任意売却と競売の違いとは?マンション所有者が知るべき流れと判断ポイントを徹底解説!
住宅ローンを滞納してしまい返済自体が厳しくなってしまったとき、
「このまま返せなかったら、家はどうなるのか」
「競売になってしまうのではないか」
と不安に感じる方も多いでしょう。
返済が厳しくなった場合、必ずしも競売しか選択肢がないわけではありません。
競売を回避する方法として任意売却という方法もあり、これを選ぶことで売却価格、引っ越しの自由度、その後の生活再建に大きな差が生まれます。
本記事では、任意売却と競売の違い、起こり得るリスク、そして「いつ・何をすべきか」を解説します。

住宅ローン返済が厳しくなったとき、最初に起こること

住宅ローンの返済に困窮した場合、初期段階であれば様々な回避策があります。産休など一時的な所得減が理由であれば、借入先の金融機関に相談し、一定期間利息のみを支払い、元金返済を据え置いてもらうといった方法が考えられます。また、将来的にも改善が見込まれないなら、売却を検討するのも一つの方法です。
しかし、これらの方法を検討せず、金融会社などから借入して無理に返済を続け、多重債務となってから白旗をあげるケースが思いのほか多いのです。
住宅ローンを利用する際、多くの方は月々の返済額やボーナス加算額だけでなく、変動あるいは固定型による金利プランの違いについても慎重に検討し、納得のうえで決断されたことでしょう。しかし、それでも住宅ローンの支払いに困窮し「こんなはずではなかった」と後悔するケースが後を絶ちません。
なぜ、事前に十分な検討をしたにもかかわらず、返済不能という事態に陥るのでしょうか。
金融機関が審査で最も重要視する項目の一つが「返済負担率」です。これは、年収に占める年間返済額の割合で、一般的に30~35%以内が基準とされています。しかし、この基準には個々の金銭感覚やライフスタイルは一切加味されません。そもそも金融機関にとって、あなたの家計の詳細は「あずかり知らぬこと」だからです。
つまり、「借入できる=返済が無理なく行える」という図式は、必ずしも成立しないのです。
住宅を購入すれば、固定資産税やメンテナンス費用、マンションにおいては管理費や修繕積立金の増加リスクまで勘案する必要があります。しかし、住宅ローンの返済額ばかりに注目し、これらを綿密に検討する方は多くありません。本来であれば不動産営業が説明すべきリスクですが、売却を優先する営業マンは、説明を求められない限りこれらのリスクを詳しく語ることはありません。何より、宅地建物取引業法ではこれらの説明が義務付けられておらず、説明するか否かは営業マンの判断に委ねられているのです。
また、数十年に及ぶ住宅ローンの返済期間中には、リストラ、転職、離婚、病気など様々な事態に遭遇する可能性があります。余裕のないギリギリの状態で融資を利用していれば、不測の事態が生じた途端に返済が困難となるのです。
利上げで「いつ」「いくら」増えるかの概算
変動金利を選択している場合、金利上昇による返済額の増加や、最終的な返済期日に「未払元金」が残る危険性を忘れてはなりません。金利が上昇しても、実際の返済額は5年間据え置かれ、増加率も従来の1.25倍(25%増)以内というルール(5年ルール・125%ルール)があります。
しかし返済額は抑えられても、その分、元金の減りは遅くなります。最悪の場合、予定期間では払い終えられない危険性もあるのです。
例えば3,000万円の残債がある場合、金利が1%上昇すれば年間利息は約30万円増加し、月々の返済負担に換算すれば2.5万円増える計算になります。
返済額の見直しは5年ごとですが、それまでの期間、支払額に対する利息負担が増大し、元金は減りづらいという事態を招きます。
家計が壊れ始める典型パターン
筆者は、住宅ローンにおける「ボーナス併用型」の利用を推奨しません。ボーナスは企業の業績に左右され、さらには支給される保障もないからです。
ボーナス払いを利用すれば月々の返済額は抑えられますが、それは6ヶ月分の負担を後回しにしているに過ぎません。
本来、ボーナスは突然の出費に備えその大半を貯蓄に回すべきです。教育費、管理費の増額、リフォーム工事など、長い人生では時に多額の出費が避けられません。
ボーナスに依存し過ぎている場合、意図せぬ出費が発生した瞬間に家計は一気に破綻します。
特に、預貯金ではなく、クレジットカードのリボ払いやカードローンで月々の不足分を補い始めた世帯は、極めて高い破綻リスクを抱えていると言えるでしょう。
任意売却と競売の根本的な違いとは?
