慣習によるところもありますが、消費者の“意識”の違いも大きいといえるでしょう。
今後、中古住宅流通の促進がもとめられる日本では、不動産流通における法整備が求められますが、今、消費者ができることは“個人の営業担当者を選ぶこと”にあるでしょう。不動産取引における仲介業者の役割が多く、「囲い込み」のリスクがある日本の不動産業界では、不動産取引の成否は、個人の営業担当者にかかっているといっても過言ではありません。
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