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中古マンションの売買を行う際、物件の価格は最終的には、売主と買主の交渉によって決まります。
物件を売り出すときに売主が最初に「この価格で売りたい」と希望して出すのが「売り出し価格」、
買主との間で実際に成約した価格が「成約価格」です。
中古マンションの売却を考えるのであれば、売り出し価格と成約価格の違いを理解しておきましょう。
ここでは、売り出し価格と成約価格がどのようなものなのか見ていきたいと思います。
まず、「売り出し価格」は売主の希望価格だと考えるとよいでしょう。
マンションの売却では、最初に不動産会社に査定依頼を出します。
査定結果を聞いて、納得したら不動産会社と媒介契約を締結。最終的に売り出し価格を決める際には、必ずしも査定価格で売却を始める必要はありません。
査定価格を聞いたうえで、売主の希望価格で売却を開始することができるのです。この、売却を開始するときの価格が売り出し価格となります。
「成約価格」は、実際に成約に至った価格です。
売り出し価格は売主の希望で決めることができますが、必ずしもその価格で売却が決まるわけではありません。むしろ、売り出し価格で成約になることのほうが珍しいといえます。
売却を始めて一定期間が経っても売れない場合は、状況を見ながら値下げを検討していく必要があります。また、購入希望者が現れたとしても、最終的に値引き交渉を受けることも多いものです。
値下げや値引きを実施するかどうかは売主次第ですが、いずれにせよ最終的に成約した価格が「成約価格」となります。
マンションの売主側としては「売り出し価格」=「成約価格」となるのが最も理想的ですが、
実際は成約価格と売り出し価格は乖離することがあります。つまり、成約価格は売り出し価格よりも下がることが多いのです。
そもそも、不動産会社から提示を受ける査定価格は、媒介契約期間の3か月間で売れると予想される価格で提示を受けます。
例えば、売却開始から2週間で売れるように価格を設定するのであれば、より安い価格で設定する必要があるでしょう。また、逆に時間がかかってもいいので高値で売却したい場合はより高値で売り出しを始めることも検討できます。
この辺りの認識が一致していないような場合、売主の希望価格と査定価格には差が出る場合が多くありますので、その辺りは含んで考えておくのがよいでしょう。
それでは、どのような場合に成約価格が下がってしまうのかを見てみましょう。
中古マンションにおいて売り出し価格と成約価格の差額の比率を「乖離率」といいます。これを算出する場合、次のような計算式で表すことができます。
乖離率=(成約価格-売り出し価格)÷売り出し価格×100%
この乖離率が正の値であれば成約価格が売り出し価格を上回っており、反対に負の値であれば、成約価格が売り出し価格を下回っているということを表します。
しかし、バブル期のような取引価格が売り出し価格を上回るということは、現状ではほぼないため、乖離率は負の値となるケースが多く、この値が0に近いほど売主にとっては思い通りの売却ができたと言えます。
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さて、この乖離率は、どのようなときに大きくなるのでしょうか?東京カンテイの調査資料で2024年7月に出された「首都圏の中古マンションの売出・取引事例に基づく価格乖離率」の資料をもとに検証してみましょう。
この資料によると、2023年の乖離率は売却期間が1カ月以内の場合では-2.61%だったのが、2カ月以内で-4.47%と徐々に下がり、12カ月以内の売却では-11.36%まで乖離率が拡大しています。
こうした数値から、「売却期間が長くなるほど価格乖離率が拡大する」という傾向が理解できます。なお、一例として2021年、2017年とで乖離率を比べてみると以下の通りです。
1ヶ月 | 2ヶ月 | 2ヶ月 | |
---|---|---|---|
2023年 | -2.61% | -4.47% | -11.36% |
2021年 | -2.4% | -4.6% | -9.4% |
2017年 | -3.8% | -6.7% | -19.5% |
2020年に新型コロナウイルスを要因とした緊急事態宣言が解除されるなどして、中古マンション市場が一時売り手市場になっていたものの、緊急事態宣言が解除された2023年には元の水準にやや戻ったと見ることができるでしょう。。
これは、価格乖離率が景気の状況に大きく影響されたことを表しています。
成約価格を高めるためには、以下のような点を押さえておくとよいでしょう。
まずは適切な価格設定です。
売り出し価格が相場よりかけ離れている場合、購入希望者が現れる可能性は低くなってしまいます。売れない期間が続くと、値下げや値引きを検討する必要があり、これを複数回行うことで成約価格が低くなり、負の乖離率が高くなります。
また、タイミングの見極めも重要です。例えば、早いタイミングで購入希望者が現れたものの、想定より大きい額の価格交渉をされた場合、受け入れるかどうかで悩んでしまう方も多いでしょう。
しかし、ここで断ってしまうと次に購入希望者が長期間現れず、結局値下げを繰り返して成約価格がより安くなってしまうといった事態になりかねません。もちろん、すぐに別の購入希望者が現れる可能性もありますが、内覧希望者の数や反応などを見ながら、適切に判断していくことが求められるでしょう。
最後は市場分析です。これは一番難しいといえますが、景気が悪くなると成約価格は低くなりやすいです。
特に先行き不透明な場合は、相場より安めの価格で売り出し価格を設定したり、大きな額の価格交渉がきたりしたときも受け入れるといった判断が必要になるでしょう。
「売却期間が長くなるほど乖離率が大きくなる」これは、どのようなことを意味しているのでしょうか?
