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マンションにも「寿命」があります。しかしそれは、「耐用年数」とは異なります。
では一体、マンションの寿命はいつで、いつまで住めるのでしょうか?
結論からいえば、マンションの寿命はマンションごとに異なります。建築された時期や立地、構造は、マンションの寿命に大きく影響するのです。
本記事では、マンションの寿命を考える上で重要な要素とともに、寿命を迎えたマンションはどうなるのか?寿命を前に売れなくなる前にどうするべきなのか?について解説していきます。
マンションには、「耐用年数」というものがあります。
耐用年数とは、簡単にいえばその建物が使用できる期間ということになりますが、「耐用年数=寿命」となるわけではありません。
耐用年数は、減価償却資産が利用に耐える年数を意味し、税務上の減価償却費を算出するための数値です。よって、耐用年数と寿命はイコールの関係ではありません。
鉄筋コンクリート造のマンションは、従来まで耐用年数が60年とされていましたが、1998年の税制改正で47年に短縮されました。
なぜ短縮されたのかというと、当時取り壊された鉄筋コンクリート造の建物の平均寿命が約46年だったからだといわれています。
耐用年数は、建物の資産価値を示す単なる指標ですから、耐用年数が到来したからといって、直ちに住めなくなるわけではありません。
一方で、マンションの寿命は、人が住めなくなるまでの期間を指します。
とはいえ、これまでに寿命を迎えたマンションは決して多くありません。
(出典:国土交通省)
2020年(令和2年)4月1日時点で日本で建て替えが完了したマンションの数は、「254件」です。建て替えの理由は必ずしも寿命ではなく、再開発等が要因であることも考えられるため、これまでに「寿命を迎えた」と判断されたマンションがいかに少ないかがわかります。
日本でマンションが建設されるようになったのは、1960年代後半から。今あるマンションのほとんどは、築50年を迎えていません。つまり、寿命を迎えたマンションの事例は圧倒的に少ないのです。
また、「寿命」そのものの概念にもあいまいなところがあります。倒壊寸前で、人が住むのが危険の状態ギリギリまで住み続けることはできないため、多くのマンションは「寿命を迎える前」に建て替えや取り壊しが検討されるからです。
そして「建物」以外にも、配管設備の寿命も考慮しなければならないでしょう。古いマンションはとくに、配管が建物の構造内に入り組んで埋め込まれているため、配管設備の寿命を迎えたがために建て替えを検討するマンションもあります。
・マンションの耐用年数とは、減価償却資産が利用に耐える年数を意味し、税務上の減価償却費を算出するための数値のこと。
・マンションの寿命とは、設備や建物自体が劣化したことにより人が住めなくなる状態のこと。
・マンションの建て替え実施例はいまだ少ないため、「寿命」の定義が難しいところもある
今や技術が進み、コンクリート造の建築物の寿命は100年以上あるともいわれています。
しかしマンションは、建材のみならず、管理方法や立地、構造によっても経年劣化のスピードが異なります。マンションの寿命を考える上では、これらの要素が寿命に与える影響を考えなければなりません。
マンションの「管理体制」は、マンションの寿命に大きく影響します。
清掃、保守・点検、補修、長期修繕計画など、どのような管理がされているのかが、マンションの寿命を見極める上でとても重要な要素になります。
マンションを管理する上で基本になるのが、日々の清掃です。
毎日清掃を行うことにより、綺麗な状態を保つだけではなく、外壁や廊下の壁や天井などのヒビや亀裂、コンクリートの欠け落ち、異常な汚れなどをいち早く発見することができます。早く発見できれば、損傷の程度が軽いうちに補修ができますので、劣化防止に繋がります。
日々の清掃以外に、専門スタッフが専用の機材や洗剤を使って洗浄する定期清掃や特別清掃を実施しているマンションでは、同条件のマンションより寿命が長くなることに期待できるでしょう。
マンション内の変電設備やガス設備、給排水ポンプ、貯水槽、エレベーター、消火・防火設備などの保守・点検は、マンションを管理する上で重要な業務です。
これらに異常が発生すると、マンション住人の生活に支障をきたすだけではなく、建物や設備の劣化に繋がるおそれがあります。
定期的に保守・点検を行い、万一故障や破損を発見したときは、早期に修復することが習慣づいているマンションは、経年による劣化の度合いが少なくなるでしょう。
長期修繕計画とは、マンションの機能を維持し、老朽化を防止するために、管理組合が作成するマンションの長期的な修繕計画のことです。