任意売却(以下、任売)と競売は何が違うのか。
端的に言えば、前者は金融機関やサービサーによる合意のもと、「所有者が自らの意思で売主となる」のに対し、後者は「裁判所の手続きにより、所有者の意思に関係なく強制的に売却される」という点に違いがあります。
この差が、価格や引き渡し条件に大きく影響します。
①売却価格・残債・生活再建への影響の違い
近年は競落価格が市場相場に近づきつつあるものの、それでも任売と比較すれば落札額は安めで、競売の基準価格(最低の競落額)も低く設定されます。
また、競売でも任売でも、物件を売却して終わりではありません。売却しても返済しきれない債務については、引き続き返済義務が残るのです。
したがって、より高く売却して債務を圧縮できる可能性が見込まれる任売のほうが、その後の生活再建において圧倒的に有利となるのです。
②周囲に知られるリスク・精神的負担の違い

競売になると、裁判所が期間入札の公告を行います。その際には住所や間取り、内外観の写真が掲載された物件目録や現況調査報告書がインターネット等で一般公開され、誰でも閲覧できる状態となります。
この時点で、プライバシーの確保はほぼ不可能になると言って良いでしょう。声こそかけられないものの入札検討者が頻繁に現地確認へ訪れ、精神的負担は増大します。
これに対して任売は、外見上通常の不動産売却と変わりません。所有者のプライバシーは守られ、精神的負担は競売と比べてはるかに少なくてすみます。
③引越し・住み替えの自由度の違い
競売の場合、買受人が代金を納付した時点で所有権を失います。このため、債務者は買受人の求めに応じ、物件から立ち退く必要があるのです。
立ち退きに応じない場合、買受人は裁判所に引渡命令を申請します。引き渡し命令が発布されれば、最終的には執行官立会いのもと、強制的に荷物が搬出されるのです。
引っ越し費用がない、あるいは住み替え先がないなどの事情は一切考慮されず、転居先がなければ荷物は倉庫に保管されます。その場合、引取には費用がかかり、かつ期限内に引き取りをしなければ売却、あるいは処分されてしまうのです。
一方の任売は、債権者や購入者との交渉次第で、物件引き渡し時期の調整や、場合によっては売却代金から引っ越しや転居先の費用に関する捻出が認められることもあります。
「交渉の余地」のある点が、任売の大きなメリットです。
マンションの任意売却が進む具体的な流れ
① 住宅ローンの滞納・金融機関からの連絡
滞納から1~3ヶ月の初期段階では、電話や督促状による催促が行われます。この時点であれば、まだ「返済計画の見直し」などの柔軟な対応を望める可能性があります。
筆者が相談者に対し、「住宅ローンの返済に困窮したら、滞納するまえに速やかに相談を」と促すのは、条件が悪くなるほど交渉が難しくなるからです。
② 期限の利益喪失・一括請求
滞納が3ヶ月を超えると督促は「催告」へ変わり、送付されてくる文書にも法的措置を予感させる文言が盛り込まれるなど、厳しさを増します。
さらに、平均して滞納が6ヶ月以上に及ぶと、金融機関から「期限の利益喪失通知」が届きます。これが最大の転換点です。分割払いの権利(期限の利益)を失い、一括返済を迫られるのです。
当然、一括返済は困難なため、保証会社が金融機関に代位弁済を行い、債権は保証会社へと移ります。
③ 任意売却の相談・不動産会社選定
債権が移動した時点から、任意売却は時間との闘いになります。交渉相手が金融機関から、保証会社あるいはサービサー(債権回収会社)へと移るからです。
彼らは債権回収のプロとして事務的に競売手続きを進めます。このため、任売の承諾を得るのが困難となるのです。
任売には債権者との高度な交渉ノウハウや様々なノウハウが必要です。しかし、対応できる業者は限られています。
実績がありかつ信頼できる業者を早期に見つけ相談することが、任売を成功させる「鍵」となるのです。
④ マンション査定・売却活動
任売には期限があるため、早期に成約に至る価格設定が求められます。しかし、安すぎれば債権者の納得を得られず、高すぎれば売れずに競売へと進んでしまいます。