一般的に、居住用の中古マンションの価格は市況における価格からある程度は決まってしまい、成約価格は市況の価格に近いものになります。
相場市況よりも高い価格を当初から売り出し価格に設定してしまうと、買い手はなかなか見つかりにくく、そうこうしているうちに売却期間が長くなってしまいます。
そうなると足元を見られてしまい、相場以下の取引価格になってしまうことも考えられます。
「売却時間がどれだけ長くなっても構わない」という場合は別ですが、市況とかけ離れた価格で売り出し価格を設定するということはリスクを背負うことにもなります。
したがって、売却期間が長くなるほど、価格的には市況の価格を下回る可能性が高く、結果的には乖離率が大きくなってしまうのです。
短期間で売却するためには、適切なタイミングで価格の調整を行っていくことが重要です。価格調整を行うかどうかの判断ポイントとして、以下のようなものが挙げられるでしょう。
売り出しを始めても内覧の申し込み数が少ない場合、相場より価格が高くなってしまっている可能性があります。
また、実際に内覧した結果、内覧した人の反応がよくない場合や、一定期間売却活動を行い、内覧者の数は一定数あるものの買付申込が入らないような場合も同様です。
上記のような状況が見られるようであれば、適宜値下げをするなど価格調整していくとよいでしょう。
売却期間と成約価格はトレードオフの関係にあるといえるでしょう。
すでにお伝えした通り、売却を開始して売れない期間が続く場合、負の乖離率は高くなる傾向にあります。
これは、売れない期間が続くと値下げを実施していく必要があるのと、「長期間売れないのは何か理由があるのではないか」といった印象を持たれやすいことも要因です。
一方で、売却期限が決まっている場合など、意図的に売却期間を短くする必要がある場合には、売却価格が低下しやすい傾向にあります。これは、期限があるため、多少不利な価格交渉であったとしても飲まざるを得ない状況になってしまうことがあるからです。
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市況の価格より高い価格で売り出し価格を設定すると、乖離率が高くなってしまう傾向にあることはお伝えしました。このことから、相場より高い価格で売り出しを始めてしまうと結果的に売主が損をしてしまう可能性が高いことが分かります。
このため、売り出し価格を決めるときは、売り出し価格と成約価格が乖離しないよう、「できるだけ市況の価格と近い価格で売り出しを始める」ことを意識するとよいでしょう。
ここでは、売り出し価格を設定するコツとして以下の項目に沿って解説します。
それぞれ見ていきましょう。
市場相場をリサーチする方法には以下のようなものがあります。
ここで注意しておくべき点として、不動産情報サイトは現在売りに出されている「売却価格」であるのに対し、レインズマーケットインフォメーションは過去の成約価格を参照できる「成約価格」であることが挙げられるでしょう。
とくに、乖離率を小さくしたい目的であれば後者の成約価格を参照すべきだといえます。一方で、購入希望者が購入希望を出すときには、一定の確率で値引き交渉されることを踏まえると、売却価格も参考にしたほうがよいともいえます。
自分で市場価格をリサーチしたら、不動産会社の査定を受けるとよいでしょう。
ただし、不動産会社の査定価格を参考にするときは複数の不動産会社で査定を受けることが大切です。これは、不動産会社の中には、まずは媒介契約を結んでもらうために、故意に相場より高い査定価格を提示する会社もあるからです。
複数の不動産会社の査定を受けていく内に、売却したいマンションのおおよその相場を掴めるようになるはずです。
さらに、査定価格の提示を受ける際に、その価格の根拠を聞いて、納得できる不動産会社と媒介契約を結ぶようにするのがおすすめです。
売り出し価格を決める際、相場より少し高い価格で設定することにはメリットとデメリットがあります。
仮に、最初から安い価格を設定して、1ヶ月以内に売れてしまったような場合、もしかしたらもっと高値で売れていた可能性があるでしょう。
つまり、売り出し価格を相場より少し高い価格に設定することで、最終的な利益を最大化できる可能性があります。
一方、相場より少し高い価格に設定することで、売買契約につながらず、売却期間が長引いてしまうことで値下げや値引きを重ね、最終的な成約価格が相場より安くなってしまう可能性もあります。