一般的には10年~20年の期間に1度の頻度で、鉄部・外壁塗装工事、屋上防水工事、給水管・排水管工事、電気設備・エレベーター工事などの大規模修繕を、いつ、いくらの費用で実施するのかを計画します。
マンションの寿命には、今後の長期修繕計画のみならず、これまで適切な時期に適切な内容で修繕されたかも大きな影響を与えます。
マンションの建つ「立地」によっても、建物の寿命が変わってくるものです。
海の近くに建てられたマンションは、常に潮風による塩害を受け、建物の劣化するスピードが早い傾向にあります。コンクリートの外壁の場合、コンクリートの内部に塩分が入り込むことで、中の鉄筋がサビたり、腐食したりするためです。
日当たりが悪いマンションもまた、湿気により苔やカビが付着しやすくなり、劣化の原因になります。
苔やカビは、胞子を飛ばして繁殖するので、通常の植物と異なり、タイルやコンクリートなどの硬いものにでも付着します。水分を好む苔やカビにとって、日当たりが悪く湿った外壁などは絶好の繁殖場所になってしまいます。
ほとんどのマンションは、鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨・鉄筋コンクリート造の強固な構造で建てられているため、台風や風雨などの自然災害に見舞われたとしても、大きな被害を受けることは多くありません。
しかし場合によっては、外壁の一部が壊れたり、ヒビや亀裂が入ったりすることがあります。このような状態をそのまま放置しておくと、劣化に繋がりますので、早期に補修する必要があります。損傷の程度が大きい場合は、長期修繕計画を前倒して実施した方が良いこともあります。
一般的にコンクリートそのものの寿命は50年~60年といわれていますが、近年、それを100年に伸ばした劣化しにくいコンクリートが開発されています。
通常のコンクリートと違いは、水とセメントの分量です。100年コンクリートは、通常のコンクリートに比べて水の量を少なくしています。水分を減らすことで、コンクリートの寿命を100年に伸ばすことに成功したのです。ただし水分が少ないとヒビ割れが起こりやすくなり、それを回避するために高度な特殊技術を必要とします。そのため通常のコンクリートと比べて製造コストがかかることが難点ですが、画期的な技術革新だといえます。
最近では、さらに技術開発が進み、100年にとどまらず、200年やそれ以上耐久するコンクリートが開発されているようです。建築技術は日々進歩しているため、築年数が古いマンションほど寿命は短いと考えていた方が良いでしょう。
古いマンションでは、給水管や排水管、ガス管などの配管設備がコンクリートの中に埋め込まれて取り換えられない構造のものが多くあります。
配管設備の寿命は、コンクリートよりも短く25年~30年。配管設備を取り換えられないために、結果的にマンションそのものの建て替えを余儀なくされるケースもあります。
現在では、マンションの寿命を伸ばすために配管設備をコンクリートに埋設しない「スケルトン・インフィル」という工法が主流になっています。
スケルトン・インフィルとは、建物を構造体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)に分けて設計する工法です。配管設備をコンクリートに埋め込むのではなく、パイプスペース(PS)を設け、その中に配管設備を集中配置することで、構造体を壊すことなく、配管設備の修理や更新ができるようになりました。
スケルトン・インフィル工法を採用すれば、配管設備や内装設備を適宜更新することで、マンションの寿命をコンクリートの寿命まで伸ばすことができます。
マンションの構造として一般的に用いられる構法は、次の3種類です。
・鉄骨造(S造)
・鉄筋コンクリート造(RC造)
・鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC造)
S造は建物の骨組みに鉄骨を用いるもので、木造よりも強固な構造ですが、RC造やSRC造に比べると、強度は低くなります。
RC造は、圧縮力が強いコンクリートに引っ張る力が強い鉄筋を埋め込んだ構造で、鉄筋とコンクリートの強みを組み合わせることでより強い強度を実現させる構造です。
SRC造は、柱や梁を鉄骨で組み上げ、その周りに鉄筋を配置してコンクリートを流し込む構造で、RC造よりも強い強度が実現され、高層ビルなどによく用いられています。
強度という観点からS造、RC造、SRC造を比較すると、S造<RC造<SRC造の順で強度が強くなり、マンションの寿命も伸びることになります。
・清掃、保守・点検、補修、長期修繕計画などのマンションの管理体制がマンションの寿命を決める大きな要因となる。