このような関係当事者の利害を調整し、落とし所を見つけるのが業者の手腕です。しかし、任売には販売活動の迅速性など、通常の売買実務と異なる専門的なスキルが不可欠です。
このため依頼する業者を選ぶ際には、提案内容や査定額はもとより、実績や口コミ情報などを参考にして依頼先を決定する必要があります。
決して1社から話を聞いただけでは即断せず、少なくとも迅速に2~3社から説明を受けたうえで判断する必要があるのです。
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⑤ 売買成立・引渡し・引越し
購入希望者が現れれば売買契約へと進むのは、一般的な取引と変わりありません。
通常と異なるのは、価格交渉を始めとする実質的な決定権(承諾権)が「債権者」にある点です。
所有者の心構えとしては、早期売却に向けて内覧の希望には可能な限り応じること、そして内覧者から質問された場合には回答できる範囲で正直に答えることでしょう。内覧者の心象を良くすることで早期の売却に期待が持てるからです。
早期売却を実現できれば、それだけ引き渡し条件などについても有利に進められる可能性が高まります。
ただし、最終的な判断は債権者にある点には注意が必要です。
任意売却が間に合わなかった場合の「競売」の流れ
競売が申立てられた後でも、並行して任意売却を継続することは可能です。
しかし、残された時間はわずかです。取り下げできるリミットは「開札日の前日」です。
ただし、買い手を見つけ、債務者の合意を得て、さらに購入者が住宅ローンを組んで決済を行うには相応の日数が必要です。実務的には、現金決済でない限り最短1ヶ月は必要となるのです。
任売を成功させるには競売の流れを正確に理解したうえで、一刻も早く動き出す必要があるのです。
競売開始決定通知〜期間入札までの流れ
裁判所から「競売開始決定通知書」が届くと、執行官や不動産鑑定士による現地調査が行われます。やむを得ない事情が認められれば相談できる余地はあるものの、原則として現地調査の日程変更は認められません。
そして、現地調査から数カ月後には情報が一般公開され、次いで入札・開札・落札へと進みます。一概には言えませんが、現地調査から落札までの期間は半年前後がおおよその目安とされています。
マンションが競売にかかるとどうなるのか
競売では所有者の事情が一切斟酌されず、競落人から立ち退きを迫られます。これが、任売との大きな違いの一つです。立ち退きに応じなければ新所有者の求めに応じて裁判所が介入し、合法的な強制退去が行われます。
さらに、競売においては「いくらで落札されるか」が開札まで分からず、残債の把握が困難です。
このため、事前に生活再建プランを検討しづらいというリスクが生じるのです。
競売後に残るリスクと生活への影響
競売によって不動産を手放しても、残された債務が免責されるわけではありません。残された債務に対しては依然として返済義務があるのです。このため自己破産、任意整理、個人再生などを検討される方も多いのです。
競売後は、家賃保証会社の利用を条件としている賃貸物件を借りるのが極めて困難です。
少なくとも5~7年間はクレジットカードが作れず、信販系の分割返済も利用できません。このため、生活再建に多大な影響が生じるのです。
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「任意売却も競売も避けたい」場合に取れる選択肢
住宅ローンの返済が厳しくなった場合、滞納する前であれば銀行に「リスケジュール(返済条件の変更)」を相談して、認めてもらえる可能性があります。一定期間の元金据置や返済期間の延長によって破綻を回避できる途は残されているのです。
ただし、複数ヶ月滞納し信頼関係が損なわれた後では、こうした交渉が極めて困難となります。
「相談するのが恥ずかしい」「認めてもらえるか不安」と躊躇される必要はありません。
金融庁から「金融機関は、消費者から相談があった場合は応じなければならない」と通達されているからです。
リスケジュールが確実に認められるわけではありませんが、少なくとも無下にされることはないのです。
まだ通常売却ができるケースとは?