メリット:利益を最大化できる可能性がある
リスク:売り出し期間が長引くと相場より安い価格での成約となるリスクがある
メリットとリスクを把握したうえで、適切に対処していく必要があるでしょう。
ここでは、成約価格を高めるための具体策として以下の3つをご紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
不動産会社に仲介を依頼する場合、全て不動産会社に任せてしまうこともできますが、売主が売却活動を積極的にサポートすることで成約価格を高められる可能性があります。
例えば、内覧時に同席したり、物件情報について売主ならではの情報を伝えたりといったことが挙げられるでしょう。
マンションの購入を考えている方は、大きな額の買い物をすることもあり、物件に対していろいろな情報が欲しいと考えているものです。
近隣の買い物施設はどうなのか、校区内の小学校や中学校はどのような特徴があるのか、近隣の道路で出勤ラッシュや帰宅ラッシュで込み合うことはないのか、混みあう場合には回避法はないのかなど、長く住んできた売主ならではの情報を伝えるようにするとよいでしょう。
マンションの売却活動は、そのほとんどを不動産会社に任せることが多いです。一方で、例えば売り出し価格や売却活動中の値下げ・値引きなどは売主が決めなければなりません。
こうしたこともあり、不動産会社に任せっきりにするのではなく、売主側から積極的に不動産会社と連携を取っていくのがよいでしょう。
中古マンションは、人の動きが多い2~3月や9~10月に売れやすいです。
こうした、売れやすい時期に売却を始めることで成約価格を高められる可能性があるでしょう。なお、マンションの売却は動き出してから実際に売却を始めるまでに時間がかかる点に注意が必要です。
2~3月頃の成約を目指すのであれば、11月~12月頃には不動産会社の査定を受けておき、1月には売り出し価格を決めて売却を始めるなど、売れる時期から逆算してスケジュールを組むことが重要です。
ここでは、売り出し価格設定でよくある質問を見ていきましょう。
市場相場よりやや高い価格を設定するのがおすすめです。特にマンションの場合、駅徒歩や築年数など似た物件が複数あることも多く、市場相場をリサーチしやすいという特徴があります。
まずはしっかり市場相場をリサーチしたうえで売り出し価格を設定するようにしましょう。
内覧の数や内覧者の反応を見て検討していきましょう。内覧者が多いということは、市場相場と同程度の価格で売り出しできていると判断しやすいです。売り出しを始めて期間が経っても成約しないでいると、少しずつ内覧者は減っていきます。
内覧者が減ってきたと感じたタイミングで、値下げを検討するのがおすすめです。具体的な値下げタイミングについては、不動産会社の担当者とも話し合って決めていくとよいでしょう。
売り出し価格を決めるにあたっては、不動産会社の査定価格や市況の近隣物件の売り出し価格や成約価格を参考にして決めていくようにしましょう。売主の希望で高めに出した売り出し価格では問合せすら来ない場合があり、そういった場合には価格の見直しが必要になります。
不動産会社も、市況とは乖離した売り出し価格では販売活動が疎かになりがちです。したがって、売り出し価格の設定には査定価格を中心にしてプラスいくらかで売り出し価格を決めた方が早く売却に結びつく可能性が高くなります。また、査定価格に基づく価格であれば値下げ交渉も比較的少なくて済む場合が多いようです。
できるだけ高く売りたいのが売主の本音ですが、売り出し価格をどのように決めたらいいのか、仲介の不動産会社のアドバイスを受けながら冷静に考えてみることが大切です。
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保有資格:宅建士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)
地方銀行勤務後、住宅会社へ転職。住宅会社では注文住宅や建売住宅の販売を担当し、営業部長として従事。それらの経験を活かし、住宅や不動産、金融を中心としたWebライターとして活動を始め2018年より独立。多数のメディアでコンテンツ作成に取り組んでいる。
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