・日当たりや災害など自然の影響が建物の寿命に影響するケースもある。
・マンションのコンクリートによって寿命は大きく異なり、平均では50年から60年といわれているが、現在は100年以上耐えることのできるコンクリートも開発されている。
・マンションそのものの構造によっては建て替えを余儀なくされる場合もあってりと、予期せぬ瞬間に寿命を迎える場合もある。
寿命を迎えたマンションは、基本的に「建て替え」か「取り壊し」の道を進むことになるでしょう。
しかし、集合住宅であるマンションの建て替えや取り壊しの決定には、原則的に住人の4/5以上の賛成が必要です。
また、建て替えや取り壊しには、住人による持ち出し金が必要になるケースもあります。そのため、高齢の方や資金を出したくないという方は、建て替えや取り壊しに賛成せず、決議が取れないため、ただ築年だけを重ねていくマンションも少なくなく、今後一層増えていくことが推察されます。
「建て替えもできない」「取り壊しもできない」というマンションは、売却することも難しくなっていくでしょう。安全性が確保されなければ賃貸に出すこともままらないため、マンションの寿命が近づくにつれ、売れない・貸せない・建て替えられない・取り壊しもできないことで、身動きが取れない事態にもなりかねないのです。
・マンションが寿命を迎えたら「建て替え」や「取り壊し」が必要
・住人の賛成多数が得られなければ建て替えも取り壊しもできない
・寿命が来ても、売れない・貸せない・建て替えできない・取り壊しできないこともあり得る
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築年数が古いマンションは、買い手側も「寿命」のことを考えるため、やはり需要が低くなってしまいがちです。
マンションを手放すことを考えるときには、寿命はもちろんのこと、買い手側のことを考えると売れやすさが損なわれないうちに売却できます。具体的には、買主が住宅ローンを組みやすい築年数のうちに売却することで、売却も住み替えもしやすくなるといえるでしょう。
(出典:国土交通省)
金融機関によっては、住宅ローンの融資条件に「マンションの築年数」があります。各機関によりますが、その基準は「築35年~60年以内」。つまり、築35年以上のマンションは、金融機関によっては融資してもらえないのです。
さらに、融資が下りるとしても「耐用年数までに完済できる期間で」「築50年までに完済できる期間で」などの条件を設けている金融機関があるため、築年数が高いマンションほど買主の融資条件は厳しくなるといえます。
ローンを利用せずに購入する人は、ほぼいません。
よって、売れやすさを損なわないためには「築35年」を売却する1つの目安とし、それ以上の築年数では寿命のことも考え、できるだけ早く手放した方が売りやすいといえるでしょう。
・寿命を前に売却・住み替えを考えることも考える
・買主が住宅ローンを組みやすい築年までに手放すことで売りやすさを損なわない
マンションの「建物」自体の寿命はどんどん伸びており、100年以上もつともいわれています。
しかし配管や設備の寿命は10~30年ほどが一般的であり、この部分を適宜、修繕していくことがマンションの寿命を延ばすこと、そして資産価値を維持していくために大切です。
(出典:国土交通省)
マンションを売却する上でも、リフォーム履歴があれば査定額は高まる可能性があります。
ここでは、各種住宅設備の耐用年数について解説していきます。
(1)バスタブ
一般的にバスタブの寿命は、15年程度といわれいます。
長く使っているうちにバスタブと壁面との隙間を埋めているコーキング部分が劣化し、ひび割れが起こります。水漏れがなければ、コーキング部分を補修するだけで使い続けることができ、ものによっては15年以上使えます。しかし傷んでいるコーキングを放置すると水漏れの原因になり、バスタブそのものを交換せざるを得なくなります。
(2)給湯器
家族構成や使用頻度にもよりますが、一般的にガス給湯器の寿命は、10年が目安になります。
給湯器のメーカーは、標準的な仕様条件の下で安全上支障なく使用できる設計標準使用期間を定めており、家庭用給湯器は10年に設定されています。実際には、10年以上使用できるものもありますが、保守部品がなくなった時点でメーカーの修理対応ができなくなります。
(3)排水管
配管設備の寿命は、25年~30年といわれています。
配管設備の中でも最も劣化しやすいのが、台所・キッチン周りの排水管です。排水管を傷めやすい油や食べ物のくず、熱湯などを流すことが多いからです。定期的なメンテナンスとして、年1回配管を高圧洗浄するのが効果的です。
(1)ガスコンロ
ガスコンロの寿命は、10年が目安といわれいます。しかしこれはあくまでも購入から10年以内であれば、交換部品があるので、修理ができるということにすぎません。