売却価格が住宅ローン残高を上回る場合(アンダーローン)や、オーバーローンでも不足分を準備できる場合には、通常での売却が可能です。
ただし、固定資産税や管理費・修繕積立金の滞納がある場合には、引き渡しまでにそれらを完済しなければなりません。
マンション一括査定で今の価値を知る意味
任意売却を成功させるには、物件相場を知ることが不可欠です。一部ではありますが、困窮している方の足元を見て著しく低い査定額を出す不動産業者が存在するのです。
確かに、早期取引を実現するには販売価格を低めに設定する必要性はあります。ですが、それも程度問題です。
一括査定を利用して市場相場を把握することで、不当な廉価販売を防ぐことができます。
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早期売却・買取という現実的な回避策
不動産業者に相談した場合、任意売却ではなく買取を提案される場合もあるでしょう。
しかし、買取価格は任売価格より低く見積もられるのが一般的です。
任売は市場相場の9割前後が目安となるのに対し、買取では7~8割前後です。
早期解決のメリットと、残される債務のバランスや生活再建を念頭に、十分検討することが大切です。
任意売却・競売を考え始めたら最初にやるべきこと
住宅ローン残債とマンション相場を整理する
まずは「住宅の相場」と「住宅ローン残高」を正確に把握しましょう。
任売では市場相場の8~9割程度で成約されることが多いため、その価格で売却した際にいくら負債が残るか、そしてそれをどのように返済していくか(あるいは債務整理)をシミュレーションしておくことが重要です。
これらが曖昧なまま不動産業者に相談した場合、業者の都合が良いように誘導され、結果的に不利益を被る可能性があります。「相談前に情報を整理する」ことが極めて大切です。
競売までのスケジュールを把握する
滞納から競売完了までは、全体で約1年~1年半ほどの猶予があります。
「競売開始決定通知」到達後からでも任売は可能ですが、時間的な猶予はありません。
- 現状調査の実施:開始決定通知の到達から1~2ヶ月後
- 期間入札通知の到達:現状調査から2~3ヶ月後
- 一般公開・期間入札の公告:期間入札の数週間後
- 入札:開始決定から3~6ヶ月後
- 開札:入札締切後1週間以内※取り下げ期限は「開札日の前日」ですが、実務上は数週間前がデッドラインとなります。
第三者視点で選択肢を整理する
「借りた物は返す」という責任感は大切ですが、自分を追い詰めすぎる必要はありません。そもそも、貸付を行った銀行は保証会社から代位弁済を受けるため損はしていません。
また、保証会社も保証料を収入源としているため、競売は想定の範囲内に過ぎないのです。
返済期間が長期にわたる住宅ローンでは、ライフプランの変化など様々な理由で、誰にでも返済困難に陥る可能性があります。大切なのは、感情論ではなく第三者的視点で最善の選択肢を選ぶことです。
任意売却・競売に関して寄せられた質問
まとめ
筆者はこれまで任売に関する多くの相談を受けてきましたが、時に後ろめたさから卑屈になっている方を見受けます。
しかし、延滞は犯罪ではありませんし、それによって皆さんの人格や人間性が否定されるわけでもありません。
表現に語弊はあるかも知れませんが、「たかが借金」です。
自暴自棄にはならず、情報を整理し、専門業者の協力を得ながら前向きに生活を立て直してください。
大切なのは、今この瞬間から全体を俯瞰して「最善の一歩」を踏み出すことです。