実際には10年以上使い続けられるものが多く、12年~15年は耐用できるようです。ただしガスを扱っている以上、10年未満であったとしても、コンロに何らかの異常が見られる場合は、早期に点検を依頼した方が良いでしょう。
(2)ディスポーザー
「ディスポーザー」とは、キッチンシンクの排水口の下に設置して、水を流しながら生ごみを粉砕して排水と一緒に流し出す機器です。粉砕室の中に投入した生ごみを遠心カによって周辺の固定刃に飛ばし、ターンテーブル上に取り付けられたスイングハンマーで押しつぶして砕く仕組みです。
多くのメーカーが公表している設計上の想定耐用年数は7年です。テレビや洗濯機などの一般家電製品とほぼ同じですが、実際の使用状況によって耐用年数が多少前後することもあるようです。
一般的にキッチン本体の耐用年数は、15年~20年といわれています。
シンクは、毎日の調理で汚れたり、傷んだりすることが多く、ステンレス製の場合、使い続けると、水垢や錆などが発生することがあります。これらは、日々の手入れで解消することができますが、通常の手入れで解消できなくなったり、20年以上使い続けている場合は、交換の目安といえるでしょう。
(1)防犯カメラ
防犯カメラやそれに付属する録画装置は、長時間の稼働が求められるため、寿命は短く5年前後といわれています。
機器の寿命よりも先に、性能の良い製品が発売されたことで入れ替えることもあり、導入から5年前後で新しい機器に入れ替えるのが一般的な交換スケジュールです。万一のときに故障で録画できなったという事態を避けなければなりませんので、早めに交換することが多いようです。
(2)フローリング
フローリングの寿命は、意外に短く10年~20年といわれています。
素材の木材の劣化により寿命がきたフローリングは、張り替える必要がありますので、大がかりな工事になり、それなりの費用がかかります。
フローリングを劣化させる原因として考えられるのが、「日焼け」「傷」「水分」の3つです。これらからフローリングを保護するために表面にコーティングを施すことが、効果的な劣化防止対策です。
(1)エレベーター
エレベーターは、一般的に設置後25年~30年を目安に取り換えられることが多いようです。
もちろんこれは、定期的なメンテナンスを前提にした耐用年数です。
かつては故障が多発し、閉じ込めなどの事故が発生して取り換えるケースが多かったようですが、最近は、地震対策や省エネ、安全性、快適性などを求めてリニューアルをするケースが増えているようです。
(2)機械式駐車場
機械式駐車場の寿命は、税務上の法定耐用年数と同じ15年といわれています。
しかしこの期間を維持するには、定期的なメンテナンスと部品交換が不可欠で、使用頻度によっては、15年以内でも取り換えを余儀なくされるケースもあるようです。
一時はブームなった機械式駐車場ですが、維持・管理に費用がかかり、取り換える場合はさらに費用負担が嵩むことが難点になっています。取り換えの時期を迎えて、駐車台数が減ることになっても、平置きの駐車場に変更するマンションもあるようです。
・お風呂やキッチンなどの水回りにはさまざまなパーツが存在しており、そのパーツごとに耐用年数が異なるためパーツごとに合わせた対応が必要。
・防犯カメラは、壊れていては何の効果もなくなってしまうためこまめな点検や交換が必要となる。
・フローリングは、自身の管理によって耐用年数が大きく左右される。
・エレベーターの耐用年数は25年から30年と言われるが、耐震性や快適性などを考慮し耐用年数を迎える前に交換するマンションも増えている。
・駐車場の寿命は、税務上の法定耐用年数と同じ15年となっている。
今後、寿命を迎える前のマンションの取り壊し・建て替えの事例は増えていくことでしょう。しかし全てのマンションが、取り壊しや建て替えができるとは思ってはいけません。住人の高齢化や資金不足等により、寿命を迎えてもなんの対策も取れないマンションが増えることも危惧されます。
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築年数が高いマンションをご所有の方は、必ず管理組合による修繕計画や建て替え計画を把握しておきましょう。そして状況によっては、売却や住み替えを視野に入れておくことも大切です。寿命を迎えてからでは、マンションは売れません。まずは一度、マンションの価値を知っておくことも良いでしょう。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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